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全光型磁化反転およびTHz交流スピン流の素過程究明と超高速磁気メモリへの応用
本年度は、目的達成のために設定した「微小磁性体を用いた全光型磁化反転(AOS)現象の電気的測定および界面効果の影響の定量的究明」および「超高速AOSメモリおよびTHz駆動SOTメモリの素子作製と実証実験」の二つの研究課題に主に関係する以下の二つの研究を中心に行った。(1)全光型磁化反転の電気的検出と照射位置制御によるアナログ電圧の検出AOSの電気的検出とその電圧値制御を目的として、計画、試料作製、測定、解析を行った。ホールバー形状の希土類ー遷移金属GdFeCoフェリ磁性体試料において、中心部に照射した単一パルスレーザーにより誘起されたAOS象に伴う磁化変化を異常ホール効果を利用して電気的に検出した。また、パルスレーザー照射位置を制御しホールバー中心のAOS誘起領域の面積を調整することにより、異常ホール電圧をアナログ的に制御することができた。これらの成果をまとめて2019年6月のMORIS2019にて発表予定であるとともに、論文作成中である。(2)希土類ー遷移金属フェリ磁性体/重希土類接合構造における巨大スピン軌道トルクAOSの能動的制御に向けたスピン軌道トルク誘引材料の探索を目的とし、試料作製、測定、解析を行った。磁場掃引型試料電流電圧測定装置を用いて、GdFeCoフェリ磁性体/重金属(Gd、Tb、Pt)接合膜試料において、交流電流による調和異常ホール電圧を測定した。第二高調波成分の外部磁場依存性よりスピン軌道トルクの大きさを算出した結果、Gd接合膜においてPt接合膜の約10倍大きな実効的スピンホール効率が見積られた。また、Gd接合膜とTb接合膜では実効的スピンホール効率の符号が互いに逆であることを明らかにした。この結果を2018年9月の日本磁気学会学術講演会にて発表し、ポスター講演賞を受賞した。また、同磁気学会の専門研究会に推薦されて講演を行った。本研究において最も重要な事項の一つである、AOSの電気的測定は、ナノボルトメーター(特別研究員奨励費により導入)により電圧の精密計測が可能となり、達成することができた。また、試料微動台(同奨励費にて導入)によってパルスレーザー照射位置を制御することで、AOSにより誘起される異常ホール電圧がアナログ制御可能であることがわかった。これによりAOSを多値記録や論理演算に利用可能であることが示唆されたのは予想を超える成果であると言える。一方で、スピンホール効果によるAOSの制御に向けた材料探索を行ったことで、バルク垂直磁気異方性材料であるGdFeCoでのスピン軌道トルクの発現、4f希土類金属隣接層でのスピンホール効果を実証し、学会での講演賞受賞など一定の功績を上げたことは評価できる。しかし、AOSのスピン軌道トルクによる制御は実験的には達成しておらず今後の課題として残っている。また、電界効果によるAOSの制御については、現在の成膜装置では試料作製が難しいため、本年度中には行うことができなかった。次年度には別の成膜装置を使用できる算段をつけているため、研究が進むことが期待できる。本年度は対外発表も国内学会に留まっているため、今後は論文や国際学会で発表を行い、これらの研究結果をより広く示す必要がある。平成31年度はスピン軌道トルクおよび電界効果によるAOSの制御を実現するために研究を行う。GdFeCoフェリ磁性体/重金属接合構造を作成し、スピンホール効果によるスピン軌道トルクを利用し、AOSの誘起閾値や磁化反転領域を制御することを目指す。試料作製や予備実験は平成30年度末から順次取り組んでおり、実験に適した詳細な材料の選定や実験条件は定まりつつある。また、下部電極/誘電体/GdFeCoフェリ磁性体積層構造において、ゲート電圧印加による電界効果を利用して、GdFeCoの磁性を制御することによってAOSを制御することを目指す。この下部電極を成膜できる装置の利用は可能であり、スパッタターゲット材料を新規に購入し実験を行う予定である。磁気静特性における電界効果を連続光を用いた磁気光学効果により明らかにし、その後、パルスレーザーシステムにおいて電界効果下でAOS現象の誘起・制御を試みる。一方で、AOSに伴うTHz帯スピン流の直接検出についても検討を進める。GdFeCo/重金属接合膜に、AOS誘起可能な強度のパルスレーザーを照射する。AOS誘起に伴う磁化の急峻な変化により生じるスピン流を、逆スピンホール効果を利用して検出する。オシロスコープによる時間分解検出およびパルスレーザー周波数を同期信号とするロックインアンプによる同期検出を試みる。前年度(平成30年度)の結果と合わせてまとめ、論文を投稿するとともに、国際・国内学会で発表を行う予定である。本年度は、目的達成のために設定した「微小磁性体を用いた全光型磁化反転(AOS)現象の電気的測定および界面効果の影響の定量的究明」および「超高速AOSメモリおよびTHz駆動SOTメモリの素子作製と実証実験」の二つの研究課題に主に関係する以下の二つの研究を中心に行った。(1)全光型磁化反転の電気的検出と照射位置制御によるアナログ電圧の検出AOSの電気的検出とその電圧値制御を目的として、計画、試料作製、測定、解析を行った。ホールバー形状の希土類ー遷移金属GdFeCoフェリ磁性体試料において、中心部に照射した単一パルスレーザーにより誘起されたAOS象に伴う磁化変化を異常ホール効果を利用して電気的に検出した。
KAKENHI-PROJECT-18J00338
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18J00338
全光型磁化反転およびTHz交流スピン流の素過程究明と超高速磁気メモリへの応用
また、パルスレーザー照射位置を制御しホールバー中心のAOS誘起領域の面積を調整することにより、異常ホール電圧をアナログ的に制御することができた。これらの成果をまとめて2019年6月のMORIS2019にて発表予定であるとともに、論文作成中である。(2)希土類ー遷移金属フェリ磁性体/重希土類接合構造における巨大スピン軌道トルクAOSの能動的制御に向けたスピン軌道トルク誘引材料の探索を目的とし、試料作製、測定、解析を行った。磁場掃引型試料電流電圧測定装置を用いて、GdFeCoフェリ磁性体/重金属(Gd、Tb、Pt)接合膜試料において、交流電流による調和異常ホール電圧を測定した。第二高調波成分の外部磁場依存性よりスピン軌道トルクの大きさを算出した結果、Gd接合膜においてPt接合膜の約10倍大きな実効的スピンホール効率が見積られた。また、Gd接合膜とTb接合膜では実効的スピンホール効率の符号が互いに逆であることを明らかにした。この結果を2018年9月の日本磁気学会学術講演会にて発表し、ポスター講演賞を受賞した。また、同磁気学会の専門研究会に推薦されて講演を行った。本研究において最も重要な事項の一つである、AOSの電気的測定は、ナノボルトメーター(特別研究員奨励費により導入)により電圧の精密計測が可能となり、達成することができた。また、試料微動台(同奨励費にて導入)によってパルスレーザー照射位置を制御することで、AOSにより誘起される異常ホール電圧がアナログ制御可能であることがわかった。これによりAOSを多値記録や論理演算に利用可能であることが示唆されたのは予想を超える成果であると言える。一方で、スピンホール効果によるAOSの制御に向けた材料探索を行ったことで、バルク垂直磁気異方性材料であるGdFeCoでのスピン軌道トルクの発現、4f希土類金属隣接層でのスピンホール効果を実証し、学会での講演賞受賞など一定の功績を上げたことは評価できる。しかし、AOSのスピン軌道トルクによる制御は実験的には達成しておらず今後の課題として残っている。また、電界効果によるAOSの制御については、現在の成膜装置では試料作製が難しいため、本年度中には行うことができなかった。次年度には別の成膜装置を使用できる算段をつけているため、研究が進むことが期待できる。本年度は対外発表も国内学会に留まっているため、今後は論文や国際学会で発表を行い、これらの研究結果をより広く示す必要がある。平成31年度はスピン軌道トルクおよび電界効果によるAOSの制御を実現するために研究を行う。GdFeCoフェリ磁性体/重金属接合構造を作成し、スピンホール効果によるスピン軌道トルクを利用し、AOSの誘起閾値や磁化反転領域を制御することを目指す。試料作製や予備実験は平成30年度末から順次取り組んでおり、実験に適した詳細な材料の選定や実験条件は定まりつつある。また、下部電極/誘電体/GdFeCoフェリ磁性体積層構造において、ゲート電圧印加による電界効果を利用して、GdFeCoの磁性を制御することによってAOSを制御することを目指す。この下部電極を成膜できる装置の利用は可能であり、スパッタターゲット材料を新規に購入し実験を行う予定である。
KAKENHI-PROJECT-18J00338
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18J00338
情報受信側の自主判断を促進する災害情報と判断評価のサポート機構
災害時の危険は、個人が自分の責任で回避する必要がある。適切な自主的判断を促すためには、(1)判断に必要な情報を獲得できること、(2)その情報を基に判断できる知識を有すること、あるいは判断サポートの仕組みが整備されていること、の2つが要請される。1.自然災害への対応:風水害、地震発生時の市民の避難判断や行動を導く災害情報システムにおいて、新たに防災情報士を導入した局所情報の集約と情報伝達のための仕組みを提案した。さらに、住民の避難行動の必要性を実感させるための避難状況提供システムを考案、その効果を実験評価した。2.人工物災害への対応:原子力・プラント事故の発生時、住民の迅速な避難のためには、事故情報の公開が必須である。しかし、オフサイトセンターにおける平常時の情報公開や事故時の対応マニュアルなどが整備され始めているものの、点検時の保全データの改ざんや臨界状況の隠蔽の事実が次々に発覚する中、事故発生時の情報開示には不安がある。第三者機関の役割も不十分であることを指摘した。また近年、消費生活用製品のリコール回収が多発しており、迅速な製品回収が災害対応と同様に重要な課題となっている。平成19年5月、改正消費生活用製品安全法の施行により、重大製品事故は全て経済産業省へ報告され公表されるようになるが、一般市民による自主的な対応行動が必要不可欠である。そこで、情報技術を利用したリコール回収の仕組みを提案した。3.医療事故への対応について:市民にとって病院選択は緊急時の対応行動と言える。病院間比較による相対評価に基づくランキング法を検討した。市民の判断をサポートする第三者機構の活動の不十分な点を明らかにし、事故回避にコンフリクト・マネジメントが期待されることにも言及した。災害時の危険は、個人が自分の責任で回避する必要がある。適切な自主的判断を促すためには、(1)判断に必要な情報を獲得できること、(2)その情報を基に判断できる知識を有すること、あるいは判断サポートの仕組みが整備されていること、の2つが要請される。1.自然災害への対応:風水害、地震発生時の市民の避難判断や行動を導く災害情報システムにおいて、新たに防災情報士を導入した局所情報の集約と情報伝達のための仕組みを提案した。さらに、住民の避難行動の必要性を実感させるための避難状況提供システムを考案、その効果を実験評価した。2.人工物災害への対応:原子力・プラント事故の発生時、住民の迅速な避難のためには、事故情報の公開が必須である。しかし、オフサイトセンターにおける平常時の情報公開や事故時の対応マニュアルなどが整備され始めているものの、点検時の保全データの改ざんや臨界状況の隠蔽の事実が次々に発覚する中、事故発生時の情報開示には不安がある。第三者機関の役割も不十分であることを指摘した。また近年、消費生活用製品のリコール回収が多発しており、迅速な製品回収が災害対応と同様に重要な課題となっている。平成19年5月、改正消費生活用製品安全法の施行により、重大製品事故は全て経済産業省へ報告され公表されるようになるが、一般市民による自主的な対応行動が必要不可欠である。そこで、情報技術を利用したリコール回収の仕組みを提案した。3.医療事故への対応について:市民にとって病院選択は緊急時の対応行動と言える。病院間比較による相対評価に基づくランキング法を検討した。市民の判断をサポートする第三者機構の活動の不十分な点を明らかにし、事故回避にコンフリクト・マネジメントが期待されることにも言及した。災害時の危険は各個人が自主的に回避する必要があり、個人は、科学者や専門家の意見を基に行政が発令する避難指示に従って行動することになる。本研究では、円滑な避難行動を導くための「専門情報の直接提供」のあり方、情報提供の機構を追及する。災害時にどのような情報をどこまで公表する必要があるか、その基準やガイドライン等を考える。16年度は自然災害情報と原子力・プラント事故情報の2分野に関して調査、検討する予定であったが、7月から10月にかけ新潟、豊岡等広域で集中豪雨による被害が発生、10月下旬には新潟中越地震が発生するなど自然災害が頻発したため、自然災害に焦点を絞り、災害時情報の現状を重点的に調査、検討した。1.災害時の情報公開について:災害時情報が受け手側に理解できる内容のものか、あるいは緊急状況を認知・判断し対応行動に結びつけるために有用な内容の情報であったかなど、情報提供の内容と方法の適切さについて、新潟中越地震で被害を受けた長岡市や小千谷市等で調査を行った。被災後、必要となる情報は時間経過と共に変化しており、調査結果を基に時系列的な必要情報の変化をまとめた。また、早期の情報公開に伴う混乱や問題点が顕在化し、同時に、情報発信側の情報収集上の問題点として、情報を集めるべき被災度の高い地区ほど情報が集まりにくいなどの状況が把握された。2.評価のサポート機構について:特に「eシティネットながおか」による局所情報発信など、平常時のネットを災害時に利用する幾つかの新しい試みが行われており、そこでのサポート状況、問題点の検討を行なった。これらの調査結果の一部は、平成17年2月電子情報通信学会ユビキタス社会とライフスタイル研究会第2回ワークショップ『ユビキタス社会における環境と防災』の招待講演にて発表した。
KAKENHI-PROJECT-16510107
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16510107
情報受信側の自主判断を促進する災害情報と判断評価のサポート機構
17年度は,16年度に引き続き,自然災害情報のあり方に関して検討すると共に,原子力・プラント関連と医療関連の情報を考察対象として加え、市民に対する情報提供と市民の判断をサポートする第三者機構の活動を調査・考察した.1.事故時の情報公開について事故発生時の情報公開のための仕組みを知るために,関係機関,例えば阪神・淡路大震災関連の防災センター等で調査を行うと共に,新聞報道に基づき現在の情報提供方法の適切さを考察し,今後の情報提供のあり方を検討した.災害関連では,自主判断に有効となる情報を的確に提供するための仕組みとして防災情報士制度を提案し,その効果に関するシミュレーション評価を含めて,日本災害情報学会にて発表した.原子力・プラント関連では、政府や各電力会社が提供する安全情報、緊急時の情報提供、オフサイトセンターにおける初動対応時の情報収集,迅速な公開の仕組みや体制等を調査した。医療関連では、医療事故発生時の情報公開の現状について考察したが,その際,(財)日本医療機能評価機構で中立の立場から裁判外紛争解決のためのコンフリクト・マネジメントを推進していることを知り,その効果を検討した.その結果の一部を医療関係のジャーナルに投稿した.2.判断評価のサポート機構について医療関連では、日本医療機能評価機構で行われている医療機関の評価が、医療機関側へのガイドラインや利用者側の病院選択・理解の助けとなりえるかを検討した.さらに,機構がどのような評価認定を行ない、どのような支援を行なうべきかを情報利用者の立場から考察し続けている.予定していたデンマークのリソ研究所訪問は,日程調整がうまく行かず,来年度に延期することとした。16年度は自然災害を、17年度は原子力・プラント関連と医療関連を中心に、市民に対する情報提供と市民の判断をサポートする第三者機構の活動に注目してきた。18年度は、2年間にわたるこれらの調査・考察結果を基に、緊急時の安全情報システムを構築すべく、有効な情報提供の方法、情報受信側の判断支援の方法を整理した。さらに18年度は製品事故が相次ぎ,リコール回収への消費者の自主対応が話題になったため,これも対象に含め検討した.(1)事故時の情報公開について災害時に公表されるべき情報内容に関して、局所的な情報と大局的な情報をどのように切り分け、どのような内容をどのタイミングでそれぞれ公開することが効果的かを考えた。特に判断の難しいグレイゾーンにおいて、的確な行動を決定するための情報提示の例として,避難状況提示システムを提案した(ISシンポジウムで発表)。このシステムは,市民発信の情報を利用した局所情報提示であり、Webや携帯電話などのモバイル情報機器のメリットを活用したシステムで,災害時の避難行動決定支援の手法として期待できることを実験で検証した。ただし,集団心理により起こりえる問題をクリアすることなどの課題は残っている.(2)評価のサポート機構について公表された情報を基に行動を選択する市民のための支援センターとして,原子力,医療,製品事故などに対しては既に(財)原子力発電技術機構,(財)日本医療機能評価機構,(独)製品評価技術基盤機構などの第三者機関が存在する。それらの機関に期待される情報「発信」側への情報発信内容に関する支援や指導の機能,情報「受信」側への理解・評価に関する支援や窓口機能について,さらに現在の状況などをまとめた(ISシンポジウムで発表).災害関係に関しては,まだ適当な機関がない.
KAKENHI-PROJECT-16510107
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16510107
Poisson幾何学国際会議2006年開催のための準備および調査企画
2006年6月に東京にてPoisson幾何学国際会議が開催されるための準備と調査企画を行った。この国際会議は、1996年ポーランドにて第一回の会議を始めて以来、隔年主に欧米にて開催されてきた。今回、Poisson幾何学の国際的な進展にあわせ、欧米だけではなく日本を中心としたアジア諸国の研究者との融合および討議を目的として開催されるものである。今までの討議の中心が、シンプレクティック幾何学が中心テーマであったものを、その強化とともに、積分可能系、量子化問題、数理物理、特に超弦理論、場の量子論等への拡大を狙った企画が検討されている。欧米が格段に進歩しているシンプレクティック幾何学やポアソン幾何学研究分野の日本を含めたアジア各国の学生および若手研究者の育成にある。国際会議を開催するのにあたり、2005年度に日本およびアジア地域の学生や若手研究者およびその指導者による、研究分野の研究交流を重ねた。このために、欧米への調査派遣、国内において講義、討議を定期的に重ねた。2005年7月にユネスコ、トリエステ(イタリア)で開催されるポアソン幾何学夏の学校は、本国際会議とも連携している。この夏の学校への学生および若手研究者の派遣を行なうことにより、2006年の本国際会議のために若手育成を行なった。このワークショップにおいて、中国、ベトナム、東ヨーロッパ、南米等の若手研究者の教育および来年度に国際会議に招聘する候補者の検討を行った。コロンビアを訪問し、夏の学校での講師、コロンビアにおける若手研究者との交流により、来年度若手研究者を招聘する準備もできた。この国際会議の後援として日本数学会、アメリカ数学会、およびヨーロッパ数学会からスポンサーシップを得ることもできた。ローザンヌ自由工科大学ベルヌーイ研究所等の研究所からの国際連携も行えた。組織委員会、講演者の決定、国際会議のための教育スクールおよび若手研究者の招聘等すべてが整えた。2006年6月に東京にてPoisson幾何学国際会議が開催されるための準備と調査企画を行った。この国際会議は、1996年ポーランドにて第一回の会議を始めて以来、隔年主に欧米にて開催されてきた。今回、Poisson幾何学の国際的な進展にあわせ、欧米だけではなく日本を中心としたアジア諸国の研究者との融合および討議を目的として開催されるものである。今までの討議の中心が、シンプレクティック幾何学が中心テーマであったものを、その強化とともに、積分可能系、量子化問題、数理物理、特に超弦理論、場の量子論等への拡大を狙った企画が検討されている。欧米が格段に進歩しているシンプレクティック幾何学やポアソン幾何学研究分野の日本を含めたアジア各国の学生および若手研究者の育成にある。国際会議を開催するのにあたり、2005年度に日本およびアジア地域の学生や若手研究者およびその指導者による、研究分野の研究交流を重ねた。このために、欧米への調査派遣、国内において講義、討議を定期的に重ねた。2005年7月にユネスコ、トリエステ(イタリア)で開催されるポアソン幾何学夏の学校は、本国際会議とも連携している。この夏の学校への学生および若手研究者の派遣を行なうことにより、2006年の本国際会議のために若手育成を行なった。このワークショップにおいて、中国、ベトナム、東ヨーロッパ、南米等の若手研究者の教育および来年度に国際会議に招聘する候補者の検討を行った。コロンビアを訪問し、夏の学校での講師、コロンビアにおける若手研究者との交流により、来年度若手研究者を招聘する準備もできた。この国際会議の後援として日本数学会、アメリカ数学会、およびヨーロッパ数学会からスポンサーシップを得ることもできた。ローザンヌ自由工科大学ベルヌーイ研究所等の研究所からの国際連携も行えた。組織委員会、講演者の決定、国際会議のための教育スクールおよび若手研究者の招聘等すべてが整えた。
KAKENHI-PROJECT-17634003
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17634003
RNA分解酵素による血液凝固制御
細胞外に出たRNAが生体内の新しい凝固促進因子,血管透過性亢進因子であることが確認されている.その作用は膵臓型リボヌクレアーゼ(RNase1)によって抑制される.血管内におけるRNaseの詳細な発現や機能の解析はこれまで行われてこなかったため,我々は血液と接触する血管内皮細胞,血液細胞,悪性細胞におけるRNaseの発現と機能,及びその調節について解析した.その結果,血管内皮細胞のRNase1は病的に放出される細胞外RNAの作用から血管系を護っていることが示唆された.血球細胞や悪性細胞のRNA/RNase1機構も血管や悪性細胞の恒常性の維持に貢献していることが示唆された.細胞外に出たRNAが生体内の新しい凝固促進因子,血管透過性亢進因子であることが確認されている.その作用は膵臓型リボヌクレアーゼ(RNase1)によって抑制される.血管内におけるRNaseの詳細な発現や機能の解析はこれまで行われてこなかったため,我々は血液と接触する血管内皮細胞,血液細胞,悪性細胞におけるRNaseの発現と機能,及びその調節について解析した.その結果,血管内皮細胞のRNase1は病的に放出される細胞外RNAの作用から血管系を護っていることが示唆された.血球細胞や悪性細胞のRNA/RNase1機構も血管や悪性細胞の恒常性の維持に貢献していることが示唆された.細胞傷害や病原体感染に際し放出されるRNAが血液や血管内皮細胞と触れることで一連の凝固反応が惹き起こされるという新しい概念を提唱したことに引き続き、RNA分解酵素(RNase)が血液凝固制御に関与している可能性があると考えた。そこで、白血病細胞を中心とした様々な細胞を用いて、pancreatic-type ribonuclease(RNase 1)、RNase 5(angiogenin)、RNase inhibitor(RI)のmRNAやタンパク質の発現をRT-PCR法とウエスタンブロット法で調べた。また活性測定により、細胞外に分泌されたRNase活性を測定した。その結果、細胞の種類によりRNase 1、RNase 5、RIのmRNAレベル、タンパク質レベルでの発現の違いがみられた。白血病細胞株はRNase活性をもたず、多発性骨髄腫細胞では正常血管内皮細胞と同等レベルの活性があることを明らかにした。生体内のRNAにより血液凝固活性化が起こり、血栓症が起こるという概念は新しいもので、血管内皮細胞から放出されるRNaseが血管内の恒常性を維持しており、白血病細胞ではRNaseが十分に機能していない可能性が示唆された。また、多発性骨髄腫の新しい治療薬で免疫調節作用のあるサリドマイドや併用薬デキサメサゾン、ドキソルビシンの血管内皮細胞や単球系細胞、骨髄腫細胞への凝固活性化効果を検討し、血管内皮細胞や単球に対するデキサメサゾンの組織因子発現増強作用、ドキソルビシンのアポトーシス誘導作用による凝固促進効果を見出し、論文発表した。骨髄腫細胞のRNase発現との関連を探る礎となっている。細胞溶解液と細胞上清の分析により、RNase 1とRNase inhibitor (RI)はmRNA及び蛋白質のレベルで血液細胞に異なったレベルで発現していることが判った.赤血球や白血病細胞では,RNase 1の発現は低いようであった.RIはあまねく血液細胞でも血管内皮細胞と同様に発現していた.一方,RNase活性はHUVECs細胞株EAhy926細胞上清では血球細胞より高かった.無血清培地で培養すると,EAhy926では上清中のRNase活性は時間とともに増加するが,白血病細胞では徐々に低下した.研究成果の一部は,2013年のAmsterdamで開催される国際血栓止血学会で発表予定である.多発性骨髄腫の新しい治療薬で免疫調節作用のあるレナリドマイド,併用薬デキサメサゾン,ボルテゾミブの血管内皮細胞や単球系細胞,骨髄腫細胞への凝固活性化効果を検討し,血管内皮細胞や単球に対するデキサメサゾンの組織因子発現増強作用,ボルテゾミブのアポトーシス誘導作用による凝固促進効果を見出し,論文発表した.骨髄腫細胞などの腫瘍細胞によるRNA/RNase発現との関連を探る礎となっている.血管内皮細胞のRNase 1は病的に放出される細胞外RNAの作用から血管系を護っていることが示唆された.血球細胞や悪性細胞のRNA/RNase 1機構も血管や悪性細胞の恒常性の維持に貢献していることが示唆された.RNase 1とそのインヒビターは血管の恒常性の維持に重要であることが示唆され,今後の興味深い研究対象と考えられる.血液凝固制御、血管滲出に関与する可能性のあるRNA分解酵素(RNase)の発現の、細胞による違いとその分泌調節について知見を蓄積している。24年度が最終年度であるため、記入しない。RNA分解酵素(RNase)の発現のダイナミズム(動き)と臨床的意義の検討を更に推進する.24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-22590519
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22590519
リプログラミング技術を利用した細胞老化のエピゲノム解析
細胞老化は、DNA損傷、酸化ストレス、がん遺伝子発現などのストレスによって誘導され、不可逆的に細胞分裂が停止する現象であるが、その分子機構はまだ不明な点が多い。本研究では、分裂停止した老化細胞からiPS細胞を樹立し、老化前の細胞由来iPS細胞や元の老化細胞との間で、遺伝子発現レベル、エピジェネティックな変化、細胞周期や細胞機能などの性状を比較解析することにより、細胞老化の分子メカニズム解明の新たな糸口を見いだすことを目的とした。分裂能を完全に失い老化した正常ヒト線維芽細胞から、レンチウイルスベクターを用いてリプログラミング因子(OCT3/4, SOX2, KLF4, c-MYC, LIN28)に加えSV40LTを一過性に発現させ、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤とヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤を添加することにより、極めて低い頻度(0.00001%)ではあるがiPS細胞を樹立することができた。iPS細胞樹立の確認は、免疫染色法による未分化マーカー(SSEA3、SSEA4、TRA-1-60、TRA-1-81)の発現および免疫不全マウスへの移植によるテラトーマ形成能により行った。老化細胞由来iPS細胞の増殖や形態は、50回以上継代を重ねても、老化前の細胞由来iPS細胞と変わらず、網羅的遺伝子発現、ゲノムワイドのDNAメチル化およびヒストン修飾の比較解析においても差はほとんど見られなかった。また、iPS細胞から線維芽細胞へ分化誘導し、継代培養後の分裂寿命(細胞老化)についても差は見られなかった。これらのことから、エピジェネティックな変化によって細胞は老化するが、リプログラミングによって分裂停止した老化細胞は若返ることができると考えられる。しかしながら、iPS細胞の樹立効率が極めて低かったことから、樹立できたiPS細胞はまだ完全に老化して分裂停止していなかった細胞に由来する可能性は否定できない。細胞老化は、DNA損傷、酸化ストレス、癌遺伝子発現などのストレスによって誘導され、不可逆的に細胞分裂が停止する現象であるが、その分子機構はまだ不明な点が多い。本研究では、分裂停止した老化細胞からiPS細胞を樹立し、元の老化細胞や老化前の細胞由来のiPS細胞との間で、遺伝子発現レベル、エピジェネティックな変化、細胞周期や細胞機能などの性状を比較解析することにより、細胞老化の分子メカニズム解明の新たな糸口を見いだすことを目的としている。平成27年度は、分裂能を完全に失ったヒト老化線維芽細胞からiPS細胞を樹立することを試みた。予備的実験では、老化細胞にOCT3/4、SOX2、KLF4、c-MYCの4因子のみあるいは4因子とp53 shRNAをレンチウイルスベクターで導入してもiPS細胞は樹立できないことがわかっていた。そこでまず、染色体に組み込まれないレンチウイルスベクターによってSV40LTを一過性に発現させることにより、p53経路およびp16/Rb経路を抑制し、再び細胞増殖を開始させた後、4因子に加えリプログラミングを促進すると考えられる遺伝子LIN28の導入とDNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤(RG108)およびヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤(BIX01294)の添加により、非常に低い頻度(0.00001%)ではあるがiPS細胞を樹立することができた。iPS細胞の樹立は、未分化マーカー(SSEA3、SSEA4、TRA-1-60、TRA-1-81)の発現を免疫染色法により確認し、多能性の確認は免疫不全マウスへの移植によるテラトーマ形成(三胚葉系への分化能力)により行った。老化細胞由来iPS細胞の増殖や形態は、50回以上継代を重ねても、コントロールの若い細胞由来iPS細胞と変わらないことが確認された。ヒト新生児線維芽細胞(NB1RGB)は、継代培養を繰り返すと集団倍加数(PDL)が7579で完全に分裂能を失い老化することを、老化関連βガラクトシダーゼ染色陽性とBrdUの取り込み陰性により確認している。予備的実験では、PDL75以上のNB1RGB細胞にOCT3/4、SOX2、KLF4、c-MYCの4因子のみあるいは4因子とp53 shRNAをレンチウイルスベクターで導入してもiPS細胞は樹立できないことがわかっており、細胞増殖を開始する段階が律速であることが示唆された。そこでまず、染色体に組み込まれないレンチウイルスベクターによってSV40LTを一過性に発現させ、p53経路およびp16Ink4a/Rb経路を抑制し、再び細胞増殖を開始させた後、4因子を導入することを試みた。さらに、リプログラミングを促進すると考えられる遺伝子(LIN28、hTERT、Glis1など)の導入と化学化合物(Wnt-GSK3βシグナル経路阻害剤、TGFβシグナル経路阻害剤、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤、HDAC阻害剤、ヒストンメチル化阻害剤など)の添加の組み合わせも検討した。その結果、SV40LTの一過性発現と4因子およびLIN28の導入、さらにDNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤(RG108)とヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤(BIX01294)の添加により、非常に低い頻度(0.00001%)ではあるがiPS細胞を樹立することができた。iPS細胞の樹立は、未分化マーカー(SSEA3、SSEA4、TRA-1-60、TRA-1-81)の発現を免疫染色法により確認し、多能性の確認は免疫不全マウスへの移植によるテラトーマ形成(三胚葉系への分化能力)により行った。老化細胞由来iPS細胞の増殖や形態は、50回以上継代を重ねても、コントロールの若い細胞由来iPS細胞と変わらないことが確認された。
KAKENHI-PROJECT-15K06900
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K06900
リプログラミング技術を利用した細胞老化のエピゲノム解析
細胞老化は、DNA損傷、酸化ストレス、癌遺伝子発現などのストレスによって誘導され、不可逆的に細胞分裂が停止する現象であるが、その分子機構はまだ不明な点が多い。本研究では、分裂停止した老化細胞からiPS細胞を樹立し、老化前の細胞由来iPS細胞や元の老化細胞との間で、遺伝子発現レベル、エピジェネティックな変化、細胞周期や細胞機能などの性状を比較解析することにより、細胞老化の分子メカニズム解明の新たな糸口を見いだすことを目的としている。平成27年度に、分裂能を完全に失い老化した正常ヒト新生児皮膚由来線維芽細胞(NB1RGB)から、リプログラミング因子(OCT3/4、SOX2、KLF4、c-MYC、LIN28)に加えSV40LTを一過性に発現させ、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤とヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤を添加することにより、非常に低い頻度ではあるがiPS細胞を樹立することができた。平成28年度は、老化した正常ヒト胎児肺由来線維芽細胞(TIG1)からも同様にして非常に低い頻度でiPS細胞を樹立することができた。老化細胞由来iPS細胞の増殖や形態は、50回以上継代を重ねても、老化前の細胞由来iPS細胞と変わらなかった。網羅的遺伝子発現、DNAメチル化、ヒストン修飾の比較解析においても差はほとんど見られなかった。また、iPS細胞から線維芽細胞へ分化誘導し、継代培養後の細胞老化についても差は見られなかった。これらのことから、エピジェネティックな変化によって細胞は老化するが、リプログラミングによって分裂停止した老化細胞は若返ることができると考えられる。分裂能を完全に失い老化した正常ヒト新生児線維芽細胞(NB1RGB)および正常ヒト胎児肺由来線維芽細胞(TIG1)に、染色体に組み込まれないレンチウイルスベクターによってSV40LTを一過性に発現させ、さらにリプログラミング因子(OCT3/4、SOX2、KLF4、c-MYC、LIN28)をレンチウイルスベクターによって導入し、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤(RG108)とヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤(BIX01294)を添加することにより、非常に低い頻度(0.00000260.00001%)ではあるがiPS細胞を樹立することができた。iPS細胞の樹立は、未分化マーカー(SSEA3、SSEA4、TRA-1-60、TRA-1-81)の発現を免疫染色法により確認し、多能性の確認は免疫不全マウスへの移植によるテラトーマ形成(三胚葉系への分化能力)により行った。老化細胞由来iPS細胞の増殖や形態は、50回以上継代を重ねても、老化前の細胞由来iPS細胞と変わらないことが確認された。マイクロアレイとRNA-Seqによる網羅的遺伝子発現解析、イルミナ社のHumanMethylation27BeadChipを使用したゲノム全領域で27,578のCpGサイトのDNAメチル化解析、H3K4me3、H3K9me3、H3K27me3の抗体によるクロマチン免疫沈降シークエンス(ChIP-Seq)によるゲノムワイドのヒストン修飾解析でも、両者で差はほとんど見られなかった。
KAKENHI-PROJECT-15K06900
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食経験の豊富な納豆菌を利用した食品産業用酵素開発の超高速度化
安全性の担保された納豆菌を生産宿主として利用した酵素高生産ツールを構築する。この技術を用いることで食品産業用酵素の開発の高速度化が期待できる。H28年度は納豆菌株T株より我々が新たに発見したプラスミドDNA(pTHK)の全領域の中で、納豆菌内でプラスミド複製に必要な領域と、複製には必須ではない領域とにグループ分けすることができた。この結果を基盤としてH29年度は同プラスミドの小型化を図った。検討の結果、被複製開始領域と推定できる領域が特定できたことで、元のプラスミドの大きさの約60%の大きさにまで小型化したプラスミドに取得に成功した。好ましいことに、小型化したプラスミドは元のプラスミドよりも納豆菌への導入効率が飛躍的に向上した。続いて、最小化できたプラスミドと大腸菌由来のプラスミドを連結して納豆菌⇔大腸菌シャトルベクターを構築することにも成功した。これらの進捗をもとにしてH30年度は本プラスミドのさらなる応用を検討した。その一つとして納豆菌の性質を改善するためへの納豆菌染色体DNAの改変を検討した。ただし納豆菌株T株のゲノム情報は未だ明らかではないので、先ず納豆菌と分類系統的に近い枯草菌の染色体DNAの改変に本プラスミドが利用できるか試行することとした。その結果、同プラスミドをベクターとして使用した相同性組換え実験により、染色体DNA上への目的遺伝子の導入に成功した。二つ目の応用検討項目として、目的とする酵素を納豆菌で高生産させることを目指し取り組んだ。H29年度に構築できた大腸菌⇔納豆菌シャトルベクターに枯草菌由来のアミラーゼ遺伝子を挿入したプラスミドを構築し、これを納豆菌に導入した。その結果、SDSーPAGE解析で検出できる量の目的アミラーゼの分泌生産ができていることが確認できた。新規プラスミド応用検討の2項目(相同性組換え及び外来酵素遺伝子の発現)が順調に進んでいることから、全体的におおむね順調に進んでいると判断できた。抗生物質耐性遺伝子のみでなく、新規プラスミドを利用して様々な遺伝子を染色体DNA上に効率よく挿入することを試す実験を進める。一方、アミラーゼ以外の他の酵素遺伝子もシャトルベクターに乗せて納豆菌に導入し、それらの目的酵素生産能力を評価する。同時に形質転換効率の高い納豆菌への遺伝子導入法の検討も引き続き実施する。安全性の担保された納豆菌を生産宿主として利用した酵素高生産ツールの完成を目指す。その結果として、食品産業用酵素の開発の高速度化が期待できる。納豆菌T株より申請者が新たに発見したプラスミドDNA(pTHK)の配列・機能解析を進めた。pTHKを鋳型にしてPCRによって様々なプラスミド領域の遺伝子断片を増幅した。これらの遺伝子断片と大腸菌プラスミドベクターとを連結し、構築した各プラスミドが納豆菌で複製するかどうか詳細に調べた。それらの結果からpTHKの全領域の中で、納豆菌内でプラスミド複製に必要な領域と、複製には必須ではない領域とにグループ分けすることができた。このことから、プラスミドpTHKの自立複製必須領域がかなり限定でき、本研究の主目的である酵素高生産ツールの土台構築に向けた重要部分を明らかにできたと考えている。本研究は納豆菌T株を宿主とした酵素高生産ツールを確立することが主目的である。納豆菌T株より申請者が新たに発見したプラスミドDNA(pTHK)を酵素高生産利用に向けて最適化することを最初のステップとして進めている。本年度の解析結果からpTHKの全領域の中で、納豆菌内でプラスミド複製に必要な領域と、複製には必須ではない領域とにグループ分けすることができた。このことから、プラスミドpTHKの自立複製必須領域がかなり限定でき、本研究の主目的である酵素高生産ツールの土台構築に向けた重要部分を明らかにできたと考えられ、おおむね順調に進展していると判断できる。安全性の担保された納豆菌を生産宿主として利用した酵素高生産ツールの完成を目指す。その結果として、これを応用することで食品産業用酵素の開発の高速度化が期待できる。納豆菌株T株より我々が新たに発見したプラスミドDNA(pTHK)の配列・機能解析・応用検討を進める。28年度までにpTHKの全領域の中で、納豆菌内でプラスミド複製に必要な領域と、複製には必須ではない領域とにグループ分けすることができた。この結果を基盤として29年度は同プラスミドの小型化を図った。具体的にはプラスミド上に存在するORF(推定)群の中でどのORFがプラスミドの複製に必要で、どのORFは必要ではないのか繰り返し調査したことで必要なORFが特定され、さらに被複製開始領域と推定できる領域も見い出され、これらの情報を統合することで、元のプラスミドの大きさの約60%の大きさにまで小型化したプラスミドに取得に成功した。好ましいことに、小型化したプラスミドは元来のプラスミドよりも納豆菌への導入効率が飛躍的に向上した。続いて、最小化できたプラスミドと大腸菌由来のプラスミドを連結して納豆菌-大腸菌シャトルベクターを構築することにも成功した。本シャトルベクターを使用すれば、複雑な遺伝子操作は大腸菌を宿主として実施し、完成されたプラスミドを最終的に納豆菌に導入すれば良いことになる。また、本シャトルベクターにGFP遺伝子を導入し、大腸菌内でGFPタンパク質の高生産も確認できた。
KAKENHI-PROJECT-16K07762
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K07762
食経験の豊富な納豆菌を利用した食品産業用酵素開発の超高速度化
納豆菌から発見したプラスミドDNAの機能解析が順調に進み、このプラスミドをより応用しやすいサイズに小型化できた。引き続き遺伝子操作の簡便さを考慮して、大腸菌とのシャトルベクターの構築にも成功した。これらの進捗から、操作性が一段と向上したベクターが構築できていると判断している。安全性の担保された納豆菌を生産宿主として利用した酵素高生産ツールを構築する。この技術を用いることで食品産業用酵素の開発の高速度化が期待できる。H28年度は納豆菌株T株より我々が新たに発見したプラスミドDNA(pTHK)の全領域の中で、納豆菌内でプラスミド複製に必要な領域と、複製には必須ではない領域とにグループ分けすることができた。この結果を基盤としてH29年度は同プラスミドの小型化を図った。検討の結果、被複製開始領域と推定できる領域が特定できたことで、元のプラスミドの大きさの約60%の大きさにまで小型化したプラスミドに取得に成功した。好ましいことに、小型化したプラスミドは元のプラスミドよりも納豆菌への導入効率が飛躍的に向上した。続いて、最小化できたプラスミドと大腸菌由来のプラスミドを連結して納豆菌⇔大腸菌シャトルベクターを構築することにも成功した。これらの進捗をもとにしてH30年度は本プラスミドのさらなる応用を検討した。その一つとして納豆菌の性質を改善するためへの納豆菌染色体DNAの改変を検討した。ただし納豆菌株T株のゲノム情報は未だ明らかではないので、先ず納豆菌と分類系統的に近い枯草菌の染色体DNAの改変に本プラスミドが利用できるか試行することとした。その結果、同プラスミドをベクターとして使用した相同性組換え実験により、染色体DNA上への目的遺伝子の導入に成功した。二つ目の応用検討項目として、目的とする酵素を納豆菌で高生産させることを目指し取り組んだ。H29年度に構築できた大腸菌⇔納豆菌シャトルベクターに枯草菌由来のアミラーゼ遺伝子を挿入したプラスミドを構築し、これを納豆菌に導入した。その結果、SDSーPAGE解析で検出できる量の目的アミラーゼの分泌生産ができていることが確認できた。新規プラスミド応用検討の2項目(相同性組換え及び外来酵素遺伝子の発現)が順調に進んでいることから、全体的におおむね順調に進んでいると判断できた。本研究課題の研究期間内に、納豆菌T株を宿主とした酵素高生産ツールを確立する。具体的には以下の3段階で進めていく。現在は最も時間を要すると想定していた1段階の最終部分を推し進めている。1納豆菌T株より見出されたプラスミドDNA(pTHK)の特徴解析と改良。2産業利用するために必要な遺伝子セットをpTHKプラスミド(上記1で構築したもの)に導入。3宿主としての納豆菌T株の高機能化。先ずは構築が進んでいるベクターに外来遺伝子としてGFP遺伝子を挿入し、構築できたプラスミドDNAを納豆菌に導入し、外来遺伝子(GFP遺伝子)が納豆菌内で安定に保存され、しかも効率よく発現されることを確認する。同時に形質転換効率の高い納豆菌への遺伝子導入法を検討する。さらにGFP遺伝子以外にも納豆菌に糖質分解酵素遺伝子など外来である酵素遺伝子を導入し、酵素の生産を試みる。抗生物質耐性遺伝子のみでなく、新規プラスミドを利用して様々な遺伝子を染色体DNA上に効率よく挿入することを試す実験を進める。
KAKENHI-PROJECT-16K07762
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K07762
無共溶媒液相合成法によるモノリス状シリカ系光学材料の開発
シラン化合物をケイ素源とし、新規なモノリス状(塊状)シリカ系光学材料の合成とその基礎科学の探求を行った。共溶媒をはじめとする必須でない試薬の削減や合成経路の単純化、液相合成法の特徴を生かした構造の精密制御や準安定相の形成などに取り組みつつ、Rayleigh散乱のほとんどない紫外透明REPO4(RE:希土類)ナノ結晶化ガラスおよびこれをベースとした高効率可視・紫外蛍光体、REイオンのクラスタ化したRE-Al共ドープシリカガラス、SiOH基を多量に含み親水的だが硬化しないポリシルセスキオキサン液体およびこれをベースとした紫外透明有機-無機ハイブリッドなどを開発した。本研究の目的は、(1)試薬の使用量削減と合成時間の短縮によるシリカ系材料の低環境負荷液相合成法の開発、(2)現在主流の気相法を凌駕する光機能性シリカガラスの合成と発光・レーザー材料への応用、(3)三官能アルコキシドからのポリシルセスキオキサン(PSQ)液体の生成機構の解明と応用分野の開拓、である。(1)、(2)に関しては、希土類ドープシリカガラスの透明性と発光効率の向上に有用であり、希土類ドープシリカガラスを作製するうえで最も多用される技術である、アルミニウム共ドープ法の開発を行った。合成にあたり、アルミニウム化合物は酸性度が一般に高いため、ゲル化と並行したマクロ相分離を阻害し、乾燥および焼成の容易なマクロ多孔質ゲルを得にくいことが課題となっていた。本年度の研究で、適切なアルミニウム源の選択および反応中のpH調節法の工夫によってこの課題が解決でき、マクロ多孔質ゲルができることを見出した。この結果、希土類-アルミニウム共ドープシリカガラスの合成時間の短縮、アルミニウム添加量の増大、Nd3+ドープシリカガラスにおける透明性と発光効率の向上を行うことができた。(3)に関しては、種々の異なる有機官能基を有する三官能メトキシドから無共溶媒法によってPSQ液体を合成し、その性質を調べた。何種類かの三官能メトキシドからPSQ液体を得ることができた。これらのPSQ液体は、比較的多量のSiOH基を含んでいるにもかかわらず、SiOH基同士の縮合反応は緩慢であり、室温で長時間液体状態を維持できることが分かった。また、エチル基のような紫外域に吸収帯をもたない官能基を含むPSQ液体を熱処理することで、プラスチックに匹敵するほど低密度の深紫外透明PSQガラスが作製できること、反応性基であるチオール基を含むPSQ液体が合成できること、含チオール基PSQ液体はビニル化合物との光架橋反応によってモノリス状ガラスを与えることを示した。本研究の目的は、(1)試薬の使用量削減と合成時間の短縮によるシリカ系材料の低環境負荷液相合成法の開発、(2)現在主流の気相法を凌駕する光機能性シリカガラスの合成と発光・レーザー材料への応用、(3)三官能アルコキシドからのポリシルセスキオキサン(PSQ)液体の生成機構の解明と応用分野の開拓、である。(1)に関しては初年度に基本技術をほぼ確立しているため、本年度は主に(2)と(3)に取り組んだ。(2)に関しては、希土類イオンとリンを等モル比で共ドープしたシリカガラスにおいて、直径数nmの希土類オルトリン酸塩のナノ結晶が析出していることを見出した。この結晶相は高屈折率であり、ホストガラスとの屈折率差が大きいにもかかわらず、粒径が小さいため、得られたガラスではレイリー散乱による光損失が無視できるほどに小さいことが分かった。この結晶相が蛍光灯用の実用緑色蛍光体である(La,Tb,Ce)PO4と同型であることに着目して作製したTb-Ce-P共ドープシリカガラスは、紫外光照射下で前記実用蛍光体の85%に及ぶ高い外部量子効率を示した。本試料は高効率透明紫外蛍光体として有望である。(3)に関しては、合成条件を工夫することによって、出発組成を変えずにPSQ液体の粘度を2桁変化させることができることを見出した。また、比較的低粘度(5000mPas以下)で、その粘度が1ヶ月以上ほぼ一定であるPSQ液体の合成法を確立した。あわせて、得られた試料の各種分光測定を行い、PSQ液体の生成機構およびその粘度の変化に関する基本的な知見を得た。本研究の目的は、(1)試薬の使用量削減と合成時間の短縮によるシリカ系材料の低環境負荷液相合成法の開発、(2)現在主流の気相法を凌駕する光機能性シリカガラスの合成と発光・レーザー材料への応用、(3)三官能アルコキシドからのポリシルセスキオキサン(PSQ)液体の生成機構の解明と応用分野の開拓、である。(1)に関しては初年度に基本技術をほぼ確立しているため、本年度も引き続き主に(2)と(3)に取り組んだ。(2)に関しては、希土類とリンを共ドープしたシリカガラスにおいて、全ランタノイドについて直径数nmの希土類オルトリン酸塩ナノ結晶を含み、かつ粒径が小さいためRayleigh
KAKENHI-PROJECT-24350109
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24350109
無共溶媒液相合成法によるモノリス状シリカ系光学材料の開発
散乱のほぼ無視できるシリカガラスが合成できること、その紫外吸収端は希土類イオンのf-d遷移または電荷移動吸収によって支配されること、La系、Gd系、Ho系、Er系、Lu系、Y系ではこれらの遷移が高エネルギーシフトしているため紫外吸収端が真空紫外域(波長<200nm)まで高エネルギーシフトしていること、希土類イオンとしてGdとPrを共ドープした系で波長313nmのUV-B光を高効率に発光する透明紫外蛍光体が作製できることを見出した。希土類とアルミニウムを共ドープしたシリカガラスにおいて、これまでの定説と異なり、希土類イオンのまわりにAlイオンが選択配位することを見出した。液相法を用いることで、溶融法や気相法等では形成が困難である準安定構造を凍結できた可能性がある。(3)に関しては、PSQ液体の粘度、分子量、NMR測定等の各種物性測定を行い、Siに置換した有機官能基の立体障害がPSQ液体の構造と物性に大きく影響することを明らかにした。また得られたPSQ液体は温度に対して粘度が大きく変化するFragile液体であり、熱可塑性材料として有用である可能性が示された。本研究の目的は、(1)試薬の使用量削減と合成時間の短縮によるシリカ系材料の低環境負荷液相合成法の開発、(2)現在主流の気相法を凌駕する光機能性シリカガラスの合成と発光・レーザー材料への応用、(3)三官能アルコキシドからのポリシルセスキオキサン(PSQ)液体の生成機構の解明と応用分野の開拓、である。(1)の基本技術は初年度にほぼ確立されたため、本年度も引き続き主に(2)と(3)に取り組んだ。(2)に関しては、昨年度見出した(Gd,Pr)PO4ナノ結晶を含有し、Pr3+イオンの4f-5d遷移の光励起によってGd3+イオンが皮膚疾患治療に有用な波長313nmのUVB光を高効率に発する紫外蛍光ガラスの発光効率の希土類組成依存性を調べ、最適な希土類組成はPr3+イオン分率が10%以下であり、この組成域では内部量子効率が0.8と高い値を示すことが分かった。本研究者の知る限り、このガラスは既存のGd3+イオン紫外蛍光体のうちで最も発光効率が良い。また、YbPO4ナノ結晶含有ガラスにフッ素ドープによるSiOH基の除去を施すことでYb3+イオンからの赤外発光効率が顕著に増大すること、Yb3+イオンが近接していることに特有な、励起状態の衝突を経た二光子励起による青色発光が生じることを見出した。(3)に関しては、プロピル基および3-スルファニルプロピル基を有する比較的低粘度(5000mPas)のポリシルセスキオキサン(PSQ)液体が、SiOH基を多量に含んでおり親水的であるにもかかわらず、SiOH基同士が重縮合しにくいため、約2カ月間粘度がほとんど変化しないことを見出した。また、合成時に液-液相分離を起こすメトキシドとこのような分相現象を起こさないエトキシドの両方からほぼ同様の性質を有するPSQ液体が得られることを見出し、液-液相分離はPSQ液体の低粘度化に影響しないことを明らかにした。シラン化合物をケイ素源とし、新規なモノリス状(塊状)シリカ系光学材料の合成とその基礎科学の探求を行った。共溶媒をはじめとする必須でない試薬の削減や合成経路の単純化、液相合成法の特徴を生かした構造の精密制御や準安定相の形成などに取り組みつつ、Rayleigh散乱のほとんどない紫外透明REPO4(RE:希土類)ナノ結晶化ガラスおよびこれをベースとした高効率可視・紫外蛍光体、REイオンのクラスタ化したRE-Al共ドープシリカガラス、SiOH基を多量に含み親水的だが硬化しないポリシルセスキオキサン液体およびこれをベースとした紫外透明有機-無機ハイブリッドなどを開発した。光機能性ガラスの合成に関して、昨年度見出した希土類とリンが直径数nmのナノ結晶を形成する現象は、複数種の異なった作用をもつ希土類イオンを隣接させ、それらの間の高効率なエネルギー移動を利用した発光材料の開発に有用である。
KAKENHI-PROJECT-24350109
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24350109
金属元素の特性を活かした新反応の開発および抗腫瘍性生理活性物質の合成研究
癌治療に対して有効な化学治療法剤の開発は急務であり,新しい抗腫瘍剤の化学合成法の基礎研究を行った.とくに有機金属化合物における金属元素の特性を活かした新反応の開発を主眼として,以下に示す研究を行ない,新しい複素環化合物の高選択的合成法を見出した.1.非安定化アゾメチンイリドの合成とピロリジン誘導体の立体特異的合成反応の開発1, 3-双極子試薬は5負環状複素環化合物を合成するために,簡便かつ効率的な試薬として知られているが,一般に双極子中心を安定化しうる置換基を持つ1, 3-双極子試薬の生成は容易であるが,そうでないものとくに無置換体を得ることは困難であった.今回,トリメチルシリルメチルアミノメチルエーテルを新たに合成し,その反応を検討したところ,有機ケイ素化合物の全く新しい反応である1, 3-脱離反応が円滑に進行し,アゾメチンイリドの無置換体を得ることが出来た.とくにこのようにして得た母体のアゾメチンイリドと種々の活性アルケンと反応して対応する3, 4-二置換および3-置換ピロリジン誘導体を高収率で与える.本反応は完全に立体特異的に進行した.反応はシリルトリフラート,シリルヨージドあるいはグレンステッド酸を解媒として進行し,フッ化セシウムの存在により収率の向上が観察された.2.二硫化炭素から容易に誘導できるケテンジチオアセタールを利用して, DNA合成阻害によって抗癌作用を示すと考えられるピラゾロ〔3, 4-α〕ピリミジン誘導体の一般的合成法を開発すべく,まずチオアミドやメチルジチオカルボキシンレートとテトラエチレンオキシドとの反応により反応性に富む極性エチレン化合物を合成した.これら化合物とグアニジンとの反応よりピリミジン誘導体を得た.癌治療に対して有効な化学治療法剤の開発は急務であり,新しい抗腫瘍剤の化学合成法の基礎研究を行った.とくに有機金属化合物における金属元素の特性を活かした新反応の開発を主眼として,以下に示す研究を行ない,新しい複素環化合物の高選択的合成法を見出した.1.非安定化アゾメチンイリドの合成とピロリジン誘導体の立体特異的合成反応の開発1, 3-双極子試薬は5負環状複素環化合物を合成するために,簡便かつ効率的な試薬として知られているが,一般に双極子中心を安定化しうる置換基を持つ1, 3-双極子試薬の生成は容易であるが,そうでないものとくに無置換体を得ることは困難であった.今回,トリメチルシリルメチルアミノメチルエーテルを新たに合成し,その反応を検討したところ,有機ケイ素化合物の全く新しい反応である1, 3-脱離反応が円滑に進行し,アゾメチンイリドの無置換体を得ることが出来た.とくにこのようにして得た母体のアゾメチンイリドと種々の活性アルケンと反応して対応する3, 4-二置換および3-置換ピロリジン誘導体を高収率で与える.本反応は完全に立体特異的に進行した.反応はシリルトリフラート,シリルヨージドあるいはグレンステッド酸を解媒として進行し,フッ化セシウムの存在により収率の向上が観察された.2.二硫化炭素から容易に誘導できるケテンジチオアセタールを利用して, DNA合成阻害によって抗癌作用を示すと考えられるピラゾロ〔3, 4-α〕ピリミジン誘導体の一般的合成法を開発すべく,まずチオアミドやメチルジチオカルボキシンレートとテトラエチレンオキシドとの反応により反応性に富む極性エチレン化合物を合成した.これら化合物とグアニジンとの反応よりピリミジン誘導体を得た.
KAKENHI-PROJECT-62214012
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62214012
冷間圧延の工具と材料の表層ナノ変形機構と鏡面化技術に関する研究
1)各種のロール研磨方法とロール硫磨粗さを組み合わせ,ステンレス鋼SUS430の冷間圧延における高鏡面化技術として,高光沢性ステンレス鋼板(スーパーブライト材,光沢度950960,表面粗さ0.050.03μmRa)の冷間圧延方法を見い出した.今後は,潤滑油の粘度や圧延条件の選定等の実験解析をして,高光沢性ステンレス鋼板の最適冷間圧延条件を検討する必要がある.2)冷間圧延におけるステンレス鋼板の表層ナノ変形(アスペリティ変形による鏡面化)を支配する要因を,表面粗さ約0.07μmRa以上の範囲において明らかにした.今後は,表面粗さ0.07μmRa以下の範囲において表層ナノ変形を支配する要因や,高光沢性に影響を及ぼす要因を解明する必要がある.3)簡易テンソル化方法によって,異方性材料のvon Mises型構成式を導出した.この導出した式を単軸引張り試験の実験と数値解析によって検証した.今後は,この構成式を冷間圧延の材料歪数値解析モデル(公表済み)に適用して,冷間圧延鋼板の表層変形の数値解析が必要である.4)これらの研究成果は,日本機械学会2002,2003年度年次大会講演で発表し,更に2004年度年次大会講演でも発表予定である.それの内の一報は既に日本機械学会論文集に投稿して掲載が決定されている(平成16年2月,掲載号数は3月3日時点では未連絡).また,その続報は英文投稿の執筆が完了した段階であり,逐次論文投稿の予定である.1)各種のロール研磨方法とロール硫磨粗さを組み合わせ,ステンレス鋼SUS430の冷間圧延における高鏡面化技術として,高光沢性ステンレス鋼板(スーパーブライト材,光沢度950960,表面粗さ0.050.03μmRa)の冷間圧延方法を見い出した.今後は,潤滑油の粘度や圧延条件の選定等の実験解析をして,高光沢性ステンレス鋼板の最適冷間圧延条件を検討する必要がある.2)冷間圧延におけるステンレス鋼板の表層ナノ変形(アスペリティ変形による鏡面化)を支配する要因を,表面粗さ約0.07μmRa以上の範囲において明らかにした.今後は,表面粗さ0.07μmRa以下の範囲において表層ナノ変形を支配する要因や,高光沢性に影響を及ぼす要因を解明する必要がある.3)簡易テンソル化方法によって,異方性材料のvon Mises型構成式を導出した.この導出した式を単軸引張り試験の実験と数値解析によって検証した.今後は,この構成式を冷間圧延の材料歪数値解析モデル(公表済み)に適用して,冷間圧延鋼板の表層変形の数値解析が必要である.4)これらの研究成果は,日本機械学会2002,2003年度年次大会講演で発表し,更に2004年度年次大会講演でも発表予定である.それの内の一報は既に日本機械学会論文集に投稿して掲載が決定されている(平成16年2月,掲載号数は3月3日時点では未連絡).また,その続報は英文投稿の執筆が完了した段階であり,逐次論文投稿の予定である.1.H14年度の研究実績の概要(1)冷間圧延材の表面特性に関する実験解析2種類の研磨紙で表面をランダム研磨,円周方向研磨,軸方向研磨したロールを用いて,ブライト材とスクラッチ材の2種類を冷間圧延し,圧延材の表面特性を画像解析装置等を用いて調査した.その結果,圧延材の表面光沢度は,#120研磨ロールの場合にはランダム研磨が最も大きく,#400研磨ロールの場合には軸方向研磨が大きい.また,表面光沢度はロール表面粗さが大きい冷間圧延の場合には,ロール表面粗さの影響が大きく,ロール表面粗さが小さくなると,圧延材料の接触率(平坦率)に影響されることが判明した.(2)異方性を考慮した弾塑性構成式の導出Hillの異方性降伏曲面式のテンソル表示化を行い,その式から異方性材料の弾塑性構成式を導出した.そして,・単軸引張り変形の寸法変化を数値解析と実験で比較して,導いた構成式の検証を行った.2.H15年度以降の研究計画(1)#800,#1200研磨紙で表面をランダム研磨,円周方向研磨,軸方向研磨したロールを用いて,ブライト材とスクラッチ材を冷間圧延し,圧延材表面特性に及ぼす因子の影響を調査して,圧延材料表面の鏡面化技術を検討する.(2)圧延材断面における表層ナノ変形を画像解析装置で調査し,冷間圧延実験での圧延材の表面特性の結果を考慮して,表層ナノ変形機構と鏡面化機構を検討する.(3)異方性を考慮した弾塑性構成式を冷間圧延の材料断面歪数値解析モデルに適用し,数値解析から表層ナノ変形機構を検討する.1)各種のロール研磨方法とロール研磨粗さを組み合わせ,ステンレス鋼SUS430の冷間圧延における高鏡面化枝術として,高光沢性ステンレス鋼板(スーパーブライト材,光沢度950960,表面粗さ0.050.03μmRa)の冷間圧延方法を見い出した.今後は,潤滑油の粘度や圧延条件の選定等の実験解析をして,高光沢性ステレス鋼板の最適冷間圧延条件を検討する必要がある.2)冷間圧延におけるステンレス鋼板の表層
KAKENHI-PROJECT-14550131
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14550131
冷間圧延の工具と材料の表層ナノ変形機構と鏡面化技術に関する研究
ナノ変形(アスペリティ変形による鏡面化)を支配する要因を,表面粗さ約0.07μmRa以上の範囲において明らかにした.今後は,表面粗さ0.07μmRa以下の範囲において表層ナノ変形を支配する要因や,高光沢性に影響を及ぼす要因を解明する必要がある.3)簡易テンソル化方法によって,異方性材料のvon Mises型構成式を導出した.この導出した式を単軸引張り試験の実験と数値解析によって検証した.今後は,この構成式を冷間圧延の材料歪数値解析モデル(作成・公表済み)に適用して,冷間圧延鋼板の表層変形の数値解析が必要である.4)これらの研究成果は,日本機械学会2002,2003年度年次大会講演で発表し,更に2004年度年次大会講演でも発表の予定である.それらの内の一報は既に日本機械学会論文集に投稿して掲載が決定されている(平成16年2月,掲載号数は3月3日時点では未連絡).また,その続報は英文投稿の執筆が完了した段階であり,逐次論文投稿の予定である.
KAKENHI-PROJECT-14550131
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14550131
二次元グラニュラー磁性薄膜のスピン依存トンネル伝導の制御と能動素子の開発
Co-SiO_2グラニュラー膜の低次元分散型トンネル磁気抵抗効果i)2次元分散型グラニュラー膜の面内電流(CIP)型トンネル磁気抵抗効果:磁気抵抗(MR)比は温度の低下とともに減少する.これは,低温ではトンネル確率が減少し,スピン散乱確率が上まるためであると推測された.ii)パターンド2次元分散型CIP-TMR特性:リソグラフィーを用いて,幅20mm,厚さ,20nmおよび40nmの細線を作製し,その伝導特性を調べた.クーロンブロッケイドに起因する非線形電流-電圧特性が観測された.MR比は非常に小さく,170Kで最大値0.1%を示し,温度の減少とともに小さくなる.iii)擬似1次元CPP型グラニュラー膜の作製とそのTMR特性:Co-SiO_2グラニュラー膜をSiO2層を挟んだ3層構造で,SiO2ピンホールを利用した擬似的1次元グラニュラー構造を形成し,伝導特性の印加電圧依存性および温度依存性を調べた.クーロンブロッケイド効果またはトンネル活性化エネルギーの電圧依存性の効果により,非線形な電圧-電流特性が現れた.MR比は,バイアス電圧の増加とともに,MR比は減少する.2.半導体/強磁性膜の磁気特性と伝導特性の研究多孔質Siの孔にCoを埋めることにより,Siの正常MR効果を強磁性Coにより強調する可能性がある.これを確認する目的で,多孔質Si基板上にスパッタ法および蒸着法によりCo膜を堆積させたものについて磁気特性とMR特性を調べた.磁気特性は,垂直磁気異方性を示し,その異方性エネルギーはCo層厚が250nmで最大になる.Co層厚が10nmのとき,正常MRが強調されることが分かったが,その再現性に問題があり,現在検討中である.3.新奇な強磁性半導体の創製と磁気伝導特性の研究GaAs基板上にスパッタ法でCo膜を作製し,Xe^+イオン照射によりCoをGaAs結晶内に打込んだ.これにより,新たな強磁性半導体を作製することに成功した.大きな異常ホール効果が検出されたが,MR比の大きなものは現時点では得られていない.今後の研究課題である.4.交互蒸着Co-Bi膜の磁気伝導特性の研究Co組成が17%体積比のとき,ホール効果は大きな温度依存性を示し,150Kで極性が反転することを発見した.また,このとき室温で純Coに比べてかなり大きなホール効果を示す.Co-SiO_2グラニュラー膜の低次元分散型トンネル磁気抵抗効果i)2次元分散型グラニュラー膜の面内電流(CIP)型トンネル磁気抵抗効果:磁気抵抗(MR)比は温度の低下とともに減少する.これは,低温ではトンネル確率が減少し,スピン散乱確率が上まるためであると推測された.ii)パターンド2次元分散型CIP-TMR特性:リソグラフィーを用いて,幅20mm,厚さ,20nmおよび40nmの細線を作製し,その伝導特性を調べた.クーロンブロッケイドに起因する非線形電流-電圧特性が観測された.MR比は非常に小さく,170Kで最大値0.1%を示し,温度の減少とともに小さくなる.iii)擬似1次元CPP型グラニュラー膜の作製とそのTMR特性:Co-SiO_2グラニュラー膜をSiO2層を挟んだ3層構造で,SiO2ピンホールを利用した擬似的1次元グラニュラー構造を形成し,伝導特性の印加電圧依存性および温度依存性を調べた.クーロンブロッケイド効果またはトンネル活性化エネルギーの電圧依存性の効果により,非線形な電圧-電流特性が現れた.MR比は,バイアス電圧の増加とともに,MR比は減少する.2.半導体/強磁性膜の磁気特性と伝導特性の研究多孔質Siの孔にCoを埋めることにより,Siの正常MR効果を強磁性Coにより強調する可能性がある.これを確認する目的で,多孔質Si基板上にスパッタ法および蒸着法によりCo膜を堆積させたものについて磁気特性とMR特性を調べた.磁気特性は,垂直磁気異方性を示し,その異方性エネルギーはCo層厚が250nmで最大になる.Co層厚が10nmのとき,正常MRが強調されることが分かったが,その再現性に問題があり,現在検討中である.3.新奇な強磁性半導体の創製と磁気伝導特性の研究GaAs基板上にスパッタ法でCo膜を作製し,Xe^+イオン照射によりCoをGaAs結晶内に打込んだ.これにより,新たな強磁性半導体を作製することに成功した.大きな異常ホール効果が検出されたが,MR比の大きなものは現時点では得られていない.今後の研究課題である.4.交互蒸着Co-Bi膜の磁気伝導特性の研究Co組成が17%体積比のとき,ホール効果は大きな温度依存性を示し,150Kで極性が反転することを発見した.また,このとき室温で純Coに比べてかなり大きなホール効果を示す.スパッタ法でFe-SiO_2グラニュラー膜およびFe-SiO_2/SiO_2積層膜を作製し,その磁気特性,抵抗率およびスピン依存トンネル効果の膜厚依存性とSiO_2層厚依存性を詳細に調べた.結果を以下に要約する.I)
KAKENHI-PROJECT-12650314
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二次元グラニュラー磁性薄膜のスピン依存トンネル伝導の制御と能動素子の開発
単層膜(43.7vol.%Fe)の場合,抵抗率は膜厚に殆ど依存せず約20Ωcmであったが,磁化Mは膜厚が1500nmから60nmに減少したとき,920emu/cm^3から250emu/cm^3まで減少する.また,この変化に対応して磁気抵抗比(MR比)も3.2%から1.6%まで減少する.i)面内に電流を流したとき(CIP),このxの変化に対し,抵抗率は16Ωcmから1x10^3Ωcmまで増加する.しかし,トンネル活性化エネルギーCとMR比はxに殆ど依存せず,C=0.16eVと1.4%であった.これらの値は2次元分散型グラニュラー膜の特性を示すものである.ii)膜面に垂直に電流を流したとき(CPP),抵抗率はxとバイアス電圧に大きく依存する.特に,バイアス依存性はトンネル効果を如実に示すものである.また,xが0.5nmから2nmまで増加したとき,抵抗率は10^6倍に増加し,xの増加によりトンネル障壁が増加することを示している.III)磁化Mが膜厚およびSiO_2層厚とともに変化する原因を調べるために,磁化曲線をランジュバン関数を用いて解析した.このよなMの変化はFe粒子の磁気モーメントが膜厚や層厚によって変化するためであるという知見を得た.IV)上記多層膜のCPP特性の測定において,電極にはCrAu非磁性合金膜を用いた.続いて,スピンバルブ効果を調べる目的で,軟磁性NiFe合金および半較磁性Co膜を用いたときのMR特性を調べた.この場合,低磁場でスピンバルブ効果に対応するMR曲線が得られた.しかし,そのMR比は小さく今後の課題である.1.Fe-SiO_2グラニュラー膜の構造解析昨年度は,Fe-SiO_2グラニュラー膜をスパッタ法で作製し,その磁気特性とトンネル磁気抵抗効果の膜厚依存性を詳細に調べ,膜厚の減少とともに磁化が減少することを見い出した.本年度はその原因を明らかにするために,CEMSおよびESCAを用いて構造解析を行った.膜厚の減少とともにFeの酸化または珪酸化が起きていることを明らかにした.この酸化または珪酸化は基板温度が低いときに起きることが推測された.2.Co-SiO_2グラニュラー膜の2次元分散型トンネル磁気抵抗効果i)MR比の膜厚依存性:MR比は膜厚が20nmのとき最も大きく,膜厚の減少とともに小さくなる,しかし,SiO_2バッファ層の上に堆積させると,膜厚3nmすなわちFe粒径と同程度で2次元分散型構造においても20nmの膜厚の場合と同程度のMR比が得られる.10nm以上の3次元分散型の場合,MR比は温度の低下とともに増加するが,2次元分散型の場合は減少することを明らかにした.ii)CPP型TMR特性:2次元分散型Co-SiO_2膜をSiO_2層を挟んで4層または19層積層した膜の面に垂直に電流を流したときのトンネル磁気抵抗効果(CPP-TMR)を調べた.3次元型膜のCPP-TMRの場合と同様に,温度の低下とともにMR比は増加する.また,バイアス電圧の減少とともに,MR比は増加することを明らかにした.CoとBiを交互に蒸着して幅広い組成のCoBi膜を作製し,その磁気特性および伝導特性を組成および温度の関数として調べた.Biの多い領域では正常磁気抵抗効果と正常ホール効果が重畳されている.Coの量が増えると,異方的磁気抵抗効果と異常ホール効果が支配的になる.特に,17Vol%Coのとき,異常ホール効果の符号が150Kを境に変化する.すなわち,低温では負になり,高温では正になる.また,その温度係数は非常に大きく,室温でのホール定数は純Coの値の10倍以上の大きな値を示す.1.Co-SiO_2グラニュラー膜の低次元分散型トンネル磁気抵抗効果i)2次元分散型グラニュラー膜の面内電流(CIP)型トンネル
KAKENHI-PROJECT-12650314
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EBV潜伏感染Bリンパ球細胞株における溶解感染誘導と宿主細胞周期制御機構の解析
Epstein-Barr Virus(EBV)が潜伏感染するがん細胞でウイルス産生感染へ移行すると、RB蛋白質は高リン酸化状態になりCyclinA(E)/CDK2の活性が維持されウイルスゲノム合成に適したS期様細胞環境となる。しかし宿主DNA複製は停止する。宿主DNA複製開始のライセンス化はMCM複合体を含む複製開始複合体群が複製開始点付近に結合し行われている。このライセンス化は主に4つの標的(ORC,Cdc6,Cdt1,MCM)がリン酸化を受け阻害される。MCM複合体はMCM2-7までの6つのサブユニットから構成され、特にMCM4-6-7からなる3量体にはDNA Helicase(unwind)活性があることが知られる。我々はEBV溶解感染進行に伴いMCM4の不活化部位(Thr-19,Thr-110)がリン酸化されることを見出した。このリン酸化はEBVBGLF4蛋白質キナーゼによってin vitroでもHeLa細胞での単独発現系でも起きることが解った。また、HeLa細胞へのトランスフェクション解析の結果BGLF4タンパク質発現は細胞増殖を抑えた。MCM4-6-7から構成される6量体の持つDNAヘリカーゼ活性はBGLF4蛋白質共存在化では抑制された。以上から、EBV溶解感染期にBGLF4蛋白質がMCM4をリン酸化しMCM複合体を不活化することで、宿主DNA複製開始が阻害されることが示唆された。多細胞生物は細胞周期を通してゲノムDNAの損傷や複製障害をDNA損傷チェックポイント制御機構で監視している。本年度は、Epstein-Barr Virus (EBV)溶解感染期にウイルスゲノム複製が、DNA損傷チェックポイント機構に与える影響を解析した。ATMやATRはプロテインキナーゼで、DNA損傷によって活性化され下流分子をリン酸化する。EBV溶解感染を誘導した細胞では、ATMが自己リン酸化するATMのSer-1981がリン酸化され、ATM下流であるChk2のThr-68がリン酸化されていた。一方で、ATR経路の標的であるChk1のSer-345のリン酸化は認められなかった。ATM経路はDNA二本鎖切断部位で、ヒストンH2AXのSer-139をリン酸化する。このDNA損傷部位には、Mre11-Rad50-Nbs1複合体がフォーカスを形成することが知られる。溶解感染誘導後は、ヒストンH2AXのSer-139のリン酸化が認められ、細胞核内でEBVゲノムとATMの活性型が共局在し、Nbs1やMre11がEBV複製領域上に局在した。よって、EBVゲノム複製はATM経路を活性化させる構造を持つことが推察される。チェックポイント制御では、p53たんぱく質の安定化による蓄積が重要である。溶解感染誘導後の細胞では、p53のSer-15のリン酸化が確認されたが、p53の蓄積や、下流であるp21^<waf1/cip1>の誘導も認められなかった。また、EBV溶解感染誘導系を用いた解析から、BZLF1とp53が免疫沈降により共沈すること、EBV複製領域上にBZLF1とp53が共局在することがわかった。以上により、溶解感染期におけるATM-Chk2-p53経路によるシグナルは、BZLF1たんぱく質がp53と結合することで阻害され、EBVゲノム由来遺伝子産物の発現に有利にCDK活性が保たれるのである。Epstein-Barr Virus(EBV)が潜伏感染するがん細胞でウイルス産生感染へ移行すると、RB蛋白質は高リン酸化状態になりCyclinA(E)/CDK2の活性が維持されウイルスゲノム合成に適したS期様細胞環境となる。しかし宿主DNA複製は停止する。宿主DNA複製開始のライセンス化はMCM複合体を含む複製開始複合体群が複製開始点付近に結合し行われている。このライセンス化は主に4つの標的(ORC,Cdc6,Cdt1,MCM)がリン酸化を受け阻害される。MCM複合体はMCM2-7までの6つのサブユニットから構成され、特にMCM4-6-7からなる3量体にはDNA Helicase(unwind)活性があることが知られる。我々はEBV溶解感染進行に伴いMCM4の不活化部位(Thr-19,Thr-110)がリン酸化されることを見出した。このリン酸化はEBVBGLF4蛋白質キナーゼによってin vitroでもHeLa細胞での単独発現系でも起きることが解った。また、HeLa細胞へのトランスフェクション解析の結果BGLF4タンパク質発現は細胞増殖を抑えた。MCM4-6-7から構成される6量体の持つDNAヘリカーゼ活性はBGLF4蛋白質共存在化では抑制された。以上から、EBV溶解感染期にBGLF4蛋白質がMCM4をリン酸化しMCM複合体を不活化することで、宿主DNA複製開始が阻害されることが示唆された。
KAKENHI-PROJECT-04J05815
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NMDA拮抗薬,α2作動薬による脳・脊髄微小血管反応のウインドー法を用いた検討
従来の研究においては,各種薬物の脳・脊髄血管に対する単独の作用は詳細に検討されているが,他の薬物との相互作用や生理的変化との相互作用については充分に検討されていない。そこで,下記研究を行った。(1)α2アゴニストならびにNMDA拮抗薬の直接の脳・脊髄血管の反応性の検討雑種成犬を対象として,静脈路を確保後,ペントバルビタールの静脈内投与で麻酔を維持し有窓(closed window)を作製することによって脳脊髄軟膜血管を直接観察した。α2アゴニストであるクロニジンあるいはデキサメデトミジンは脳血管・脊髄血管に異なる影響を示し,エピネフリンやフェニレヒリンに比べて,脳血管ではより収縮性を示し,逆に脊髄血管では収縮性が弱かった。日本白色兎を対象として,同様に有窓を作製することによって脳軟膜血管を直接観察した。NMDA拮抗薬であるケタミンは従来の報告と異なり,脳血管を拡張しなかった。一方吸入麻酔薬であるセボフルレン,イソフルレンの血管拡張作用を抑制し,また炭酸ガスに対する脳血管の反応性も抑制することがわかった。(2)α2アゴニストのくも膜下投与時の動脈血炭酸ガス分圧変動に対する反応性の検討同様のモデルを作成後,下部腰椎からくも膜下にカテーテルを挿入し,α2アゴニスト(デキサメデトミジン,クロニジン)を投与し,試験薬投与ルートとする。コントロール群には人工髄液をくも膜下に投与し,高炭酸ガス血症に対する反応性の検討した。腰部くも膜下に投与されたα2アゴニストは脳血管の高炭酸ガス血症に対する脳血管拡張は抑制したが,低酸素血症に対する脳血管の拡張性には影響を与えなかった。この機序を明らかにするために,コリンエステラーゼ阻害薬であるネオスティグミンを同時投与し同様の実験を行った。ネオスティグミンによってα2アゴニストの脳血管の高炭酸ガス血症に対する脳血管拡張の抑制は一部拮抗された。従来の研究においては,各種薬物の脳・脊髄血管に対する単独の作用は詳細に検討されているが,他の薬物との相互作用や生理的変化との相互作用については充分に検討されていない。そこで,下記研究を行った。(1)α2アゴニストならびにNMDA拮抗薬の直接の脳・脊髄血管の反応性の検討雑種成犬を対象として,静脈路を確保後,ペントバルビタールの静脈内投与で麻酔を維持し有窓(closed window)を作製することによって脳脊髄軟膜血管を直接観察した。α2アゴニストであるクロニジンあるいはデキサメデトミジンは脳血管・脊髄血管に異なる影響を示し,エピネフリンやフェニレヒリンに比べて,脳血管ではより収縮性を示し,逆に脊髄血管では収縮性が弱かった。日本白色兎を対象として,同様に有窓を作製することによって脳軟膜血管を直接観察した。NMDA拮抗薬であるケタミンは従来の報告と異なり,脳血管を拡張しなかった。一方吸入麻酔薬であるセボフルレン,イソフルレンの血管拡張作用を抑制し,また炭酸ガスに対する脳血管の反応性も抑制することがわかった。(2)α2アゴニストのくも膜下投与時の動脈血炭酸ガス分圧変動に対する反応性の検討同様のモデルを作成後,下部腰椎からくも膜下にカテーテルを挿入し,α2アゴニスト(デキサメデトミジン,クロニジン)を投与し,試験薬投与ルートとする。コントロール群には人工髄液をくも膜下に投与し,高炭酸ガス血症に対する反応性の検討した。腰部くも膜下に投与されたα2アゴニストは脳血管の高炭酸ガス血症に対する脳血管拡張は抑制したが,低酸素血症に対する脳血管の拡張性には影響を与えなかった。この機序を明らかにするために,コリンエステラーゼ阻害薬であるネオスティグミンを同時投与し同様の実験を行った。ネオスティグミンによってα2アゴニストの脳血管の高炭酸ガス血症に対する脳血管拡張の抑制は一部拮抗された。NMDA拮抗薬(ケタミン)の全身投与および局所(window内)においての脳血管の反応性に関して検討を行った。ケタミンは,脳保護作用を期待されているが,一般に脳血流増加・脳圧亢進作用を有するといわれており,脳神経外科領域での使用が疑問視されている。しかし,静脈麻酔(ネンブタール),吸入麻酔薬(イソフルレン)による全身麻酔・調節呼吸下では脳血管拡張作用は示さず,従来の報告とは異なることが判明した。このことは,ケタミンの脳神経外科領域へ使用の可能性を示唆するものと思われる。また,α2作動薬の脳・脊髄血管への直接作用および脊髄くも膜下腔への投与の際の脳血管の反応性について検討した。α2作動薬(デキサメデトミジン)は,脳・脊髄血管共に用量依存性に血管収縮を起こすが,その程度は脳血管でより明らかであり,他のアドレナリン受容体作動薬(エピネフリン,フェニレフリン)に比較して,脊髄血管では程度は弱いことが判明した。このことは,くも膜下投与された場合の脊髄血管への安全性に関しては従来局所麻酔薬の添加物として使用されているエピネフリン,フェニレフリンに比べて影響が少なくより安全であることを示唆するものと思われる。更に,α2作動薬(デキサメデトミジン)の脊髄くも膜下腔への投与の際の高炭酸ガス血症および低酸素血症に対する脳血管の反応性を検討した。デキサメデトミジンの脊髄
KAKENHI-PROJECT-09671555
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09671555
NMDA拮抗薬,α2作動薬による脳・脊髄微小血管反応のウインドー法を用いた検討
くも膜下腔投与によって炭酸ガスへの反応性(脳血管拡張)は減少し,この脳血管反応の抑制はヨヒンビン(α2拮抗薬)で拮抗されることから,炭酸ガス負荷に伴う脳血管拡張の抑制はα2レセプタを介するものであることが判明した。更に,低酸素血症による脳血管拡張はデキサメデトミジンによって影響を受けないところから,脳血管拡張における高炭酸ガス血症および低酸素血症の機序が異なることが明らかになった。従来の研究においては,spinal analgesicsの鎖痛に関する研究が殆どであり,鎮痛以外の作用,安全性に対する研究は充分になされていない。そこで、下記研究を行った.(1) NMDA拮抗薬、α2アゴニストの直接の脳・脊髄血管に対する反応性の検討雑種成犬を対象として,静脈路を確保後,ペントバルビタールの静脈内投与で麻酔を雑持し,有窓(closedwindow)を作製することによって脳脊髄軟膜血管を直接観察した.NMDA拮抗薬であるケタミンは従来の報告と異なり,脳血管を拡張しなかった.一方,α2アゴニストであるクロニジンあるいはデキサメデトミジンは脳血管・脊髄血管に異なる影響を示し,エピネフリンやフェニレヒリシに比べて,脳血管ではより収縮性を示し,逆に脊髄血管では収縮性が弱かった.(2) NMDA拮抗薬、α2アゴニストのくも膜下投与時の動脈血炭酸ガス分圧変動および動脈血酸素含量に対する反応性の検討.同様のモデルを作成後、下部腰椎からくも膜下にカテーテルを挿入し,α2アゴニストであるデキサメデトミジシを投与し,試験薬投与ルートとする。コントロール群には人工髄駅をくも膜下に投与し,高炭酸ガス血症および低酸素血症に対する反応性の検討した.腰部くも膜下に投与されたデキサメデトミジンは脳血管の高炭酸ガス血症に対する脳血管拡張は抑制したが,低酸素血症に対する脳血管の拡張性には影響を与えなかった.(3)疼痛治療に使用される局所麻酔薬の脊髄血管への安全性同様のモデルを作成後,血管収縮作用のあるロピバカインを脊髄有窓内へ投与し、動脈血炭酸ガス分圧変動の際の脊髄血管への影響を検討したが、低炭酸ガス血症に対する血管収縮は抑制されており、より脊髄虚血を招くことはないことが確認された.従来の研究においては,各種薬物の脳血管に対する単独の作用は詳細に検討されているが,他の薬物との相互作用や生理的変化との相互作用については充分に検討されていない。そこで,下記研究を行った。(1)NMDA拮抗薬の直接の脳血管の反応性の検討日本白色兎を対象として,静脈路を確保後,ペントバルビタールの静脈内投与で麻酔を維持し,有窓(closed window)を作製することによって脳軟膜血管を直接観察した.NMDA拮抗薬であるケタミンは従来の報告と異なり,脳血管を拡張しなかった.一方吸入麻酔薬であるセボフルレン,イソフルレンの血管拡張作用を抑制し,また炭酸ガスに対する脳血管の反応性も抑制することがわかった。(2)α2アゴニストのくも膜下投与時の動脈血炭酸ガス分圧変動に対する反応性の検討.同様のモデルを作成後,下部腰椎からくも膜下にカテーテルを挿入し,α2アゴニストであるクロニジンを投与し,試験薬投与ルートとする。コントロール群には人口髄液をくも膜下に投与し,高炭酸ガス血症に対する反応性の検討した.腰部くも膜下に投与されたクロニジンは脳血管の高炭酸ガス血症に対する脳血管拡張は抑制した。この機序を明らかにするために,コリンエスラーゼ阻害薬であるネオスティグミンを同時投与し同様の実験を行った。
KAKENHI-PROJECT-09671555
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ミニマル肝性脳症に対するL-カルニチンの効果に関する基礎的・臨床的研究
臨床的研究成果:1肝硬変(LC)患者の血清カルニチン(CA)動態、二次性CA欠乏症の頻度(11%)、腎機能(クレアチニン、推定糸球体濾過率)との相関、血清遊離脂肪酸濃度との関連を明らかにした。2ミニマル肝性脳症(MHE)の合併率、MHEの臨床的背景・生化学検査値の特徴を明らかにし、予測バイオマーカーを探索した。3LC患者14例にL-CA製剤を3か月間経口投与し約46%に血液アンモニア濃度の低下を認めた。基礎的研究成果:正常ヒトアストロサイトを用いてアンモニア負荷に対するL-CAの影響をメタボローム解析より検討し、BCAAを含むアミノ酸代謝異常の是正が細胞障害性を改善する可能性を示した。臨床研究:1肝硬変患者の血清カルニチン(CA)動態を測定し、血清総CAに占めるアシル-CAの割合が血清遊離脂肪酸(FFA)濃度と正相関することを明らかにし、血清FFA濃度が日常診療で測定出来ない血清CAの代替マーカーになりうる可能性を指摘した(業績文献参照)。2肝硬変に伴うミニマル肝性脳症(MHE)に対して栄養治療がその改善に有効であることを多施設共同研究より明らかにした(業績文献参照)。3肝硬変例に対して精神神経機能検査を新たに施行してMHEの診断を行うとともに血清CA動態を測定し、その関連性を検討中である。また、MHEと診断された例に対しては研究計画の説明を行い文章による同意を得られた例に対してCAの投与を開始した。基礎的検討:正常ヒトアストロサイトを購入・培養して最適な実験条件を確立した。また、大塚製薬株式会社よりL-CAの供与を受けるため学内の手続きを得て入手した。実験方法として、正常ヒトアストロサイト培養4時間後に塩化アンモニウム(10μM)およびL-CA(2.5μg/ml)を細胞に単独および混合添加し、2時間後にLDHの放出を測定、24時間後に細胞の生存状態をサイトカイン動態、シグナル分子のリン酸化及びWestern blot法で評価した。結果として、L-CAはアンモニアによる細胞毒性を改善する可能性を示唆する成績が得られた。しかし、添加するアンモニア濃度や再現性の問題があり、次年度以降に再検討することとした。また、L-CAはアストロサイトにおけるブドウ糖の取り込みを改善する可能性も示唆された。1.臨床研究:外来通院中の肝硬変患者36例に精神神経機能検査(NPテスト)を施行し、ミニマル肝性脳症(MHE:NCT-A, NCT-B, DST, BDTのうち2項目以上に異常を認める例)の有無を判定し、MHEの診断に有用なバイオマーカーを明らかにするため統計学的に解析した。結果として、MHEの罹患率は27.6%であり、MHE予測バイオマーカーとして血漿アンモニア濃度が最も有用であり、次いで血清アシルカルニチン/総カルニチン比が選択された(平成27年度第51回日本肝臓学会総会発表予定、英文論文準備中)。また、高アンモニア血症を伴う肝硬変患者(MHE合併例も含む)についてL-カルニチンを投与し、その臨床効果を確認する臨床研究を開始している。2.基礎的研究:平成25年度の研究では、正常ヒトアストロサイトに対するアンモニアの細胞毒性および細胞増殖抑制作用に対するL-カルニチンの改善効果を示したが、平成26年度はL-カルニチンの作用機序をメタボローム解析を用いて行った。結果として、アンモニア添加群ではアミノ酸代謝、脂肪酸代謝、炭水化物代謝のいずれにも異常をもたらし、とくにBCAA代謝の障害とともに神経障害作用をもつす4/3-Methyl-2-oxovaleric acidの増加と神経細胞保護作用をもつo-Acetylcarnitineの減少を示したが、L-カルニチンの添加によりこれらの変化が改善された。L-カルニチンの作用機序に関する新知見と考えられる。臨床研究成果:1肝硬変(LC)患者の多くは、血清カルニチン(CA)濃度(総、T-CA;遊離型、F-CA;アシル型、Ac-CA)は基準値域内にあり、約11%が低値であった。2血清CA濃度は肝機能、肝の重症度(Child-Pugh分類)、MELDスコアと相関せず、腎機能(Cr、eGFR)に影響を受け、Ac-CA/T-CA比は血清遊離脂肪酸濃度と正相関を示した。3ミニマル肝性脳症(MHE)例は、非MHE例に比し有意にアンモニア(B-NH3)濃度と血清Cr値が高値、eGFRは低値であった平成27年度最終結果、英文論文作成中。4MHE合併を含むLC患者にL-CA製剤を投与して投与前後で血液B-NH3濃度などの変化をみたが、症例数が少なく最終的な結論は得られなかった平成27年度実施。基礎的研究成果:正常ヒトアストロサイトに塩化アンモニウム(10mM)単独及びL-CA(25ug/ml)を同時添加し4時間目の細胞障害(LDH放出量で評価)、ROSの産生、細胞内代謝変化をメタボローム解析した。1塩化アンモニウムによる細胞障害はL-CA添加により回復し、ROSの産生は低下した。2メタボローム解析では、塩化アンモニウム投与により多くのアミノ酸が有意に増加したが、L-CA添加により対照群と同程度まで低下した。また、BCAAの代謝産物で神経毒を有する4-metyl-2-oxpvalic acid、3-metyl-2-oxovaleric acidは塩化アンモニウム投与で有意に増加し、L-CA添加により有意に低下した。
KAKENHI-PROJECT-25461009
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ミニマル肝性脳症に対するL-カルニチンの効果に関する基礎的・臨床的研究
4CAの代謝産物であるO-Acetylcarnitnineは塩化アンモニウム投与で低下し、L-CA添加により回復した平成27年度の結果、論文準備中。アンモニア代謝とCAとの関連性の検討には、アストロサイトと肝細胞あるいは骨格筋細胞での代謝動態の差異を検討する必要がある。臨床的研究成果:1肝硬変(LC)患者の血清カルニチン(CA)動態、二次性CA欠乏症の頻度(11%)、腎機能(クレアチニン、推定糸球体濾過率)との相関、血清遊離脂肪酸濃度との関連を明らかにした。2ミニマル肝性脳症(MHE)の合併率、MHEの臨床的背景・生化学検査値の特徴を明らかにし、予測バイオマーカーを探索した。3LC患者14例にL-CA製剤を3か月間経口投与し約46%に血液アンモニア濃度の低下を認めた。基礎的研究成果:正常ヒトアストロサイトを用いてアンモニア負荷に対するL-CAの影響をメタボローム解析より検討し、BCAAを含むアミノ酸代謝異常の是正が細胞障害性を改善する可能性を示した。臨床研究において、肝硬変に伴うミニマル肝性脳症の予測因子(バイマーカー)として血漿アンモニア濃度および血清アシルカルニチン/総カルニチン比の二つが有力な候補であることが明らかとなった。このことは本研究においてL-カルニチン投与がミニマル肝性脳症を改善する可能性を示唆する結果と考えており、今後の成果を期待している。L-カルニチン投与による臨床試験において症例の登録が若干遅れていることが唯一の課題である。一方、基礎的研究では、メタボローム解析という新たな手法により、アンモニアによる正常ヒトアストロサイトに対する障害作用がL-カルニチンによってキャンセルされるという新たな知見を得た。現在、論文化に向けて準備中である。肝臓病学平成27年度中に臨床研究をさらに推進し、L-カルニチン療法のミニマル肝性脳症および高アンモニア血症に対する有効性を明らかにする。臨床研究:ミニマル肝性脳症と診断された肝硬変例に対するCAの臨床効果を初年度に5例予定していたが、実際にはプロトコールに合致する症例が少なく、平成26年度に入り2例が登録されている状況である。しかし、新たに肝硬変例に対する精神神経機能検査を施行し、ミニマル肝性脳症と診断された例に対して、血清カルニチン動態、血清亜鉛、アンモニア、アミノ酸(BTR)の面より再度検討中であり、ミニマル肝性脳症の症例も順調に集まっている。基礎的検討:正常ヒトアストロサイトにアンモニアを添加した際のメタボローム解析を行う予定であったが、至適アンモニア濃度あるいは測定時間を決定することができなかったため本年度は断念した。平成26年度施行の予定で実験の準備を進めている。予算に計上した学会旅費を使用しなかったために生じたものである。臨床研究:1ミニマル肝性脳症と診断された肝硬変例に対するL-CAの臨床効果に対する評価を行うために必要な症例数を集める。2ミニマル肝性脳症と診断された例の特徴・病態をカルニチン動態を含めて検討し、論文化する。基礎的検討:正常ヒトアストロサイトに添加するアンモニア濃度は5μmolとして、引き続き実験を行い、L-CA添加による影響を明らかにするとともに培養液も回収してメタボローム解析を行う。最終年度に学会旅費または英文校正費用の一部として使用する予定である。基礎的検討において、当初予定されていた基礎的検討においてメタボローム解析を行わなかったため。
KAKENHI-PROJECT-25461009
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胃乳頭状腺癌における臨床病理学的および分子病理学的解析
胃乳頭状腺癌は管状腺癌とともに分化型腺癌に分類されているが、両者は異なる臨床病理学的特徴を示す。したがって、両者は異なる分子生物学的特徴を有することが推測されるが、胃癌における分子病理学的解析は管状腺癌を中心に行われており、乳頭状腺癌については充分な検討がなされていない。一般的に癌における分子病理学的異常の差異は癌の生物学的病態と関連することから、癌の分子異常の確立は患者の治療を決定する上でも重要である。そこで、本研究では胃乳頭状腺癌の分子異常の特徴を明らかにし、分子病型を確立することを目的としている。現在、胃乳頭状腺癌63例に対する解析が完了しているが、MSIを示した症例は63例中10例(15.9%)と過去の報告とほぼ同じ頻度であった。胃乳頭状腺癌では、MSSおよびMSIの両者で胃型粘液形質を示す症例が多く、共通の特徴と思われた。MSS型乳頭状腺癌では(1) p53蛋白過剰発現、(2) HER2過剰発現、(3)高LOH状態、および(4)低メチル化状態の頻度がMSI型癌と比べ、高かった。これらの結果より、MSS型乳頭状腺癌は生物学的悪性度が高い可能性が示唆されるが、今後症例数を蓄積して検討する必要があると思われた。また、通常型の胃管状腺癌との差異も充分に明らかではなく、今後の検討が必要と考えた。加えて、現時点での解析は浸潤癌を中心に行われているが、腫瘍発生に関連する分子異常の確立のためには早期病変における解析が必要であり、内視鏡的切除症例についての検討も行う予定である。分子解析に関しては、過去に切除された症例のパラフィンブロックから抽出したDNAを用いての解析が可能であり、症例の蓄積が滞りなく行えている。最終的な解析予定症例数は100例であり、引き続き症例数の蓄積が必要と考えられる。症例数のさらなる蓄積を行い、胃乳頭状腺癌と通常型胃管状腺癌との比較を行うことで、胃乳頭状腺癌の分子病型の確立を行う予定である。解析予定症例数は100例を目標としており、さらなる症例の抽出、蓄積が必要である。加えて、胃乳頭状腺癌の腫瘍発生に関連する分子異常の検討のため、内視鏡切除標本を用いた早期病変についても解析を同様に行う予定である。胃乳頭状腺癌は管状腺癌とともに分化型腺癌に分類されているが、両者は異なる臨床病理学的特徴を示す。したがって、両者は異なる分子生物学的特徴を有することが推測されるが、胃癌における分子病理学的解析は管状腺癌を中心に行われており、乳頭状腺癌については充分な検討がなされていない。一般的に癌における分子病理学的異常の差異は癌の生物学的病態と関連することから、癌の分子異常の確立は患者の治療を決定する上でも重要である。そこで、本研究では胃乳頭状腺癌の分子異常の特徴を明らかにし、分子病型を確立することを目的としている。現在、胃乳頭状腺癌63例に対する解析が完了しているが、MSIを示した症例は63例中10例(15.9%)と過去の報告とほぼ同じ頻度であった。胃乳頭状腺癌では、MSSおよびMSIの両者で胃型粘液形質を示す症例が多く、共通の特徴と思われた。MSS型乳頭状腺癌では(1) p53蛋白過剰発現、(2) HER2過剰発現、(3)高LOH状態、および(4)低メチル化状態の頻度がMSI型癌と比べ、高かった。これらの結果より、MSS型乳頭状腺癌は生物学的悪性度が高い可能性が示唆されるが、今後症例数を蓄積して検討する必要があると思われた。また、通常型の胃管状腺癌との差異も充分に明らかではなく、今後の検討が必要と考えた。加えて、現時点での解析は浸潤癌を中心に行われているが、腫瘍発生に関連する分子異常の確立のためには早期病変における解析が必要であり、内視鏡的切除症例についての検討も行う予定である。分子解析に関しては、過去に切除された症例のパラフィンブロックから抽出したDNAを用いての解析が可能であり、症例の蓄積が滞りなく行えている。最終的な解析予定症例数は100例であり、引き続き症例数の蓄積が必要と考えられる。症例数のさらなる蓄積を行い、胃乳頭状腺癌と通常型胃管状腺癌との比較を行うことで、胃乳頭状腺癌の分子病型の確立を行う予定である。解析予定症例数は100例を目標としており、さらなる症例の抽出、蓄積が必要である。加えて、胃乳頭状腺癌の腫瘍発生に関連する分子異常の検討のため、内視鏡切除標本を用いた早期病変についても解析を同様に行う予定である。物品における見積額と実際の支払額との差異により生じたと考えられる。次年度分の物品費として使用する予定を考えている。
KAKENHI-PROJECT-18K07023
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K07023
SDGs達成の先行指標となる非財務KPIsに関するグローバルデータの実証分析
持続可能な社会を実現することを目的として、企業の社会的責任を求める声が高まるとともに、企業の社会・環境活動実績を含む非財務情報をKPIsとして報告することを目的とした統合報告を採用する企業が増えつつある。また、投資家に対しても、SDGsの実現を通して企業価値向上に資するような投資理念を持つことが要請されるようになった。本研究課題では、KPIsとして報告される非財務情報が本当にSDGsに結びついているのか、また、どのような因果関係の帰結として株価上昇を生み出しているのか、という点について実証分析をおこない、非財務KPIsに関する今後のディスクロージャーのあり方について検討することを目的とする。持続可能な社会を実現することを目的として、企業の社会的責任を求める声が高まるとともに、企業の社会・環境活動実績を含む非財務情報をKPIsとして報告することを目的とした統合報告を採用する企業が増えつつある。また、投資家に対しても、SDGsの実現を通して企業価値向上に資するような投資理念を持つことが要請されるようになった。本研究課題では、KPIsとして報告される非財務情報が本当にSDGsに結びついているのか、また、どのような因果関係の帰結として株価上昇を生み出しているのか、という点について実証分析をおこない、非財務KPIsに関する今後のディスクロージャーのあり方について検討することを目的とする。
KAKENHI-PROJECT-19K02026
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K02026
コメの放射性セシウム汚染に、高濃度セシウム含有不溶性微粒子は影響しているか?
原発事故に伴って放出された放射性セシウムが、環境からコメへと移行するメカニズムを、極めて高濃度で放射能濃度への寄与が大きい放射性Cs含有不溶性微粒子(RCsBP)に着目して明らかにする。試料中のRCsBPは、1個の大きさが直径13マイクロメートルと小さいものの、単離することができ、RCsBPの1個ずつの放射能が決定できる。イネ中のRCsBP集積位置の解析、稲作環境中の放射性Cs濃度に対するRCsBPの放射能比の決定、RCsBPの寄与を考慮した環境からイネへの放射性Cs移行メカニズムを順に明らかにする。原発事故に伴って放出された放射性セシウムが、環境からコメへと移行するメカニズムを、極めて高濃度で放射能濃度への寄与が大きい放射性Cs含有不溶性微粒子(RCsBP)に着目して明らかにする。試料中のRCsBPは、1個の大きさが直径13マイクロメートルと小さいものの、単離することができ、RCsBPの1個ずつの放射能が決定できる。イネ中のRCsBP集積位置の解析、稲作環境中の放射性Cs濃度に対するRCsBPの放射能比の決定、RCsBPの寄与を考慮した環境からイネへの放射性Cs移行メカニズムを順に明らかにする。
KAKENHI-PROJECT-19K02331
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K02331
救急医療施設における家族・遺族支援のためのソーシャルワーク実践モデル構築
2003年8月1日から2011年5月20日の期間、救命救急センターに搬送され、自死で亡くなった患者137人から、家族・遺族支援の必要性について検討した。137名のうち、倫理的配慮等により除外した人を除く75名に質問紙調査を実施し、承諾が得られた人のみにインタビュー調査を実施した。2007年4月から2007年7月に実施した類似の調査結果も踏まえて、救急医療施設における家族・遺族支援のためのソーシャルワーク実践モデルを作成し構築を目指した。2003年8月1日から2011年5月20日の期間、救命救急センターに搬送され、自死で亡くなった患者137人から、家族・遺族支援の必要性について検討した。137名のうち、倫理的配慮等により除外した人を除く75名に質問紙調査を実施し、承諾が得られた人のみにインタビュー調査を実施した。2007年4月から2007年7月に実施した類似の調査結果も踏まえて、救急医療施設における家族・遺族支援のためのソーシャルワーク実践モデルを作成し構築を目指した。【研究成果】平成21年度は、「救急医療施設における家族・遺族支援のためのソーシャルワーク実践モデル構築」における家族・遺族支援について、質問紙調査を実施するための準備期間とした。【具体的内容】家族・遺族調査については、家族・遺族のニーズ、パーソナリティ、家族関係を含めたソーシャルサポート、受けている社会福祉制度やサービスを含めた支援等について調査する。なお、調査項目の妥当性を検証するために事前に予備調査を実施する予定である。そのために、平成20年度まで行っていた心肺停止状態で救命救急センターに搬送され、入院に至らずに亡くなられたご遺族の研究成果を踏まえ、救命救急センターで入院後に亡くなられた家族・遺族のニーズについて、検討を行った。具体的には入院に至らずに亡くなられた方の医療スタッフに対するニーズから、入院中に必要となるケア等を考察し、調査項目の検討を行った。また、海外の文献等から、先行研究を検討し、日本における遺族支援の方向性について考察し、本調査の準備とした。【意義・重要性】わが国における救急医療現場での先行研究は少なく、量的調査はほとんどない。そのため、本研究データは貴重な資料となりうる。そのため、慎重に準備し、調査を進めて行く。救急医療においては、延命処置の中止や臓器移植医療等、今後、家族・遺族にどのように支援していくのか、大きな課題をかかえている。本研究は、今後そういった課題について、家族・遺族の視点から示唆できるものである。平成22年度は、これらの基礎研究を踏まえて、実際の調査をすすめていく予定である。【研究成果】平成22年度は、「救急医療施設における家族・遺族支援のためのソーシャルワーク実践モデル構築」における家族・遺族支援について、具体的な研究デザインおよび質問紙を完成させ、調査機関である救命救急センターの倫理委員会の諮問を受け承認を得た。倫理委員会の承認を得た上で、調査対象者である自死(自殺)遺族を調査機関の記録から抽出する作業を実施した。調査にあたっては、倫理的配慮を十分に重視し、心療内科医師の指導を受けるとともに、調査最終段階で再度倫理委員会の承認を得た。現在質問紙の発送作業の準備段階である。【具体的内容】救急医療施設において自死で亡くなられた家族・遺族調査については、先行研究より自死遺族特有の質問項目を加えるとともに、記録物より自死の実情を把握した。内容は、家族・遺族のニーズ、パーソナリティ、家族関係を含めたソーシャルサポート、受けている社会福祉制度やサービスを含めた支援等についてである。量的調査で不十分な点については、質的調査で補足する予定である。さらに、本研究結果は、平成20年度まで行っていた心肺停止状態で救命救急センターに搬送され、入院に至らずに亡くなられたご遺族の研究成果と含めて考察していく。そして、海外の文献等先行研究を踏まえて、日本における救急医療施設における家族・遺族支援を検討していく。【意義・重要性】わが国は、自殺で亡くなられる方が平成10年以降年間3万人を超え、先進国の中では抜きん出た値となっている。社会的な施策として、平成18年「自殺対策基本法」が成立し、平成20年厚生労働省が招集した有識者検討会により「自殺未遂者・自殺者親族等のケアに関するガイドライン作成のための指針」が公表された。しかし、上記の取り組みは、自殺予防に重点が置かれ、遺族支援については不十分である。そのため、本研究はわが国の自死遺族支援において重要な示唆を提供できると考える。【研究目的】第3次救急医療施設に搬送される患者家族は、突発的な事故や災害、疾患の急激な発症・増悪などにより、近親者の生命の危機に突然対面することになる。近親者との死別後、時に遺族に悲嘆反応として、うつ症状や心身の症状が出現する。救急医療スタッフは、年齢、疾患・事故原因、社会的背景等がまったく異なり、患者本人の背景がほとんど分からない状態で終末期ケアを実践していく必要がある。そのための具体的な実践モデルの構築が、必要である。本研究は、救急医療施設における家族・遺族支援のためのソーシャルワーク実践モデル構築を目指している。【2011年度研究実績】2003年8月1日から2011年5月20日までの間に、A救命救急センターに搬入され、同センターで亡くなった人のうち、自死(自殺)で亡くなった人の実態調査およびニーズ調査を実施した。
KAKENHI-PROJECT-21530643
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21530643
救急医療施設における家族・遺族支援のためのソーシャルワーク実践モデル構築
同センター内で死亡した人の中で、傷病名で自死かどうか判別できない人1,068名の診療記録を確認した。死亡原因が自死であると考えられる人は137名であった。家族の目前で自死の行為に至ったケース7例(5%)、家族が第一発見者であったケースは39例(28%)で、母親の縊頸を4歳の子どもが見つけたという症例もあった。死亡した患者の年齢は、20歳代が最も多く28名(20%)、30歳代が24名(18%)で、最年少は14歳、最高齢は81歳であった。ニーズ調査については、75名の家族に質問紙を送付(返送13通)し、4名の人にインタビュー調査を実施した。4年前の調査と比較検討し、実践モデルを検討した。社会資源の連携方法等を検討するため、遺族のサポートグループおよびセルフヘルプグループについて会合を開催し、それぞれの課題等について確認した。家族・遺族支援を一連の流れで考えるため、警察等との連携も検討した。【実践モデルの構築】救急医療施設における家族・遺族支援のためのソーシャルワーク実践モデルの作成し構築を目指した。
KAKENHI-PROJECT-21530643
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21530643
変形微細組織から読む下部地殻強度の時間発展
地震発生領域直下の下部地殻上部における延性剪断帯の発生・発達過程は,内陸地震の発生において本質的に重要である.本研究では,天然の変形岩試料の解析を通して,下部地殻上部での延性剪断帯の発生・発達過程の解明を目的としている.本年度は,前年度までに採取した岩石試料の変形組織観察,鉱物化学組成,結晶方位解析を継続して行い,その研究成果を国際学術雑誌に発表すること,および12月に開催されるアメリカ地球物理学連合秋季大会において,大学院生・博士研究員とともに研究成果の発表を行うことが主要な課題であった.研究成果としては二つの重要な知見を得ることができた.一つは,斜長石集合体が拡散クリープ(粒界すべり)によって変形する場合,一般には結晶定向配列を示さないとされているが,EBSDによる斜長岩マイロナイト中の斜長石の結晶方位解析の結果,粒界すべりによっても斜長石集合体に結晶定向配列が認められることが明らかとなった.これは,斜長石のような劈開や双晶が発達する鉱物が粒界すべりで変形する場合,ある特定の結晶面で粒界すべりが起きることを示した世界初の例である.もう一つの研究成果は,斜長岩マイロナイトにしばしば認められる特徴的な組成累帯構造の成因に関するものである.その特徴的な組成累帯構造の成因としては,高温斜長石の低温での相分離であるという説が提案されており,この相分離は粒径減少を伴うことが期待されるため,下部地殻における主要な粒径減少機構である可能性が指摘されている.しかし,WDSによる鉱物化学組成やSIMSによる酸素同位体組成の解析結果からは,この説は支持されず,等温減圧による二段階成長であることが明らかとなった.これは斜長石の相分離が下部地殻における主要な粒径減少機構ではないことを示唆する.以上のように,本研究では下部地殻における変形・変成作用の詳細に関して,重要な知見を提供することができた.本年度は当初の研究実施計画の通り,12月に開催されたアメリカ地球物理学連合秋季大会において,博士研究員とともに研究成果の発表を行った.また,前年度までに採取した岩石試料の変形組織観察,鉱物化学組成,結晶方位解析を継続して行い,その研究成果を国際学術雑誌に2編にまとめた.そのうち1編は現在査読中であるが,1編は現在執筆中である.このように,学術論文の作成・発表の進捗に若干の遅延が生じている.このため,本来は平成30年度で本研究課題は終了する予定であったが,1年間の研究期間の延長を申請し,承認されている.本年度は,2編の論文の国際学術雑誌への受理を目指すことになる.その論文作成補助のために博士研究員を継続して雇用する予定である.地震発生領域直下の下部地殻上部における延性剪断帯の発生・発達過程は,内陸地震の発生において本質的に重要である.本研究では,天然の変形岩試料の解析を通して,下部地殻上部での延性剪断帯の発生・発達過程の解明を目的としている.年度前半では,下部地殻の主要構成鉱物である斜長石と輝石の細粒化過程・変形機構を明らかにするため,ノルウェー北部ロフォーテン諸島およびベステローデン諸島において地質野外調査と岩石試料の採取を行った.採取された岩石は,斜長岩および斑れい岩起源の変形岩(マイロナイトやシュードタキライト)である.年度後半では,採取された変形岩(主に斜長岩マイロナイト)に対して,SEM-EDS,WDS,EBSDなどを用いた構造地質学的・岩石学的解析を,大阪市立大学,京都大学,産業技術総合研究所などにおいて行った.その結果,斜長岩マイロナイトにおいては,動的再結晶ではなく破壊と吸水変成作用によって構成鉱物が細粒化し,その細粒鉱物集合体は粒径依存型クリープ(転位すべり緩和型粒界すべり)により変形していることが明らかとなった.また,吸水変成作用は緑廉石角閃岩相(600 °C,700 MPa)の条件下において起きたが,系外から流入した流体組成はCO2やClを含むような流体であることが指摘された.この破壊→構成鉱物の細粒化/流体の流入・吸水変成作用→粒径依存型クリープという変形過程により,粘性率の著しい低下と狭長な領域への歪みの集中が起き,延性剪断帯が形成されたことが示唆された.本年度は研究実施計画通りに,ノルウェー北部ロフォーテン諸島およびベステローデン諸島において,地質野外調査と岩石試料の採取を行った.また,既存及び本年度の採取試料を用いて,変形組織観察,鉱物化学組成,結晶方位解析を行い,その結果を国際学術雑誌である「Journal of Structural Geology」において公表した.また,これら成果に基づく総括論文を現在執筆中であり,これは日本地質学会の学会誌である「地質学雑誌」に投稿する予定である.地震発生領域直下の下部地殻上部における延性剪断帯の発生・発達過程は,内陸地震の発生において本質的に重要である.本研究では,天然の変形岩試料の解析を通して,下部地殻上部での延性剪断帯の発生・発達過程の解明を目的としている.年度前半では,下部地殻の主要構成鉱物である斜長石と輝石の細粒化過程・変形機構を明らかにするため,ノルウェー北部ロフォーテン諸島およびベステローデン諸島において地質野外調査と岩石試料(主に斜長岩起源のマイロナイト)の採取を行った.年度を通して,採取された変形岩に対して,SEM-EDS,WDS,EBSDなどを用いた構造地質学的・岩石学的解析を,大阪市立大学,京都大学,産業技術総合研究所などにおいて行った.
KAKENHI-PROJECT-16K05613
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変形微細組織から読む下部地殻強度の時間発展
その結果,一部の斜長岩マイロナイトにおいては,地震に起因する動的破壊により形成されると考えられる粉砕作用(pulverization)が認められることが明らかとなった.粉砕作用の結果形成される粉砕岩は,見かけの間隙率が上昇するため,下部地殻における地殻流体の流路となり得る.実際,粉砕岩には,加水反応の結果形成された含水鉱物が認められ,それら鉱物を用いた熱力学的解析から,地殻下部条件(700°C, 700 MPa)での加水作用が確認された.このような下部地殻条件で形成された粉砕岩の報告例はこれまでなく,世界初の記載となった.これらの研究成果によって,下部地殻における剪断帯の形成および地殻流体の循環を考察するために必要な極めて重要な知見を提供することができた.本年度は当初の研究実施計画では予定していなかった,ノルウェー北部ロフォーテン諸島およびベステローデン諸島における地質野外調査と岩石試料の採取を,博士研究員とともに行った.また,既存及び本年度の採取試料を用いて,変形組織観察,鉱物化学組成,結晶方位解析を行い,その結果を国際学術雑誌である「Geology」に投稿した(現在査読中).このように本課題研究は,順調に進捗している.地震発生領域直下の下部地殻上部における延性剪断帯の発生・発達過程は,内陸地震の発生において本質的に重要である.本研究では,天然の変形岩試料の解析を通して,下部地殻上部での延性剪断帯の発生・発達過程の解明を目的としている.本年度は,前年度までに採取した岩石試料の変形組織観察,鉱物化学組成,結晶方位解析を継続して行い,その研究成果を国際学術雑誌に発表すること,および12月に開催されるアメリカ地球物理学連合秋季大会において,大学院生・博士研究員とともに研究成果の発表を行うことが主要な課題であった.研究成果としては二つの重要な知見を得ることができた.一つは,斜長石集合体が拡散クリープ(粒界すべり)によって変形する場合,一般には結晶定向配列を示さないとされているが,EBSDによる斜長岩マイロナイト中の斜長石の結晶方位解析の結果,粒界すべりによっても斜長石集合体に結晶定向配列が認められることが明らかとなった.これは,斜長石のような劈開や双晶が発達する鉱物が粒界すべりで変形する場合,ある特定の結晶面で粒界すべりが起きることを示した世界初の例である.もう一つの研究成果は,斜長岩マイロナイトにしばしば認められる特徴的な組成累帯構造の成因に関するものである.その特徴的な組成累帯構造の成因としては,高温斜長石の低温での相分離であるという説が提案されており,この相分離は粒径減少を伴うことが期待されるため,下部地殻における主要な粒径減少機構である可能性が指摘されている.しかし,WDSによる鉱物化学組成やSIMSによる酸素同位体組成の解析結果からは,この説は支持されず,等温減圧による二段階成長であることが明らかとなった.これは斜長石の相分離が下部地殻における主要な粒径減少機構ではないことを示唆する.以上のように,本研究では下部地殻における変形・変成作用の詳細に関して,重要な知見を提供することができた.本年度は当初の研究実施計画の通り,12月に開催されたアメリカ地球物理学連合秋季大会において,博士研究員とともに研究成果の発表を行った.また,前年度までに採取した岩石試料の変形組織観察,鉱物化学組成,結晶方位解析を継続して行い,その研究成果を国際学術雑誌に2編にまとめた.そのうち1編は現在査読中であるが,1編は現在執筆中である.
KAKENHI-PROJECT-16K05613
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異なる2種類のカルシウムチャネルファミリーの神経系における役割に関する研究
(1)ヒト脳よりN型電位依存性Ca^<2+>チャネルをコードするα_<1B>サブユニットにおいて2種類のスプライシングバリアントcDNAをクローニングした。ゲノム配列の確認によって,これらがRNAスプライシングによって生成することを明らかにした。次に,これらをヒト胎児腎臓(HEK)細胞に発現させてパッチクランプ法によるチャネル電流の記録を行い,II-III linkerを欠失したバリアントのひとつがω-conotoxinに低感受性のチャネルであることを明らかにした。(2)P/Q型Ca^<2+>チャネルをコードするα_<1A>サブユニットのGタンパク質による調節について生化学的および電気生理学的な解析を行い,膜電位の脱分極に抵抗性を有する抑制がGα_oのN末端領域とα_<1A>サブユニットのC末端ドメインが結合することによって起こることを明らかにした。(3)ストア感受性TRP4チャネルの開口に細胞内Ca^<2+>が必要であることを見いだした。また,受容体活性化型TRP5チャネルの開口について,イノシトール三リン酸受容体IP_3-Rの活性化が必要十分条件であることを見いだした。(4)ラット大脳皮質ニューロンにおいてストア感受性Ca^<2+>流入や受容体活性化型Ca^<2+>チャネルが存在することをfura-2蛍光法で明らかにした。また,大脳皮質ニューロンに存在するTRPサブタイプについてRT-PCRを用いて検討し,TRP1,3,5,6の存在を確認した。さらに抗体を用いた免疫染色でもTRP1,5の存在を確認した。(1)ヒト脳よりN型電位依存性Ca^<2+>チャネルをコードするα_<1B>サブユニットにおいて2種類のスプライシングバリアントcDNAをクローニングした。ゲノム配列の確認によって,これらがRNAスプライシングによって生成することを明らかにした。次に,これらをヒト胎児腎臓(HEK)細胞に発現させてパッチクランプ法によるチャネル電流の記録を行い,II-III linkerを欠失したバリアントのひとつがω-conotoxinに低感受性のチャネルであることを明らかにした。(2)P/Q型Ca^<2+>チャネルをコードするα_<1A>サブユニットのGタンパク質による調節について生化学的および電気生理学的な解析を行い,膜電位の脱分極に抵抗性を有する抑制がGα_oのN末端領域とα_<1A>サブユニットのC末端ドメインが結合することによって起こることを明らかにした。(3)ストア感受性TRP4チャネルの開口に細胞内Ca^<2+>が必要であることを見いだした。また,受容体活性化型TRP5チャネルの開口について,イノシトール三リン酸受容体IP_3-Rの活性化が必要十分条件であることを見いだした。(4)ラット大脳皮質ニューロンにおいてストア感受性Ca^<2+>流入や受容体活性化型Ca^<2+>チャネルが存在することをfura-2蛍光法で明らかにした。また,大脳皮質ニューロンに存在するTRPサブタイプについてRT-PCRを用いて検討し,TRP1,3,5,6の存在を確認した。さらに抗体を用いた免疫染色でもTRP1,5の存在を確認した。(1)電位依存性カルシウムチャネルについてはこれまでにヒト脳cDNAライブラリにより,α1Bサブユニット全長cDNAクローニングを行った。その際,細胞内II-III loopが大きく欠損している新しいsplicing variantを発見し,RNase protection assayとgenome解析によってそのスプライシング部位を現在,検討している。また,このバリアントのチャネルとしての性質を明らかにするため,アフリカツメガエル卵母細胞およびヒト胎児腎臓(HEK)細胞に外来性に発現させたところ,全長のチャネルに比べてω毒素感受性の低いチャネルを形成することが明らかになった。(2)Trpチャネルについては,現在,ヒトcDNAライブラリからの単離を進めつつ,すでに得たマウスtrp4およびtrp5のチャネルとしての性質について細胞発現系で検討を行い,trp4は細胞内カルシウム貯蔵部位を枯渇させた場合に開くstore-operated channel(SOC)として機能すること,trp5はGq/G11と共役してイノシトールリン脂質代謝を引き起こす受容体の刺激に伴って開口するチャネル(RACC)であることを明らかにした。また,trp4の開口には細胞内カルシウムイオン濃度が数十nM存在することが必要であることを卵母細胞内を潅流するcut-open法を用いて明らかにした。現在,アンチセンスDNAなどを用いて、それら開口機構の詳細について検討を行っている。(3)神経細胞にSOCやRACCが存在するか否かについて,ラット胎児大脳皮質初代培養細胞にカルシウム蛍光指示薬であるFura-2を取り込ませ,種々の刺激に伴う細胞内カルシウム上昇を記録している。これまでのところ,胎児大脳皮質にもSOCやRACCが存在することが示唆されたため,現在,そのチャネルの実体についてRT-PCRなどによる解析を行っている。(1)ヒト脳よりN型電位依存性Ca^<2+>チャネルをコードするα_<1B>サブユニットにおいて2種類のスプライシングバリアントcDNAをクローニングした。ゲノム配列の確認によって,これらがRNAスプライシングによって生成する可能性を調べた。また,これらをヒト胎児腎臓(HEK)細胞に発現させてパッチクランプ法によるチャネル電流の記録を行い,II-III linkerを欠失したバリアントのひとつがω-conotoxinに低感受性のチャネルであることを明らかにした。(2)P/Q型Ca^<2+>
KAKENHI-PROJECT-11672168
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異なる2種類のカルシウムチャネルファミリーの神経系における役割に関する研究
チャネルをコードするα_<1A>サブユニットのGタンパク質による調節について生化学的および電気生理学的な解析を行い,膜電位の脱分極に抵抗性を有する抑制がGα_oのN末端領域とα_<1A>サブユニットのC末端ドメインが結合することによって起こることを見いだした。(3)受容体活性化型TRP5チャネルについて卵母細胞系を用いて開口機構の解析を行い,イノシトール三リン酸受容体IP_3-Rの活性化がTRP5チャネルの開口に必要十分条件であることを見いだした。(4)ラット大脳皮質ニューロンにおいてストア感受性Ca^<2+>流入や受容体活性化型Ca^<2+>チャネルが存在することをfura-2蛍光法で明らかにした。また,大脳皮質ニューロンに存在するTRPサブタイプについてRT-PCRを用いて検討し,TRP1,3,5,6の存在を確認した。さらに抗体を用いた免疫染色でもTRP1,5の存在を確認した。
KAKENHI-PROJECT-11672168
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Cold Sprayと低温超音速ガスジェットを利用したワイヤアーク溶射の提案〜新しいエコ溶射法の基礎的検討と開発〜
Cold Spray(コールドスプレー)は,溶射材料の軟化温度または融点に比較して低温な(高々500°C程度)超音速ガスのノズル内流れの中にその材料粉末を投入し,加速させて高速度(500m/s以上)で基材に衝突(衝撃溶融に近い状態)させて皮膜を作製し,ロシアで発明され,米国,ドイツで研究・開発中の技術で,21世紀の新しい表面改質技術として注目を集めている。本研究は,(1)コールドスプレー技術のさらなる解明と確立,および(2)この技術を応用した新しい低温超音速ガスジェット利用のワイヤアーク溶射技術の確立など基礎的研究を目的とし,本年度は以下を行った。・コールドスプレーの試作装置の改良(ノズル形状,粉末供給装置など)・超音速ガスジェットを利用したワイヤアーク溶射装置の試作とノズル形状の最適化・皮膜特性に及ぼす溶射条件の影響の検討新たに得られた知見や業績などを以下に示す。1.Cold Sprayにより多種の金属の成膜(銅,アルミニウム,ハステロイ,チタンなど)し,超硬は薄膜ではあるが成膜した。さらに,Cold Sprayに適した材料粒子径は,材料にもよるが約525μm程度であった。2.Cold Sprayの問題点として,ほとんど溶融しない粒子でもノズル内壁面に衝突・堆積し,場合によりノズルを詰まらせることがわかった。3.低温超音速ガスジェットを利用したワイヤアーク溶射装置では,材料に5mass%Al-Znワイヤ使用し,溶射粒子が微細化・高速化して皮膜の密着力が21MPaと従来のアーク溶射装置の4倍以上となった。また,ガンのトラバース速度が皮膜密着力に影響を及ぼした。4.本年度,学会発表(6件,うち国際溶射会議1件),ホームページ(http://mplab.shinshu-u.ac.jp/)などにより,国内の大学,企業などへのコールドスプレー技術を周知し,依頼講演3件,訪問した企業・研究機関8社(うち,共同研究2件,皮膜の試作:4社)の実績を残すことができ,新たなアプリケーションの開発につながりつつある。さらに,特許3件の申請を準備中である。Cold Spray(コールドスプレー)は,最新の溶射法の1種で,溶射材料の軟化温度または融点に比較して低温な(高々500°C程度)超音速ガスのノズル内流れの中にその材料粉末を投入し,加速させて高速度(500m/s以上)で基材に衝突(衝撃溶融に近い状態)させて皮膜を作製し,ロシアで発明され,米国,ドイツで研究・開発されはじめている技術で,21世紀の新しい表面改質技術として注目を集めている。本研究は,(1)コールドスプレー技術のさらなる解明と確立,および(2)この技術を応用した新しい低温超音速ガスジェット利用ワイヤアーク溶射技術の確立など基礎的研究を目的とし,具体的には本年度は以下を行った.・コールドスプレーの試作装置の改良・超音速ガスジェットを利用したワイヤアーク溶射装置の試作・皮膜特性に及ぼす溶射条件の影響の検討得られた知見や業績などを以下に示す。1.供給ガスの各部の温度とノズル入口部の圧力と温度を測定・集積し,試作装置の性能と安定性の確認が行えた.本装置は所定状態のガスを供給できるが,ガスの熱交換器の構造上,安定するのに時間がかかる。2.供給するガスの圧力,温度が高くなるにつれて,銅皮膜の成膜量が増加した。また,皮膜は基材側がち密であるが,表面側は気孔が多い。3.低温超音速ガスジェットを利用したワイヤアーク溶射装置の試作:コールドスプレーの作動ガス供給部からガスを供給され専用に設計した超音速溶射ガンをアーク溶射装置に増設して装置を試作し,基礎的な溶射条件の変化に対する皮膜特性の変化を明らかにできた。4.本年度,学会発表(5件,うち国際溶射会議1件),専門誌への技術解説,ホームページ(http://mplab.shinshu-u.ac.jp/)などにより,国内の大学,企業などへのコールドスプレー技術を周知し,依頼講演2件,訪問企業10社(うち,共同研究1件)の実績を残すことができた。Cold Spray(コールドスプレー)は,溶射材料の軟化温度または融点に比較して低温な(高々500°C程度)超音速ガスのノズル内流れの中にその材料粉末を投入し,加速させて高速度(500m/s以上)で基材に衝突(衝撃溶融に近い状態)させて皮膜を作製し,ロシアで発明され,米国,ドイツで研究・開発中の技術で,21世紀の新しい表面改質技術として注目を集めている。本研究は,(1)コールドスプレー技術のさらなる解明と確立,および(2)この技術を応用した新しい低温超音速ガスジェット利用のワイヤアーク溶射技術の確立など基礎的研究を目的とし,本年度は以下を行った。・コールドスプレーの試作装置の改良(ノズル形状,粉末供給装置など)・超音速ガスジェットを利用したワイヤアーク溶射装置の試作とノズル形状の最適化・皮膜特性に及ぼす溶射条件の影響の検討新たに得られた知見や業績などを以下に示す。1.Cold Sprayにより多種の金属の成膜(銅,アルミニウム,ハステロイ,チタンなど)し,超硬は薄膜ではあるが成膜した。さらに,Cold Sprayに適した材料粒子径は,材料にもよるが約525μm程度であった。2.Cold Sprayの問題点として,ほとんど溶融しない粒子でもノズル内壁面に衝突・堆積し,場合によりノズルを詰まらせることがわかった。
KAKENHI-PROJECT-13750094
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13750094
Cold Sprayと低温超音速ガスジェットを利用したワイヤアーク溶射の提案〜新しいエコ溶射法の基礎的検討と開発〜
3.低温超音速ガスジェットを利用したワイヤアーク溶射装置では,材料に5mass%Al-Znワイヤ使用し,溶射粒子が微細化・高速化して皮膜の密着力が21MPaと従来のアーク溶射装置の4倍以上となった。また,ガンのトラバース速度が皮膜密着力に影響を及ぼした。4.本年度,学会発表(6件,うち国際溶射会議1件),ホームページ(http://mplab.shinshu-u.ac.jp/)などにより,国内の大学,企業などへのコールドスプレー技術を周知し,依頼講演3件,訪問した企業・研究機関8社(うち,共同研究2件,皮膜の試作:4社)の実績を残すことができ,新たなアプリケーションの開発につながりつつある。さらに,特許3件の申請を準備中である。
KAKENHI-PROJECT-13750094
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増殖因子・サイトカインと前眼部炎症:レーザーフレアセルメーターを用いた検討
インターロイキンや増殖因子などが眼内炎症に影響を与えることが知られているが、詳細は不明である。本研究ではこれらのうちIL-1β,IL-6,VEGFが眼内炎症にあたえる影響を前房フレア値を指標にして経時的に計測し、またそれらと従来より知られている起炎物質であるプロスタグランジン(以後PG)との関係をPG合成阻害剤であるジクロフェナックナトリウム(以後DS)を使用して検討した。すなわち1、IL-1β,IL-6,VEGF各1ng1μgを点眼麻酔下で有色家兎の硝子体腔内に注入し、レーザーフレアセルメーター(興和、FC-1000)により前房フレア値の測定を経時的に行った。2、上記薬剤の注入1時間、30分前、および注入後一日4回の0、1%DS点眼を行い、上記同様に経過観察を行った。結果1、IL-1βでは1ngの注入で12時間後に約500photoncounts/msec(以後pc/msec)までフレア値は上昇し、以後4日かかって正常化した。DS点眼により注入後2日までのフレア値の上昇は抑制されたが以後は非点眼群と同程度のフレア値上昇がみられた。2、特にIL-6では100ng以上の注入で12日後に約400pc/msecまでフレア値は上昇し、以後7日かかって正常化した。結果1同様、DS点眼により注入後2日までのフレア値の上昇は抑制されたが以後は非点眼群と同程度のフレア値上昇がみられた。3、VEGFでは1ng以上の注入で5時間後に約30pc/msecまでフレア値は上昇し、以後24時間かかって正常化した。DS点眼によりフレア値の上昇はやや抑制される傾向にあった。上記の如く、IL群では高度のフレア値の上昇を認め、その最初の12日目に見られるピーク値はDS点眼により抑制された。このことよりILによる実験的眼内炎においては少なくともその当初はPGを介したものである可能性が示唆された。インターロイキンや増殖因子などが眼内炎症に影響を与えることが知られているが、詳細は不明である。本研究ではこれらのうちIL-1β,IL-6,VEGFが眼内炎症にあたえる影響を前房フレア値を指標にして経時的に計測し、またそれらと従来より知られている起炎物質であるプロスタグランジン(以後PG)との関係をPG合成阻害剤であるジクロフェナックナトリウム(以後DS)を使用して検討した。すなわち1、IL-1β,IL-6,VEGF各1ng1μgを点眼麻酔下で有色家兎の硝子体腔内に注入し、レーザーフレアセルメーター(興和、FC-1000)により前房フレア値の測定を経時的に行った。2、上記薬剤の注入1時間、30分前、および注入後一日4回の0、1%DS点眼を行い、上記同様に経過観察を行った。結果1、IL-1βでは1ngの注入で12時間後に約500photoncounts/msec(以後pc/msec)までフレア値は上昇し、以後4日かかって正常化した。DS点眼により注入後2日までのフレア値の上昇は抑制されたが以後は非点眼群と同程度のフレア値上昇がみられた。2、特にIL-6では100ng以上の注入で12日後に約400pc/msecまでフレア値は上昇し、以後7日かかって正常化した。結果1同様、DS点眼により注入後2日までのフレア値の上昇は抑制されたが以後は非点眼群と同程度のフレア値上昇がみられた。3、VEGFでは1ng以上の注入で5時間後に約30pc/msecまでフレア値は上昇し、以後24時間かかって正常化した。DS点眼によりフレア値の上昇はやや抑制される傾向にあった。上記の如く、IL群では高度のフレア値の上昇を認め、その最初の12日目に見られるピーク値はDS点眼により抑制された。このことよりILによる実験的眼内炎においては少なくともその当初はPGを介したものである可能性が示唆された。
KAKENHI-PROJECT-08771483
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08771483
放射線照射による大脳皮質形成障害マウスを用いた神経細胞移動関連遺伝子の探索
私たちはこれまでに,胎生期マウス・ラットへの低線量電離放射線照射の影響が大脳皮質の層構築異常として生後も永らく残ることを明らかにしてきた.本研究では,胎齢14.5日マウス胎仔全脳においてX線0.5Gy照射群と非照射群の間で発現に差異を生ずる遺伝子群を,大脳皮質層構造形成に関わる重要な新規遺伝子候補とみなし,RLCS(Restriction Landmark cDNA Scanning)法と呼ばれる分子生物学的手法を用いて探索し,現在までに,10種類の酵素によるプロファイルを作成し,これまでに,延べ12,000スポットのスキャンニングを行った.低線量X線照射群と非照射群でのプロファイルを比較することで見出された,発現変動を示すスポット中からシークエンス等の解析を開始した.NcoIプロファイルで抑制的発現制御を受けているスポットの一つは,全長cDNA配列はデータベースに収載されていたものの機能解析等については全く報告されていない遺伝子に対応していた.この遺伝子は,295ないし306アミノ酸から成る免疫グロブリン・スーパーファミリーに属する細胞接着分子様の蛋白をコードしていた.さらに,その発現量をリアルタイムPCR法により解析したところ,照射によって,正常の3040%のレベルにまで抑制されていた.今後,探索をさらに継続する一方,これら遺伝子を指標として,胎生期の大脳皮質層構築形成の分子機構に迫りたい.一方で,層構築形成期にある個々の神経細胞間において,照射の影響を受ける遺伝子群をより効率的に比較・探索するための技術として「単一細胞RLCS法」の技術的検討を行った.それに必要なサンプル調整法について技術的検討をほぼ終了し得た.単一細胞由来のcDNAライブラリーを作製することが可能になったことから,移動層にある神経細胞に焦点を絞った特異的発現遺伝子のスクリーニングのための基盤を確立することができた.私たちはこれまでに,胎生期マウス・ラットへの低線量電離放射線照射の影響が大脳皮質の層構築異常として生後も永らく残ることを明らかにしてきた.本研究では,胎齢14.5日マウス胎仔全脳においてX線0.5Gy照射群と非照射群の間で発現に差異を生ずる遺伝子群を,大脳皮質層構造形成に関わる重要な新規遺伝子候補とみなし,RLCS(Restriction Landmark cDNA Scanning)法と呼ばれる分子生物学的手法を用いて探索し,現在までに,10種類の酵素によるプロファイルを作成し,これまでに,延べ12,000スポットのスキャンニングを行った.低線量X線照射群と非照射群でのプロファイルを比較することで見出された,発現変動を示すスポット中からシークエンス等の解析を開始した.NcoIプロファイルで抑制的発現制御を受けているスポットの一つは,全長cDNA配列はデータベースに収載されていたものの機能解析等については全く報告されていない遺伝子に対応していた.この遺伝子は,295ないし306アミノ酸から成る免疫グロブリン・スーパーファミリーに属する細胞接着分子様の蛋白をコードしていた.さらに,その発現量をリアルタイムPCR法により解析したところ,照射によって,正常の3040%のレベルにまで抑制されていた.今後,探索をさらに継続する一方,これら遺伝子を指標として,胎生期の大脳皮質層構築形成の分子機構に迫りたい.一方で,層構築形成期にある個々の神経細胞間において,照射の影響を受ける遺伝子群をより効率的に比較・探索するための技術として「単一細胞RLCS法」の技術的検討を行った.それに必要なサンプル調整法について技術的検討をほぼ終了し得た.単一細胞由来のcDNAライブラリーを作製することが可能になったことから,移動層にある神経細胞に焦点を絞った特異的発現遺伝子のスクリーニングのための基盤を確立することができた.本研究では、これまでに私たちが明らかにしてきた、胎生期の低線量電離放射線照射が引き起こす大脳皮質神経細胞移動への抑制的影響について、そのメカニズムに関与する遺伝子を分子生物学的手法により探索し、大脳皮質層構造形成並びに神経回路網の発達に関わる重要な新規遺伝子の同定を目指している。平成11年度はまず、胎齢14.5日目マウス胎仔全脳に対する低線量(0.5Gy)X線照射が及ぼす遺伝子発現状態への影響をRLCS法により評価することに着手した。これにより見出された、発現変動を示すいくつかの遺伝子の同定を、申請備品として購入した自動DNAシークエンサーを用いて開始した。更に、単一細胞由来全cDNAを一方向生に効率良く増幅する方法などの、単一神経細胞由来cDNAライブラリーの作製や単一細胞RLCS法のための基盤技術を検討した。逆転写酵素の持つターミナルヌクレオチジルトランスフェラーゼ活性を利用して、cDNAの両端に異なる配列を導入した、単一細胞由来全cDNAを合成したのち、PCRにより増幅し、cDNAライブラリーを作製する系やRLCS法の実施に十分な量の単一細胞由来全cDNAを得る系を組み立てた。また、単一細胞を効率よく単離する方法についても検討を進めた。マイクロキャピラリーを用いて単一細胞を単離・回収し、その全cDNAを増幅する系を確立することができた。低線量X線照射による遺伝子発現変化を組織レベルでRLCS法により解析することによって、移動層の神経細胞における、発現量の多い遺伝子の変化を検出できるものと期待される。しかし、移動中の神経細胞は必ずしも一様な細胞集団ではないことから、移動に関わる遺伝子を単離するためには、最終的には単一神経細胞間で遺伝子発現状態を比較する必要がある。今年度の研究を通じてその技術的基盤を得たと考えている。
KAKENHI-PROJECT-11470222
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11470222
放射線照射による大脳皮質形成障害マウスを用いた神経細胞移動関連遺伝子の探索
私たちはこれまでに,胎生期マウス・ラットへの低線量電離放射線照射の影響が大脳皮質の層構築異常として生後も永らく残ることを明らかにしてきた.本研究では,胎齢14.5日マウス胎仔全脳においてX線0.5Gy照射群と非照射群の間で発現に差異を生ずる遺伝子群を,大脳皮質層構造形成に関わる重要な新規遺伝子候補とみなし,RLCS(Restriction Landmark cDNA Scanning)法と呼ばれる分子生物学的手法を用いて探索し,現在までに,10種類の酵素によるプロファイルを作成し,これまでに,延べ12,000スポットのスキャンニングを行った.低線量X線照射群と非照射群でのプロファイルを比較することで見出された,発現変動を示すスポット中からシークエンス等の解析を開始した.NcoIプロファイルで抑制的発現制御を受けているスポットの一つは,全長cDNA配列はデータベースに収載されていたものの機能解析等については全く報告されていない遺伝子に対応していた.この遺伝子は,295ないし306アミノ酸から成る免疫グロブリン・スーパーファミリーに属する細胞接着分子様の蛋白をコードしていた.さらに,その発現量をリアルタイムPCR法により解析したところ,照射によって,正常の3040%のレベルにまで抑制されていた.今後,探索をさらに継続する一方,これら遺伝子を指標として,胎生期の大脳皮質層構築形成の分子機構に迫りたい.一方で,層構築形成期にある個々の神経細胞間において,照射の影響を受ける遺伝子群をより効率的に比較・探索するための技術として「単一細胞RLCS法」の技術的検討を行った.それに必要なサンプル調整法について技術的検討をほぼ終了し得た.単一細胞由来のcDNAライブラリーを作製することが可能になったことから,移動層にある神経細胞に焦点を絞った特異的発現遺伝子のスクリーニングのための基盤を確立することができた.
KAKENHI-PROJECT-11470222
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11470222
エクソソーム機能解析に基づく食道扁平上皮癌転移診断マーカーの探索
本研究では、細胞間情報伝達および腫瘍進展に影響を及ぼすと考えられている細胞外小胞、exosomeをターゲットとして、食道扁平上皮癌(ESCC)進展への影響およびマーカーとしての有用性を評価した。ESCC細胞株におけるexosome放出能をAChE活性を用いたexosome定量系を用いて評価し、高放出株としてTE2を選定、exosome markerの1つであるCD63を蛍光標識した細胞株(TE2-CD63-GFP)を遺伝子導入にて樹立した。この細胞株を用いてマウス皮下腫瘍モデルを作成、腫瘍および各臓器・血漿由来exosomeの蛍光イメージングにより腫瘍由来exosomeのin vivoでの動態解析を試みた。血中への癌由来exosome放出を確認し得たが、臓器特異的集積に関しては評価できず、今後の課題と考えられた。癌由来exosomeが癌細胞自身の進展に及ぼす影響を評価するため、vitroにおいてエクソソーム添加、非添加群に対するproliferation assay, wound healing assayを行い、exosome添加にて細胞株の増殖能を抑制し(P<0.05)、遊走能を上昇させる(P<0.05)表現系を得た。exosome添加によって変動する遺伝子発現のmicroarrayを用いた評価は実施済であり、現在変動遺伝子に関する機能解析を進めている。血漿exosomeの定量系に関して、nanoparticle tracking assayおよびAChE活性による定量を比較し妥当性を評価した。ESCC患者血漿および非癌患者血漿から抽出したexosomeを定量し、臨床病理学的因子との関連につき解析したところ、血漿exosome量は癌患者において非癌患者より有意に高値(P=0.0014)であった。その一方で癌患者においてはexosome低値が独立した予後不良因子であり(P=0.03)、exosome量と癌のTNM因子やStage、宿主側の免疫能・炎症等との関連につき評価した。本研究は研究者の異動により2015年度で終了となる、また本研究結果は現在英文誌(Oncology Reports)に投稿中である。本研究では、細胞間情報伝達および腫瘍進展に影響を及ぼすと考えられている細胞外小胞、exosomeをターゲットとして、食道扁平上皮癌(ESCC)進展への影響およびマーカーとしての有用性を評価した。ESCC細胞株におけるexosome放出能をAChE活性を用いたexosome定量系を用いて評価し、高放出株としてTE2を選定、exosome markerの1つであるCD63を蛍光標識した細胞株(TE2-CD63-GFP)を遺伝子導入にて樹立した。この細胞株を用いてマウス皮下腫瘍モデルを作成、腫瘍および各臓器・血漿由来exosomeの蛍光イメージングにより腫瘍由来exosomeのin vivoでの動態解析を試みた。血中への癌由来exosome放出を確認し得たが、臓器特異的集積に関しては評価できず、今後の課題と考えられた。癌由来exosomeが癌細胞自身の進展に及ぼす影響を評価するため、vitroにおいてエクソソーム添加、非添加群に対するproliferation assay, wound healing assayを行い、exosome添加にて細胞株の増殖能を抑制し(P<0.05)、遊走能を上昇させる(P<0.05)表現系を得た。exosome添加によって変動する遺伝子発現のmicroarrayを用いた評価は実施済であり、現在変動遺伝子に関する機能解析を進めている。血漿exosomeの定量系に関して、nanoparticle tracking assayおよびAChE活性による定量を比較し妥当性を評価した。ESCC患者血漿および非癌患者血漿から抽出したexosomeを定量し、臨床病理学的因子との関連につき解析したところ、血漿exosome量は癌患者において非癌患者より有意に高値(P=0.0014)であった。その一方で癌患者においてはexosome低値が独立した予後不良因子であり(P=0.03)、exosome量と癌のTNM因子やStage、宿主側の免疫能・炎症等との関連につき評価した。本研究は研究者の異動により2015年度で終了となる、また本研究結果は現在英文誌(Oncology Reports)に投稿中である。
KAKENHI-PROJECT-15K19872
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K19872
歌舞伎鳴物における音楽構成技法の展開
本研究は、歌舞伎鳴物(歌舞伎の伴奏を行う笛と打楽器のアンサンブル)における音楽構成技法について、従来主に扱われてきた「曲の名称」の範囲を超え、楽器ごとに数百種にわたる「手」(定型パターン)のレベルでの調査検討を進めるものである。歌舞伎を演出する音楽的要素のうち、鳴物はとくに即応的性格が強く、音楽構成の手掛かりとなるような文献資料がまとまった形ではあまり残されていない。これに対し、断片的ながら蓄積されつつある幕末から近現代にかけての資料群、演奏者が記号や略称を書き留めるツケや録音・映像等をふくめた総合的な分析・解釈に着手することで、構造や変化を多角的に検証しようと試みる研究である。本研究は、歌舞伎鳴物(歌舞伎の伴奏を行う笛と打楽器のアンサンブル)における音楽構成技法について、従来主に扱われてきた「曲の名称」の範囲を超え、楽器ごとに数百種にわたる「手」(定型パターン)のレベルでの調査検討を進めるものである。歌舞伎を演出する音楽的要素のうち、鳴物はとくに即応的性格が強く、音楽構成の手掛かりとなるような文献資料がまとまった形ではあまり残されていない。これに対し、断片的ながら蓄積されつつある幕末から近現代にかけての資料群、演奏者が記号や略称を書き留めるツケや録音・映像等をふくめた総合的な分析・解釈に着手することで、構造や変化を多角的に検証しようと試みる研究である。
KAKENHI-PROJECT-19J01292
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19J01292
RANKL vaccinationによる骨関節疾患治療の基礎的研究
Receptor Activator of NF-kB Ligand (RANKL)は317アミノ酸からなるTNFファミリーに属する膜結合型のサイトカインである。近年RANKLが生理的な骨吸収のみならず骨粗鬆症や慢性関節リウマチなどの病的骨破壊にも関与していることが明らかになり、RANKLの阻害因子osteoprotegerinはこのような疾患に対する治療薬として期待されている。しかしこのような蛋白製剤は頻回投与により免疫原性を示し、中和抗体産生による効果減弱などの問題点が指摘されている。今回われわれは自己RANKLに対する液性免疫誘導により骨破壊を抑制するという全く新しい治療法を開発した。マウスRANKLの一部にT helperepitopeを含んだmodifiedrecombinant RANKLをワクチン(RANKL-V)として使用した。2週毎4回のRANKL-V投与により中和活性を持つRANKL自己抗体が誘導され、抗体価の上昇は投与終了後半年以上にわたり認められた。ワクチン投与マウスの全身臓器には明らかな異常所見はみられなかった。10週齢のBALB/cマウスに同様にワクチン投与を行った後OVXおよびSham手術を施行し、その5週後に骨塩量測定および組織学的検討を行った。コントロール群ではOVXにより骨塩量の有意な低下がみられたが、ワクチン投与群では骨塩量減少が抑制された。組織学的にも破骨細胞数および骨吸収面の有意な減少が認められた。また関節リウマチモデルであるSKGマウスにおいてもRANKL-Vによって関節炎による骨破壊が抑制された。以上の結果からRANKLワクチン療法は関節炎や骨粗鬆症などにおける病的な骨吸収に対して有効な治療法と考えられる。Receptor Activator of NF-kB Ligand (RANKL)は317アミノ酸からなるTNFファミリーに属する膜結合型のサイトカインである。近年RANKLが生理的な骨吸収のみならず骨粗鬆症や慢性関節リウマチなどの病的骨破壊にも関与していることが明らかになり、RANKLの阻害因子osteoprotegerinはこのような疾患に対する治療薬として期待されている。しかしこのような蛋白製剤は頻回投与により免疫原性を示し、中和抗体産生による効果減弱などの問題点が指摘されている。今回われわれは自己RANKLに対する液性免疫誘導により骨破壊を抑制するという全く新しい治療法を開発した。マウスRANKLの一部にT helperepitopeを含んだmodifiedrecombinant RANKLをワクチン(RANKL-V)として使用した。2週毎4回のRANKL-V投与により中和活性を持つRANKL自己抗体が誘導され、抗体価の上昇は投与終了後半年以上にわたり認められた。ワクチン投与マウスの全身臓器には明らかな異常所見はみられなかった。10週齢のBALB/cマウスに同様にワクチン投与を行った後OVXおよびSham手術を施行し、その5週後に骨塩量測定および組織学的検討を行った。コントロール群ではOVXにより骨塩量の有意な低下がみられたが、ワクチン投与群では骨塩量減少が抑制された。組織学的にも破骨細胞数および骨吸収面の有意な減少が認められた。また関節リウマチモデルであるSKGマウスにおいてもRANKL-Vによって関節炎による骨破壊が抑制された。以上の結果からRANKLワクチン療法は関節炎や骨粗鬆症などにおける病的な骨吸収に対して有効な治療法と考えられる。近年Receptor Activator of NF-kB Ligand (RANKL)が生理的な骨吸収のみならず骨粗鬆症や慢性関節リウマチなどの病的骨破壊にも関与していることが明らかになり、RANKLの阻害因子osteoprotegerinはこのような疾患に対する治療薬として期待されている。しかしこのような蛋白製剤は頻回投与により免疫原性を示し、中和抗体産生による効果激弱などの問題点が指摘されている。今回われわれは自己RANKLに対する液性免疫誘導により骨破壊を抑制するという全く新しい治療法を開発した。マウスRANKLの一部にT helperepitopeを含んだmodfied recombinantをワクチン(RANKL-V)として使用した。2週毎4回のRANKL-V投与により中和活性を持つRANKL自己抗体が誘導され、抗体価の上昇は投与終了後半年以上にわたり認められた。ワクチン投与マウスの全身臓器には明らか異常所見はみられなかった。10週齢のBALB/cマウスに同様にワクチン投与を行つた後OVXおよびSham手術を施行し、その5週後に骨塩量測定および組織学的検討を行った。コントロール群ではOVXにより骨塩量の有意な低下がみられたが、ワクチン投与群では骨塩量減少が抑制された。組織学的にも破骨細胞数および骨吸収面の有意な減少が認められた。以上の結果からRANKLワクチン療法は関節炎や骨粗鬆症などにおける病的な骨吸収に対して有効飴療法と考えられる。低分子量Gタンパク質であるRasは、21kDの細胞質タンパクである。レセプター型チロシンキナーゼをはじめとした種々の細胞内情報伝達系に関与し、細胞の増殖、分化に重要な役割を果たしていることが知られている。さまざまな癌組織においてRasの変異が認められ、恒常的に活性化したRasが癌細胞の異常な増殖に関与しているが、RA滑膜組織においてもRasの活性型変異が認められることが報告されている。われわれはRA滑膜炎におけるRasの役割を明らかにするために、アデノウイルスベクターを用いてドミナントネガティブ型のRas遺伝子(Ras^<DN>)を滑膜細胞に導入した。
KAKENHI-PROJECT-14370455
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14370455
RANKL vaccinationによる骨関節疾患治療の基礎的研究
その結果、Ras^<DN>遺伝子の導入により、RA滑膜細胞の増殖は有意に抑制された。またIL-1刺激によるMAPキナーゼ(ERK)の活性化が抑制され、IL-1によって誘導されるIL-6産生が転写および蛋白レベルで抑制された。先にも述べたようにRA滑膜細胞においてはRANKLの発現が亢進しているが、Ras^<DN>ウイルスによってその発現抑制が認められる。Ras^<DN>ウイルスをアジュバント関節炎ラットの炎症関節に投与したところ、注入関節における滑膜の増殖が抑制され、関節破壊が抑制された。これらの結果はRAにおける滑膜炎の活性化にはRas-MAPキナーゼ系の細胞内伝達が関与していることを示しており、その情報伝達系の抑制がRA関節炎治療戦略として有用である可能性を示唆している。破骨細胞分化促進因子であるRANKLは骨芽細胞表面に発現し、破骨細胞前駆細胞表面に発現したRANKに結合することにより破骨細胞の分化およびその機能発現に促進的に働く。RANKLには膜結合型と可溶型があり、膜結合型RANKLが膜近傍のstalk regionで切断されることにより可溶型RANKLが生じると考えられている。しかしながら可溶型RANKL産生の意義やその分子メカニズムは明らかになっていない。われわれはRANKL shedding活性を有する分子を同定するため、RANKLのstalk regionにアルカリフォスファターゼを結合させた融合蛋白発現ベクターを用い、RANKLshedding活性をメディウム中のアルカリフォスファターゼ活性として捉えるというアッセイ法を開発し、ST2細胞cDNAライブラリーをスクリーニングすることによりRANKL sheddingを制御する分子の同定を試みた。これまで10万クローンのスクリーニングを行い、得られたポジティブクローンについて骨芽細胞におけるRANKL shedding活性を検討したところ、Ras-GAP(GTPase-activating protein)として同定されたCAPRI(Ca^<2+>-promoted Ras inactivator)のスプライスバリアントがRANKL shedding活性を有することが明らかになった。CAPRIはCa2+依存性にRasの活性を抑制する分子であるが、われわれが同定したバリアント(ΔCAPRI)はGAP活性を欠損しており、ドミナントネガティブ的に作用すると考えられる。活性型のRas遺伝子発現によりRANKL sheddingが亢進することから、ΔCAPRIはRasの活性化により、RANKL sheddingを誘導する可能性が示唆された
KAKENHI-PROJECT-14370455
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14370455
抗腫瘍性ベンゾフェナンスリジンアルカロイド及び関連化合物の合成
1.容易に入手可能なベンツアルデヒド体及びフェネチルアミン類から,短工程で簡便なプロトベルベリンアルカロイドの位置選択的合成法を見出し,一般に合成困難な2, 3, 9, 10-位に酸素置換基をもつプロトベルベリンアルカロイドの全合成に成功した.2.上記アルカロイドから,過酸によるC_8-C_8結合の開裂,光再閉環により, D環の位置異性体である2, 3, 10, 11-位置換プロトベルベリンアルカロイドに導く新しい変換方法を開発した.3.ベルベリンから,ホフマン分解によるC_6-N結合の開裂,硝酸タリウムを用いるアセタール化,酸による再閉環により,生合成類似の経路でベンゾフェナンスリジンアルカロイドのケレリスリンを合成し,完全芳香化アルカロイドの新規合成法を開拓した.又,中間体のオキシケレリスリンから選択的脱メチル化により,構造未確定のファガリジンを合成した.4.上記合成法を適応し,抗腫瘍性アルカロイドのニチジン及びファガロニンを対応するプロトベルベリンから効率よく全合成することができた.5.フェノール性水酸基をもつオキシテリハニン及び5個の酸素置換基をもつサンギルチンを,それぞれ対応するプロトベルベリンから合成し,完全芳香化アルカロイド合成法の一般性を確立した.6.カチオン閉環反応による,立体選択的な脂環式ベンゾフェナンスリジンアルカロイドの新しい合成法を開拓した.これにより,ベルベリンからホモケリドニン及びケラミジンを,コプチシンからケリドニン及びケラミンを立体選択的に合成し,立体構造未定のケラミンの立体化学を解明した.7.上記の合成中間体から,完全芳香化アルカロイドのケレリスリン及びサンギナリンに導き,同一中間体を経由して,両タイプのアルカロイドを合成する新しい合成法を確立した.1.容易に入手可能なベンツアルデヒド体及びフェネチルアミン類から,短工程で簡便なプロトベルベリンアルカロイドの位置選択的合成法を見出し,一般に合成困難な2, 3, 9, 10-位に酸素置換基をもつプロトベルベリンアルカロイドの全合成に成功した.2.上記アルカロイドから,過酸によるC_8-C_8結合の開裂,光再閉環により, D環の位置異性体である2, 3, 10, 11-位置換プロトベルベリンアルカロイドに導く新しい変換方法を開発した.3.ベルベリンから,ホフマン分解によるC_6-N結合の開裂,硝酸タリウムを用いるアセタール化,酸による再閉環により,生合成類似の経路でベンゾフェナンスリジンアルカロイドのケレリスリンを合成し,完全芳香化アルカロイドの新規合成法を開拓した.又,中間体のオキシケレリスリンから選択的脱メチル化により,構造未確定のファガリジンを合成した.4.上記合成法を適応し,抗腫瘍性アルカロイドのニチジン及びファガロニンを対応するプロトベルベリンから効率よく全合成することができた.5.フェノール性水酸基をもつオキシテリハニン及び5個の酸素置換基をもつサンギルチンを,それぞれ対応するプロトベルベリンから合成し,完全芳香化アルカロイド合成法の一般性を確立した.6.カチオン閉環反応による,立体選択的な脂環式ベンゾフェナンスリジンアルカロイドの新しい合成法を開拓した.これにより,ベルベリンからホモケリドニン及びケラミジンを,コプチシンからケリドニン及びケラミンを立体選択的に合成し,立体構造未定のケラミンの立体化学を解明した.7.上記の合成中間体から,完全芳香化アルカロイドのケレリスリン及びサンギナリンに導き,同一中間体を経由して,両タイプのアルカロイドを合成する新しい合成法を確立した.1.ベルベリンからホフマン分解反応による【C_6】-N結合の開裂、硝酸タリウムを用いるアセタール化、酸による再閉環により生合成類似の経路でベンゾフェナンスリジンアルカロイドのケレリスリンに好収率で導き、完全芳香化アルカロイドの新しい合成法を確立した。2.上記反応の原料となるプロトベルベリンを容易に入手可能なベンツアルデヒド体から短工程で簡便な位置選択的合成法を見出し、一般に合成困難な2,3,9,10-位に酸素置換基をもつプロトベルベリンアルカロイドを全合成することができた。3.天然に豊富に産するプロトベルベリンから過酸による【C(^-_8)】【C_(8a)】結合の開裂、再閉環により、D環の酸素置換基の位置異性体に導く方法を開発した。4.抗腫瘍性アルカロイドのニチジン及びファガロニンを対応するプロトベルベリンから上記合成法を適応し、新しい効率よい全合成を完成することができた。フェノール性水酸基を有するファガロニンの場合には、最も一般的なベンジルエーテルを保護基に用い容易に目的を達することができた。このことは本反応条件が非常に穏和なことを示している。5.カチオン閉環反応による脂環式ベンゾフェナンスリジン骨格合成法を開拓した。即ち、プロトベルベリンの【C_6】-N開裂体の【C_(13)】位に水酸基を導入し、酸によりベンジルカチオンを生成させ閉環させるものである。この反応を駆使して,ベルベリンから脂環式アルカロイドのホモケリドニンを高収率で立体選択的に全合成し、この種アルカロイドの新しい合成法を開拓した。
KAKENHI-PROJECT-61470148
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61470148
ピグーの政策思想
平成24・25年度は,2つの論文を学術雑誌に投稿し,そのうち1本が受理された。論文のタイトルは,Models and Mathematics : How Pigou Came to Adopt the IS-LM-model Reasoningで,この論文が,北米の経済学史学会の機関誌であるJournal of the History of Economic Thought誌に掲載されることが決まった。この論文では,2011年9月に英国ケンブリッジで調査した資料を利用して,以下のような内容の議論を行った。すなわち,1937=38年に起こった,アーサー・ピグーとジョン・メイナード・ケインズとのあいだの論争を,理論モデルが各論争当事者にどのように分析されたかという点に焦点を当てて議論した。結論では,ピグーがこの論争に敗北した原因は,みずからが設定した論文を数学的に分析することができなかったことにあったと主張した。この2つの研究論文以外には,3つの著作活動を行った。第一に,2010-11年の米国デューク大学経済学史センターでの滞在によって得た,歴史方法論にかんする知識を,日本の経済学史家に伝えるための展望論文を書いた。第二に,ミネルヴァ出版から,ピグーの論文集の訳書を刊行する予定であるが,その解題としてピグーを紹介する論文を書き下ろした。第三に,Journal of the History of Economic Thought誌に依頼を受け,Susan HowsonのLionel Robbinsの書評を書いた。海外の有力学術雑誌に論文が1本受理され,もう1本の,海外で数回報告を行った論文を雑誌に投稿した。このように研究上の業績を確実に増やすことができているため。1960年代アメリカの物価政策,特に「ガイドポスト政策」と呼ばれた賃金上昇抑制政策にたいして,その歴史的文脈を詳細に明らかにすることを計画している。本研究の意図は,60年代後半以降のインフレーションの原因を探ることではなく,物価にかんする当時の経済学者の議論における暗黙の前提を浮き彫りにすることである。本研究の特色は2点ある。第一に,マクロ経済学における重要な分岐点となった1960年代を扱うことである。というのも,1968年にミルトン・フリードマンが打ち出した自然失業率仮説によって,マクロ経済学は長期的現象にたいする関心を強めるようになったからである。第二に,本研究は歴史的考察であることに特色がある。経済学者のマクロ経済政策観は,必然的にそれ以前の経験や学説に根ざした先入観に影響される。本研究は,一般メディアや政府文書のようなさまざまな文献を用いて,1960年代の物価政策の歴史的文脈を考察する。平成22年度においては,ピグーとケインズの失業論争に関する研究を中心に行った。2010年5月に経済学史学会全国大会で発表し,さらに11月に米国デューク大学経済学史センターのランチセミナーで報告し,修正を加えたのち最終的に2011年3月に米国デューク大学のワーキングペーパーとしてこの研究を発表した。まもなくJournal of the History of Econnmic Thoughtに提出する予定である。この論文では,ピグーとケインズの論争をピグーの視点から考察したもので,ピグーが最終的にケインズの議論を受け入れた原因は何であったか,ピグーがのちに実物残高効果(ピグー効果)を提起した理由は何であったかを扱った。結論として本研究は,ピグーは理論モデルを解析的に分析する手法を獲得したことによってケインズの議論を受け入れるにいたった。そして,ピグーは実物残高効果によって,ケインジアンの枠組みを損なわずに自らの主張を回復しようと試みたのだと主張した。この研究以外に,ピグーの厚生経済学とヘンリー・シジウィックの経済倫理学との差異を考察する研究も遂行している。ピグーの厚生経済学は純粋に功利主義的な考慮に基づいているが,シジウィックは功利主義的な観点以外に自然権的な観点を持っていたといえる。この観点をもとに,現在シジウィックの著作の一層の考察,理解に努めている段階である。ピグーとケインズの失業論争にかんする論文を完成させた。この論文では,マクロ経済学の初期の歴史においてIS-LMモデルなどの理論モデルが使用されるようになった過程のなかに,この論争を位置づけ,理論モデルがマクロ経済学の複雑な議論を透明化する役割があったことを指摘した。同時に,この論争で重要な役割を果たしたニコラス・カルドアが,ヒックスからIS-LMモデルにかんする助言を受けており,さらにヒックスやハロッドがIS-LMモデルの構築のために依拠したエコノメトリクス・ソサイエティに積極的にかかわっていたこと,またピグーに助言をしたデヴィッド・チャンパーナウンがIS-LMモデルを先駆的に提示したことを指摘し,同論争は当時の経済理論家のコミュニティーに内在化させることができることを論じた。この研究は,6月に米国経済学史学会大会で報告し,9月にHistory of Political Economyに投槁。2月に修正依頼の通知を受け,同月に再投稿した。ピグーの著作『富と厚生』が,2012年に100周年記念を迎えるのにあわせて,今年の日本経済学史学会の全国大会でセッションが組まれる。そこで発表するための論文を作成した。タイトルは『楽観的な科学:ピグー厚生経済学の歴史的文脈』で,ピグーがケンブリッジ大学で経済学を学び,教えていた知的環境および一般の政策論争へのかかわりをまとめた。
KAKENHI-PROJECT-10J03574
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ピグーの政策思想
具体的には,当時の関税にかんする論争に政治家を真っ向から批判していたこと,ケンブリッジ大学内での社会主義運動に多くのピグーの同僚が参加していたことを指摘し,ピグーの厚生経済学につながる歴史的文脈が当時の資料から掘り起こした。以上の2つの研究は,「ピグーの政策思想」という本研究のテーマにより豊かな歴史的文脈を与えることに役立った。というのも,第一の研究は,ピグーの失業対策にたいする観点がケインズとの論争の火種になったことを見出し,いっぽうで第二の研究は,ピグーの厚生経済学に体現される政策思想がさまざまな側面において政策論争とのかかわりのなかから生み出されたものであることを指摘したからである。平成24・25年度は,2つの論文を学術雑誌に投稿し,そのうち1本が受理された。論文のタイトルは,Models and Mathematics : How Pigou Came to Adopt the IS-LM-model Reasoningで,この論文が,北米の経済学史学会の機関誌であるJournal of the History of Economic Thought誌に掲載されることが決まった。この論文では,2011年9月に英国ケンブリッジで調査した資料を利用して,以下のような内容の議論を行った。すなわち,1937=38年に起こった,アーサー・ピグーとジョン・メイナード・ケインズとのあいだの論争を,理論モデルが各論争当事者にどのように分析されたかという点に焦点を当てて議論した。結論では,ピグーがこの論争に敗北した原因は,みずからが設定した論文を数学的に分析することができなかったことにあったと主張した。この2つの研究論文以外には,3つの著作活動を行った。第一に,2010-11年の米国デューク大学経済学史センターでの滞在によって得た,歴史方法論にかんする知識を,日本の経済学史家に伝えるための展望論文を書いた。第二に,ミネルヴァ出版から,ピグーの論文集の訳書を刊行する予定であるが,その解題としてピグーを紹介する論文を書き下ろした。第三に,Journal of the History of Economic Thought誌に依頼を受け,Susan HowsonのLionel Robbinsの書評を書いた。昨年度は,2本の新しい論文を作成した。1本を投稿中であり,もう1本はワーキングペーパーの段階である。1年間,米国デューク大学経済学史センターに滞在した成果が現れていると思う。海外の有力学術雑誌に論文が1本受理され,もう1本の,海外で数回報告を行った論文を雑誌に投稿した。このように研究上の業績を確実に増やすことができているため。現在計画している研究は,のちの世代の経済学者がピグーをどう受容したかというものである。ミルトン・フリードマンはさまざまな箇所でピグーに言及しており,ピグーをケインズの対抗軸として重視していたことが推測される。ロナルド・コースも同様にピグーに言及した。ピグーがのちの経済学者にどう利用されたかを見ることで,ピグー像をより豊かにすることができる。1960年代アメリカの物価政策,特に「ガイドポスト政策」と呼ばれた賃金上昇抑制政策にたいして,その歴史的文脈を詳細に明らかにすることを計画している。
KAKENHI-PROJECT-10J03574
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「理想的な数学授業」のイメージと実情に関する国際比較研究
1.第3回国際数学・理科教育調査の付帯調査として行われた「TIMSS1999数学授業ビデオ研究」の7か国の国際比較結果を、わが国の視点により、「理想的な授業」、「典型的な授業」の観点から検討し、その結果についてオーストラリア・チェコ・オランダ・スイス・香港・アメリカの研究者と討議するとともに、アメリカ教育学会(AERA、シカゴ)において成果を発表した。2.TIMSS1999数学授業ビデオ研究の結果を、「主な結果」、「日本の特徴」、「数学授業の構成」、「授業の数学的内容」の4つの視点から分析を行い、また「日本の特徴」、「日本とオランダの比較」、「チェコとオーストラリアの比較」「日本と香港の比較」の4つの視点から分析を行った。その分析結果は学会で発表した。3.わが国の数学授業のビデオ55本についての教師質問紙の一覧表を、各授業の特徴がわかりやすくなるよう、作成した。4.TIMSS1999数学授業ビデオ研究の一環としてビデオ撮影されたわが国の中学校数学授業記録51本を完成した。5.『7か国の数学授業-TIMSS1999数学授業ビデオ研究の結果』(2003)で公開されたオーストラリア・チェコ・オランダ・スイス・香港・アメリカの授業についてビデオの記録表の翻訳を行った。6.結果を研究成果報告書「『理想的な数学授業』のイメージと実情に関する国際比較研究」(2005年、481ページ)他にまとめた。1.第3回国際数学・理科教育調査の付帯調査として行われた「TIMSS1999数学授業ビデオ研究」の7か国の国際比較結果を、わが国の視点により、「理想的な授業」、「典型的な授業」の観点から検討し、その結果についてオーストラリア・チェコ・オランダ・スイス・香港・アメリカの研究者と討議するとともに、アメリカ教育学会(AERA、シカゴ)において成果を発表した。2.TIMSS1999数学授業ビデオ研究の結果を、「主な結果」、「日本の特徴」、「数学授業の構成」、「授業の数学的内容」の4つの視点から分析を行い、また「日本の特徴」、「日本とオランダの比較」、「チェコとオーストラリアの比較」「日本と香港の比較」の4つの視点から分析を行った。その分析結果は学会で発表した。3.わが国の数学授業のビデオ55本についての教師質問紙の一覧表を、各授業の特徴がわかりやすくなるよう、作成した。4.TIMSS1999数学授業ビデオ研究の一環としてビデオ撮影されたわが国の中学校数学授業記録51本を完成した。5.『7か国の数学授業-TIMSS1999数学授業ビデオ研究の結果』(2003)で公開されたオーストラリア・チェコ・オランダ・スイス・香港・アメリカの授業についてビデオの記録表の翻訳を行った。6.結果を研究成果報告書「『理想的な数学授業』のイメージと実情に関する国際比較研究」(2005年、481ページ)他にまとめた。1.アメリカのレッスン・ラボが中心になって作成した『日本・ドイツ・アメリカの中学校2年生の数学授業』の報告書(1999)の全文の翻訳を行った。2.上記報告書に所収のわが国の数学授業のビデオ55本について、教師質問紙の回答をまとめ、一覧表として作成した。3.上記報告書におけるわが国の中学校数学授業の背景を説明する資料として、わが国の中学校の数学カリキュラム改革の動向及び数学授業の特徴についてまとめた。また授業について、教師と生徒の発言のテープおこしを行った。現在4本が完成し、残りはその途中である。4.アメリカのレッスン・ラボを訪問し、オーストラリア・アメリカ・オランダ・スイス等の研究者と数学授業について情報交換を行うとともに、数学授業のあり方や実態に関連する資料の収集を行った。5.アメリカのレッスン・ラボが中心になって作成した『7か国の数学授業-TIMSS1999数学授業ビデオ研究の結果』(2003)の全文の翻訳を行うとともに、結果の速報版をまとめた。今回の結果では、わが国と香港とが同じくらい成績が高いが、数学の指導法は異なること、例えば、香港は新しい内容の練習を重視し、わが国は新しい内容の導入を重視していること、わが国は一連の問題を通して考え方が発展するように数学問題を配列しているが、香港は同じタイプの問題を続けて出していることなどが明らかになった。また、各国の授業のスナップショットが入っている英語版CDの翻訳も同時に行った。6.以上の成果を、報告書第一集「7か国の中学校2年数学授業の比較-TIMSS1999数学授業ビデオ研究-」(2003年、300ページ)としてまとめた。1.わが国の視点によりTIMSS1999数学授業ビデオ研究の7か国の国際比較結果を見直し、その結果の一部をアメリカ教育学会(AERA、シカゴ)において発表した。またその際、他国の理想的な数学授業・典型的な数学授業の概念と実際について各国の担当者から情報収集を行った。2.TIMSS1999数学授業ビデオ研究の結果を、「主な結果」、「日本の特徴」、「数学授業の構成」、「授業の数学的内容」の4つの視点から分析を行い、日本科学教育学会年会において発表した。3.TIMSS1999数学授業ビデオ研究の結果を、『日本の特徴」、「日本とオランダの比較」、「チェコとオーストラリアの比較」の3つの視点から分析を行い、日本数学教育学会論文発表会において発表した。4.昨年度から行っている教師と生徒の発言のテープおこしを行った。
KAKENHI-PROJECT-14380065
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「理想的な数学授業」のイメージと実情に関する国際比較研究
テープおこしにあたっては、固有名詞を記号におきかえるなど、細心の注意を払った。昨年度は4本が完成し、今年度は12本が完成した。5.『7か国の数学授業-TIMSS1999数学授業ビデオ研究の結果』(2003)で公開された各国4本(オーストラリア・チェコ・オランダ・スイス・香港・アメリカ・日本)、7か国で合計28本のうち10本について、ビデオの記録表の翻訳を完成した。6.昨年度作成したわが国の数学授業のビデオ55本についての教師質問紙の一覧表を、各授業の特徴がわかりやすくなるよう、各12頁で収まるようにレイアウトを変え、作成しなおした。7.上記のうち、1、2、3、6の成果を、報告書「日本と6か国の中学校数学授業の特徴-TIMSS1999数学授業ビデオ研究-」(2004年、128ページ)としてまとめた。1.TIMSS1999数学授業ビデオ研究の一環としてビデオ撮影されたわが国の中学校数学授業について、教師と生徒の発言のテープおこしを引き続き行った。テープおこしにあたっては、固有名詞を記号におきかえる等人権の保護について細心の注意を払っているため、予想外に時間がかかり、平成14年度は4本が完成し、平成15年度は12本が完成した。平成16年度は、テープが途中で切れていた2本を除く33本についてテープ起こしを完成させた。これでひとまず必要なテープ起こしは完了した。2.『7か国の数学授業-TIMSS1999数学授業ビデオ研究の結果』(2003)で公開された各国4本(オーストラリア・チェコ・オランダ・スイス・香港・アメリカ・日本)、7か国で合計28本のうち10本については平成15年度にビデオの記録表の翻訳を完成した。平成16年度は、残り18本のうち9本について記録表の翻訳を完成させた。3.わが国の数学授業について、わが国の視点に立って数学授業の長所や短所を明らかにした。同時に諸外国の理想的な授業に関連する資料の収集も行った。4.以上の資料をもとに、日本と香港の比較を行い、「理想的な数学授業」のイメージと実情について比較を行った。結果の一部を日本数学教育学会で発表した。5.以上の結果を研究成果報告書「『理想的な数学授業』のイメージと実情に関する国際比較研究」(2005年、481ページ)としてまとめた。
KAKENHI-PROJECT-14380065
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微生物群を利用したマイクロセンシングシステムの研究
本研究は、微生物を「多機能で高性能なマイクロセンサデバイス」として捉え,微生物群の生理機能や協調関係を積極的に利用することで,外部からの動的制御によるマイクロセンシングシステムを実現することを目的とするものである.本年度は,微生物の生理機構や走性メカニズム等を数理的にモデル化し,微生物継続観察システムによって得られたデータをもとにモデルの検討を行った.また,構築した数理モデルを微生物制御実験に応用し,センサデバイス構築のためのデータを収集した.前年度に基礎的な実験を行った,微生物へのセンサ特性の付与,センシング情報の可視化,微生物アクチュエーション技術等の各要素についても引き続き実験を進め,システムを改良した.具体的には,1.ゾウリムシの機械刺激受容のメカニズムについて,引き続き調査検討を行った.2.センシング情報の可視化技術として,カルシウムイオンプローブの励起された蛍光を撮像する設備をさらに改良し,インジェクション実験を進めた.3.ゾウリムシの電気走性のダイナミクスを表す数理モデルを構築し,入力である電気刺激とゾウリムシの姿勢から,ゾウリムシ細胞に発生するトルクを解析的に導出した.4.ゾウリムシの運動方程式を導出し,数値実験によって,Uターン行動等のゾウリムシ電気走性に特有の行動が振舞いのレベルで再現されることを確認した.5.ゾウリムシ電気走性継続観察システムによって実際のゾウリムシのデータを収集し,ゾウリムシ数理モデルと比較して定性的な評価を行った.6.ゾウリムシ数理モデルを1次元領域トラッピング等の微生物アクチュエーション技術に応用し,より高精度なアクチュエーション技術を実現した.本研究は,微生物を「多機能で高性能なマイクロセンサデバイス」として捉え,微生物群の生理機能や協調関係を積極的に利用することで,外部からの動的制御によるマイクロセンシングシステムを実現することを目的とするものである.本年度は,微生物の生理機構や走性メカニズム等を制御論敵観点から考察して理論の基礎的な部分を確立するとともに,微生物へのセンサ特性の付与,センシング情報の可視化,微生物アクチュエーション技術等の各要素についてシステムを試作し,基礎実験を行って性能を評価し,検討を加えた.具体的には,1.センシング情報として触覚刺激によるゾウリムシ体内のカルシウムイオン濃度の変化を利用することとし,ゾウリムシの触覚のメカニズムを調査して,センサとしての基礎特性を考察した.2.センシング情報の可視化技術としてカルシウムイオン蛍光プローブを採用し,ゾウリムシ体内にプローブをマイクロインジェクションによって注入するための設備,および励起された蛍光を撮像する設備を構築した.3.運動するゾウリムシの応答計測とその解析のために電気走性継続観察システムを構築し,高速トラッキング技術を用いた応答計測によりセンサデバイス構築に有用なデータを収集した.4.電気刺激入力デバイスと組み合わせることにより,1次元領域トラッピング等の微生物アクチュエーション技術を実現した.本研究は、微生物を「多機能で高性能なマイクロセンサデバイス」として捉え,微生物群の生理機能や協調関係を積極的に利用することで,外部からの動的制御によるマイクロセンシングシステムを実現することを目的とするものである.本年度は,微生物の生理機構や走性メカニズム等を数理的にモデル化し,微生物継続観察システムによって得られたデータをもとにモデルの検討を行った.また,構築した数理モデルを微生物制御実験に応用し,センサデバイス構築のためのデータを収集した.前年度に基礎的な実験を行った,微生物へのセンサ特性の付与,センシング情報の可視化,微生物アクチュエーション技術等の各要素についても引き続き実験を進め,システムを改良した.具体的には,1.ゾウリムシの機械刺激受容のメカニズムについて,引き続き調査検討を行った.2.センシング情報の可視化技術として,カルシウムイオンプローブの励起された蛍光を撮像する設備をさらに改良し,インジェクション実験を進めた.3.ゾウリムシの電気走性のダイナミクスを表す数理モデルを構築し,入力である電気刺激とゾウリムシの姿勢から,ゾウリムシ細胞に発生するトルクを解析的に導出した.4.ゾウリムシの運動方程式を導出し,数値実験によって,Uターン行動等のゾウリムシ電気走性に特有の行動が振舞いのレベルで再現されることを確認した.5.ゾウリムシ電気走性継続観察システムによって実際のゾウリムシのデータを収集し,ゾウリムシ数理モデルと比較して定性的な評価を行った.6.ゾウリムシ数理モデルを1次元領域トラッピング等の微生物アクチュエーション技術に応用し,より高精度なアクチュエーション技術を実現した.
KAKENHI-PROJECT-04J10868
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04J10868
個人差に対応した学習意欲を高める授業実践ナビゲーション・データベースの開発研究
本研究では個人差に対応した学習意欲を高める授業実践を確立した上で,ナビゲーション・データベースの開発を行った。具体的には1)英語学習意欲を高める授業実践法の確立, 2)学習者の個人差要因の把握, 3)ナビゲーション・データベースの開発の3点である。その結果,外国ドラマ・映画を用いたコミュニケーション活動とGP活動を,学習意欲を高める授業実践法とし,英語学力と動機づけの質を指標とするデータベースを作成した。本研究では個人差に対応した学習意欲を高める授業実践を確立した上で,ナビゲーション・データベースの開発を行った。具体的には1)英語学習意欲を高める授業実践法の確立, 2)学習者の個人差要因の把握, 3)ナビゲーション・データベースの開発の3点である。その結果,外国ドラマ・映画を用いたコミュニケーション活動とGP活動を,学習意欲を高める授業実践法とし,英語学力と動機づけの質を指標とするデータベースを作成した。本年度は学習者の個人差要因の把握と学習意欲を高める授業実践法の確立のための実験研究を行った。調査は大学生を対象に,学習意欲を高める方略を具体化した介入実験を行,介入の前後での学習意欲の変動を調べた。データは量的データに加えて,質的データも収集し,結果を多面的に解釈できるようにした。また従来の介入実験は介入前後の2時点でデータを測定することが多かったが,本調査では学習意欲の中間測定も行い,3時点でのデータ収集を行った。それによって,介入の効果の有無だけでなく,介入が学習段階のどの時点で学習意欲に効果を与えるのかを捉えることが可能になった。また個人差要因の把握として,潜在クラス分析を行うことになって,介入の効果の個人差を把握することが可能になった。従来のクラスター分析等の学習者をプロファイリングする方法は,介入の効果を得る前に群わけを行い,その群わけに基づいて介入効果を検討していた。しかし潜在クラス分析では,介入の効果を加味し群わけが可能となる。例えば,介入によって有能感が高まることで学習意欲が向上群は,もともと有能感が高いという特徴があるが,逆に,有能感が高くない群には,有能感を高めるような介入は学習意欲の高揚には効果的ではなく,むしろ自律性を高めるような介入が有効である,というような結果を得られる。本年度はこのような介入実験複数行い学習欲高める授業実践法の確立に努めると同時に,個人差要因を加味した介入の効果検討も行い,データベース化に向けた基礎データの収集を中心に行った。本年度は、昨年度に続き学習意欲を高める方略を作成し、それを介入として方略の効果検証を行った。昨年度のデータと比較できるように、昨年度と同様の手続きをとり、2時点だけでなく、3時点でのデータ収集を行い、学習意欲の変動をより詳細に捉えようとした。その結果、学習意欲を高める効果が確認された方略は、「GP活動」と「外国ドラマ・映画を用いたコミュニケーション活動」の2種類であった。ともに学習者の内発的動機づけを高める働きがあり、特に前者は特性的な動機づけに、後者は英語授業に特化した動機づけに効果的であった。またKJ法を用いて質的データを分析することで、新たなる仮説の生成も試みた。学力指標も取り入れることで、より個人差の把握にも努めた。その結果、授業の教材に対して、日常生活で役に立つといった価値を見出している学習者に対して、方略が効果的である可能性が見出された。また方略はともに、動機づけの低い学習者に特に効果的であり、動機づけの高い学習者に対しては、高いレベルの動機づけを維持させる効果が確認された。またデータベースの作成も行った。データベースには、個人差指標を加えることで閲覧者が欲しい情報にたどり着きやすくできるような検索性の高いナビゲーション機能を加えた。データベース内には、学習意欲を高める授業で必要な情報が閲覧でき、またそれを解説した論文もダウンロードできるようにした。
KAKENHI-PROJECT-19820051
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低侵襲性胎児治療に関する基礎的研究-胎児治療用極細内視鏡及びカテーテルの開発とその有用性の検討
(1)胎児治療用極細内視鏡の開発胎児を観察するための胎児観察鏡とバルーンを挿入するための胎児処置鏡との2種類の内視鏡を試作した。胎児観察鏡は外径2.4mmで視野角110度、胎児処置鏡は外径3.0mmで首振り角度は4方向各90度、視野角65度とした。(2)胎児治療用極細バルーンカテーテルの開発外径1.2mm長さ5mm肉厚0.1-0.15mmのバルーンを作成し、内径0.3mm外径0.7mmのシリコンチューブを接続し、解放端にはシリコンゴムを充填した。作成したカテーテルについて、その耐圧、耐容量試験、リーク試験を行い、さらに注入量と径との関連とにつき検討した(3)羊胎仔による胎児治療用極細内視鏡を用いた気管カテーテルの挿入と有用性の検討試作した極細内視鏡・極小バルーンカテーテルを用いて、羊胎仔気管内への内視鏡的なバルンカテーテル挿入を試みた。母獣の腹壁を切開し子宮壁を露出せしめ、子宮壁に小切開を加え、内視鏡の先端を子宮内へ挿入した。内視鏡による子宮内観察の視野を良くするため、子宮内へラクテック液を注入した。当初、内視鏡を2本用い、1本は他方の内視鏡先端を胎仔の鼻孔に誘導するために使用したが困難であったため、胎仔の頭部を子宮壁を介して術者の手掌にで把持し、鼻孔が子宮壁切開創直下に来るように固定してから、内視鏡先端を挿入した。生理的食塩水を持続的に注入することにより内視鏡による観察は良好となり、鼻腔内から喉頭に到るまでは内視鏡先端の挿入は容易であった。喉頭蓋を超えて気管内に内視鏡先端を挿入することは、急角度となるため困難であり、内視鏡の操作性の改善が必要であると思われた。胎仔の頸部を伸展させることにより挿入は可能であり、内視鏡先端挿入後は内視鏡先端内部に装着したバルンカテーテルの留置は容易であった。本科学研究費補助金を受け、3分野に於て、それぞれ研究を開始し、以下の成果を得た。1)子宮内胎児治療用極細内視鏡の開発(内海、中原担当)処置後、子宮縫合が不要で、胎児気管内にバルーンを運搬できるだけ細く且つflexibleな内視鏡を試作した。試作品は外径2.6mmで操作口が1.0mmである。本試作品の有用性を妊娠ヤギを用いてテストした。2)胎児気管内留置用バルーンカテーテルの開発(和田、佐藤担当)バルーン部外径0.9mm、膨張時短径5mm長径1.5mm(ヒト胎児気管内径は妊娠40週頃で4.5mmであることを超音波検査にて確認)のシリコン性微細バルーンカテーテルを試作した。3)動物実験(岡井、梁、坂井、小林担当)上記器具の胎児横隔膜ヘルニア治療への有用性を確認するため、ヤギ胎仔に於ける横隔膜ヘルニア作製実験を行った。妊娠6075日に開腹し胎仔の第3肋間よりペアンを挿入し横隔膜を穿破することで胎仔横隔膜ヘルニアを作製できた。〈今後の方針〉山羊胎仔で横隔膜ヘルニアの作製に成功はしたものの、成功率が低く、山羊は実験数を多くすることが困難であるため、今後は、小動物で胎仔数が多く、妊娠期間の短い家兎を用いて気管閉塞法の胎仔横隔膜ヘルニアへの治療効果を検討することとし、山羊では内視鏡、バルーンカテーテルの有用性と安全性の確認を行う方針とする。(1)胎児治療用極細内視鏡の開発胎児を観察するための胎児観察鏡とバルーンを挿入するための胎児処置鏡との2種類の内視鏡を試作した。胎児観察鏡は外径2.4mmで視野角110度、胎児処置鏡は外径3.0mmで首振り角度は4方向各90度、視野角65度とした。(2)胎児治療用極細バルーンカテーテルの開発外径1.2mm長さ5mm肉厚0.1-0.15mmのバルーンを作成し、内径0.3mm外径0.7mmのシリコンチューブを接続し、解放端にはシリコンゴムを充填した。作成したカテーテルについて、その耐圧、耐容量試験、リーク試験を行い、さらに注入量と径との関連とにつき検討した(3)羊胎仔による胎児治療用極細内視鏡を用いた気管カテーテルの挿入と有用性の検討試作した極細内視鏡・極小バルーンカテーテルを用いて、羊胎仔気管内への内視鏡的なバルンカテーテル挿入を試みた。母獣の腹壁を切開し子宮壁を露出せしめ、子宮壁に小切開を加え、内視鏡の先端を子宮内へ挿入した。内視鏡による子宮内観察の視野を良くするため、子宮内へラクテック液を注入した。当初、内視鏡を2本用い、1本は他方の内視鏡先端を胎仔の鼻孔に誘導するために使用したが困難であったため、胎仔の頭部を子宮壁を介して術者の手掌にで把持し、鼻孔が子宮壁切開創直下に来るように固定してから、内視鏡先端を挿入した。生理的食塩水を持続的に注入することにより内視鏡による観察は良好となり、鼻腔内から喉頭に到るまでは内視鏡先端の挿入は容易であった。
KAKENHI-PROJECT-07507006
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07507006
低侵襲性胎児治療に関する基礎的研究-胎児治療用極細内視鏡及びカテーテルの開発とその有用性の検討
喉頭蓋を超えて気管内に内視鏡先端を挿入することは、急角度となるため困難であり、内視鏡の操作性の改善が必要であると思われた。胎仔の頸部を伸展させることにより挿入は可能であり、内視鏡先端挿入後は内視鏡先端内部に装着したバルンカテーテルの留置は容易であった。新生児における先天性横隔膜ヘルニアは肺低形成のため極めて予後不良であり、胎児治療が望まれている。子宮内胎児に対する横隔膜修復手術が報告されているが、侵襲が大きく成績は不良である。一方、横隔膜ヘルニア羊胎仔において気管を閉塞することにより肺の発達が促進されることが明らかにされ、ヒト胎仔への応用が考えられる。本研究の目的は、横隔膜ヘルニア胎児の気管を低侵襲な内視鏡手術により閉塞する方法を開発することである。本年度は昨年度試作した極細内視鏡・極小バルーンカテーテルを用いて、羊胎仔気管内への内視鏡的なバルンカテーテル挿入を試みた。妊娠120-130日の妊娠羊に対し、ラボナ-ル静注後気管内挿管し、ハロセン2-3%の吸入麻酔下で以下の実験を行った。母獣の腹壁を切開し子宮壁を露出せしめ、子宮壁に小切開を加え、内視鏡の先端を子宮内へ挿入した。内視鏡による子宮内観察の視野を良くするため、子宮内へラクテック液を注入した。当初、内視鏡を2本用い、1本は地方の内視鏡先端を胎仔の鼻孔に誘導するために使用したが困難であったため、胎仔の頭部を子宮壁を介して術者の手掌にで把持し、鼻孔が子宮壁切開創直下に来るように固定してから、内視鏡先端を挿入した。生理的食塩水を持続的に注入することにより内視鏡による観察は良好となり、鼻腔内から喉頭に至るまでは内視鏡先端の挿入は容易であった。喉頭蓋を超えて気管内に内視鏡先端を挿入することは、急角度となるため困難であり、内視鏡の操作性の改善が必要であると思われた。胎仔の頸部を伸展させることにより挿入は可能であり、内視鏡先端挿入後は内視鏡先端内部に装着したバルンカテーテルの留置は容易であった。<子宮内胎児治療用極細内視鏡の開発>処置後、子宮縫合が不要で、胎児気管内にバルーンを運搬でき、できるだけ細く且つ柔軟性に富む内視鏡を試作した。試作品は外径が2.6mmで、操作口は1.0mmである。<胎児気管内留置用バルンカテーテルの開発>バルン部外径が0.9mm、膨張時短径5mm、長径15mmのシリコン性微細バルンカテーテルを試作し、耐久性・緊張の保持能力を生食内または浸透圧の異なる溶液中でテストした。<内視鏡の操作性に関する検討>妊娠120-130日の妊娠羊に対し、吸入麻酔下にて母獣腹壁を切開し、内視鏡先端を子宮腔内に挿入し、胎仔の鼻腔を経由し喉頭まで進めた。喉頭蓋を越えて気管内に先端を侵入させることが困難であり、胎仔の頸部を伸展させることにより可能となった。<バルンカテーテルの留置に関する検討>上記羊胎仔の気管内に内視鏡先端を挿入させた後、内視鏡先端部に装着したバルンカテーテルを前方に進め、生食を注入しバルンを膨らませてから内視鏡と分離させ気管内に留置することができた。妊娠末期まで長期間留置した場合には、胎仔気管径の増大によりバルンカテーテルが気管から滑脱していることが多かった。
KAKENHI-PROJECT-07507006
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軟骨に対する機械的ストスレとガスメディエーターの関与
変形性股関節症の発症には,機械的ストレスが重要な役割を果たす.しかしながら,軟骨細胞または軟骨組織に加わる機械的ストレスがどのような機構で軟骨変性を惹起するかについては不明であった.本研究では機械的ストレスとガスメディエーター,とりわけ活性酸素との関係を明らかにすることを第1の目的とする.また高分子ヒアルロン酸の関節内注入療法が変形性関節症に有効であるが,その作用機序についてはこれまで不明であった.本研究では,機械的ストレスによって軟骨細胞より誘導される活性酸素がヒアルロン酸の分子サイズに及ぼす影響を検討することを第2の目的とした.平成16年度には,軟骨細胞に周期的牽引負荷を加えることにより,ガスメディエーターである活性酸素が誘導されることを証明した.これは培養細胞を用いた結果であるが,平成17年度にはこの結果を軟骨片で再確認した.すなわち,軟骨片に圧迫負荷を加えることにより,活性酸素の反応産物であるパーオキシナイトライトの誘導が組織学的に明らかにされた.また,ヒアルロン酸に活性酸素を反応させることにより,その低分子化が観察された.平成18年度は周期的牽引負荷を加え,培養液中に放出されたヒアルロン酸の分子サイズを検討するとともに,活性酸素の関与の有無を検討した.この結果,機械的ストレスにより活性酸素の誘導は明らかに増加し,ヒアルロン酸の分子サイズは低下した.一方ヒアルロン酸合成酵素はmRNAレベルでの転写活性亢進を認めた.また活性酸素の中和剤であるsuperoxide dismutase(SOD)を添加し,分子サイズの変化を検討したところ,機械的ストレスによるヒアルロン酸の低分子化が回復された.以上の結果より,機械的ストレスによって誘導される活性酸素がヒアルロン酸の低分子化を引き起こすことが証明された.変形性股関節症の発症には,機械的ストレスが重要な役割を果たす.しかしながら,軟骨細胞または軟骨組織に加わる機械的ストレスがどのような機構で軟骨変性を惹起するかについては不明であった.本研究では機械的ストレスとガスメディエーター,とりわけ活性酸素との関係を明らかにすることを第1の目的とする.また高分子ヒアルロン酸の関節内注入療法が変形性関節症に有効であるが,その作用機序についてはこれまで不明であった.本研究では,機械的ストレスによって軟骨細胞より誘導される活性酸素がヒアルロン酸の分子サイズに及ぼす影響を検討することを第2の目的とした.平成16年度には,軟骨細胞に周期的牽引負荷を加えることにより,ガスメディエーターである活性酸素が誘導されることを証明した.これは培養細胞を用いた結果であるが,平成17年度にはこの結果を軟骨片で再確認した.すなわち,軟骨片に圧迫負荷を加えることにより,活性酸素の反応産物であるパーオキシナイトライトの誘導が組織学的に明らかにされた.また,ヒアルロン酸に活性酸素を反応させることにより,その低分子化が観察された.平成18年度は周期的牽引負荷を加え,培養液中に放出されたヒアルロン酸の分子サイズを検討するとともに,活性酸素の関与の有無を検討した.この結果,機械的ストレスにより活性酸素の誘導は明らかに増加し,ヒアルロン酸の分子サイズは低下した.一方ヒアルロン酸合成酵素はmRNAレベルでの転写活性亢進を認めた.また活性酸素の中和剤であるsuperoxide dismutase(SOD)を添加し,分子サイズの変化を検討したところ,機械的ストレスによるヒアルロン酸の低分子化が回復された.以上の結果より,機械的ストレスによって誘導される活性酸素がヒアルロン酸の低分子化を引き起こすことが証明された.白蓋形成不全に起因する変形性股関節症や,重度の不安定性を有する膝関節に合併する変形性膝関節症といった二次性変形性関節症の発症には,機械的ストレスが重要な役割を果たす.しかしながら,軟骨細胞または軟骨組織に加わる機械的ストレスがどのような機構で軟骨変形を惹起するかについては不明であった福田はこれまでに機械的ストレスに対する軟骨代謝の変化を細胞レベルで検討してきた.またIL-1に代表されるサイトカイン刺激による軟骨細胞の変性には,活性酸素やNOといったガスメディエーターが重要な役割を果たすことを報告した.しかしながら,機械的ストレスとガスメディエーターの関連についてはこれまでに報告がない.そこで本研究では機械的ストレスとガスメディエーター,とりわけ活性酸素との関係を明らかにすることを第1の目的とする.また高分子ヒアルロン酸の関節内注入療法が変形性関節症に有効であることが臨床的に知られている.その作用機序についてはこれまで不明であったが,福田はヒアルロン酸が軟骨細胞の産生する活性酸素を中和する作用のあることを報告した.一般に変形性関節症における関節液のヒアルロン酸の分子サイズは低下しており,この点より高分子ヒアルロン酸の軟骨保護作用が働いていることも想像される.このような背景のもと,機械的ストレスによって軟骨細胞より誘導される活性酸素がヒアルロン酸の分子サイズに及ぼす影響を検討することを本研究の第2の目的とした.平成16年度は,FX-3000を導入し,間接軟骨細胞に周期的牽引負荷をくわえた.これによる基礎的代謝の変化を検討した.軟骨細胞に対する牽引負荷により,プロテオグリカン合成能は低下し,活性酸素の産生が増加するという結果を得た.当初の目的としたヒアルロン酸の低分子化を示唆する結果も得られており,本研究は順調に進捗していると思われる.変形性関節症の発症には,機械的ストレスが重要な役割を果たす.しかし,軟骨細胞または軟骨組織に加わる機械的ストレスがどのような機構で軟骨変性を惹起するかについては不明であった.
KAKENHI-PROJECT-16591516
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軟骨に対する機械的ストスレとガスメディエーターの関与
本研究では機械的ストレスとガスメディエータ,とりわけ活性酸素との関係を明らかにすることを第1の目的とする.また高分子ヒアルロン酸の関節内注入療法が変形性関節症に有効であるが,その作用機序についてはこれまで不明であった.本研究では,機械的ストレスによって軟骨細胞より誘導される活性酸素がヒアルロン酸の分子サイズに及ぼす影響を検討することを第2の目的とした.平成16年度には,軟骨細胞に周期的牽引負荷を加えることにより,ガスメディエータである活性酸素が誘導されることを証明した.これは培養細胞を用いた結果であるが,実際の関節軟骨では細胞は多くの細胞外基質に囲まれた状況で存在する.したがって,この結果を直ちに生体に演繹することはできない.平成17年度にはこの結果を軟骨片で再確認した.すなわち,軟骨片に圧迫負荷を加えることにより,活性酸素の反応産物であるパーオキシナイトライトの誘導が組織学的に明らかにされた.また,軟骨細胞にFlexercell strain unit (FX-3000)を用いて周期的牽引負荷を加え,培養液中に放出されたヒアルロン酸の分子サイズを検討した.周期的牽引負荷により,産生されるヒアルロン酸の低分子化を示唆する実験結果を得た.以上の結果より,本研究は順調に進捗しているものと思われる.臼蓋形成不全に起因する変形性股関節症や,重度の不安定性を有する膝関節に合併する変形性膝関節症といった二次性変形性関節症の発症には,機械的ストレスが重要な役割を果たす.しかしながら,軟骨細胞または軟骨組織に加わる機械的ストレスがどのような機構で軟骨変性を惹起するかについては不明であった.本研究では機械的ストレスとガスメディエーター,とりわけ活性酸素との関係を明らかにすることを第1の目的とする.また高分子ヒアルロン酸の関節内注入療法が変形性関節症に有効であるが,その作用機序についてはこれまで不明であった.本研究では,機械的ストレスによって軟骨細胞より誘導される活性酸素がヒアルロン酸の分子サイズに及ぼす影響を検討することを第2の目的とした.平成16年度には,軟骨細胞に周期的牽引負荷を加えることにより,ガスメディエーターである活性酸素が誘導されることを証明した.これは培養細胞を用いた結果であるが,平成17年度にはこの結果を軟骨片で再確認した.すなわち,軟骨片に圧迫負荷を加えることにより,活性酸素の反応産物であるパーオキシナイトライトの誘導が組織学的に明らかにされた.平成18年度は,軟骨細胞にFlexercell strain unit(FX-3000)を用いて周期的牽引負荷を加え,培養液中に放出されたヒアルロン酸の分子サイズを検討した.周期的牽引負荷により,産生されるヒアルロン酸の低分子化が証明された.またmRNAレベルでのヒアルロン酸合成能を検討するために,RNAを抽出した後Reverse transcription-polymerase chainreaction(RTPCR)を行った.これにより,周期的牽引負荷によるヒアルロン酸の合成亢進をmRNAレベルで確認した.また活性酸素の中和剤であるsuperoxide dismutase(SOD)を添加し,分子サイズの変化を検討した.
KAKENHI-PROJECT-16591516
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自律型海中ロボットと海底ステーションによる海底4次元マッピングシステム
本課題では、自律型海中ロボット(Autonomous Underwater Vehicle, AUV)と海底ステーションの連携により、海底環境の長期間、広範囲かつ密なモニタリングを行う手法の研究開発を実施した。画像と音響の融合によるAUVのステーションへのドッキング手法および磁気共鳴方式による海中での非接触給電手法を開発し、既存のAUVシステムへ実装、水槽および実海域試験を通してその有効性を検証した。本手法は生物学、地質学、考古学といったサイエンス分野のほか、資源探査、漁業,港湾施設維持、捜索救助など幅広い分野への応用が期待される。本課題では、自律型海中ロボット(Autonomous Underwater Vehicle, AUV)と海底ステーションの連携により、海底環境の長期間、広範囲かつ密なモニタリングを行う手法の研究開発を実施した。画像と音響の融合によるAUVのステーションへのドッキング手法および磁気共鳴方式による海中での非接触給電手法を開発し、既存のAUVシステムへ実装、水槽および実海域試験を通してその有効性を検証した。本手法は生物学、地質学、考古学といったサイエンス分野のほか、資源探査、漁業,港湾施設維持、捜索救助など幅広い分野への応用が期待される。第1フェーズとして、AUVのナビゲーション、ドッキング、非接触充電、データ処理手法の技術開発を行った。AUVのナビゲーションでは、申請者らが開発を進めている、音響による相対測位・通信装置の実海域での実証試験を行い、測位精度を評価するとともに、マルチパス等によるノイズの傾向を調べ、ノイズに対してロバストなハイドロフォンアレイの配置方法、運用方法について検討した。また、実海域実験に基づくシミュレーションにより、ステーションから半径数百mの範囲で安定した測位を行うためのAUVの経路計画について検討した。ドッキングに関してはLEDアレイを備えた簡単な水中ステーションを試作し、申請者らの所有するAUVTri-TONを用いた水槽実験により測位精度を調べた。ドッキング装置の形状、手順、AUVとステーションのロック機構についても試作機による水槽試験を通して検討した。また、平成24年11月にOKIシーテック(静岡県沼津市)にて、AUVTri-TONと簡易海底ステーションによる実海域試験を行った。本試験により、AUVがステーションを基準として半径100メートル程度の範囲で安定して観測できること、ステーションへ確実にアプローチできることを確認した。また、実海域における課題抽出を行った。非接触充電に関しては、最新の研究状況について文献調査を実施した。また、磁気共鳴方式による試作機を製作し、東京大学三崎臨海実験所にて試験を実施した。本試験により、実海域での性能を検証した。データ処理手法に関しては、現在までに申請者らがAUVにより取得したデータを用いて、4次元マッピングの方法について検討するとともに、必要な計算機環境を整備した。本研究では、自律型海中ロボット(Autonomous Underwater Vehicle, AUV)と海底ステーションの連携により、海底環境の長期間、広範囲かつ密なモニタリングを実現する。観測手段としては可視光による撮影や地形計測など海底至近での実施が求められる手法を念頭におき、AUVにこのような作業をさせるためのナビゲーション手法、後処理によるデータ統合手法まで含めたトータルなシステム開発を行う。本手法は生物学、地質学、考古学といったサイエンス分野のほか、資源探査、漁業,港湾施設維持、捜索救助など幅広い分野への応用が期待される。本年度は第2フェーズとして、実証試験用の海底ステーションの設計・製作を行った。製作したステーションはAUVが実海域においてドッキングできるようにLEDマーカーを備えているほか、ドッキング時にAUVを安定して保持するための機構を備えている。また、非接触充電手法として、昨年度の第一フェーズにて基礎試験を行った磁気共鳴式の実証機を設計・製作し、海水中での動作を確認した。また、ドッキング手法について実海域試験を行い、ホバリング型AUV Tri-TON 2が海底ステーションにLEDマーカーを用いてドッキングできることを示した。AUVの深度方向のナビゲーションに課題が見られたものの、AUVが計測する深度、高度、LEDマーカーとの相対位置関係を組み合わせることで解決できると考えている。データ処理手法については、鹿児島湾若尊カルデラおよび駿河湾浅海域でのAUVによる撮影画像、地形データを用いて検討し、3次元画像化を実施した。本年度はAUVのナビゲーション、非接触充電装置についての研究開発を進めるとともに、システムを統合して実証試験を行った。AUVのナビゲーションについては、昨年度の課題であった深度方向の制御手法を改善するために、AUVが計測する深度、高度、LEDマーカーとの相対位置関係を組み合わせることで制御を安定させることに成功し、実海域においてドッキングできることを示した。非接触充電装置については昨年度までの実績を踏まえ、回路を小型化することでAUVへの搭載性、効率を向上させた。また、光によるフィードバッグ方式を採用することにより、200Wクラスの安定した送電ができるようになったほか、何らかの理由で送受信器間の距離が離れたり、間に異物が挟まったりした場合には安全に充電を止めることができるようになった。システムの有効性を示すための総合試験を実海域、水槽でそれぞれ実施した。実海域試験は平成26年12月に駿河湾の水深35m程度の浅海域で実施した。本試験ではAUV Tri-TON 2に提案手法を実装し、あらかじめ設置した海底ステーションへ自律的にドッキングさせることに成功した。水槽試験は平成26年3月に実施した。非接触充電装置を海底ステーションとTri-TON 2に実装し、ドッキング→充電→観測を自律的に繰りかえすことに成功した。以上により、自律型海中ロボット(Autonomous Underwater Vehicle, AUV)と海底ステーションの連携により、海底環境の長期間、広範囲かつ密なモニタリングを行う手法の技術的基盤が確立された。本手法は生物学、地質学、考古学といったサイエンス分野のほか、資源探査、漁業,港湾施設維持、捜索救助など幅広い分野への応用が期待される。
KAKENHI-PROJECT-24686097
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自律型海中ロボットと海底ステーションによる海底4次元マッピングシステム
26年度が最終年度であるため、記入しない。海中プラットフォームシステム学26年度が最終年度であるため、記入しない。当初第一フェーズとして予定していたAUVのナビゲーション、ドッキング、非接触充電、データ処理手法の4項目について、いずれもほぼ予定通りの進展があったため。第二フェーズとして予定していた実海域用ステーションの設計製作、非接触充電装置の海水中での検証、データ処理まではほぼ予定通り進行している。AUVのステーションへのドッキングにおいて、上下方向の位置制御に課題が残っているが、AUVが計測する深度、高度、LEDマーカーとの相対位置関係を組み合わせることで解決できる見通しが得られている。26年度が最終年度であるため、記入しない。今後は実海域実験で得られた課題をフィードバッグしてナビゲーション手法、ドッキング手法を改良するとともに、非接触充電を組み込んだAUVの長期展開試験を行う。今後はAUVの高度制御方法について、AUVが計測する高度、深度、そしてステーションのLEDマーカーとの相対位置関係をもとに推定することで改善し、水槽試験において安定したドッキングができることを確認する。そして非接触充電機構を組み込み、水槽および実海域にてドッキング、充電、自律観測を組み合わせた総合試験を行い、提案手法の有効性を実証する。26年度が最終年度であるため、記入しない。水中ステーションの実証機の開発に早期着手するために基金分の前倒し支払い申請を行ったが、設計に予想以上に時間を要したため、製作に至らなかった。このため平成25年度に水中ステーション実証機を製作する。海中ステーションの製作において、研究室に既存のパーツを活用することができたため今年度の必要経費を削減することができた。非接触充電機器をステーションおよびAUVに実装する際の物品費として使用する予定。
KAKENHI-PROJECT-24686097
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グローバルな政策決定に伴う議会制民主主義の空洞化に対する司法的統制の理論構築
ドイツにおいては、公権力によって自己の憲法上の権利を侵害された(と考える)者には、その救済を求めて憲法裁判所に出訴する途が整備されている。「憲法異議」と称されるこの訴訟形式がいわゆる「主観訴訟」に該当することは疑いを容れず、連邦憲法裁判所法のコンメンタールや憲法異議の概説書も、そうした理解を前提に執筆されている。ところが他方で、この憲法異議に(むろん主観訴訟の形式を保ちつつ)機能的には「民衆訴訟(客観訴訟)」の役割を期待しようとする向きがこのところ顕著になってきているように思われる。本年度のこれまでの研究によって、次の諸点が明確に整理できた。第一に、かかる「客観訴訟」としての機能を帯びた憲法異議において公権力による侵害対象として主張されるのは、例外なく「選挙権」である。ドイツの基本法には、ドイツ連邦議会の議員を全国民の代表とする規定が置かれているところ(38条1項)、議会権限の後退はこうした「選挙権」の侵害に他ならない、との理屈が用いられている。第二に、このような議会権限の後退は、例外なく政策決定のグローバル化の文脈において生じている。かかる「グローバル化」は近年顕著であるものの、ドイツ(あるいは欧州)においては必ずしも新しい転回ではない、すなわち「民衆訴訟」としての機能を帯びた憲法異議は、ドイツにおいては「最近の」事象というより、欧州経済共同体の展開に伴う数十年来の事象である。第三に、しかしながら議会権限の後退を「選挙権」の侵害と同視し、もって憲法異議へと結実させる手法には、批判的な評価も少なくない。ただ、その詳細に関する調査・分析は、次年度(以降)に残された課題である。理由は大きく分けて2つある。第一に、購入を検討していたドイツ語書籍の刊行が予定より遅れたこと、第二に、夏季休暇を利用したドイツへの出張予定が先方との日程調整の不調により断念せざるを得なかったことにより、本研究の進度もやや緩やかになってしまった。ただし、5年間の研究期間全体としてみれば、十分に挽回できる遅れだと考えている。政策決定のグローバル化に伴う議会権限の後退を「選挙権」の侵害と同視し、もって憲法異議の提起に結びつける論法に対して、具体的にどのような理論的批判が向けられてきたのか、その分析を本年度の課題としたい。この作業が夏までに順調に進展すれば、夏季休暇を利用してドイツへインタビュー取材に出かけたいと考えている。ドイツにおいては、公権力によって自己の憲法上の権利を侵害された(と考える)者には、その救済を求めて憲法裁判所に出訴する途が整備されている。「憲法異議」と称されるこの訴訟形式がいわゆる「主観訴訟」に該当することは疑いを容れず、連邦憲法裁判所法のコンメンタールや憲法異議の概説書も、そうした理解を前提に執筆されている。ところが他方で、この憲法異議に(むろん主観訴訟の形式を保ちつつ)機能的には「民衆訴訟(客観訴訟)」の役割を期待しようとする向きがこのところ顕著になってきているように思われる。本年度のこれまでの研究によって、次の諸点が明確に整理できた。第一に、かかる「客観訴訟」としての機能を帯びた憲法異議において公権力による侵害対象として主張されるのは、例外なく「選挙権」である。ドイツの基本法には、ドイツ連邦議会の議員を全国民の代表とする規定が置かれているところ(38条1項)、議会権限の後退はこうした「選挙権」の侵害に他ならない、との理屈が用いられている。第二に、このような議会権限の後退は、例外なく政策決定のグローバル化の文脈において生じている。かかる「グローバル化」は近年顕著であるものの、ドイツ(あるいは欧州)においては必ずしも新しい転回ではない、すなわち「民衆訴訟」としての機能を帯びた憲法異議は、ドイツにおいては「最近の」事象というより、欧州経済共同体の展開に伴う数十年来の事象である。第三に、しかしながら議会権限の後退を「選挙権」の侵害と同視し、もって憲法異議へと結実させる手法には、批判的な評価も少なくない。ただ、その詳細に関する調査・分析は、次年度(以降)に残された課題である。理由は大きく分けて2つある。第一に、購入を検討していたドイツ語書籍の刊行が予定より遅れたこと、第二に、夏季休暇を利用したドイツへの出張予定が先方との日程調整の不調により断念せざるを得なかったことにより、本研究の進度もやや緩やかになってしまった。ただし、5年間の研究期間全体としてみれば、十分に挽回できる遅れだと考えている。政策決定のグローバル化に伴う議会権限の後退を「選挙権」の侵害と同視し、もって憲法異議の提起に結びつける論法に対して、具体的にどのような理論的批判が向けられてきたのか、その分析を本年度の課題としたい。この作業が夏までに順調に進展すれば、夏季休暇を利用してドイツへインタビュー取材に出かけたいと考えている。第一に、購入を予定していたドイツ語書籍の複数が年度内に刊行されず、次年度(以降)の刊行を待つことになった。第二に、夏季休暇中に予定していたドイツへの出張が、訪問先との日程調整の不調により次年度(以降)への延期を余儀なくされた。
KAKENHI-PROJECT-18K01247
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ヒトからロボットへの把持運動スキルの転換
この期間において、我々はシミュレーションおよび実ロボットの両方において、ヒトがロボットの腕と手を直感的に操作し、物体を把持するための実験環境を完成させた。この成果はヒトの腕や手の位置を高速に同定し、さらにロボットの腕と手へのマッピングをリアルタイムで行う事により達成されたものである。このシステムにより、ヒトが例えばマグカップなどの物体を自然に把持する運動を詳細に観測し、データを記録することが可能となった。ヒトが自分自身の腕を動かしてロボットの把持運動に関するトレーニングを終えた後、様々な形状や傾きを持つ物体をロボットが把持する運動軌道のデータベースが構築され、効率的かつ自律的な運動学習手法の開発に役立てることが出来る。我々が得たデータによると、操作者はロボットの手首をマグカップのハンドルの向きに応じて一定の位置を保っていた。マグカップのハンドルの角度に応じて手首の位置が決まると言う仮説は非常に興味深い考察を生む。ハンドルの角度に応じて手首の初期位置が一意に決まると言う事は、手首の初期位置を決定するプロセスと初期角度を決定するプロセスがそれぞれ独立して行われている事を示唆している。この事は中枢神経システムが把持運動課題において次元の縮約を行い、問題の簡略化を行っていると考えられる。二つ目のアプローチは、ヒトによって得られたロボットの個々の把持運動機動を用いて、把持制御器を合成することである。また、開発済みの実験環境を新しいアームロボットに適応させる作業を行った。それにより、ヒトはより正確にロボットを操作できるようになり、自律運動学習のためのデータベース構築が飛躍的に進歩すると考える。我々の最初の成果はヒトの腕の冗長自由度を効率的に扱う手法の開発であり、ヒトと同程度の複雑さを持つアームロボットPA-10への実装に成功している。この研究をまとめた論文は、2010年8月にカナダで行われる国際会議・ASME/IDETCで受理され発表が決定している。2つ目の成果は、ヒトが物理シミュレーター上に存在する物体を操作できると言う仮想現実空間の構築である。この仮想現実環境を用いた実験により、ヒトの把持運動の解析を詳しく行うことができ、ロボットの制御に役立てることができる。そしてロボットが様々なタイプの物体を自律的に操作するための理論作りに役立つと期待される。PC等購入した実験機器はヒトの運動の解析や、ロボットやシミュレーターをリアルタイムで制御するために用いられている。ブライアン・ムーア研究員は大阪市立大学理学部数学科へ赴き、枡田幹也教授らが研究しているトポロジー理論が把持動作研究に応用出来るかどうかの可能性を議論した。また大阪大学のグローバルCOEによるシンポジウムにて、ヒトと機械のインタラクション技術に関する最新の研究成果を聴講し、どのように冗長自由度を持つ複雑なロボットの制御へ応用できるかを検討した。この期間において、我々はシミュレーションおよび実ロボットの両方において、ヒトがロボットの腕と手を直感的に操作し、物体を把持するための実験環境を完成させた。この成果はヒトの腕や手の位置を高速に同定し、さらにロボットの腕と手へのマッピングをリアルタイムで行う事により達成されたものである。このシステムにより、ヒトが例えばマグカップなどの物体を自然に把持する運動を詳細に観測し、データを記録することが可能となった。ヒトが自分自身の腕を動かしてロボットの把持運動に関するトレーニングを終えた後、様々な形状や傾きを持つ物体をロボットが把持する運動軌道のデータベースが構築され、効率的かつ自律的な運動学習手法の開発に役立てることが出来る。我々が得たデータによると、操作者はロボットの手首をマグカップのハンドルの向きに応じて一定の位置を保っていた。マグカップのハンドルの角度に応じて手首の位置が決まると言う仮説は非常に興味深い考察を生む。ハンドルの角度に応じて手首の初期位置が一意に決まると言う事は、手首の初期位置を決定するプロセスと初期角度を決定するプロセスがそれぞれ独立して行われている事を示唆している。この事は中枢神経システムが把持運動課題において次元の縮約を行い、問題の簡略化を行っていると考えられる。二つ目のアプローチは、ヒトによって得られたロボットの個々の把持運動機動を用いて、把持制御器を合成することである。また、開発済みの実験環境を新しいアームロボットに適応させる作業を行った。それにより、ヒトはより正確にロボットを操作できるようになり、自律運動学習のためのデータベース構築が飛躍的に進歩すると考える。
KAKENHI-PROJECT-09F09759
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09F09759
知覚異常や疼痛が皮膚の創傷治癒におよぼす影響
糖尿病性などでは、知覚が低下するために警告が働かずに創傷が悪化してしまう。一方で長い期間発せられた痛みは神経回路を可塑的に変化させ、痛みを複雑なものにする。局所での神経因子の動態もそれによって変化し、創傷治癒に影響していると考えられる。本研究では、体表の知覚異常や慢性疼痛が皮膚の創傷治癒に及ぼす影響を、神経因子の動態を評価することで明らかにする。創傷治癒においては、患者のためには痛みを取り除くことは重要だが、創傷治癒を遷延させないことが同時に必要である。また、がんの痛みに限らず、痛みの放置はさらに痛みを招来することから早期の疼痛緩和ケアが推進されている。創傷における痛みはがんとは違ったものではあるが、早期からの痛み解放を目的とする意味では同類である。これまで知覚神経の選択的障害モデルなどを用いて、知覚異常が体表の創傷治癒に影響を及ぼすことを確認してきた。ラット脊髄後根切断による脱神経モデルを作成し、痛みと創傷治癒との関連を検討してきた。組織学的な評価を行った実験系においては痛みのない領域では皮膚の創傷治癒が遷延した。知覚障害動物モデルについてはラットのTh8-12の肋間神経の切離を行い背部に知覚障害領域を作成した。動物モデルでは安定した作成条件を得た。皮膚全層欠損の治癒経過を観察し7日目の組織のHE染色組織標本から計測を行い上皮化率、収縮率を算定した。さらにHGF、bーFGF、PDGF、VEGFなど約10種類の創傷治癒関連因子の各遺伝子の創傷部における発現変動をRealtime-PCRで評価した。HGFが知覚異常群で低値となった。糖尿病性の足病変などでは、知覚が低下するために警告が働かずに創傷が悪化してしまう。一方で長い期間発せられた痛みは神経回路を可塑的に変化させ、痛みを複雑なものにする。局所での神経因子の動態もそれによって変化し、創傷治癒に影響していると考えられる。本研究では、体表の知覚異常や慢性疼痛が皮膚の創傷治癒に及ぼす影響を、神経因子の動態を評価することで明らかにする。現在までのラットを用いた研究において脊髄後根切断による脱神経モデルを作成し、痛みと創傷治癒との関連を検討した。実験の内容については医学部動物実験委員会に申請し承認を得ている。組織学的な評価を行った実験系においては痛みのない領域では皮膚の創傷治癒が遷延した。知覚障害動物モデルについてはラットのTh8-12の肋間神経の切離を行い背部に知覚障害領域を作成した。これらの動物モデルの安定した作成条件を得た。創傷治癒課程を経時的に創傷部位の面積を計測、組織を採取しHE染色組織標本から計測を行い上皮化率、収縮率を算定した。Substance Pおよびその受容体であるNeurokinin-1受容体の各遺伝子の創傷部における発現変動をRealtime-PCRによる評価を行った。創傷作成時から治癒までの期間を時系列で採取した組織より、Substance Pの免疫染色をおこなった。また、VEGFR1、R2について免疫染色およびRealtime-PCRを行った。ラット脊髄後根切断による脱神経モデルを作成し、痛みと創傷治癒との関連を検討した。知覚障害動物モデルについては安定した作成条件を得ており、創傷治癒課程を経時的に評価できた。Substance PおよびNeurokinin-1受容体の各遺伝子の創傷部における発現変動を評価した。創傷作成時から治癒まで時系列で採取した組織より、Substance Pの免疫染色をおこなった。また、VEGFR1、R2について免疫染色およびRealtime-PCRを行った。これらの条件設定にやや検討を要しているが、おおむね順調に進展してしていると判断している。創傷治癒過程においては、知覚神経活動がどのように関わっているのか?痛み-慢性痛は創傷治癒を遷延させる因子なのか?あるいは早期の創傷治癒のためには痛みを伴うことが重要なのか?この視点で行われた研究はなかった。本研究の目的は体表の知覚異常や慢性疼痛が皮膚の創傷治癒に及ぼす影響を、神経因子の動態を評価することで明らかにすることである。また、がんの痛みに限らず、痛みの放置はさらに痛みを招来することから早期の疼痛緩和ケアが推進されている。創傷における痛みはがんとは違ったものではあるが、早期からの痛み解放を目的とする意味では同類である。創傷の知覚異常が治癒課程にどのように関わるかという課題に取り組むことは、ひいては傷をいかに早くきれいに治すかという臨床の課題を解決していく点において意義があると考えている。ラット脊髄後根切断による脱神経モデルをもちいて、痛みと創傷治癒との関連を検討してきた。組織学的な評価を行った実験系においては痛みのない領域では皮膚の創傷治癒が遷延した。知覚障害動物モデルについてはラットのTh8-12の肋間神経の切離を行い背部に知覚障害領域を作成した。動物モデルでは安定した作成条件を得た。平成28年度は動物実験の個体を増やして解析を行った。7日目の創傷部位の組織を採取しHE染色組織標本から計測を行い上皮化率、収縮率を算定した。HGF、bーFGF、Substance-P、VEGF、CGRP、Flt,NCAM,PGP9.5など約10種類の創傷治癒関連因子の各遺伝子の創傷部における発現変動をRealtime-PCRで評価した。
KAKENHI-PROJECT-15K10947
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K10947
知覚異常や疼痛が皮膚の創傷治癒におよぼす影響
ラット脊髄後根切断による脱神経モデルを作成し、痛みと創傷治癒との関連を検討してきた。(医学部動物実験委員会承認)。組織学的な評価を行った実験系においては痛みのない領域では皮膚の創傷治癒が遷延した。知覚障害動物モデルについてはラットのTh8-12の肋間神経の切離を行い背部に知覚障害領域を作成した。動物モデルでは安定した作成条件を得た。本年度は動物実験の個体を増やして解析を行った。7日目の創傷部位の組織を採取しHE染色組織標本から計測を行い上皮化率、収縮率を算定した。HGF、bーFGF、Substance-P、VEGF、CGRP、Flt,NCAM,PGP9.5など約10種類の創傷治癒関連因子の各遺伝子の創傷部における発現変動をRealtime-PCRで評価した。一部免疫染色で行えていないものがあるが、RT-PCRでの解析は項目を追加して行うことができた。順調に進展と判断している。糖尿病性などでは、知覚が低下するために警告が働かずに創傷が悪化してしまう。一方で長い期間発せられた痛みは神経回路を可塑的に変化させ、痛みを複雑なものにする。局所での神経因子の動態もそれによって変化し、創傷治癒に影響していると考えられる。本研究では、体表の知覚異常や慢性疼痛が皮膚の創傷治癒に及ぼす影響を、神経因子の動態を評価することで明らかにする。創傷治癒においては、患者のためには痛みを取り除くことは重要だが、創傷治癒を遷延させないことが同時に必要である。創傷治癒過程においては、知覚神経活動がどのように関わっているのか?痛み-慢性痛は創傷治癒を遷延させる因子なのか?あるいは早期の創傷治癒のためには痛みを伴うことが重要なのか?この視点で行われた研究はない。また、がんの痛みに限らず、痛みの放置はさらに痛みを招来することから早期の疼痛緩和ケアが推進されている。創傷における痛みはがんとは違ったものではあるが、早期からの痛み解放を目的とする意味では同類である。これまで知覚神経の選択的障害モデルなどを用いて、知覚異常が体表の創傷治癒に影響を及ぼすことを確認してきた。ラット脱神経モデルを作成し、痛みと創傷治癒との関連を検討してきた。組織学的な評価を行った実験系においては痛みのない領域では皮膚の創傷治癒が遷延した。知覚障害動物モデルについてはラットのTh8-12の肋間神経の切離を行い背部に知覚障害領域を作成した。動物モデルでは安定した作成条件を得た。昨年度は動物実験の個体を増やして解析を行った。7日目の創傷部位の組織を採取しHE染色組織標本から計測を行い上皮化率、収縮率を算定した。さらにHGF、bーFGF、PDGF、VEGFなど約10種類の創傷治癒関連因子の各遺伝子の創傷部における発現変動をRealtime-PCRで評価したが、有意差が得られていない。そのための追加実験を行っている。知覚障害動物モデルについてはラットのTh8-12の肋間神経の切離を行い背部に知覚障害領域を作成した。組織学的な評価を行った実験系においては痛みのない領域では皮膚の創傷治癒が遷延した。
KAKENHI-PROJECT-15K10947
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血管内皮由来弛緩因子の産生・放出の分子機構の解明とその病態的意義
1.血管内皮細胞における内皮由来血管弛緩因子(EDRF)の産生及び放出の機構ー培養ウシ大動脈内皮細胞で、イノシト-ル燐脂質代謝回転(PI代謝回転)並びに細胞内Ca^<2+>濃度を測定し、Bradykinin(0.1nMー1μM)は濃度依在性にPI代謝回転を生じ、細胞内Ca^<2+>貯蔵部位からのCa^<2+>の放出及び細胞外Ca^<2+>の細胞内への流入をひきおこすことを明らかにした。また、この情報伝達機構を介することにより、培養内皮細胞からEDRFが放出されることをbioassay法により明らかにした。現在、EDRFの本体と考えられている一酸化窒素(NO)を化学発光法にて測定することにより、上記情報伝達機構によるEDRFの産生、放出の研究を展開中である。2.EDRFの産生及び放出に対するリゾ燐脂質並びに修飾リポ蛋白の影響ー我々は、動脈硬化の一因とされる酸化LDLが、その増加したリゾホスファチジルコリン(LPC)により、受容体刺激によるEDRFを介する血管拡張反応を抑制することを見いだした。酸化LDL及びLPCはともに、培養内皮細胞において、Bradykinin刺激によるPI代謝回転並びに細胞内Ca^<2+>濃度の上昇を濃度依存性に抑制した。この受容体を介する情報伝達機構を抑制することが、酸化LDL並びにLPCによるEDRF産生抑制の機序の一つであることを明らかにした。また、酸化LDLによるEDRF産生の抑制は、高比重リポ蛋白(HDL),nativeLDLにより減弱することを見いだした。その機序として、HDL及びnativeLDLは、酸化LDL中のリゾホスファチジルコリン(LPC)の内皮細胞への移行を減少させること、さらに、移行したLPCも引き抜くことを明かにした。1.血管内皮細胞における内皮由来血管弛緩因子(EDRF)の産生及び放出の機構ー培養ウシ大動脈内皮細胞で、イノシト-ル燐脂質代謝回転(PI代謝回転)並びに細胞内Ca^<2+>濃度を測定し、Bradykinin(0.1nMー1μM)は濃度依在性にPI代謝回転を生じ、細胞内Ca^<2+>貯蔵部位からのCa^<2+>の放出及び細胞外Ca^<2+>の細胞内への流入をひきおこすことを明らかにした。また、この情報伝達機構を介することにより、培養内皮細胞からEDRFが放出されることをbioassay法により明らかにした。現在、EDRFの本体と考えられている一酸化窒素(NO)を化学発光法にて測定することにより、上記情報伝達機構によるEDRFの産生、放出の研究を展開中である。2.EDRFの産生及び放出に対するリゾ燐脂質並びに修飾リポ蛋白の影響ー我々は、動脈硬化の一因とされる酸化LDLが、その増加したリゾホスファチジルコリン(LPC)により、受容体刺激によるEDRFを介する血管拡張反応を抑制することを見いだした。酸化LDL及びLPCはともに、培養内皮細胞において、Bradykinin刺激によるPI代謝回転並びに細胞内Ca^<2+>濃度の上昇を濃度依存性に抑制した。この受容体を介する情報伝達機構を抑制することが、酸化LDL並びにLPCによるEDRF産生抑制の機序の一つであることを明らかにした。また、酸化LDLによるEDRF産生の抑制は、高比重リポ蛋白(HDL),nativeLDLにより減弱することを見いだした。その機序として、HDL及びnativeLDLは、酸化LDL中のリゾホスファチジルコリン(LPC)の内皮細胞への移行を減少させること、さらに、移行したLPCも引き抜くことを明かにした。1.血管内皮細胞における内皮由来血管弛緩因子(EDRF)の産生及び放出の機構ーウシ大動脈内皮細胞を継代培養し、^3Hーイノシト-ルラベル法にてイノシト-ル燐脂質代謝回転(PI代謝回転)を測定し、蛍光色素furaー2を用いて細胞内Ca^<2+>濃度をモニタ-した。Bradykinin(0.1nMーlμM)は培養内皮細胞において濃度依存性にPI代謝回転を生じ、細胞内Ca^<2+>貯蔵部位からのCa^<2+>の放出及び細胞外Ca^<2+>の細胞内への流入をひきおこすことを明らかにした。また、この情報伝達機構を介することにより、培養内皮細胞からEDRFが放出されることをbioassay法により明らかにした。2.EDRFの産生及び放出に対するリゾ燐脂質の影響ー我々は酸化LDL中や動脈硬化血管で増加するリゾホスファチジルコリン(LPC)が受容体刺激によるEDRFを介する血管拡張反応を抑制することを見いだした。また、LPCは培養内皮細胞に作用し、細胞内Ca^<2+>貯蔵部位からのCa^<2+>の放出をひきおこし、わずかにEDRFを産生することを見いだした。しかし、LPCは明らかなIP_3の産生を生じなかった。培養内皮細胞をLPCによって前処理すると、濃度依存性にBradykininによるPI代謝回転及び細胞内Ca^<2+>濃度の上昇を抑制することを見いだした。この内皮細胞における受容体を介する情報伝達機構を抑制することがLPCがEDRFの産生を抑制する機序の一つであることを明らかにした。1.血管内皮細胞における内皮
KAKENHI-PROJECT-02454257
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02454257
血管内皮由来弛緩因子の産生・放出の分子機構の解明とその病態的意義
由来血管弛緩因子(EDRF)の産生及び放出の機構ー前年度は培養ウシ大動脈内皮細胞でイノシト-ル燐脂質代謝回転(PI代謝回転)と細胞内Ca^<2+>濃度を測定し、Bradykinin(0.1nMー1μM)は培養内皮細胞において濃度依存性にPI代謝回転を生じ、細胞内Ca^<2+>貯蔵部位からのCa^<2+>の放出及び細胞外Ca^<2+>の細胞内への流入をひきおこすことを明らかにした。さらに、培養内皮細胞からのEDRFの放出はこの情報伝達機構を介することをbioassay法により明らかにしたが、現在、EDRFの本体と考えられているー酸化窒素(NO)を化学発光法にて測定することにより、上記情報伝達機構の研究を展開中である。2.EDRFの産生及び放出に対する修飾リポ蛋白の影響ー我々は、修飾リポ蛋白のひとつで、動脈硬化の一因と考えられている酸化低比重リポ蛋白(酸化LDL)が、受容体刺激によるEDRFを介する血管拡張反応を抑制することを見いだした。また、酸化LDLは培養内皮細胞に作用し、細胞内Ca^<2+>貯蔵部位からのCa^<2+>の放出をひきおこしたが、明らかなIP_3の産生を生じなかった。培養内皮細胞を酸化LDLによって前処理すると、濃度依存性にBradykininによるPI代謝回転及び細胞内Ca^<2+>濃度の上昇を抑制することを見いだした。この内皮細胞における受容体を介する情報伝達機構の抑制が、酸化LDLがEDRFの産生を抑制する機序の一つであることを明らかにした。また、酸化LDLによるEDRF産生の抑制は、高比重リポ蛋白(HDL),native LDLにより減弱することを見いだした。その機序として、HDL及びnative LDLは、酸化LDL中のリゾホスファチジルコリン(LPC)の内皮細胞への移行を減少させること、さらに、移行したLPCも引き抜くことを明かにした。
KAKENHI-PROJECT-02454257
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ペプチド鎖伸長段階における新翻訳制御系の生理的役割
真核生物では、遺伝情報発現の転写と翻訳段階が時間的にも場所的にも異なっており、翻訳制御の重要性が増大すると考えられる。これまでペプチド鎖伸長段階での制御系は全く知られていなかったが、筆者は最近、ペプチド鎖伸長因子EFー1のリン酸化による制御系の存在を明らかにするとともにEFー1に結合し翻訳段階を制御する可能性のあるRNA(EFー1RNA)を発見した。カイコ絹糸腺EFー1はαββ'γサブユニットからなり、精製したEFー1βkinaseにより、βがリン酸化され活性型となり、EFー1βphospha taseにより脱リン酸化され不活性型となるが、本研究では、さらに活性制御の分子機構を追求した。その結果、nativeEFー1ββ'γをphosphatase処理すると、EFー1αに結合したGDPと外部のGTPとの交換反応促進活性が消失し、kinaseで再リン酸化すると同活性が完全に回復することが明かとなった。GDP/GTP交換反応が促進され,EFー1αが活性型のEFー1α・GTPとなり、アミノアシルーtRNAのリボソ-ムへの結合が促進されることが明かとなった。本年度は、EFー1RNAのcDNAクロ-ンDNAをプロ-ブとして用い、5令期カイコの絹糸腺中のEFー1RNAの変動を解析した結果、同RNAは、5令期の初期に多く、末期に減少する傾向があり、後期に増加するtRNA,rRNA,フィブロインmRNA等とは異なる変動パタ-ンを示すことが明かとなった。また、カイコ培養細胞(BmN4)を用い,in vivoにおけるEFー1のリン酸化を解析した結果、EFー1βおよびβ'に両サブユニットがリン酸化されるとともに、このリン酸化が培地中の血清の有無等により変動することを明かにした。真核生物では、遺伝情報発見の転写と翻訳段階が時間的にも場所的にも異なっており、翻訳制御の重要性が増大すると考えられる。これまでペプチド鎖伸長段階での制御系は全く知られていなかったが、筆者は最近、ペプチド鎖伸長因子EF-1のリン酸化による制御系の存在を明らかにするとともにEF-1に結合し翻訳段階を制御する可能性のあるRNA(EF-1RNA)を発見した。コムギ胚芽EF-1はαββ'γサブユニットからなり、コムギ胚芽から精製したEF-1βkinaseにより、βがリン酸化され活性型となり、EF-1βphosphataseにより脱リン酸化され不活性型となるが、本研究では、さらに活性制御の分子機構を追求した。その結果、nativeEF-1ββ'γをphosphatase処理すると、EF-1αに結合したGDPと外部のGTPとの交換反応促進活性が消失し、kinaseで再リン酸化すると同活性が完全に回復することが明らかとなった。GDP/GLTP交換反応が促進され、EF-1αが活性型のEF-1α・GTPとなり、アミノアシル-tRNAのリボソ-ムへの結合が促進されることが明らかとなった。EF-1RNAはこれまで高分子量体のEF-1から調整していたが、高速ゲル濾過カラム等を用い、細胞質より直接、多量に精製する方法を確立した。このRNAは、EF-1を高分子化するとともに、タンパク質生合成を強く阻害した。興味深いことに、βのリン酸化は、EF-1RNAにより阻害されることが明らかとなった。このRNAはkimaseに作用し、リン酸化を阻害する。kinase活性は、4種類のホモポリヌクレオチドの内poly(U)で最も強く阻害された。EF-1RNAには、poly(U)領域が存在し、kinaseに結合し、同活性を阻害すると推定している。EF-1RNAはmRNAとも結合するが、mRNAのpoly(A)部分に結合するものと推定している。真核生物では、遺伝情報発現の転写と翻訳段階が時間的にも場所的にも異なっており、翻訳制御の重要性が増大すると考えられる。これまでペプチド鎖伸長段階での制御系は全く知られていなかったが、筆者は最近、ペプチド鎖伸長因子EFー1のリン酸化による制御系の存在を明らかにするとともにEFー1に結合し翻訳段階を制御する可能性のあるRNA(EFー1RNA)を発見した。カイコ絹糸腺EFー1はαββ'γサブユニットからなり、精製したEFー1βkinaseにより、βがリン酸化され活性型となり、EFー1βphospha taseにより脱リン酸化され不活性型となるが、本研究では、さらに活性制御の分子機構を追求した。その結果、nativeEFー1ββ'γをphosphatase処理すると、EFー1αに結合したGDPと外部のGTPとの交換反応促進活性が消失し、kinaseで再リン酸化すると同活性が完全に回復することが明かとなった。GDP/GTP交換反応が促進され,EFー1αが活性型のEFー1α・GTPとなり、アミノアシルーtRNAのリボソ-ムへの結合が促進されることが明かとなった。本年度は、EFー1RNAのcDNAクロ-ンDNAをプロ-ブとして用い、5令期カイコの絹糸腺中のEFー1RNAの変動を解析した結果、同RNAは、5令期の初期に多く、末期に減少する傾向があり、後期に増加するtRNA,rRNA,フィブロインmRNA等とは異なる変動パタ-ンを示すことが明かとなった。また、カイコ培養細胞(BmN4)を用い,in vivoにおけるEFー1のリン酸化を解析した結果、EFー1βおよびβ'に両サブユニットがリン酸化されるとともに、このリン酸化が培地中の血清の有無等により変動することを明かにした。
KAKENHI-PROJECT-01560083
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01560083
北半球中・高緯度オゾン減少の力学的・化学的メカニズムの解明
北半球中緯度において経年的な成層圏オゾンの減少が観測されている。このオゾンの減少を説明するためには、北極からの化学的に変質した空気の中緯度への輸送の効果と、中緯度特有の不均一反応の効果を、正しく評価する必要がある。本研究では北極域(スウェーデンのキルナ)および中緯度(北海道母子里観測所および陸別総合観測室)におけるフーリエ変換赤外分光法等による多成分同時観測と、観測に基づいた気象場を入れた3次元化学輸送モデルという2つの方法を組み合わせることによって、オゾン破壊のメカニズムの研究を行った。第一に、平成11年度、12年度を通じて、オゾンの減少の大きい冬から春先を中心に各観測点において高精度の赤外分光観測等を実施した。特に気象場の予測計算に基づいて、北極極渦の影響を受けたような空気塊が日本上空に到達するような場合においては重点的な観測を行い、このような空気塊の輸送に伴う化学組成の変化を捉えることに成功した。第二に観測された赤外の吸収線の形から、オゾン等の高度分布を推定するアルゴリズムを採用し、データ解析の高精度化を行った。第三に、全観測期間を通じてオゾン、塩酸(HCl)、フッ化水素(HF)、ClONO_2、硝酸(HNO_3)等の観測結果と、ケンブリッジ大学の3次元光化学輸送モデルとの比較を行った。この結果、北極極渦の影響を受けた空気塊が日本など北半球中緯度まで到達した場合には、極域の低温下において生じたと考えられる不均一反応による塩素の再分配の影響が見られることが分かった。これらの空気塊中では、活性化した塩素による破壊によりオゾンが減少していたことを、モデル計算との比較から明らかにした。北半球中緯度において経年的な成層圏オゾンの減少が観測されている。このオゾンの減少を説明するためには、北極からの化学的に変質した空気の中緯度への輸送の効果と、中緯度特有の不均一反応の効果を、正しく評価する必要がある。本研究では北極域(スウェーデンのキルナ)および中緯度(北海道母子里観測所および陸別総合観測室)におけるフーリエ変換赤外分光法等による多成分同時観測と、観測に基づいた気象場を入れた3次元化学輸送モデルという2つの方法を組み合わせることによって、オゾン破壊のメカニズムの研究を行った。第一に、平成11年度、12年度を通じて、オゾンの減少の大きい冬から春先を中心に各観測点において高精度の赤外分光観測等を実施した。特に気象場の予測計算に基づいて、北極極渦の影響を受けたような空気塊が日本上空に到達するような場合においては重点的な観測を行い、このような空気塊の輸送に伴う化学組成の変化を捉えることに成功した。第二に観測された赤外の吸収線の形から、オゾン等の高度分布を推定するアルゴリズムを採用し、データ解析の高精度化を行った。第三に、全観測期間を通じてオゾン、塩酸(HCl)、フッ化水素(HF)、ClONO_2、硝酸(HNO_3)等の観測結果と、ケンブリッジ大学の3次元光化学輸送モデルとの比較を行った。この結果、北極極渦の影響を受けた空気塊が日本など北半球中緯度まで到達した場合には、極域の低温下において生じたと考えられる不均一反応による塩素の再分配の影響が見られることが分かった。これらの空気塊中では、活性化した塩素による破壊によりオゾンが減少していたことを、モデル計算との比較から明らかにした。観測された最近10年間のオゾン減少の大きさは、現在の最新の数値モデル計算結果の予測を大きく上回っている。この中緯度におけるオゾン減少を説明するためには、北極からの化学的に変質した空気の中緯度への輸送の効果と、中緯度特有の不均一反応の効果を、正しく評価する必要がある。このような現在の成層圏オゾン研究の現状に対し、本研究では北極域(スウェーデンのキルナ)および中緯度(北海道母子里観測所および陸別総合観測室)におけるフーリエ変換赤外分光法等による多成分同時観測と、観測に基づいた気象場を入れた3次元化学輸送モデルという2つの方法を組み合わせることによって、オゾン破壊のメカニズムの研究を行った。H11年度には、第一にオゾンの減少の大きい冬から春先を中心に各観測点において高精度の赤外分光観測等を実施した。特に北極極渦の影響を受けたような空気塊の輸送に伴う化学組成の変化を捉えることに成功した。第二にデータの取得効率をあげるために、観測の自動化をすすめた。第三にこれまでの人工衛星観測の結果を統計処理することにより、各成分の典型的な高度分布を求め、赤外分光観測のデータ解析の高精度化を行った。この結果、従来の解析に比べて信頼性の高い解析結果を得ることができた。第四に95年および96年のオゾン、塩酸(HC1),C10NO_2の観測結果についてケンブリッジ大学の3次元光化学輸送モデルとの比較を行った。この結果、北極極渦の影響を受けた空気塊についてある程度、モデルが特徴を再現していることが分かった。観測された最近10年間のオゾン減少の大きさは、現在の最新の数値モデル計算結果の予測を大きく上回っている。この中緯度におけるオゾン減少を説明するためには、北極からの化学的に変質した空気の中緯度への輸送の効果と、中緯度特有の不均一反応の効果を、正しく評価する必要がある。このような現在の成層圏オゾン研究の現状に対し、本研究では北極域(スウェーデンのキルナ)および中緯度(北海道母子里観測所および陸別総合観測室)におけるフーリエ変換赤外分光法等による多成分同時観測と、観測に基づいた気象場を入れた
KAKENHI-PROJECT-11480131
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11480131
北半球中・高緯度オゾン減少の力学的・化学的メカニズムの解明
3次元化学輸送モデルという2つの方法を組み合わせることによって、オゾン破壊のメカニズムの研究を行った。H12年度には、第一にオゾンの減少の大きい冬から春先を中心に各観測点において高精度の赤外分光観測等を実施した。特に北極極渦の影響を受けたような空気塊の輸送に伴う化学組成の変化を捉えることに成功した。第二に観測された赤外の吸収線の形から、オゾン等の高度分布を推定するアルゴリズムを採用し、データ解析の高精度化を行った。第三に95年および96年のオゾン、塩酸(HCl)、ClONO_2の新しい解析結果について、ケンブリッジ大学の3次元光化学輸送モデルとの比較を行った。この結果、北極極渦の影響を受けた空気塊が日本など北半球中緯度まで到達した場合には、極域の低温下において生じたと考えられる不均一反応による塩素の再分配の影響が見られることが分かった。これらの空気塊中では、活性化した塩素による破壊によりオゾンが減少していたことが、モデル計算との比較から明らかになった。
KAKENHI-PROJECT-11480131
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11480131
骨-筋標本による力発揮特性の検討-その1.関節角度、筋の長さと“筋力"の関係-
縫工筋を対象としたカエルの骨-筋標本による筋力測定システムを開発した。骨盤-大腿骨-脛骨を関節包を傷つけない形で股関節/膝関節を保存し、坐骨結合、脛骨部への腱付着を残した骨-筋標本を作成した。縫工筋以外の筋は全て切除した。骨盤をステンレスワイヤーにて装置に固定し、大腿骨・脛骨は、それぞれトランスデューサに接続した。筋刺激方法および電極の設置方法を、間接刺激・直接刺激の2種類について検討した。間接刺激では、標本の支配神経の分布を保存し、フック型のAg:AgCl電極により坐骨神経に電気刺激を加えた。直接刺激では、プラチナ板を水槽底面および縫工筋直上に設置した。筋を95%O_2-5%CO_2を通気したRinger液槽へ浸し、0.55.0ms幅の最大上電圧による50ppsでの矩形波を与え、等尺性強縮を誘発した。トランスデューサで検出した力信号は、ストレインアンプで増幅後、A/D変換処理を行いコンピュータに取り込んで収縮特性を解析した。さらに同標本から摘出した筋からlength-tension関係を求めた。骨-筋標本において得られた生体内筋長は、摘出筋実験によって求めた至適長の90115%(他筋切除前)、85110%(他筋除去後)の範囲内であった。股関節角度を90度に固定し筋関節角度を30度170度(180度=完全伸展位)で変化させ、各23回ずつ収縮を誘発した。同じ関節角度での連続した収縮では完全に同一な力波形が得られた。大腿骨、脛骨で記録された力波形は同期せず、前者の方が力立上がりが大きく、最大力に至るまでの時間も短かった。両者の関節角度-筋力曲線も完全には一致しなかった。関節角度によっては、後者で収縮開始の遅れも認められ、特に膝関節のゆるみによる力伝達の干渉が推察される。また、条件によって力波形のovershootも認められ、同システムにおけるより精度の高い関節角度の設定と関節の固定法をさらに検討する必要がある。縫工筋を対象としたカエルの骨-筋標本による筋力測定システムを開発した。骨盤-大腿骨-脛骨を関節包を傷つけない形で股関節/膝関節を保存し、坐骨結合、脛骨部への腱付着を残した骨-筋標本を作成した。縫工筋以外の筋は全て切除した。骨盤をステンレスワイヤーにて装置に固定し、大腿骨・脛骨は、それぞれトランスデューサに接続した。筋刺激方法および電極の設置方法を、間接刺激・直接刺激の2種類について検討した。間接刺激では、標本の支配神経の分布を保存し、フック型のAg:AgCl電極により坐骨神経に電気刺激を加えた。直接刺激では、プラチナ板を水槽底面および縫工筋直上に設置した。筋を95%O_2-5%CO_2を通気したRinger液槽へ浸し、0.55.0ms幅の最大上電圧による50ppsでの矩形波を与え、等尺性強縮を誘発した。トランスデューサで検出した力信号は、ストレインアンプで増幅後、A/D変換処理を行いコンピュータに取り込んで収縮特性を解析した。さらに同標本から摘出した筋からlength-tension関係を求めた。骨-筋標本において得られた生体内筋長は、摘出筋実験によって求めた至適長の90115%(他筋切除前)、85110%(他筋除去後)の範囲内であった。股関節角度を90度に固定し筋関節角度を30度170度(180度=完全伸展位)で変化させ、各23回ずつ収縮を誘発した。同じ関節角度での連続した収縮では完全に同一な力波形が得られた。大腿骨、脛骨で記録された力波形は同期せず、前者の方が力立上がりが大きく、最大力に至るまでの時間も短かった。両者の関節角度-筋力曲線も完全には一致しなかった。関節角度によっては、後者で収縮開始の遅れも認められ、特に膝関節のゆるみによる力伝達の干渉が推察される。また、条件によって力波形のovershootも認められ、同システムにおけるより精度の高い関節角度の設定と関節の固定法をさらに検討する必要がある。
KAKENHI-PROJECT-05780049
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05780049
遺伝情報場へのフィードバックの同定
温度やpHなど細胞外環境の変化や、変異、転写・翻訳過程のゆらぎは、核のDNAにコードされた遺伝情報が正確に機能(蛋白質)に結びつく事を妨害する。これを防ぐにため、細胞システムには、機能から情報へのフィードバックが多数存在していると考えられる。私たちが独自に開発した、「遺伝子綱引き(gTOW)法」は、遺伝子のコピー数を上げて、細胞システムの特定の要素を過剰にドライブさせることができる。このとき、遺伝子のコピー数と蛋白質の発現量の間に相関がないとすれば、核の情報の揺らぎが蛋白質の発現量に影響を与えないようにするフィードバックが、遺伝子発現のシステムに存在している事を示している。そこで、本研究では、酵母の細胞周期関連遺伝子について、gTOWによって遺伝子のコピー数を上げた時に、蛋白質の量にどのように反映されるかを調べ、フィードバックをシステマティックに同定し、その分子機構を明らかにする。最終的には、細胞周期の遺伝子発現制御に組み込まれたフィードバック機構の全容を解明し、その情報を数理モデルへと統合する。上記の目的のためには、遺伝子のコピー数が上がった時にそれが蛋白質量にどの程度反映するかを効率よく調べる実験系が必要となる。そのため、昨年度までに、分裂酵母内で効率よく遺伝子の改変を行なうことができる実験系の開発を行ない、分裂酵母内でGap-Rpair法によって効率の良い遺伝子改変法を開発することができ、学会発表、ならびに論文発表を行なった。さらにこのGap-Repair法を用いて約30の分裂酵母の細胞周期関連遺伝子をgTOW用プラスミドにクローニングし、コピー数の上限をはかるとともに、このデータを用いた数理モデルの評価と改良を行った。この内容は現在論文投稿中である。また、これらほとんどの遺伝子について蛋白質検出用のタグを組み込んだプラスミドの構築に成功した。このプラスミドを用いて定量的なウエスタンブロッティングを行ない、コピー数が上昇した時にそれが蛋白質にどのように反映されるかを標的としている約30の遺伝子すべてで測定することができた。温度やpHなど細胞外環境の変化や、変異、転写・翻訳過程のゆらぎは、核のDNAにコードされた遺伝情報が正確に機能(蛋白質)に結びつく事を妨害する。これを防ぐにため、細胞システムには、機能から情報へのフィードバックが多数存在していると考えられる。私たちが独自に開発した、「遺伝子綱引き(gTOW)法」は、遺伝子のコピー数を上げて、細胞システムの特定の要素を過剰にドライブさせることができる。このとき、遺伝子のコピー数と蛋白質の発現量の間に相関がないとすれば、核の情報の揺らぎが蛋白質の発現量に影響を与えないようにするフィードバックが、遺伝子発現のシステムに存在している事を示している。そこで、本研究では、酵母の細胞周期関連遺伝子について、gTOWによって遺伝子のコピー数を上げた時に、蛋白質の量にどのように反映されるかを調べ、フィードバックをシステマティックに同定し、その分子機構を明らかにする。最終的には、細胞周期の遺伝子発現制御に組み込まれたフィードバック機構の全容を解明し、その情報を数理モデルへと統合する。上記の目的のためには、遺伝子のコピー数が上がった時にそれが蛋白質量にどの程度反映するかを効率よく調べる実験系が必要となる。そのため、本年度はまず分裂酵母内で効率よく遺伝子の改変を行なうことができる実験系の開発を行なった。この結果、分裂酵母内でGap-Rpair法によって効率の良い遺伝子改変法を開発することができ、学会発表、ならびに論文発表を行なった。さらにこのGap-Repair法を用いて約30の分裂酵母の細胞周期関連遺伝子をgTOW用プラスミドにクローニングし、コピー数の上限をはかるとともに、これらほとんどの遺伝子について蛋白質検出用のタグを組み込んだプラスミドの構築に成功した。今後このプラスミドを用いて定量的なウエスタンブロッティングを行なうことで、細胞周期に見られるフィードバックの同定を進める予定である。温度やpHなど細胞外環境の変化や、変異、転写・翻訳過程のゆらぎは、核のDNAにコードされた遺伝情報が正確に機能(蛋白質)に結びつく事を妨害する。これを防ぐにため、細胞システムには、機能から情報へのフィードバックが多数存在していると考えられる。私たちが独自に開発した、「遺伝子綱引き(gTOW)法」は、遺伝子のコピー数を上げて、細胞システムの特定の要素を過剰にドライブさせることができる。このとき、遺伝子のコピー数と蛋白質の発現量の間に相関がないとすれば、核の情報の揺らぎが蛋白質の発現量に影響を与えないようにするフィードバックが、遺伝子発現のシステムに存在している事を示している。そこで、本研究では、酵母の細胞周期関連遺伝子について、gTOWによって遺伝子のコピー数を上げた時に、蛋白質の量にどのように反映されるかを調べ、フィードバックをシステマティックに同定し、その分子機構を明らかにする。最終的には、細胞周期の遺伝子発現制御に組み込まれたフィードバック機構の全容を解明し、その情報を数理モデルへと統合する。上記の目的のためには、遺伝子のコピー数が上がった時にそれが蛋白質量にどの程度反映するかを効率よく調べる実験系が必要となる。そのため、昨年度までに、分裂酵母内で効率よく遺伝子の改変を行なうことができる実験系の開発を行ない、分裂酵母内でGap-Rpair法によって効率の良い遺伝子改変法を開発することができ、学会発表、ならびに論文発表を行なった。さらにこのGap-Repair法を用いて約30の分裂酵母の細胞周期関連遺伝子をgTOW用プラスミドにクローニングし、コピー数の上限をはかるとともに、このデータを用いた数理モデルの評価と改良を行った。この内容は現在論文投稿中である。
KAKENHI-PUBLICLY-21114515
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遺伝情報場へのフィードバックの同定
また、これらほとんどの遺伝子について蛋白質検出用のタグを組み込んだプラスミドの構築に成功した。このプラスミドを用いて定量的なウエスタンブロッティングを行ない、コピー数が上昇した時にそれが蛋白質にどのように反映されるかを標的としている約30の遺伝子すべてで測定することができた。
KAKENHI-PUBLICLY-21114515
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低酸素腫瘍環境で増殖する嫌気性菌を用いた固形腫瘍に対する治療法の開発
本研究では、固形腫瘍における低酸素状態に着目し、嫌気性菌が固形腫瘍に対する遺伝子治療ベクターとして臨床応用可能か検討することにあった。しかし、H15年度では、バクロイデス菌が腫瘍内で増殖することを見出したが、腫瘍のサイズは不変で、不適当であることが判明した。そこで、H16年度では市既に報告のあるクロストリジウム菌を用いて以下の実験を行った。1.クロストリジウム菌を用いた固形腫瘍に対する治療開発そこで、既に報告されている、クロストリジウム菌を入手し、マウスの静脈内に投与した。その結果、毒性が強く、マウスが死に至ることが判明した。別系統のクロストリジウムを入手し同様の実験を行ったがやはり毒性が強く、弱毒株の作成を試みたが成功しなかった。この結果を踏まえて、菌を用いるのではなく、腫瘍内で増殖可能なアデノウイルスを用いることとして以下の実験を行った。2.肺癌特異的に増殖するアデノウイルスの作成と細胞障害活性非小細胞肺癌に特異的に発現するSLPIのプロモーターを、E1B55kを欠損したp53遺伝子機能がない癌細胞でのみ制限増殖可能なアデノウイルスに組み込んで、AdSLPIE1Aを作成した。このウイルスはSLPIを発現する非小細胞肺癌でのみ増殖可能であり、細胞障害活性を持つことが明らかとなった。ヌードマウス皮下移植非小細胞肺癌腫瘍組織に直接AdSLPIE1Aを注入したところ著明な腫瘍縮小効果を認めた。また、腫瘍組織内で実際にAdSLPIE1Aが増殖していることを証明した。本研究では、固形腫瘍における低酸素状態に着目し、嫌気性菌が固形腫瘍に対する遺伝子治療ベクターとして臨床応用可能か検討することにある。つまり、副作用が少なくかつ固形腫瘍内で増殖しベクターとして遺伝子を発現可能な嫌気性菌を遺伝子改変し作成することである。具体的には、(1)種々の嫌気性菌を固形腫瘍担がんマウスに静脈内投与し、腫瘍内での増殖を確認する。(2)菌の毒性を軽減するよう嫌気性菌の遺伝子改変をする。(3)嫌気性菌で遺伝子発現可能なプラスミッドを開発することを目的とし、以下の研究成果を得た。1.固形腫瘍内で増殖する嫌気性菌の選択:既に固形腫瘍内で増殖可能であると報告されている菌(サルモネラ菌、乳酸菌、ビフィズス菌、クロストリジウム菌)ではなく、未報告の嫌気性菌であるバクテロイデス菌を用いた。バクテロイデス菌3系統を入手(毒性が異なる)し、培養しえられた培養菌をマウスの静脈内に投与し、致死量を決定した。2.固形腫瘍担がんマウスへの嫌気性菌の投与致死量を下回るバクテロイデス菌を固形腫瘍担がんマウスの尾静脈内に投与した。その後腫瘍を切除、ホモジェナイズ後に嫌気状態で培養を行ったところ腫瘍部から菌を検出した。バクテロイデス菌が固形腫瘍内で増殖可能であることを見出した。しかし、バクテロイデス菌投与によっても固形腫瘍のサイズはコントロールに比べて変わらず、バクテロイデス菌は、固形腫瘍に対する治療に用いるには不適当であることが判明した。3.クロストリジウム菌そこで、既に報告されている、クロストリジウム菌を入手し、現在同様の実験を行っている。今後、クロストリジウム菌の弱毒化およびプラスミッドの開発を予定している。本研究では、固形腫瘍における低酸素状態に着目し、嫌気性菌が固形腫瘍に対する遺伝子治療ベクターとして臨床応用可能か検討することにあった。しかし、H15年度では、バクロイデス菌が腫瘍内で増殖することを見出したが、腫瘍のサイズは不変で、不適当であることが判明した。そこで、H16年度では市既に報告のあるクロストリジウム菌を用いて以下の実験を行った。1.クロストリジウム菌を用いた固形腫瘍に対する治療開発そこで、既に報告されている、クロストリジウム菌を入手し、マウスの静脈内に投与した。その結果、毒性が強く、マウスが死に至ることが判明した。別系統のクロストリジウムを入手し同様の実験を行ったがやはり毒性が強く、弱毒株の作成を試みたが成功しなかった。この結果を踏まえて、菌を用いるのではなく、腫瘍内で増殖可能なアデノウイルスを用いることとして以下の実験を行った。2.肺癌特異的に増殖するアデノウイルスの作成と細胞障害活性非小細胞肺癌に特異的に発現するSLPIのプロモーターを、E1B55kを欠損したp53遺伝子機能がない癌細胞でのみ制限増殖可能なアデノウイルスに組み込んで、AdSLPIE1Aを作成した。このウイルスはSLPIを発現する非小細胞肺癌でのみ増殖可能であり、細胞障害活性を持つことが明らかとなった。
KAKENHI-PROJECT-15659193
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電気化学反応を利用した新奇コアシェル構造ナノシートの創製と燃料電池用触媒への応用
本研究の目的は,高比表面積かつ優れた安定性を有するRu金属ナノシート表面にPt原子層を析出した、RuコアPtシェル構造ナノシートを合成することである.前年度までに,RuコアPtシェル構造ナノシートを調製に成功した.さらなる触媒活性と耐久性の向上に向けて電極触媒調製を検討する課題が見つかった.種々の調査から活性と耐久性の向上には,平滑なPt原子層を作成することで,課題克服できる可能性を見出した.そこで本年度は,平滑なPt原子層を堆積できる条件を抽出することを目的とし,中性電解液中で平滑なPt原子層を基板上に堆積可能か検討した.銅のアンダーポテンシャル析出法(Cu-UPD法)を利用して多結晶金基板でPt原子層の堆積挙動について調査した.電解液に硫酸と硫酸ナトリウムを使用し,pH(酸性と中性)に対するPt原子層の表面ラフネスについて検討した.どちらのpH条件でもCu-UPD電位は変化ないことを確認した.また,硫酸ナトリウムではCuイオンの拡散速度が遅いことがわかった.したがって,Cu-UPD時間が硫酸より長いことを明らかにした.Cu-UPD原子層を作製した後,Ptイオンとの置換析出反応を試みた.その結果,中性電解液中でPt原子層を堆積させることで平滑なPt原子層を作成できることを見出した.酸性電解液中では,Pt多原子層を堆積させる際,Cuイオンとプロトンの両方が堆積する.これにより表面ラフネスが大きな(平滑でない)Pt原子層が堆積すると考えた.一方で中性電解液中では原理的にCuイオンしか堆積しないので,平滑なPt原子層を作成可能であると考えた.以上の結果から,本研究課題の目的実現に必要な明らかにする点をすべて明らかにできた.29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。燃料電池用電極触媒の開発に向けて高活性かつ高耐久な電極触媒を調製するために、表面利用率が高い二次元形態の金属ナノシートの電極触媒への応用を検討してきた。一般的に、金属ナノシートの厚みは2-5 nmであり、ナノシート特有の表面利用率の高さを存分に発揮できていない課題がある。この課題は、金属ナノシートの合成法が確立されていないことに由来する。この課題に対して、前年度、電気化学反応を利用した合成法について検討してきた。具体的には、酸化ルテニウムナノシートを還元処理して得られる金属Ruナノシートを合成し、その表面に電気化学反応を利用してPt原子層を設けた「Ruコア@Ptシェルナノシート」を開発した。Pt原子層が3.5レイヤー相当で、高い酸素還元反応活性を示し、標準性能触媒の4倍程度高活性であった。また、触媒耐久性も標準触媒より優れていることがわかった。これらの結果から、コアシェルナノシートが酸素還元触媒として有望であることを見出した。以上の成果は、国内学会で1件、国外学会で3件、国際誌(査読あり)へ1報掲載した。しかし、コアシェルナノシートのPt利用率は低く、これが3.5原子層のPtシェルで構成されているためであることがわかった。この理由は、コアに使用しているRuが酸素還元に対してネガティブな効果を与えるためであり、Ruに替わる新たなコアナノシートの合成が必要である。これまでに、Ru金属ナノシート表面にCuのアンダーポテンシャルデポジション(Cu-UPD)できる、電極電位と印加時間、前駆体の種類と濃度を明らかにできた。とくに、Ruは空気中で酸化されやすい物性を有しており、Cu-UPD前に還元処理を実施することが重要であることを見出した。これら条件でコアシェルナノシートの作製に成功しており、RuナノシートがPt原子層で覆われていることを電子顕微鏡で確認している。得られたコアシェルナノシートは、O2還元に対して市販のPtナノ粒子比で5倍程度の活性を有している、かつ3倍以上の耐久性であることがわかった。本研究の目的は,高比表面積かつ優れた安定性を有するRu金属ナノシート表面にPt原子層を析出した、RuコアPtシェル構造ナノシートを合成することである.前年度までに,RuコアPtシェル構造ナノシートを調製に成功した.さらなる触媒活性と耐久性の向上に向けて電極触媒調製を検討する課題が見つかった.種々の調査から活性と耐久性の向上には,平滑なPt原子層を作成することで,課題克服できる可能性を見出した.そこで本年度は,平滑なPt原子層を堆積できる条件を抽出することを目的とし,中性電解液中で平滑なPt原子層を基板上に堆積可能か検討した.銅のアンダーポテンシャル析出法(Cu-UPD法)を利用して多結晶金基板でPt原子層の堆積挙動について調査した.電解液に硫酸と硫酸ナトリウムを使用し,pH(酸性と中性)に対するPt原子層の表面ラフネスについて検討した.どちらのpH条件でもCu-UPD電位は変化ないことを確認した.また,硫酸ナトリウムではCuイオンの拡散速度が遅いことがわかった.したがって,Cu-UPD時間が硫酸より長いことを明らかにした.Cu-UPD原子層を作製した後,Ptイオンとの置換析出反応を試みた.その結果,中性電解液中でPt原子層を堆積させることで平滑なPt原子層を作成できることを見出した.酸性電解液中では,Pt多原子層を堆積させる際,Cuイオンとプロトンの両方が堆積する.これにより表面ラフネスが大きな(平滑でない)Pt原子層が堆積すると考えた.
KAKENHI-PROJECT-16J09715
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16J09715
電気化学反応を利用した新奇コアシェル構造ナノシートの創製と燃料電池用触媒への応用
一方で中性電解液中では原理的にCuイオンしか堆積しないので,平滑なPt原子層を作成可能であると考えた.以上の結果から,本研究課題の目的実現に必要な明らかにする点をすべて明らかにできた.均一なPt原子層を作製するための堆積条件を検討する。また、他のコア金属ナノシートの合成に関しても検討する予定である。29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-16J09715
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16J09715
電気化学的原子層エピタキシーによる半導体超格子構造の作製と光電気化学特性
高効率な光-電気エネルギー変換素子の構築を目的とし、半導体薄膜の作製に関する研究が種々の手法を用いて活発に行われている。中でもアンダーポテンシャル析出(UPD)を利用した電気化学的原子層エピタキシー(ECALE)法は、得られた半導体薄膜の膜厚や表面形態を原子レベルで制御できることから特に注目されている。本研究では、エネルギーギャップおよび電子・正孔の有効質量が他の半導体と比較して非常に小さいことから、より大きな量子サイズ効果が期待される硫化鉛(PbS)薄膜をECALE法により作製し、その光電気化学特性について検討した。(111)面を有する金電極に定電位を印加することにより、硫黄および鉛のUPDを交互に行い、PbS薄膜を電極上に積層した。硫黄および鉛原子層のUPDの際に流れた電気量から、これら元素の析出量を計算したところ、PbSの積層数が2層目以降で、析出する元素の種類に関わらず、約1.1nmol cm^<-2>となり、PbS薄膜が電極上にエピタキシャル成長していることが示唆された。このことは、PbS薄膜断面のTEM像から確認され、PbSが金電極表面でPbS[001]方向にエピタキシャル成長していることが分かった。正孔捕捉剤の存在下、PbS薄膜に光照射を行ったところ、いずれの膜厚においてもアノード光電流が観測され、n型半導体類似の光応答を示した。光電流のアクションスペクトルを測定し、その立ち上がり波長から求めたPbS薄膜のエネルギーギャップ(Eg)は、積層数が25層のPbS薄膜において約1.5eVとなり、バルクPbSの値(0.41eV)よりも非常に大きな値を示した。以上のことより、厳密に膜厚が制御されたPbS超薄膜の作製は、ECALE法により可能であること、さらに得られた薄膜は量子サイズ効果によってバルクとは大きく異なった光電気化学特性を示すことが分かった。アンダーポテンシャル析出(UPD)を利用した電気化学的原子層エピタキシー(ECALE)は、得られた半導体薄膜の膜厚や表面形態を原子レベルでコントロールできることから、新規な半導体薄膜作製技術として特に注目されている。本研究では、ECALE法をもちいて、金電極上にZnSおよびCdS薄膜を交互に積層することによりCdS/ZnS超格子((ZnS)_<m+0.5>/((CdS)_l/(ZnS)_m)_n/Au)を作製し、その光電気化学特性について検討した。硫黄および亜鉛、カドミウム原子層のUPDの際に流れた電気量から析出量を計算したところ、一層目の硫黄は0.76×10^<-9>molcm^<-2>であり、この値は一層目の硫黄がAu(111)面上に(√3×√3)R30°構造で析出した場合に得られる値とよい一致を示した。これに続くUPDにおいては析出する元素の種類に関わらず、約1.2×10^<-9>molcm^<-2>となった。この値は立方晶ZnS(111)面およびCdS(111)面における原子密度に近い値であることからCdS/ZnS薄膜が[111]方向にエピタキシャルに成長していることを示唆している。CdS層を3分子層に固定し、ZnS層の厚み(m)を13分子層と変化させたCdS/ZnS超格子電極の400nm光照射における見かけの量子収率(Φ_<app>)を求めた。いずれの厚みのZnS層を用いた場合においても、超格子の構成数(n)が増大するにつれ、Φ_<app>は直線的に増大し、各CdS層が同じ光電気化学特性を有していることがわかった。一方、ZnS層の厚みが小さくなるほどΦ_<app>は増加したことから、光電流の大きさは、CdS層中に光生成した電子のZnS層を通過する確率によって決定されていることが分かった。高効率な光-電気エネルギー変換素子の構築を目的とし、半導体薄膜の作製に関する研究が種々の手法を用いて活発に行われている。中でもアンダーポテンシャル析出(UPD)を利用した電気化学的原子層エピタキシー(ECALE)法は、得られた半導体薄膜の膜厚や表面形態を原子レベルで制御できることから特に注目されている。本研究では、エネルギーギャップおよび電子・正孔の有効質量が他の半導体と比較して非常に小さいことから、より大きな量子サイズ効果が期待される硫化鉛(PbS)薄膜をECALE法により作製し、その光電気化学特性について検討した。(111)面を有する金電極に定電位を印加することにより、硫黄および鉛のUPDを交互に行い、PbS薄膜を電極上に積層した。硫黄および鉛原子層のUPDの際に流れた電気量から、これら元素の析出量を計算したところ、PbSの積層数が2層目以降で、析出する元素の種類に関わらず、約1.1nmol cm^<-2>となり、PbS薄膜が電極上にエピタキシャル成長していることが示唆された。このことは、PbS薄膜断面のTEM像から確認され、PbSが金電極表面でPbS[001]方向にエピタキシャル成長していることが分かった。
KAKENHI-PROJECT-12750733
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12750733
電気化学的原子層エピタキシーによる半導体超格子構造の作製と光電気化学特性
正孔捕捉剤の存在下、PbS薄膜に光照射を行ったところ、いずれの膜厚においてもアノード光電流が観測され、n型半導体類似の光応答を示した。光電流のアクションスペクトルを測定し、その立ち上がり波長から求めたPbS薄膜のエネルギーギャップ(Eg)は、積層数が25層のPbS薄膜において約1.5eVとなり、バルクPbSの値(0.41eV)よりも非常に大きな値を示した。以上のことより、厳密に膜厚が制御されたPbS超薄膜の作製は、ECALE法により可能であること、さらに得られた薄膜は量子サイズ効果によってバルクとは大きく異なった光電気化学特性を示すことが分かった。
KAKENHI-PROJECT-12750733
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12750733
知的障害者グループホームを対象とした障害者の地域居住に関する研究
これまで障害者のグループホーム(GH)では,「地域」そのものの議論がなされていない。本研究では障害者グループホームの「地域」の構造を明らかにし,地域居住を促進する方法を検討することを目的とする。調査方法はGHへのアンケート,GH居住者へのアンケートならびに先進地域でのGH居住者へのインタビュー等である.これらの調査を通して、地域居住を促進するために以下の取組みが効果的であることを示した。1面的にグループホームを展開すること,2障害者の生活を支援する拠点を設けること,3徒歩圏に仕事場や様々な施設があること, 4単調な生活を避けるためにそれらを利用することを促すこと.グループホームに入居する障害者の地域居住の現状(グループホームの環境整備,立地特性,外出時に生じる困難な状況とその対処等)を把握するため、先駆的に地域居住に取り組む4つの社会福祉法人へのインタビューとグループホーム等の視察による調査を行った。調査結果を以下にまとめる。なお,地域居住を1各障害者が日常生活を送るのに安全・安心な住宅(グループホーム)が確保されていること,2グループホームとの近隣関係が良好であること,3就労など日中活動できる場所や日用品の購買施設等が日常生活圏域に確保されていること,4公共交通機関などを使って余暇活動ができるよう広域地域にもアクセスできる環境にあること,と定義する。1)地域にグループホームを点的に展開するよりも面的に展開することが障害者の地域居住を支えやすい。2)狭い地域ごとに地域居住を支える拠点を設けて、日常的な相談(健康・金銭の管理)や緊急時の対応ができる体制を整える。3)その拠点の管轄に複数のグループホームを設ける。4)複数のグループホームを設けて利用者の相性や入れ替えなどにも対応しやすい。4)徒歩圏に日中活動の場を整備し、安全を確保した上で日常的に障害者が徒歩で利用できるようにする。5)既存の住宅(空き家)では利用の制約があり、新築で音環境に配慮されていることが望ましい。6)余暇活動に関心を持たない障害者がいるためそれを確保し生活のめりはりを確保する必要がある。当初計画したアンケート調査を行うことができずに、先進的なグループホームのインタビュー・訪問調査にとどまった。グループホーム(以下、GH)に入居する障害者の地域居住の現状を把握するため、大阪府の4自治体に立地するGHにアンケートを行った。アンケートは、GHの建物状況、日中活動場所との関係、近隣との関係などを質問した。345部配布し回答は58部であった。調査結果を以下にまとめる。1)建物種別と定員の関係をみると、公営集合住宅では定員2名が多く、戸建住宅では定員4名以上が多かった。2)建物の所有関係について、所有は7GH、賃貸は51GHであった。3)最寄り駅との距離は、徒歩20分以内が31GH、公共バス20分以内が14GH、30分以内が6GHであった。比較的鉄道にアクセスしやすい徒歩圏に立地するGHが半数以上であった。4)日中活動に通う事業所について、同じ社会福祉法人の事業所が26箇所、別の社会福祉法人の事業所が55箇所、一般就労が42箇所であった。6)日中活動の場所への移動手段について、一般就労ではバス・鉄道が36箇所であるが、同じ社会福祉法人の事業所では徒歩が7箇所、車(送迎車)が9箇所、バス・鉄道が7箇所であった。別の社会福祉法人の事業所では徒歩が6箇所、車が9箇所、バス・鉄道が31箇所であった。別の社会福祉法人の事業所や一般就労の事業所の移動手段は公共交通機関のほうが多い。当初予定していたアンケートと視察施設の調査を行い、アンケート回答数が少なかったが予定通り研究が進捗している。これまで障害者のグループホーム(GH)では,「地域」そのものの議論がなされていない。そこで本研究では障害者GHの「住宅」ではなく「地域」についてアンケート調査をもとに考察を行った.アンケートは、日中活動場所との関係、近隣との関係などを質問した。大阪市周辺の4市のGH345部配布し回答は58部であった。GH居住者のうちよく外出する2人を選んでもらいアンケートに回答をお願いした。分析対象は71人である。居住者の外出先の組み合わせをみるために,生活店舗種別数ごとに近辺余暇施設種別・遠方余暇施設種別の組み合わせと日中活動の事業所のアクセス手段からみたGHのタイプとの関係をみる。事業所へのアクセス手段がすべて車送迎しているGHの居住者のうち,生活店舗種別数・近辺余暇施設種別は0かつ遠方余暇施設種別が0でない居住者が4人いる。これら居住者は事業所へは車送迎であり,徒歩・自転車でアクセスしやすい生活店舗や近辺余暇施設に行っていないことを意味する。日頃から徒歩圏での「地域」と関わることはなく,GHと事業所の「二拍子」の生活を送っている可能性がある。これら居住者は遠方余暇施設での外出は月や年に数回ガイドヘルパーとともに鉄道を使って外出していて,これら居住者にとっての「地域」は徒歩圏内ではない。徒歩圏内の「地域」が空白化し,徒歩圏の外側にある地域が「地域」であると言える。事業所へのアクセス手段がすべて公共交通であるGHの居住者のうち,生活店舗種別数・近辺余暇施設種別が0かつ遠方余暇施設種別が1である居住者が5人いる。これら居住者は平日はバス・鉄道を使って事業所に通うときにのみ徒歩圏での「地域」と関わっている可能性がある。
KAKENHI-PROJECT-15K18178
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K18178
知的障害者グループホームを対象とした障害者の地域居住に関する研究
遠方余暇施設での外出は単独,友人やガイドヘルパーと行っている。彼らにとって「地域」は徒歩圏内では希薄であり,広域な「地域」であると言える。これまで障害者のグループホーム(GH)では,「地域」そのものの議論がなされていない。本研究では障害者グループホームの「地域」の構造を明らかにし,地域居住を促進する方法を検討することを目的とする。調査方法はGHへのアンケート,GH居住者へのアンケートならびに先進地域でのGH居住者へのインタビュー等である.これらの調査を通して、地域居住を促進するために以下の取組みが効果的であることを示した。1面的にグループホームを展開すること,2障害者の生活を支援する拠点を設けること,3徒歩圏に仕事場や様々な施設があること, 4単調な生活を避けるためにそれらを利用することを促すこと.2015年度に予定していたアンケート調査等を行い、定量的な把握を行う。その調査から2015年度で先進的なグループホームの調査から明らかになった点の普遍性を検討する。アンケートのさらなる分析と、アンケートの回答数が少なかったため追加でアンケートを実施する。研究のまとめとしてアンケート調査の結果とインタビュー調査の結果から、GHの居住地と日中活動・外出先との関係を明らかにし、地域居住に関する実現状況を評価する。建築計画当初予定していたアンケートと視察施設数を行わなかったため当初の見込額と執行額は異なったが,研究計画に変更はなく,前年度の研究費も含め,当初予定通りの計画を進めていく.当初予定していたアンケートと視察施設の実施年度を入れ替えたが、当初の予定の視察数より少なかったため当初の見込額と執行額は異なったが、研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め当初予定通りの計画を進めていく。グループホームの視察調査(インタビュー・平面実測等)を行うため,旅費,訪問施設への謝金,建物状況を記録・保存するための用紙・記録媒体,また社会動向や研究動向を広く把握するため図書・資料を購入する予定である.アンケートの追加配布を行う.また居住者の地域居住の実態を定性的に把握するため特定のグループホームを対象にインタビュー調査を実施する.
KAKENHI-PROJECT-15K18178
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K18178
陸生動物の体内受精に関わる精子運動の適応的進化の分子基盤
本研究は陸上環境に適応した両生類とショウジョウバエを用い、体内受精の進化に関わる精子運動調節の環境適応の分子基盤を解明する。今年度は前年度に策定したアフリカツメガエル精子運動の評価系を用い、アカハライモリを始め有尾・無尾両生類において広く精子機能の調節への関与すること、ツメガエル精子に存在することが示唆されている、T型及びL型電位依存性Ca2+チャネル、TRPV4チャネル、NMDA型グルタミン酸受容体、CNGチャネルのアフリカツメガエルとネッタイツメガエルの精子運動調節への関与を薬理学的に調べた。2種のツメガエルの精子は運動開始の引き金となる細胞外の低浸透圧環境に対して異なる範囲で応答を示し、予想外の結果ではあるが、浸透圧の程度により細胞外Ca2+に依存する場合と依存しない場合が見られた。細胞外Ca2+に依存する精子運動開始が起こる50%スタインバーグ氏塩類溶液(ST)(アフリカツメガエル)、及び10%ST (ネッタイツメガエル)の条件では、上述の5種のチャネルに対するブロッカーは精子運動の開始を阻害しなかった。また、アカハライモリ精子で運動調節に関わるアデニル酸シクラーゼについて、細胞膜結合性と可溶性の酵素それぞれに対する阻害剤は、ツメガエル精子の運動に有意な阻害作用を示さなかった。さらに、細胞内ストア中のCa2+を枯渇させるタプシガルギンも、精子運動に変化を与えることはなかった。以上の結果は、これまでに調べてきた無尾両生類の体内受精種の精子の性質と全く異なっており、ツメガエル精子の運動調節は未知のメカニズムによって調節されることが示唆された。一方、ショウジョウバエにおいて発見した交尾後の管状受精嚢内での精子再活性化に関わる遺伝子候補であるPKA(CG12069)について、抗体作成用のリコンビナントタンパク質作成を進め、ペプチド抗体を現在作成中である。本研究は陸上環境に適応した両生類とショウジョウバエを用い、体内受精の進化に関わる精子運動調節の環境適応の分子基盤を解明する。今年度は、イモリ精子運動調節関連遺伝子の発現をサンショウウオ、及びツメガエル精子で検討するために、オスのサンショウウオを飼育した。精子形成期精巣からtotal RNAを抽出・精製し、mRNAベースのシングルエンドライブラリーを作成し、次世代シークエンサーを用いてRNAseqを行なった。また、精子における発現の解析のために、非精子形成期の精巣からtotal RNAを抽出・精製し、RT-PCRサンプルを作成した。ツメガエルにおいては、全ゲノム情報が整備されたため、イモリの精子運動調節遺伝子の塩基配列を用いたblast検索により、ツメガエルにおける相同遺伝子の塩基配列を探索し、ツメガエルTRPV4チャネルの塩基配列を同定した。精子形成期及び非精子形成期の精巣から抽出・精製したtotal RNAを用いてRT-PCRによる発現解析を行ったところ、両者に同程度の発現が検出され、精子における発現の可能性が示された。そこで、TRPV4遺伝子ノックアウトツメガエルを作成し、精子運動における役割を解析することとし、種間で保存された領域を標的としたガイドRNAを作成した。一方、ショウジョウバエを用いて、イモリの精子運動調節関連遺伝子のオルソログとその関連遺伝子、52遺伝子に着目し、解析を進めた。RNAi系統を利用して生殖細胞内での遺伝子発現を抑制し、雄の妊性への影響を調べた。これまでに27遺伝子52RNAi系統について解析し、精子を産生しているにもかかわらず全く子を生じなかった2遺伝子(PKA, PKD2)、妊性が著しく低下した2遺伝子(Adenylate cyclase 35C, PKA catalytic subunit1)を得た。また、雌管状受精嚢の形態形成メカニズムと種間の多様性を生じるメカニズムを検討した。サンショウオの精子形成期については報告が無かったため、生殖期に捕獲した個体を飼育して検討する必要があり、当該期個体を得るために当初見込みより時間がかかった。そのためにRNAseqのデータ解析に若干の遅れが生じたが、計画の達成には問題がないと考えられる。一方、ツメガエルについては当初サンショオウと同様にRNAseqを実施する予定であったが、ツメガエルゲノム情報が整備されたため、これを利用して良好な結果が得られている。ゲノム編集は実施準備が完了しており、今後順次計画を進める。ショウジョウバエの精子運動調節遺伝子に関して、イモリの相同遺伝子との相同性が示唆されたことは、本研究の目的の達成のために良好な結果である。本研究は陸上環境に適応した両生類とショウジョウバエを用い、体内受精の進化に関わる精子運動調節の環境適応の分子基盤を解明する。今年度は、前年度に作成したTRPV4遺伝子を標的としたアフリカツメガエルのゲノム編集個体を作成した。設計した2種類のガイドRNAは高効率で遺伝子欠損を誘発したが、全ての個体が変態期に致死となった。TRPV4欠損精子を得るためにはコンディショナルな遺伝子欠損を誘発する必要がある。一方、RT-PCRにより、アフリカツメガエル精子運動調節への関与が予想されるCa2+透過性チャネルとしてTタイプのCav3.2、SタイプのNMDA受容体、LタイプとSタイプのTRPV4、細胞膜結合型アデニル酸シクラーゼとしてSタイプのAC1、LタイプのAC7、L及びSタイプのAC8、SタイプのAC9が示唆された。アカハライモリ精子運動に関わるAC3、多くの動物の精子運動調節に関わるAC10は検出されなかった。
KAKENHI-PROJECT-16K07459
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K07459
陸生動物の体内受精に関わる精子運動の適応的進化の分子基盤
これらの分子の精子運動調節への関わりを薬理学的に調べるために、アフリカツメガエル精子運動の評価系を作成し、運動開始要因である低浸透圧条件に対する運動精子、及び前進運動精子の出現頻度について基礎データを作成した。一方、ショウジョウバエを用いて、前年度に引き続き、112のRNAi系統を利用して生殖細胞内での遺伝子発現を抑制し、雄の妊性への影響を調べた。その結果、精子を産生しているにもかかわらず妊性が顕著に低下した5遺伝子を得た。このうちPKA(CG12069)の精子は、野生型精子と同様に鞭毛の運動を示し、交尾後には雌の貯精器官(管状受精嚢)に入っていた。しかし、野生型精子が管状受精嚢中で活発な運動を示すのに対し、PKA(CG12069)の精子は運動を示さなかった。さらに、PKA遺伝子にナンセンス変異をもつ変異体においても、精子は産生されるが不妊であることが確かめられた。また、ショウジョウバエ亜科の80種について系統関係と雌管状受精嚢の形態形成を比較検討した。計画は概ね順調に進んでいるが、ゲノム編集によるTRPV4遺伝子欠損ツメガエルが変態期における致死の表現型を示すという予想外の結果となり、TRPV4遺伝子欠損精子して精子運動調節における役割を解析することができなかったため。この問題に関しては薬理学的手法による解決を図るとともに、コンディショナルな遺伝子欠損の誘発を検討する。本研究は陸上環境に適応した両生類とショウジョウバエを用い、体内受精の進化に関わる精子運動調節の環境適応の分子基盤を解明する。今年度は前年度に策定したアフリカツメガエル精子運動の評価系を用い、アカハライモリを始め有尾・無尾両生類において広く精子機能の調節への関与すること、ツメガエル精子に存在することが示唆されている、T型及びL型電位依存性Ca2+チャネル、TRPV4チャネル、NMDA型グルタミン酸受容体、CNGチャネルのアフリカツメガエルとネッタイツメガエルの精子運動調節への関与を薬理学的に調べた。2種のツメガエルの精子は運動開始の引き金となる細胞外の低浸透圧環境に対して異なる範囲で応答を示し、予想外の結果ではあるが、浸透圧の程度により細胞外Ca2+に依存する場合と依存しない場合が見られた。細胞外Ca2+に依存する精子運動開始が起こる50%スタインバーグ氏塩類溶液(ST)(アフリカツメガエル)、及び10%ST (ネッタイツメガエル)の条件では、上述の5種のチャネルに対するブロッカーは精子運動の開始を阻害しなかった。また、アカハライモリ精子で運動調節に関わるアデニル酸シクラーゼについて、細胞膜結合性と可溶性の酵素それぞれに対する阻害剤は、ツメガエル精子の運動に有意な阻害作用を示さなかった。さらに、細胞内ストア中のCa2+を枯渇させるタプシガルギンも、精子運動に変化を与えることはなかった。以上の結果は、これまでに調べてきた無尾両生類の体内受精種の精子の性質と全く異なっており、ツメガエル精子の運動調節は未知のメカニズムによって調節されることが示唆された。一方、ショウジョウバエにおいて発見した交尾後の管状受精嚢内での精子再活性化に関わる遺伝子候補であるPKA(CG12069)について、抗体作成用のリコンビナントタンパク質作成を進め、ペプチド抗体を現在作成中である。
KAKENHI-PROJECT-16K07459
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K07459
非侵襲的分子イメージングを用いたヒト大脳基底核障害における神経回路機能異常の解析
ヒト大脳基底核は運動調節や体性感覚統合および学習や記憶などに密接に関与しているが,回路網の詳細には不明な点が多く,大脳基底核疾患においては治療標的の特定に難渋している.大脳基底核障害患者に非侵襲的分子イメージングである^<11>C-diacylglycerol PET,^<18>F-fluorodopa PET,^<18>F-fluorodeoxyglucose PET,^<15>O-gas PET検査を治療前後で施行し,大脳基底核部・大脳皮質部・視床部の神経伝達物質代謝の生化学情報を定量解析して既知の神経回路網と対比するとともに,神経症状の推移を考慮して大脳基底核部損傷における神経回路可塑性に関するメカニズムを考察した.パーキンソン病患者の^<11>C-diacylglycerol-PETでは,線状体でのphosphoinositide turnoverが亢進して同側視床の活性が抑制され,視床下核を介する間接路の優位性が示された.脳卒中患者の^<11>C-diacylglycerol-PETでは,亜急性期に前頭前野に取り込み増強がみられ,症状改善後に減弱することから可塑的機構を反映していると推定された.中脳および大脳基底核部腫瘍患者に^<18>F-fluorodopa-PETと^<18>F-fluorodeoxyglucose PET検査を施行し,治療前後で評価した.中脳腫瘍の放射線治療後にパーキンソニズムを呈した症例において,腫瘍再発と放射線障害の鑑別に有用な画像情報が得られた.大脳基底核腫瘍において,脳実質内発育を示す瀰漫性腫瘍ではドパミン細胞が腫瘍内に分散化し,実質外発育を示す腫瘍ではドパミン細胞の圧排性集積が確認され,腫瘍の質的診断に寄与することが判明し,治療後にドパミン細胞シナプス前部機能が回復することが確認された.頭頚部異常運動として知られるbobble-head doll syndromeにおいて,^<18>F-fluorodopa-PET検査を施行し,線条体でのドパミン細胞シナプス前部機能が亢進していることが判明し,治療後にドパミン細胞シナプス前部機能が正常化することが確認された.PET検査で得られた大脳基底核部神経伝達物質代謝の生化学情報を定量解析して既知の神経回路網と対比しながら神経症状の推移を考慮することにより,大脳基底核部およびにおける神経回路可塑性のメカニズムが解明されると期待される.ヒト大脳基底核は運動調節や体性感覚統合および学習や記憶などに密接に関与しているが,回路網の詳細には不明な点が多く,大脳基底核疾患においては治療標的の特定に難渋している.大脳基底核障害患者に非侵襲的分子イメージングである^<11>C-diacylglycerol PET,^<18>F-fluorodopa PET,^<18>F-fluorodeoxyglucose PET,^<15>O-gas PET検査を治療前後で施行し,大脳基底核部・大脳皮質部・視床部の神経伝達物質代謝の生化学情報を定量解析して既知の神経回路網と対比するとともに,神経症状の推移を考慮して大脳基底核部損傷における神経回路可塑性に関するメカニズムを考察した.パーキンソン病患者の^<11>C-diacylglycerol-PETでは,線状体でのphosphoinositide turnoverが亢進して同側視床の活性が抑制され,視床下核を介する間接路の優位性が示された.脳卒中患者の^<11>C-diacylglycerol-PETでは,亜急性期に前頭前野に取り込み増強がみられ,症状改善後に減弱することから可塑的機構を反映していると推定された.中脳および大脳基底核部腫瘍患者に^<18>F-fluorodopa-PETと^<18>F-fluorodeoxyglucose PET検査を施行し,治療前後で評価した.中脳腫瘍の放射線治療後にパーキンソニズムを呈した症例において,腫瘍再発と放射線障害の鑑別に有用な画像情報が得られた.大脳基底核腫瘍において,脳実質内発育を示す瀰漫性腫瘍ではドパミン細胞が腫瘍内に分散化し,実質外発育を示す腫瘍ではドパミン細胞の圧排性集積が確認され,腫瘍の質的診断に寄与することが判明し,治療後にドパミン細胞シナプス前部機能が回復することが確認された.頭頚部異常運動として知られるbobble-head doll syndromeにおいて,^<18>F-fluorodopa-PET検査を施行し,線条体でのドパミン細胞シナプス前部機能が亢進していることが判明し,治療後にドパミン細胞シナプス前部機能が正常化することが確認された.PET検査で得られた大脳基底核部神経伝達物質代謝の生化学情報を定量解析して既知の神経回路網と対比しながら神経症状の推移を考慮することにより,大脳基底核部およびにおける神経回路可塑性のメカニズムが解明されると期待される.ヒト大脳基底核は運動調節や体性感覚統合および学習や記憶などに密接に関与しているが,回路網の詳細には不明な点が多く,大脳基底核疾患においては治療標的の特定に難渋している.大脳基底核障害患者に治療前後で経時的PET検査を施行し,大脳基底核部・大脳皮質部・視床部の神経伝達物質代謝の生化学情報を定量解析して既知の神経回路網と対比するとともに,神経症状の推移を考慮して大脳基底核部損傷における神経回路可塑性に関するメカニズムを考察した.パーキンソン病患者^<11>
KAKENHI-PROJECT-17591525
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17591525
非侵襲的分子イメージングを用いたヒト大脳基底核障害における神経回路機能異常の解析
C-diacylglycerol-PETでは単純な運動負荷でもrepeatableな反応が現われ,線状体でのphosphoinositide turnoverが亢進して同側視床の活性が抑制され,視床下核を介する間接路の優位性が示された.脳卒中患者の^<11>C-diacylglycerol-PETでは,亜急性期に前頭前野に取り込み増強がみられ,症状改善後に減弱することから可塑的機構を反映していると推定された.大脳基底核部腫瘍患者に^<18>F-fluorodopa-PETを施行し,治療前後でドパミン細胞シナプス前部機能を評価した.脳実質内発育を示す瀰漫性腫瘍ではドパミン細胞が腫瘍内に分散化し,実質外発育を示す腫瘍ではドパミン細胞の圧排性集積が確認され,腫瘍の質的診断に寄与することが判明し,治療後にドパミン細胞シナプス前部機能が回復することが確認された.PET検査で得られた大脳基底核部神経伝達物質代謝の生化学情報を定量解析して既知の神経回路網と対比しながら神経症状の推移を考慮することにより,大脳基底核部における神経回路可塑性のメカニズムが解明されると期待される.ヒト大脳基底核は運動調節や体性感覚統合および学習や記憶などに密接に関与しているが,回路網の詳細には不明な点が多く,大脳基底核疾患においては治療標的の特定に難渋している.大脳基底核障害患者に非侵襲的分子イメージングである^<11>C-diacylglycerol PET,^<18>F-fluorodopa PET,^<18>F-fluorodeoxyglucose PET,^<15>0-gas PET検査を治療前後で施行し,大脳基底核部・大脳皮質部・視床部の神経伝達物質代謝の生化学情報を定量解析して既知の神経回路網と対比するとともに,神経症状の推移を考慮して大脳基底核部損傷における神経回路可塑性に関するメカニズムを考察した.パーキンソン病患者の^<11>C-diacylglycerol-PETでは,線状体でのphosphoinositide turnoverが亢進して同側視床の活性が抑制され,視床下核を介する間接路の優位性が示された.脳卒中患者の^<11>C-diacylglycerol-PETでは,亜急性期に前頭前野に取り込み増強がみられ,症状改善後に減弱することから可塑的機構を反映していると推定された.大脳基底核部腫瘍患者に^<18>F-fluorodopa-PETと^<18>F-fluorodeoxyglucose PET検査を施行し,治療前後で評価した.悪性腫瘍では腫瘍部に^<18>F-fluorodeoxyglucoseが集積するが質的鑑別診断は困難であった.^<18>F-fluorodopa-PETでは脳実質内発育を示す瀰漫性腫瘍ではドパミン細胞が腫瘍内に分散化し,実質外発育を示す腫瘍ではドパミン細胞の圧排性集積が確認され,腫瘍の質的診断に寄与することが判明し,治療後にドパミン細胞シナプス前部機能が回復することが確認された.また,頭頚部異常運動として知られるbobble-head doll syndromeにおいて,^<18>F-fludrodopa-PET検査を施行し,線条体でのドパミン細胞シナプス前部機能が亢進していることが判明し,治療後にドパミン細胞シナプス前部機能が正常化することが確認された.PET検査で得られた大脳基底核部神経伝達物質代謝の生化学情報を定量解析して既知の神経回路網と対比しながら神経症状の推移を考慮することにより,大脳基底核部およびにおける神経回路可塑性のメカニズムが解明されると期待される.
KAKENHI-PROJECT-17591525
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17591525
共時的・通時的分析を用いた言語衰退の研究―消滅の危機に瀕した「パラオ日本語」
本研究の主たる目的は、10年前に収集した既存の「パラオ日本語」のデータおよび今回新たに収集したデータを用い、「共時的・通時的」両分析を行いながら、言語衰退・消滅の言語内的・言語外的諸要因を定量的に明らかにすることである。この分析手法は、変異理論を中心とした社会言語学の研究において注目されており、「パラオ日本語」の衰退・消滅のメカニズムを解明するうえで有益なだけではなく、社会言語学で一般的に用いられている共時的分析の妥当性の検証、さらに言語衰退・消滅といった比較的新しい研究分野における調査方法論の構築にも資するものである。本研究の主たる目的は、10年前に収集した既存の「パラオ日本語」のデータおよび今回新たに収集したデータを用い、「共時的・通時的」両分析を行いながら、言語衰退・消滅の言語内的・言語外的諸要因を定量的に明らかにすることである。この分析手法は、変異理論を中心とした社会言語学の研究において注目されており、「パラオ日本語」の衰退・消滅のメカニズムを解明するうえで有益なだけではなく、社会言語学で一般的に用いられている共時的分析の妥当性の検証、さらに言語衰退・消滅といった比較的新しい研究分野における調査方法論の構築にも資するものである。3カ年計画の2年目の研究として、本年度は10年前に収集した「旧データ」に基づく研究を総括しつつ、次なる「新データ」を加えた研究に向けての土台を整備した。そもそも本研究は、20世紀前半にパラオで形成された「パラオ日本語」の特徴を、方言接触の観点から掘り下げ、その後の言語消滅のプロセスを解明することを目指したものであり、本年度は方言接触に関する総括的かつ総合的な分析・研究を展開した。具体的には、(1)本年度前半は、「旧データ」の中でも、とりわけ流暢な話者(fluent speaker)の会話データを再分析し、(2)本年度後半は、20世紀前半のパラオ日本語の形成期に最も影響を及ぼしたと思われる当時の日本人移民と同郷・同世代の話者による会話データを分析し、当時、方言接触の結果としてどのようなパラオ日本語が形成されたのかに考察を加え、方言接触理論のひとつであるFounder Principleを重点的に検証した。なお、最終年度となる来年度は、パラオ共和国にて新たなデータを収集し、共時的分析を行い、さらには「旧データ」との比較による通時的分析へと発展させ、言語衰退の過程およびその要因(言語内的・言語外的)の解明を試みる予定である。その内容を「International Journal of the Sociology of Language」において報告するとともに、これまでの調査・研究の集大成を図り、一定の方向性を示すとともに、関係専門家からの助言を得ながら、また言語衰退が見られる他地域・他言語との比較を行いながら、次なる研究に向けての土台を整備する予定である。本研究課題の最終年度として、平成20年度および21年度(繰越)は、これまでの調査研究を補充・充実させるとともに、総括的かつ総合的な分析・研究を展開した。具体的には、10年前に収集された「旧データ」に関する共時的分析を平成18年度・19年度に進めてきたが、それと比較するために、新たなデータ「新データ」をパラオ共和国にて収集し、書き起こし、調査対象となる言語項目の変異の形と機能を調査し、定量分析を行うための統計ソフトへの入力作業を進めている。今後は、「新データ」に関する共時的分析を完成させ、最終的には「旧データ」と「新データ」の比較を通して通時的分析へと展開させ、社会言語学で一般的に用いられている共時的分析の妥当性・信頼性を明らかにする予定である。途中段階ではあるものの、これらの研究成果は第8回国際学会オセアニア言語学(8th International Conference on Oceanic Linguistics)にて報告し、関係専門家によるフィードバック等を参考にしつつ、さらに研究を深めている。また本研究成果の一端は、下記の雑誌および著書においても活用し、広く社会へ還元すたるに新聞においても掲載したところである。さらに、本研究課題の最終成果を、『International Journal of the Sociology of Language』で掲載される予定となっている論文2本のなかで公表し、これまでの調査研究の集大成を図り、一定の方向性を示したい。
KAKENHI-PROJECT-18720100
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18720100
複合アニオン交互積層体を用いたフォトン・アップコンバージョン膜
低エネルギーの光を高エネルギーの光へと変換するフォトン・アップコンバージョン(PUC)系、特に複数のアニオン系有機色素を用いた膜状PUC系の構築を行った。特に、有機色素の組織的配列および膜化のため、層状複水酸化物(LDH)を鋳型とする相互積層(LBL)膜の作成を行った。研究期間内の実績として、1) LDHを鋳型とするLBL積層を低分子系色素へと展開し、4価のアニオン性低分子色素をLBL法にて積層できることを確認した。2) LDHナノシートと反対電荷を有する半導体性ナノシートの交互積層が可能であることを見出した。3) PUCの典型的な発光材料である2価アニオン性アントラセン誘導体(dc-DPA)の合成に成功した。4) dc-DPAとLDHの交互積層を行い2価アニオン性低分子色素でも良好な膜を得られることを見出した。5)得られたdc-DPA/LDH膜は、高い透明性と良好な光学特性を示した。6)これらの検討で得られた、アニオン性ポリマー、2および4価アニオン性低分子色素、アニオン性半導体ナノシートの交互積層に対して斜入射小角X線構造解析を行い、これら膜の微細構造が大きく異なることを明らかにした。以上の結果をまとめると、LDHを鋳型とすることで様々な構造を有するアニオン性材料との複合化が可能であることを見出すとともに本膜が良好な透明性や光透過性を有することを確認した。これらは、本研究目的である複合アニオンフォトン・アップコンバージョン膜の構築はもとより、他の光機能性膜の作成において極めて重要な知見と設計指針となる。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。低エネルギーの光を高エネルギーの光へと変換するフォトン・アップコンバージョン(PUC)系、特に複数のアニオン系有機色素を用いた膜状PUC系の構築を行った。特に、有機色素の組織的配列および膜化のため、層状複水酸化物(LDH)を鋳型とする相互積層(LBL)膜の作成を行った。本年度の実績として、1)鋳型となるLDHおよびLBL積層に必要なLDHナノシートの作成を行った。従来なAl-Zn系LDHだけでなく、レドックス活性なCoを含むLDHおよびナノシートの作成に成功している。2)得られたLDHナノシートを鋳型とし、高分子材料であるPSSをLBL法にて積層し、斜入射小角X線散乱法にて膜の構造を解析した。3) LDHを鋳型とするLBL積層を低分子系色素へと展開し、4価のアニオン性ポルフィリン(TCPP)がLBL法にて積層できることを見出した。4) TCPP/LDHからなる膜に対しX線構造解析を行い、従来の高分子系材料とは異なる構造を有することを明らかにした。5)典型的なPUC系色素かつLDHとの積層可能な新規色素ds-DPAの合成に成功した。以上の結果をまとめると、低分子系アニオン性色素であっても、LBL法にてLDHとの積層複合膜が作成でき、本膜が良好な透明性や光透過性を有することを確認した。以上の結果は、本研究目的である複合アニオンフォトン・アップコンバージョン膜の構築にとって有用な知見を得ることができたと考えられる。昨年度の研究成果として、1)鋳型となるLDHおよびLBL積層に必要なLDHナノシートの作成を行った。従来なAl-Zn系LDHだけでなく、レドックス活性なCoを含むLDHおよびナノシートの作成に成功している。2)得られたLDHナノシートを鋳型とし、高分子材料であるPSSをLBL法にて積層し、斜入射小角X線散乱法にて膜の構造を解析した。3) LDHを鋳型とするLBL積層を低分子系色素へと展開し、4価のアニオン性ポルフィリン(TCPP)がLBL法にて積層できることを見出した。4) TCPP/LDHからなる膜に対しX線構造解析を行い、従来の高分子系材料とは異なる構造を有することを明らかにした。5)典型的なPUC系色素かつLDHとの積層可能な新規色素ds-DPAの合成に成功した。以上の結果をまとめると、低分子系アニオン性色素であっても、LBL法にてLDHとの積層複合膜が作成でき、本膜が良好な透明性や光透過性を有することを始め、本研究遂行にとって重要な知見を得ることに成功した。このことから、研究は概ね順調に進展していると考えられる。しかし、PUC用色素であるds-DPAは、従来の手法では積層ができなかった。この原因として、LBL積層に用いる溶媒に対しds-DPAが非常に良溶であるためと考えられた。本年度は、これらの改善が必要であると考えている。低エネルギーの光を高エネルギーの光へと変換するフォトン・アップコンバージョン(PUC)系、特に複数のアニオン系有機色素を用いた膜状PUC系の構築を行った。特に、有機色素の組織的配列および膜化のため、層状複水酸化物(LDH)を鋳型とする相互積層(LBL)膜の作成を行った。研究期間内の実績として、1) LDHを鋳型とするLBL積層を低分子系色素へと展開し、4価のアニオン性低分子色素をLBL法にて積層できることを確認した。2) LDHナノシートと反対電荷を有する半導体性ナノシートの交互積層が可能であることを見出した。3) PUCの典型的な発光材料である2価アニオン性アントラセン誘導体(dc-DPA)の合成に成功した。
KAKENHI-PUBLICLY-17H05477
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複合アニオン交互積層体を用いたフォトン・アップコンバージョン膜
4) dc-DPAとLDHの交互積層を行い2価アニオン性低分子色素でも良好な膜を得られることを見出した。5)得られたdc-DPA/LDH膜は、高い透明性と良好な光学特性を示した。6)これらの検討で得られた、アニオン性ポリマー、2および4価アニオン性低分子色素、アニオン性半導体ナノシートの交互積層に対して斜入射小角X線構造解析を行い、これら膜の微細構造が大きく異なることを明らかにした。以上の結果をまとめると、LDHを鋳型とすることで様々な構造を有するアニオン性材料との複合化が可能であることを見出すとともに本膜が良好な透明性や光透過性を有することを確認した。これらは、本研究目的である複合アニオンフォトン・アップコンバージョン膜の構築はもとより、他の光機能性膜の作成において極めて重要な知見と設計指針となる。昨年度の研究実績・進捗を踏まえ、本年度は以下の研究を同時並行的に行い、研究の進展と目的達成を目指す。1) LDHナノシート化手法、特に溶媒の探索。本研究で合成したPUC色素ds-DPAは、従来のナノシート化溶媒であるホルムアミドに非常に良溶であるためLDHとの複合化が困難であった。この点を克服するため、ホルムアミドを用いないLDHナノシートの作成を行い、LBL積層へと展開する。2) DPA色素の修飾。LBL積層に用いる溶媒に対し溶解性を低下させる置換基をds-DPAに導入することで、従来の溶媒でもLBL積層が可能な系の構築を目指す。3) ds-DPAを含む有機色素/LDH積層膜・交互積層膜の構造解析。一部の色素/LDH積層膜の構造解析は行えているが、さらなる詳細を観測するため、アニオン性色素の拡張やアニオン性色素を交互積層した膜での構造解析を行う。4) PUC用エネルギー受容分子の新規合成。PUCには適したエネルギー順位や寿命を有するエネルギー受容色素が必要である。これらのエネルギー受容分子の合成は未着手であるため、中心金属としてPdなどを含むアニオン性のポルフィリン合成に着手する。これらの結果を相補的に比較検討することで、目的とする複合アニオンフォトンアップコンバージョン膜の作成を行う。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PUBLICLY-17H05477
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新しい精密の段計触媒の開発およびその活性による高機能性高分子の創製
Ruカルベン錯体は優れた官能基耐性を有することから、アセチレン化合物の重合において有用な遷移金属触媒となることが期待される。これまでに、ジフェニルアセチレン誘導体やプロピオール酸ヘキシルの重合にRuカルベン触媒が有効であることを明らかにしているが、フェニルアセチレン類の重合に対する活性については明らかになっていない。種々の置換基を有するフェニルアセチレンの重合を検討したところ、オルト位にイソプロポキシ基を有するフェニルアセチレンの重合が効率よく進行することがわかつた。これに対し、メタおよびパラ位にイソプロポキシ基を導入したフェニルアセチレンはポリマーを生成しなかった。このことから、Ruカルベン錯体を用いたフェニルアセチレンの重合では、オルト位に置換基を導入することが重要であることがわかった。得られたポリマーはW触媒を用いた時と同様に高いトランス含率を有するポリマーが得られた。Ruカルベン触媒を用いて種々のシロキサン結合を有するノルボルネンの開環メタセシス重合を行った。分岐状、直鎖状に関わらず、シロキサン結合を有するノルボルネンモノマーの重合により高い収率でポリマーが得られた。分岐状のシロキサン基を有するポリマーは直鎖状のポリマーに比べ高いガラス転移温度を示した。また、直鎖状のシロキサン結合の数が増大するにつれて、ガラス転移温度が低下することを見出した。分岐状のシロキサン基を有するポリマーは、これまでに報告されている開環型ポリノルボルネンの中で最も高い気体透過性を示すことがわかった。有機ラジカル電池特性や高い気体透過性を示す様々な機能性高分子の合成を目的とし、置換ポリアセチレンおよびポリノルボルネン誘導体の合成および生成ポリマーの特性について検討した。安定フリーラジカルを有するポリマーは、その電気的酸化還元反応を用いた有機ラジカル電池への応用が期待される機能性高分子である。フリーラジカルとしてTEMPOまたはPROXY部位を導入した置換ポリアセチレンおよびポリノルボルネン誘導体をRuまたはRh触媒を用いて合成した。得られたポリマーを正極の活物質として用いた有機ラジカル電池特性の評価を行うと、全てのポリマーが二次電池としての特性を示すことがわかった。特に、ノルボルネンジカルボン酸のendo,exo体をTEMPOエステル化したポリマーが理論値と同じ約110Ah/kgの充電容量を有していることを明らかにした。電流密度を上昇させても効率よく充電することが可能であり、充電が1分以内に完了する高電流密度で充電しても90Ah/kgという高い充電容量を有していることを見出した。シロキサン結合は非常に柔軟な結合であり、シロキサン結合を有するポリマーはその高い運動性により高い気体透過性を示すことが期待される。分岐型または直鎖型のシロキサン結合を有する様々なノルボルネン誘導体をRu触媒を用いて重合した。重合条件によらず非常に高い収率でポリマーを生成した。生成ポリマーの気体透過性はこれまでに報告されているポリノルボルネン誘導体の中で最も高い値を示すことを見出した。また、高い運動性を有するシロキサン結合が高分子膜中の気体の拡散性を上昇させ、それにより気体の透過性が向上したことを明らかにした。Ruカルベン錯体は優れた官能基耐性を有することから、アセチレン化合物の重合において有用な遷移金属触媒となることが期待される。これまでに、ジフェニルアセチレン誘導体やプロピオール酸ヘキシルの重合にRuカルベン触媒が有効であることを明らかにしているが、フェニルアセチレン類の重合に対する活性については明らかになっていない。種々の置換基を有するフェニルアセチレンの重合を検討したところ、オルト位にイソプロポキシ基を有するフェニルアセチレンの重合が効率よく進行することがわかつた。これに対し、メタおよびパラ位にイソプロポキシ基を導入したフェニルアセチレンはポリマーを生成しなかった。このことから、Ruカルベン錯体を用いたフェニルアセチレンの重合では、オルト位に置換基を導入することが重要であることがわかった。得られたポリマーはW触媒を用いた時と同様に高いトランス含率を有するポリマーが得られた。Ruカルベン触媒を用いて種々のシロキサン結合を有するノルボルネンの開環メタセシス重合を行った。分岐状、直鎖状に関わらず、シロキサン結合を有するノルボルネンモノマーの重合により高い収率でポリマーが得られた。分岐状のシロキサン基を有するポリマーは直鎖状のポリマーに比べ高いガラス転移温度を示した。また、直鎖状のシロキサン結合の数が増大するにつれて、ガラス転移温度が低下することを見出した。分岐状のシロキサン基を有するポリマーは、これまでに報告されている開環型ポリノルボルネンの中で最も高い気体透過性を示すことがわかった。
KAKENHI-PROJECT-07J09364
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重金属含有酵素・ニトリルヒドラターゼの構造機能解析
放射菌Rhodococcus rhodochrous J1の、(ニトリルをアミドへ変換する)2種類のニトリルヒドラターゼ(H-NHaseとL-NHase)のコバルト(Co)とアミドによる誘導発現調節機構の解析を行った結果、H-NHase遺伝子(nhhBA)発現については、その上流域が必須であり、、本領域には、大腸菌由来の調節遺伝子marRやhpcRと相同性を示す遺伝子(nhhD)と、Pseudomonas aeruginosaのアミダーゼの負の調節遺伝子であるamiCと相同性を示す遺伝子(nhhC)が存在し、これらの遺伝子は正に働く調節因子であった。さらに、本領域とともにnhhBAを宿主R.rhodochrous ATCC12674で発現させた場合、全可溶性タンパク質の50%以上を占める程までH-NHaseは大量に生成した。一方、L-NHase遺伝子(nhlBA)発現については、それより上流部分を少なくとも約3.5kb含むクローンは全て(誘導物質である)アミドによりL-NHaseを誘導生成するのに対し、上流領域をさらに切り縮めたクローンはアミドの有無に関わらずL-NHaseが構成的に発現した。アミドによる誘導発現に関わる上流域には、二つのORF(nhlDとnhlC)が存在し、nhlCは正の、nhlDは負の調節遺伝子であった。また、nhlDが水銀、カドミウム、ひ素などの重金属を解毒あるいは細胞外へ排出する機能を持つタンパク質をコードする遺伝子の発現調節に関わるタンパク質と相同性を示したのに対し、nhlCはnhhCと相同性を示した。また、nhlBAと(ニトリルから生成した)アミドを酸へ変換するアミダーゼ遺伝子間に、(ニッケル輸送タンパク質と相同性を示す)ORF(nhlF)を発見した。nhlBAとnhlFを導入したRhodococcus形質転換体は(nhlFを含まずnhlBAだけを導入した)コントロールと比較して、培地中のCoが10^<-5>10^<-3>%(w/v)の濃度では、顕著なNHase活性を示したが、0.01%(w/v)の濃度では、ほとんど活性の差を与えなかった。さらに、nhlFを含有したRhodococcus形質転換体は^<57>Coを取り込む活性を示したことより、Coを補欠金属として含有するNHaseにとって、NhlFはCoの輸送機構において重要な役割を担っていることが示唆された。Co輸送タンパク質としては、これが初めての報告である。放射菌Rhodococcus rhodochrous J1の、(ニトリルをアミドへ変換する)2種類のニトリルヒドラターゼ(H-NHaseとL-NHase)のコバルト(Co)とアミドによる誘導発現調節機構の解析を行った結果、H-NHase遺伝子(nhhBA)発現については、その上流域が必須であり、、本領域には、大腸菌由来の調節遺伝子marRやhpcRと相同性を示す遺伝子(nhhD)と、Pseudomonas aeruginosaのアミダーゼの負の調節遺伝子であるamiCと相同性を示す遺伝子(nhhC)が存在し、これらの遺伝子は正に働く調節因子であった。さらに、本領域とともにnhhBAを宿主R.rhodochrous ATCC12674で発現させた場合、全可溶性タンパク質の50%以上を占める程までH-NHaseは大量に生成した。一方、L-NHase遺伝子(nhlBA)発現については、それより上流部分を少なくとも約3.5kb含むクローンは全て(誘導物質である)アミドによりL-NHaseを誘導生成するのに対し、上流領域をさらに切り縮めたクローンはアミドの有無に関わらずL-NHaseが構成的に発現した。アミドによる誘導発現に関わる上流域には、二つのORF(nhlDとnhlC)が存在し、nhlCは正の、nhlDは負の調節遺伝子であった。また、nhlDが水銀、カドミウム、ひ素などの重金属を解毒あるいは細胞外へ排出する機能を持つタンパク質をコードする遺伝子の発現調節に関わるタンパク質と相同性を示したのに対し、nhlCはnhhCと相同性を示した。また、nhlBAと(ニトリルから生成した)アミドを酸へ変換するアミダーゼ遺伝子間に、(ニッケル輸送タンパク質と相同性を示す)ORF(nhlF)を発見した。nhlBAとnhlFを導入したRhodococcus形質転換体は(nhlFを含まずnhlBAだけを導入した)コントロールと比較して、培地中のCoが10^<-5>10^<-3>%(w/v)の濃度では、顕著なNHase活性を示したが、0.01%(w/v)の濃度では、ほとんど活性の差を与えなかった。さらに、nhlFを含有したRhodococcus形質転換体は^<57>Coを取り込む活性を示したことより、Coを補欠金属として含有するNHaseにとって、NhlFはCoの輸送機構において重要な役割を担っていることが示唆された。Co輸送タンパク質としては、これが初めての報告である。
KAKENHI-PROJECT-08249219
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08249219
急性冠症候群での組織因子、外因系凝固インヒビター,血小板機能の動態に関する研究
急性冠症候群における組織因子(tissue factor:TF)および組織因子経路インヒビター(tissue factor pathway inhibitor:TFPI)の関与について臨床的および病理学的に検討した。血小板の凝集塊を小凝集塊、中凝集塊、大凝集塊に分けて測定できるレーザー散乱法による粒子計測法を加えた血小板凝集能測定装置が開発され、急性冠症候群の病態を血小板の活性化の面から検討した。不安定狭心症患者では安定労作狭心症患者や対照患者に比べTFが上昇していた。さらに急性冠症候群患者の冠動脈硬化内膜にTFがマクロファージに一致して発現しておりプラーク破綻後の血栓形成に重要な役割を果たしていることを明らかにした。TFPIには遊離型とリポ蛋白結合型があるが、プロテアーゼ活性は遊離型が高い。不安定狭心症患者からの末梢血レベルの検討の結果、遊離型のTFPIが上昇していることを証明した。組織学的にも動脈硬化組織標本においてTFPIがTF発現領域に一致して発現していた。血小板凝集能に関する検討では、中および大凝集塊では差がないものの小凝集塊の形成は急性冠症候群で増加していた。本研究においてはTFや血小板凝集能と予後についての検討も行った。急性冠症候群において血中TFが高値でありそのレベルが高いほどその患者の予後が悪く心事故が起こりやすいことを証明した。血小板凝集能では小凝集塊の増加の著しい患者ではその後の心事故の多いことを示した。以上のことより急性冠症候群ではTF、TFPIが冠動脈に過剰に発現しており、その増加におおじて血中レベルも増加し凝固能が亢進していることと、血小板機能が亢進し小凝集塊の形成が亢進していることを結論とした。また急性冠症候群での治療のマーカーとしてTFや血小板の小凝集塊の測定が有用であり、心事故の発症が予想される症例においては通常の治療に増して抗凝固、抗血小板療法が必要であると考えられた。不安定狭心症や急性心筋梗塞、さらには虚血性心臓性突然死は発症機序から一括して急性冠症候群と呼ばれている。急性冠症候群における冠動脈血栓の重要性は、病理学的にも臨床的にも証明されている。本研究では、急性冠症候群の病態における凝固系、そのなかでも組織因子(tissue factor;TF)および組織因子経路インヒビター(tissue factor pathway inhibitor;TFPI)の動態について検討した。組織因子はVII因子と複合体を形成して、VII因子を活性化し、その後の凝固カスケードを活性化していく、血液凝固系のinitiatorであり、組織因子経路インヒビターは、組織因子による凝固経路を最初の段階で調節する。不安定狭心症や急性心筋梗塞においては、安定労作狭心症や対照患者に比し、血中のtissue factor抗原レベルが高く、凝固活性が亢進していることが示唆される。また、安定労作狭心症においては、対照患者に比し、凝固活性の亢進は認められない。同時に不安定狭心症では、freeTFPI抗原も上昇しており、さらに、生体内thrombin生成の指標となるprothrombinfragment 1+2も上昇していること、およびこれらの値は治療により安定化すると低下してくることも証明した。これらは、冠動脈病変の組織所見ともよく一致する。患者の予後との関連については、tissue factor抗原の高値が不安定狭心症の予後悪化と関連していた。急性冠症候群における組織因子(tissue factor:TF)および組織因子経路インヒビター(tissue factor pathway inhibitor:TFPI)の関与について臨床的および病理学的に検討した。血小板の凝集塊を小凝集塊、中凝集塊、大凝集塊に分けて測定できるレーザー散乱法による粒子計測法を加えた血小板凝集能測定装置が開発され、急性冠症候群の病態を血小板の活性化の面から検討した。不安定狭心症患者では安定労作狭心症患者や対照患者に比べTFが上昇していた。さらに急性冠症候群患者の冠動脈硬化内膜にTFがマクロファージに一致して発現しておりプラーク破綻後の血栓形成に重要な役割を果たしていることを明らかにした。TFPIには遊離型とリポ蛋白結合型があるが、プロテアーゼ活性は遊離型が高い。不安定狭心症患者からの末梢血レベルの検討の結果、遊離型のTFPIが上昇していることを証明した。組織学的にも動脈硬化組織標本においてTFPIがTF発現領域に一致して発現していた。血小板凝集能に関する検討では、中および大凝集塊では差がないものの小凝集塊の形成は急性冠症候群で増加していた。本研究においてはTFや血小板凝集能と予後についての検討も行った。急性冠症候群において血中TFが高値でありそのレベルが高いほどその患者の予後が悪く心事故が起こりやすいことを証明した。血小板凝集能では小凝集塊の増加の著しい患者ではその後の心事故の多いことを示した。以上のことより急性冠症候群ではTF、TFPIが冠動脈に過剰に発現しており、その増加におおじて血中レベルも増加し凝固能が亢進していることと、血小板機能が亢進し小凝集塊の形成が亢進していることを結論とした。また急性冠症候群での治療のマーカーとしてTFや血小板の小凝集塊の測定が有用であり、心事故の発症が予想される症例においては通常の治療に増して抗凝固、抗血小板療法が必要であると考えられた。
KAKENHI-PROJECT-11670692
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11670692
急性冠症候群での組織因子、外因系凝固インヒビター,血小板機能の動態に関する研究
不安定狭心症や急性心筋梗塞、さらには虚血性心臓突然死はその発症に冠動脈血栓が関与することがほとんどであることより、一括して急性冠症候群と呼ばれるようになった。血栓形成には凝固系のみならず、血小板の活性化も重要な要素である。組織因子(tissue factor:TF)は血中凝固因子の第VII因子と複合体を形成することにより外因系凝固反応を開始するinitiatorである。組織因子経路インヒビター(tissue factor pathway inhibitor:TFPI)は、TFによる開始反応を阻害する作用を持つプロテアーゼインヒビターである。本研究においては、急性冠症候群において血中組織因子が高値であり、そのレベルが高いほどその患者の予後が悪く心事故が起こりやすいことを証明した。さらに病理学的な検討で動脈硬化病巣には病巣の進展につれTFとTFPIの両方が伴って発現していることも証明した。血栓形成に重要な役割を果たす血小板の活性化に関しては、新しい測定器を用いることで血小板凝集塊は小凝集塊から中凝集塊、大凝集塊へと形成されていくことも証明されている。本研究においては、その機器を用いて中および大凝集塊では差がないものの小凝集塊の形成は急性冠症候群で増加していること、その増加の著しい患者ではその後の心事故の多いことを示した。以上のことより急性冠症候群ではTF、TFPIが冠動脈に過剰に発現しており、その増加におおじて血中レベルも増加し凝固能が亢進していることと、血小板機能が亢進し小凝集塊の形成が亢進していることがわかった。また急性冠症候群での治療のマーカーとしてTFや血小板の小凝集塊の測定が有用であり、心事故の発症が予想される症例においては通常の治療に増して抗凝固、抗血小板療法が必要であると考えられた。
KAKENHI-PROJECT-11670692
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冷戦初期米国の東アジア広報文化外交―「原子力平和利用映画」に焦点を当てて
本研究ではアイゼンハワー政権期の原子力平和利用キャンペーン、特に世界各国で上映された原子力平和利用USIS映画に焦点を当て、そのグローバルな展開や民間企業の協力を明らかにしようとした。米国立公文書館ほか所蔵のフィルム、スクリプト、映画カタログおよび関連する公文書を精査することにより、(1)原子力平和利用USIS映画のグローバルな展開、(2)日本における展開と受容、(3)アメリカ民間企業の原子力平和利用政策への関与、の3点において研究成果を上げることができた。研究成果は、日本・アメリカ・カナダ・韓国等の学会や研究会で発表し、韓国と日本の学術雑誌に論文掲載したほか、NHKの番組でも取り上げられた。6月に東京外国語大学で開催されたアメリカ学会年次大会にて、「アイゼンハワー政権期におけるアメリカ民間企業の原子力発電事業への参入」の題目で研究報告を行った。また同じく6月に米国ヴァージニア州アーリントンで開催されたSHAFR(アメリカ外交史学会)において、ドイツ人・オーストラリア人・イスラエル人の研究協力者たちとパネルを組んで、Blessing of Atomic Energy: Japanese Embrace of Atoms for Peace and U.S. Public Diplomacyの題目で研究報告を行った。学会の前後には、研究会を開催して情報交換を行ったほか、会場の近郊にある米国立公文書館および議会図書館にて、アイゼンハワー政権期の原子力平和利用政策にかんする資料収集を行った。2度の学会報告(日本およびアメリカ)で様々な研究者からいただいたコメントや助言を吟味しながら論文執筆を進めるいっぽう、9月には学生引率でインド・ニューデリーを訪れた際、数日間を科研研究に充て、ジャワハルラル・ネルー記念図書館およびインド国立公文書館で、1950年代の米印原子力交渉についての資料を閲覧した。さらに10月には、前年から予定されていた通り、新潟朱鷺メッセで開催された国際政治学会で研究協力者らと一緒にパネルを組み、部会6「『平和のための原子力』の国際関係史」で司会およびコメンテーターを務めた。また学会の前後には研究協力者らとの研究打合せ会議を行った。その後メール等で連絡をとりつつ、次年度の科研申請を含む今後の研究の発展について話し合った。本研究ではアイゼンハワー政権期の原子力平和利用キャンペーン、特に世界各国で上映された原子力平和利用USIS映画に焦点を当て、そのグローバルな展開や民間企業の協力を明らかにしようとした。米国立公文書館ほか所蔵のフィルム、スクリプト、映画カタログおよび関連する公文書を精査することにより、(1)原子力平和利用USIS映画のグローバルな展開、(2)日本における展開と受容、(3)アメリカ民間企業の原子力平和利用政策への関与、の3点において研究成果を上げることができた。研究成果は、日本・アメリカ・カナダ・韓国等の学会や研究会で発表し、韓国と日本の学術雑誌に論文掲載したほか、NHKの番組でも取り上げられた。交付申請書に記した通り7月に名古屋で第一回の研究会を開いた。互いの現在の研究について情報交換を行うとともに今後の研究についての打合せを行った。研究協力者の友次ほか4名が参加した。8月10月にかけて米国立公文書館およびミネソタ大学図書館にて史料収集を行った。国務省、USIA、AECおよび関連する個人文書を収集した。11月にはそこまでの成果をとりまとめて2つの研究報告を行った。11月3日、ペンシルヴァニア州ウェスト・チェスター大学で開催されたMid-Atlantic Association of Asian Studies年次大会、および11月15日、ハワイ大学マノア校で開催されたシンポジウムである。研究成果の国際発信という意義のみならず、日米の多様な研究者からフィードバックを得て大きな成果を得た。12月にはワシントンの米国議会図書館において1954年原子力法にかんする議会記録、また2013年1月にはカンザス州アビリーンのアイゼンハワー図書館でホワイトハウス記録や原子力政策関係者のオーラル・ヒストリーを収集した。これらの成果を論文「アイゼンハワー政権期におけるアメリカ民間企業の原子力発電事業への参入」にまとめ、3月に『原子力と冷戦ー日本とアジアの原発導入』(加藤哲郎・井川充雄編、花伝社)の第2章として刊行した。この間、研究協力者の友次は英国、小林は韓国と日本で史料収集を行った。また土屋は樋口およびオズグッドとそれぞれワシントンDCで打合せを行った。さらに土屋は2013年6月に開催されるアメリカ外交史学会(SHAFR)に向けて海外研究者と一緒にパネルを結んで申請し採択された。また23月には、海外の査読誌に投稿する論文の準備を進めた。このほかミネソタ大学(11月)、ウィリアム&メアリー大学(1月)、メリーランド大学(2月)で招待講演を行い、研究成果の一端を公開した。本科研研究プロジェクトでは、アイゼンハワー政権期の原子力平和利用キャンペーン、とくに世界80カ国で上映されたUSIS映画を用いた広報文化外交に焦点を当て、なかでも企業などの非政府主体がそこにどのように関与したのかを明らかにしようとした。3年間の研究期間を通して、アメリカ国立公文書館に所蔵されたUSIS映画のフィルムおよびスクリプト(原稿)、そして各国でUSISが発行した「USIS映画カタログ」を収集・精査し、また関連する公文書を渉猟することにより、USIS映画を用いた原子力平和利用キャンペーンのグローバルな展開がかなりの程度まで明らかになった。その成果は、国内外の学会や研究会で発表するとともに、韓国と日本の学術雑誌に論文として掲載したほか、NHKのETV特集でも取り上げられた。
KAKENHI-PROJECT-24510349
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24510349
冷戦初期米国の東アジア広報文化外交―「原子力平和利用映画」に焦点を当てて
いっぽう、非政府主体のかかわりについては、アメリカ議会のヒアリング記録や日米の原子力産業会議などの業界団体の記録をもとに調査を進めた結果、1950年代アメリカの対外経済援助政策と民間投資、そして原子力平和利用キャンペーンが、互いに不可分な関係で結ばれていたことが分かってきた。しかしながら、個々のUSIS映画の製作過程などにおいて企業などの非政府主体がどのような役割を果たしたかという詳細な事実関係については、資料の壁にはばまれてなかなか明らかにすることができななかった。今後も引き続き取り組んで行きたい課題である。最終年度である2014年度は、この科研テーマに関連する研究報告を、カナダ・韓国・インド・日本の4カ国で行ったほか、韓国・高麗大学の学術雑誌に論文を発表した。また締めくくりとして3月には韓国・アメリカ・日本の研究者を愛媛大学に招いてワークショップを開催した。現在は、アメリカの学術誌に論文の投稿を準備中である。アメリカ研究おおむね順調であり、前年度から予定していた学会報告や研究会、また予定していなかった学会報告も行ったいっぽう、論文の執筆は進めたものの投稿が今年度中に間に合わなかったという禍根を残した。第1回研究会の開催、ハワイ大学での研究報告、米国立公文書館およびアイゼンハワー大統領図書館での調査と、いずれも交付申請書に記載した通り順調に進んだ。予定通りに進まなかった部分もあったが(業者を介したリール・フィルムの収集と第2回の研究会開催)、また一方で予定以上に進展した部分や、予定には無かった展開も見られた。例えば論文としての成果公表が予定よりも早く本年度内に実現したこと、また交付申請時には未定であったウェスト・チェスター大学における学会報告、またミネソタ大学、ウィリアム&メアリー大学、メリーランド大学における招待講演、さらに次年度の国際学会報告の申請と採択が挙げられる。また第2回の研究会にかわって、国内外の研究協力者と個別に連絡を取り合い、ワシントンでの研究打合せも行ったため、大きな予定変更は無かったと言って差支えない。総合的に見て、おおむね予定通りに順調に進展したと言える。執筆中の論文をぜひとも早期に完成させ、最終年度である2014年度中に投稿・出版に至るようにする予定である。また、2013年度に収集したデータや各方面からいただいたコメントや助言をもとに、カナダおよび韓国での学会発表と、これをベースとした新たな論文執筆に取り掛かる。1)本年度パネルを申請して採択されたアメリカ外交史学会での研究報告を行う。(2013年6月、米国ヴァージニア州アーリントン)2)アメリカ学会で研究報告を行う。(2013年6月、東京外国語大学)3)海外の査読雑誌(Diplomatic History誌)に論文を投稿する。4)10月に開催される国際政治学会のパネルにコーディネーターとして出席し、その前後に第2回の研究会を開催する。
KAKENHI-PROJECT-24510349
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非直線型キャリアに着目した教職の多様性と多義性に関する研究
本年度は3つのサブテーマを遂行した。第一は,非直線型教員のライフヒストリー分析である。まず平成28年度と平成29年度に実施したライフヒストリー調査におけるインフォーマントのドキュメント資料を用いて,非直線型キャリアを有する教員のライフヒストリー分析を実施した。「アイデンティティ」「発達段階」「ストラテジー」といった概念を実存物として記述することのポストコロニアリズム課題,教師の語る「自己の変容」が社会的文化的文脈,学校現場の組織的制度的文脈に拘束されて意義づけられる<ライフ>であることを明らかにし,日本教育社会学会第70回大会で報告した。他には就学移行期の教師の指導文化に関する調査ドキュメント分析から,教師の仕事や生活のあり方が特別支援教育の観念の広がりから,非連続性よりも「包摂」「成長」を希求する資源化実践という連続性のある指導の文化を創出していることを明らかにした(子ども社会研究第24号)。第二は少数の教員を調査する質的研究の方法と分析枠組みの確立である。第一のサブテーマの分析をさらに発展させ,教師の非直線型キャリアトランジションを探求することにより教員養成や教員研修の規格化と非学問化,実践主義化の問題を明確にできることを明らかにし,解釈学的アプローチとして教師のリアリティ探求の方法と分析枠組みを明らかにした(鄭州大学での報告,教育社会学研究第104集)。第三は,キャリアイメージに関する補完調査として教員志望学生の日台比較調査を実施し,教師の成長に関する言説の受容のあり方を分析した。例えば日本の特色として,教職を強く志望する学生(教職強志望者)は,教師の成長に対して「教職教養」「専門的学習」の必要性を強く感じているが,非教職志望者では社会経験やゲームなどの多様な社会経験の重要性を必要と回答していることなどが明らかになった(中国四国教育学会第70回大会報告)。本年度は三つの研究内容を遂行した。第一は、非直線型キャリアの定義とライフヒストリー研究の分析枠組みの確立である。イギリス・カナダにおける教師のライフヒストリー研究やアメリカの教職キャリアパスの研究、質的調査研究資料を収集し、分析することで、非直線型キャリアの定義と研究対象としての意義を探求し、その成果を日本教育社会学会第68回大会で報告した。とりわけ、教師の「発達の普遍的段階論」の課題を指摘する上で、ドミナントストーリーの異化作用としての研究の意義を明確にした。またインタビュー調査の進展の中で、ライフヒストリーの多様性を担保した学校経営という管理職の仕事のあり方が、ライフヒストリー研究の臨床的可能性(有益性や有用性)を拓きうることを検討した。第二は、非直線型キャリア経験を有するインフォーマントへのインタビュー・分析である。これまでに蓄積している教師のライフヒストリーインタビュー、ドキュメントデータに加え、一般企業から教職への転入者や海外日本人学校の経験を有する研究協力者のインタビューを行った。インタビューのトランスクリプト分析の成果の一部は、HICE2017のカンファレンスや先述した日本教育社会学会で報告を行った。またドキュメントデータ(教育実習生のログ:学習や経験の記録を用いたライフヒストリー分析の可能性)は、JUSTEC2016のパネルディスカッションにて報告した。いずれも、教師の発達が非直線型に進むため、リフレクションを増やしても、学生や他の業種にいる段階では教師としての変化の自覚が持てないことや、教師としての経験の進展に従って、「過去の学習や経験」を肯定的に語る語りが増加することを明らかにした。第三は、大学入学時の学生を対象とした教師キャリアパスイメージに関する自由記述調査を行い、予備分析を行った(150名程度)。当初研究を予定していた非直線型キャリアの定義とライフヒストリー研究の分析枠組みの確立と非直線型キャリア経験を有するインフォーマントへのインタビュー・分析は順調に進んでいる。この二つに関しては、国内学会で1件、国際学会(2件:うち一件はパネルディスカッションへの登壇依頼に基づく招待報告)を行った。とりわけ、教師の「発達の普遍的段階論」の課題を明らかにする上で、教師のライフヒストリー研究は、極めて有効であるという調査方法上の成果を明らかにした。また、教師一人一人のライフヒストリーを尊重した学校経営のあり方が、教師の仕事の満足度と大きく関わっていることがインタビュー過程で明らかになった。このことから、学校経営研究におけるライフヒストリー研究の可能性が拓かれつつあることは、研究に着手した際の予想を超えた成果となっている。このことは、臨床的教育社会学というよりも応用教育社会学と捉えることが、その可能性を高めるという新たな仮説を産出しており、順調に研究が進んでいる。第三の計画内容であった大学入学時の学生を対象とした教師キャリアパスイメージに関する自由記述調査については予備分析を行っているが、調査段階の学習状況に大きく影響を受けている可能性が明らかになった。そこで、調査の適切な時期の見直しや再度テキストマイニングによる分析を実施することを検討する必要が生じている。本研究は、非直線型キャリアに着目したライフヒストリー研究により、教職の多様性と多義性を記述し、直線型成長モデルに基づく教員養成マスターナラティヴの課題を明らかにすることを目的としている。目的を達成するために本研究では、平成29年度、次のサブテーマの研究を遂行した。1)非直線型キャリアの定義とライフヒストリー研究の分析枠組みを確立するため、ナラティブ・インクワイアリーの研究手法の提唱者であるクランディニン教授の研究会および講演会等に参加し、情報収集を行った。その結果、教師の流動的な仕事の有り様を明らかにする上で、「教師ナラティブ」という分析概念を用いることの有効性を明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-16K13552
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非直線型キャリアに着目した教職の多様性と多義性に関する研究
これまで教師のキャリアや仕事の研究では、アイデンティティやティーチング・ストラテジー概念が中心に据えられてきたが、それとは異なる研究枠組みの可能性を明らかにしつつある。この分析概念を用いた研究枠組みの実践的応用を中学校でケーススタディを行い、教師の「不安定で不確かな仕事」(非直線型キャリアのプロセス)をナラティブ的再構成により安定化させる取り組みの可能性を第23回台湾教育社会学会で報告した。また「教師ナラティブ」概念を用いた研究枠組みを応用することで、就学前教育と小学校教育の間にある「指導の文化やフィロソフィー」の連続性(ナラティブ的連続性)を明らかにした。幼保小連携で強調される教師の仕事の非連続性ではなく、むしろナラティブの連続性を明らかにしたことは、本研究の分析概念や枠組みの実践的応用を多様なフィールドへと拡張する可能性を拓きつつある。2)非直線型キャリアを辿る調査協力者へのインタビュー(7名)を実施し、ライフヒストリー分析を行った。3)、教師キャリアパスのイメージ調査のアンケート項目のワーディングおよび修正を行い、平成30年度の調査の準備を行った。サブテーマのうち、1と2の非直線型キャリアの研究枠組みや調査分析は、研究計画どおりに進捗している。また非直線型キャリアに関わって、教師のアイデンティティ形成やティーチングストラテジーの従来の研究枠組みと異なり、教師ナラティブという分析概念に着目することで、教師のキャリア発達の新たな視点や教師の指導の連続性などの分析を可能とすることや、教育実践への応用可能性を拓くことなど、研究の方法的可能性がさらに広がりつつあることは、当初の予想を超えた成果に繋がりつつある。しかしながら、教職キャリアイメージ調査については、台湾の大学との比較研究に発展させたため、打ち合わせや内容の検討に時間がかかり、平成30年度に調査時期をずらさなければならなくなった。本年度は3つのサブテーマを遂行した。第一は,非直線型教員のライフヒストリー分析である。まず平成28年度と平成29年度に実施したライフヒストリー調査におけるインフォーマントのドキュメント資料を用いて,非直線型キャリアを有する教員のライフヒストリー分析を実施した。「アイデンティティ」「発達段階」「ストラテジー」といった概念を実存物として記述することのポストコロニアリズム課題,教師の語る「自己の変容」が社会的文化的文脈,学校現場の組織的制度的文脈に拘束されて意義づけられる<ライフ>であることを明らかにし,日本教育社会学会第70回大会で報告した。他には就学移行期の教師の指導文化に関する調査ドキュメント分析から,教師の仕事や生活のあり方が特別支援教育の観念の広がりから,非連続性よりも「包摂」「成長」を希求する資源化実践という連続性のある指導の文化を創出していることを明らかにした(子ども社会研究第24号)。第二は少数の教員を調査する質的研究の方法と分析枠組みの確立である。
KAKENHI-PROJECT-16K13552
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可視画像、近・中赤外分光法および蛍光X線分光法による圃場レベル作物情報センシング
迅速かつ簡易的に作物体内の元素やイオンを計測できる現場対応型の作物の栄養診断方法として、非破壊的に複数元素の同時計測が可能な蛍光X線分析と様態の異なる窒素計測が可能な赤外分光法の併用に着目し、様々な環境下で栄養吸収の特性が異なるトマトとイネを栽培した際に誘発される栄養情報の変化に関して、栽培状況の影響や品種間差異について検討した。その結果、葉中元素の分光情報と葉中元素含量関係より、蛍光X線分析による葉中元素含量の把握の可能性が示された。また、トマト葉の蛍光X線・赤外分情報に及ぼす培養液中の組成の影響、およびイネ体の分光測定からは特徴的な品種の特定の可能性が示され、色彩情報と併せて用いる事により農作物の栄養情報を把握の可能性が示された。そこで、簡易的、非破壊的、低コスト等の特徴を持つ作物情報センシング手法として、汎用的なデジタルカメラによる色彩画像解析に着目し、フィールドサーバを中核とした遠隔操作可能な色彩画像の連続モニタリングシステムを構築した。そして、気象情報を付随した色彩情報の定量的なモニタリングを可能とした。そこで、農産物、食品情報の構造化を行い、データ管理、蓄積およびデータ検索機能を持ったデータベースシステム、および、データベースによって提供されているデータから、利用者にとって意味のある情報を取り出すための解析システムからなる「インターネット対応型生物情報解析システムのプロトタイプ構築」を行った。迅速かつ簡易的に作物体内の元素やイオンを計測できる現場対応型の作物の栄養診断方法として、非破壊的に複数元素の同時計測が可能な蛍光X線分析と様態の異なる窒素計測が可能な赤外分光法の併用に着目し、様々な環境下で栄養吸収の特性が異なるトマトとイネを栽培した際に誘発される栄養情報の変化に関して、栽培状況の影響や品種間差異について検討した。その結果、葉中元素の分光情報と葉中元素含量関係より、蛍光X線分析による葉中元素含量の把握の可能性が示された。また、トマト葉の蛍光X線・赤外分情報に及ぼす培養液中の組成の影響、およびイネ体の分光測定からは特徴的な品種の特定の可能性が示され、色彩情報と併せて用いる事により農作物の栄養情報を把握の可能性が示された。そこで、簡易的、非破壊的、低コスト等の特徴を持つ作物情報センシング手法として、汎用的なデジタルカメラによる色彩画像解析に着目し、フィールドサーバを中核とした遠隔操作可能な色彩画像の連続モニタリングシステムを構築した。そして、気象情報を付随した色彩情報の定量的なモニタリングを可能とした。そこで、農産物、食品情報の構造化を行い、データ管理、蓄積およびデータ検索機能を持ったデータベースシステム、および、データベースによって提供されているデータから、利用者にとって意味のある情報を取り出すための解析システムからなる「インターネット対応型生物情報解析システムのプロトタイプ構築」を行った。まず,作物の葉を測定対象に実験室レベルで中赤外分光スペクトルと蛍光X線スペクトルを取得するための実験を行った。赤外分光スペクトル測定には,ATRアクセサリーを付属したFT-IRを使用した.IREにはZnSeを用いた。蛍光X線分装置には,島津製作所社製のエネルギー分散型蛍光X線分析装置を用いた。圃場実験用には,今回新たに購入したポータブル型FT-IR (SensIR TECHNOLOGIE社製Travel IR)を用いた。IREには赤外領域に吸収を持たないATR結晶にダイヤモンドを用いた。また,葉色の計測のために色彩画像計測の原器にあたる正しい色彩画像を作成できるシステムを再構築した。試作したシステムはデジタルカメラ、液晶ディスプレイ(ColorEdgeCG18ナナオ社製)、銀塩写真プリンター(PICTROGRAPHY3500富士写真フィルム社製)、計算機部(Power Mac G4 APPLE社製)から成り立っており、カラーマッチングが可能である。画像取得部分は,デジタルカメラと照明用光源から成り立っている。光源には色温度5500K,演色性91のトルーライト蛍光灯を採用した.イオン計測の標準法としてイオンクロマトグラフ法を用い、生体の栄養状態の指標となる陽イオン(K+, Ca2+, Mg2+)および陰イオン(NO3-, PO4-, SO42-)の検量線を作成した。FT-IRと蛍光X線を用いた実験での試料にはモデル葉とトマト葉を用いた.モデル葉は調整したイオン混合溶液(P, K, Ca)をろ紙に滴下し,数時間乾燥させたものと定義した。実験の結果、中赤外分光スペクトルからはタンパク態Nと硝酸態Nが検出可能なこと、蛍光X線スペクトルからは植物体の栄養診断に用いられるP, K, Caなどの陽イオン成分の分析が行えることが判明した。さらに備え付けタイプのFT-IRと携帯用のFT-IRのどちらにおいても十分な計測精度が得られることが確認された。新たに構築した色彩画像解析システムでは、緑領域を含む広い色彩領域でのカラーマッチングがうまく行えることが確認できた。最後に、JAVAアプレット形式での色彩・スペクトル解析ツールのプロトタイプも試作した。迅速かつ簡易的に作物体内の元素やイオンを計測できる現場対応型の作物の栄養診断方法として、非破壊的に複数元素の同時計測が可能な蛍光X線分析と様態の異なる窒素計測が可能な赤外分光法の併用に着目し、植物体の栄養状態の指標となる葉中の必須元素情報の計測方法について検討した。その際、代表的な作物であり、また栄養成分の吸収特性が異なるトマトとイネを対象とした。まず、葉モデルの幾何学的構造の影響を検討することにより、定量的な元素計測が可能となった。
KAKENHI-PROJECT-15380179
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可視画像、近・中赤外分光法および蛍光X線分光法による圃場レベル作物情報センシング
そして、トマト小葉,イネ葉の蛍光X線分光情報と、元素の定量分析の標準法でプラズマ発光分析(ICP)による葉中含量分析値との比較を行ったところ、主要な必須元素に関しては蛍光X線分光計測によって元素含量を定量的に把握可能である事が示された。一方、全反射吸収法を用いた赤外分光計測では、試料の生葉をセンサー部のクリスタルに接触させるための最適荷重を決定することにより,再現性の高い葉中成分の赤外分光情報の取得が可能となった。また、栽培過程におけるトマト樹体の葉の分光計測情報に基づき、栽培環境・条件による樹体内の元素バランス特性の把握を試みた。その結果、栽培過程におけるトマト生葉の分光計測から得られた樹体内の元素バランス情報と、既知の生理特性による元素バランスの傾向が一致し、栽培条件による元素バランスの違いも認められた。さらに、植物体の栄養状態を表す外観情報の1つである色彩情報に着目し、その計測に関わるデバイス間の統一した色彩表現が可能な色彩画像計測システムを構築した。そして、生葉の安定かつ定量的な色彩計測が可能となった。迅速かつ簡易的に作物体内の元素やイオンを計測できる現場対応型の作物の栄養診断方法として、非破壊的に複数元素の同時計測が可能な蛍光X線分析と様態の異なる窒素計測が可能な赤外分光法の併用に着目し、様々な環境下で栄養吸収の特性が異なるトマトとイネを栽培した際に誘発される栄養情報の変化に関して、栽培状況の影響や品種間差異について検討した。その結果、葉中元素の分光情報と葉中元素含量関係より、蛍光X線分析による葉中元素含量の把握の可能性が示された。また、トマト葉の蛍光X線・赤外分情報に及ぼす培養液中の組成の影響、およびイネ体の分光測定からは特徴的な品種の特定の可能性が示され、色彩情報と併せて用いる事により農作物の栄養情報を把握の可能性が示された。そこで、簡易的、非破壊的、低コスト等の特徴を持つ作物情報センシング手法として、汎用的なデジタルカメラによる色彩画像解析に着目し、フィールドサーバを中核とした遠隔操作可能な色彩画像の連続モニタリングシステムを構築した。そして、気象情報を付随した色彩情報の定量的なモニタリングを可能とした。そこで、農産物、食品情報の構造化を行い、データ管理、蓄積およびデータ検索機能を持ったデータベースシステム、および、データベースによって提供されているデータから、利用者にとって意味のある情報を取り出すための解析システムからなる「インターネット対応型生物情報解析システムのプロトタイプ構築」を行った。
KAKENHI-PROJECT-15380179
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ハイスループット型超高感度アミノ酸分析装置の開発とメタボローム解析への応用
(1)トロロックスを用いるアミノ酸の定量22種類のアミノ酸について、トロロックスと過塩素酸リチウムを含むジメチルスルポキシド中で電解すると、アミノ酸の濃度に依存した酸化前置波が出現すること確認した。この波高の計測によりアミノ酸の定量が可能であることを明らかにした。(2)塩基物質の電気化学検出のための2流路系HPLCシステムの構築とその応用トロロックスの電解酸化を活用してアミノ酸を検出するため、ポストカラム形式の2流路系HPLCシステムを設計した。システム作成の手始めとして、トロロックスと同様なクロマン環を有するトコフェロールを使って、分離カラムとトコフェロール試薬の2流路系から成るHPLCシステムを作製した。電気化学検出用電解セルでは、溶出液がウォールジェット型で作用電極表面にあたるような薄層電解セルを作製した。この電解セルを主要部として組込み、電気化学検出器と電極を接続して検出部を作製した。構築したシステムの作動を確認するために塩基物質のクロルジアゼポキシドを対象として定量分析を行った。(3)メタボローム解析のための前処理方法の検討メタボローム解析は、生体内における全代謝産物を同定および定量し、ゲノム機能と対応させることを目的とする。従って、生体試料から目的とする代謝産物を効率的に抽出する前処理方法が望まれる。血液中における薬物や漢方薬の代謝産物の同定及び定量を行うために必要な前処理方法を確立することができた。(4)キャピラリーLCによる高性能分離定量法の開発メタボローム解析を行うためには、高感度な分析法の開発が必須であり、その実現にはキャピラリーカラムを用いた電気化学検出CLCが有用であると考えた。高感度・高精度定量法のための改良を重ねた結果、アトモル(10^<18>mol)レベルの定量が可能であることが分った。(1)トロロックスを用いるアミノ酸の定量22種類のアミノ酸について、トロロックスと過塩素酸リチウムを含むジメチルスルポキシド中で電解すると、アミノ酸の濃度に依存した酸化前置波が出現すること確認した。この波高の計測によりアミノ酸の定量が可能であることを明らかにした。(2)塩基物質の電気化学検出のための2流路系HPLCシステムの構築とその応用トロロックスの電解酸化を活用してアミノ酸を検出するため、ポストカラム形式の2流路系HPLCシステムを設計した。システム作成の手始めとして、トロロックスと同様なクロマン環を有するトコフェロールを使って、分離カラムとトコフェロール試薬の2流路系から成るHPLCシステムを作製した。電気化学検出用電解セルでは、溶出液がウォールジェット型で作用電極表面にあたるような薄層電解セルを作製した。この電解セルを主要部として組込み、電気化学検出器と電極を接続して検出部を作製した。構築したシステムの作動を確認するために塩基物質のクロルジアゼポキシドを対象として定量分析を行った。(3)メタボローム解析のための前処理方法の検討メタボローム解析は、生体内における全代謝産物を同定および定量し、ゲノム機能と対応させることを目的とする。従って、生体試料から目的とする代謝産物を効率的に抽出する前処理方法が望まれる。血液中における薬物や漢方薬の代謝産物の同定及び定量を行うために必要な前処理方法を確立することができた。(4)キャピラリーLCによる高性能分離定量法の開発メタボローム解析を行うためには、高感度な分析法の開発が必須であり、その実現にはキャピラリーカラムを用いた電気化学検出CLCが有用であると考えた。高感度・高精度定量法のための改良を重ねた結果、アトモル(10^<18>mol)レベルの定量が可能であることが分った。(1)トロロックスを用いるアミノ酸の定量3種の塩基性アミノ酸、2種の酸性アミノ酸、17種の中性アミノ酸について、トロロックスと過塩素酸リチウムを含むジメチルスルホキシド中で電解すると、それぞれのボルタモグラム上に酸化前置波が生じた。酸化前置波の波高はそれぞれのアミノ酸の濃度に比例した。この波高の計測によりアミノ酸の定量が可能であった。ボルタンメトリーによる定量の条件を選択するために、酸化前置波への溶媒の影響、試薬量、支持電解質の種類などを検討し、定量に最適な測定条件を定めた。(2)塩基物質の電気化学検出のための2流路系HPLCシステムの作製(1)のボルタンメトリーによる検討により、アミノ酸は塩基としてトロロックスの酸化を促進して酸化前置波を生じると考えられた。酸化前置波を用いて塩基物質を検出するには、ポストカラム形式の2流路系HPLCシステムが適切である。そこで、システム作成の手始めとして、トロロックスと同様なクロマン環を有するトコフェロールを使って、分離カラムとトコフェロール試薬の2流路系から成るHPLCシステムを作製した。電気化学検出用電解セルでは、まず、作用電極として、グラッシーカーボン電極を用い、溶出液がウォールジェット型で作用電極表面にあたるような薄層電解セルを作製した。この電解セルを主要部として組込み、設備備品として購入した電気化学検出器と電極を接続して検出部を作製し、HPLCシステムに組み込んだ。(3)キャピラリーHPLCによる高感度分離定量2流路系HPLCシステムは、設備備品として購入したインテリジェントマイクロポンプ、キャピラリーカラム、電気化学検出部等で構築したが、本年度はキャピラリーカラムを用いた高感度・高精度分離定量のために改良を重ねた。1流路系として評価したところ、fmolレベルの定量が可能であることが分った。(1)塩基物質の電気化学検出のための2流路系HPLCシステムの構築とその応用アミノ酸をトロロックスと過塩素酸リチウムを含む
KAKENHI-PROJECT-16550084
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ハイスループット型超高感度アミノ酸分析装置の開発とメタボローム解析への応用
ジメチルスルホキシド中で電解すると、ボルタモグラム上に酸化前置波が生じ、その波高はそれぞれのアミノ酸の濃度に比例することが分かった。この原理を活用してアミノ酸を検出するため、ポストカラム形式の2流路系HPLCシステムを設計した。構築したシステムの作動を確認するために塩基物質のクロルジアゼポキシドを対象として定量分析を行った。(2)メタボローム解析のための前処理方法の検討メタボローム解析は、生体内における全代謝産物を同定および定量し、ゲノム機能と対応させることを目的とする。従って、生体試料から目的とする代謝産物を効率的に抽出し、高感度に分析する方法が望まれている。本年度は、血液中におけるトログリタゾン、バイカリン、バイカレインの代謝産物の同定及び定量するために必要な前処理方法とそれらの分析法を確立することができた。(3)キャピラリーLCによる高感度分離定量の開発メタボローム解析を行うためには、高感度な分析法の開発が必須であり、その実現にはキャピラリーカラムを用いた電気化学検出LCが有用であると考えた。高感度・高精度定量法のための改良を重ねた結果、アトモル(10^<-18>mol)レベルの定量が可能であることが分った。
KAKENHI-PROJECT-16550084
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リンパ腫自然発症マウスにおける宿主因子の研究
研究目的SL/Kh系マウスは、共同研究者である日合がSL系マウスから分離した近交系マウスで、生後6ヶ月までにPre B lymphomaをほぼ100%に自然発症する。また前リンパ腫期の骨髄内ではリンパ腫と表現型の類似したPre B細胞のポリクローナルな増殖が見られ、B細胞系に先天的な異常があることを示している。本系のリンパ腫発症には内在性ウイルスの存在とその発現が重要であることがわかっているが、そのウイルス発癌の正確な機構はまだ明かになっていない。これまでに最も良く研究された自然発症リンパ腫のモデルはAKRマウスであるが、この系においても内在性ウイルスの関与が明らかになっているものの、リンパ腫発症に関与する宿主病型決定因子の同定はなされていない。今回の研究は、(1)これに関与する内在性ウイルスの役割(2)その病型決定に預かる宿主要因の同定を目的としている。さらに(2)については、その遺伝的変異の分子機構にまでせまり、ウイルス発癌以外の系やヒトのリンパ腫の感受性決定因子をも同定する。結果および考察今回の交配実験により次の事を明らかにした。1 SL/Khマウスのリンパ腫発症には内在性ウイルスゲノムEmv-11(Akv-1)の存在とその発現が前提となる。2 SL/KhマウスのH2にlinkした優性遺伝子Esl-1,染色体4番Mup-1 locus近傍に存在する劣性遺伝子foc-1によりそれぞれlymphoblasticlymphoma,follicular centercell lymphomaへの病型決定がなされる。研究目的SL/Kh系マウスは、共同研究者である日合がSL系マウスから分離した近交系マウスで、生後6ヶ月までにPre B lymphomaをほぼ100%に自然発症する。また前リンパ腫期の骨髄内ではリンパ腫と表現型の類似したPre B細胞のポリクローナルな増殖が見られ、B細胞系に先天的な異常があることを示している。本系のリンパ腫発症には内在性ウイルスの存在とその発現が重要であることがわかっているが、そのウイルス発癌の正確な機構はまだ明かになっていない。これまでに最も良く研究された自然発症リンパ腫のモデルはAKRマウスであるが、この系においても内在性ウイルスの関与が明らかになっているものの、リンパ腫発症に関与する宿主病型決定因子の同定はなされていない。今回の研究は、(1)これに関与する内在性ウイルスの役割(2)その病型決定に預かる宿主要因の同定を目的としている。さらに(2)については、その遺伝的変異の分子機構にまでせまり、ウイルス発癌以外の系やヒトのリンパ腫の感受性決定因子をも同定する。結果および考察今回の交配実験により次の事を明らかにした。1 SL/Khマウスのリンパ腫発症には内在性ウイルスゲノムEmv-11(Akv-1)の存在とその発現が前提となる。2 SL/KhマウスのH2にlinkした優性遺伝子Esl-1,染色体4番Mup-1 locus近傍に存在する劣性遺伝子foc-1によりそれぞれlymphoblasticlymphoma,follicular centercell lymphomaへの病型決定がなされる。
KAKENHI-PROJECT-06770152
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06770152
統合失調症の大脳皮質における機能的結合性についての総合的脳画像研究
統合失調症の大脳皮質領域間の機能的結合性を、脳波および脳磁図によって評価した。初発未治療の患者では、皮質全体の脳波の同調性に低下が認められ、特に前頭部皮質と他領域との同調性の違いが目立った。薬物療法による症状改善は、同調性の改善と相関していた。長期の薬物療法を受けた統合失調症患者の脳磁図の解析では、同期性が高い領域が多く、抗精神病薬により領域間の同期性が高まっている可能性が考えられた。統合失調症の大脳皮質領域間の機能的結合性を、脳波および脳磁図によって評価した。初発未治療の患者では、皮質全体の脳波の同調性に低下が認められ、特に前頭部皮質と他領域との同調性の違いが目立った。薬物療法による症状改善は、同調性の改善と相関していた。長期の薬物療法を受けた統合失調症患者の脳磁図の解析では、同期性が高い領域が多く、抗精神病薬により領域間の同期性が高まっている可能性が考えられた。その結果、統合失調症患者のPANSS-Eの平均は、陽性症状13、陰性症状19、解体症状7、興奮症状6、抑うつ不安症状13、その他の症状16であった。これらの統合失調症患者では、CANTABによる認知機能検査において、健常者に比べ、反応時間が長く、迅速視覚情報処理の精度が低く、セットシフト課題・空間作業記憶課題・視覚対連合記憶課題におけるエラーが多い傾向が認められた。また言語性対連合記憶課題でも、統合失調症患者は即時及び遅延再生ともに、正解数が低い傾向が認められた。これは、統合失調症患者では、運動調節、視覚情報処理、作業記憶、学習などの広汎な認知機能に低下が認められることを示しており、今後の研究で例数を増やすことで、脳磁図による皮質領域間の同期性との相関関係を調べるための基礎データとして意義あるものである。その結果、統合失調症患者のPANSS-Eの平均は、陽性症状16、陰性症状17、解体症状8、興奮症状7、抑うつ不安症状8、その他の症状20であった。統合失調症患者は、健常者に比べ、視覚学習課題、問題解決課題における成績が有意に低く(p<0.01)、処理速度、空間作業記憶の成績が低い傾向が認められた(p<0.1)。一方で、動作速度、注意持続力、言語学習では健常者との間で差はなかった。また、一部の患者(8名)と健常者(9名)における脳磁図の予備的解析を行い、健常者では低周波数帯域(13-30Hz)における領域間の同期性が主に右半球に認められるのに対して、患者では領域間の同期性が両側の大脳半球間でも多く認められた。以上は、統合失調症患者では、視覚学習課題、問題解決、処理速度、作業記憶、学習などの広汎な認知機能に低下が認められること、低周波数帯域では両側半球間の相互作用が亢進していることを示し、今後すべての症例を用いた脳磁図データの解析で確認されれば、病態生理の解明において意義あるものである。24年度が最終年度であるため、記入しない。24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-22659210
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22659210
ボルネオ島河川急流域にみられるボルネオハヤセガエル属の種分化について
平成19年度は、これまで蓄積したデータをまとめ、必要な部分を補完する研究を行った。前年度までに採集した標本に加え、平成19年7月に野外調査を行って採集された標本を用い、遺伝的・形態的な解析を行った。また前年に引き続き、マレーシアのKinabalu Parkに所蔵されている標本に関して、一週間ほど標本計測のためだけに現地に滞在して、詳細な計測を行った。その結果を多変量解析的な手法を用いて解析したところ、これまで検出することができなかった種間差を検出したり、基準標本の分類学的な帰属を議論したりすることが可能になった。また、これまでミトコンドリアDNAのみに基づいて議論を行ってきたが、これにはいくつかの問題点が存在するため、核DNAマーカーの開発を試みた。その結果、これまで両生類で系統解析に用いられたことのない領域を含む4つの核DNA領域の解析に成功した。以上の研究の結果の一部は、報文として公表され、また現在核DNAとミトコンドリアDNAの持つ情報の違いに着目した論文を準備中である。その他の結果は、学位論文の形で完成されているが、その内容に関しては今後順次一般誌に投稿してゆく必要がある。学位論文は、4種の新種の報告を含む、ボルネオハヤセガエル属の系統分類学的研究であり、これまできわめて混乱状態にあった幼生と成体との対応付けや、分布・生息域などの情報に関して多くの新しい知見を盛り込んでいる。また、幼生の生息環境や成体の音声などについても引き続きデータを収集した。その結果はまだ公表するには至っていないが、特に音声に関して、解析機器を改良した結果、これまで単一の音声だと思われていた繁殖音に種間差の存在することを示唆する結果が得られ、今後の情報の蓄積により、分類学的形質として音声を用いることができるようになるかもしれない。本年度は主乏して、対象動物であるボルネオハヤセガエル属の分類学的問題を解決することを目的とした研究を行った。前年度までに採集した標本に加え、2005年8月と2006年3月に野外調査を行って採集された標本を用い、遺伝的・形態的な解析を行った。さらにアメリカ合衆国のField Museum of Natural Historyと、マレーシアのUniversity Malaysia Sabah、Kinabalu Parkに収蔵されている標本に関しても、貸借、あるいは現地で計測するなどして、情報を蓄積した。特に幼生標本に関しては、発生段階を考慮して、従来より精度の高い方法を模索し、その一部を日本動物学会において発表した。その結果として、この属と近縁属との系統学的関係がある程度明らかになり、論文として発表する機会を得たが、肝心の種レベルでの分類学的研究に関しては、新たな情報が多く加えられたために、論文としてまとめる段階まで至ることができなかった。例えば、これまで良種であると考えていたある種には、遺伝的・形態的に大きな地理変異が存在することがわかった(日本爬虫両棲類学会で発表)。また別の種には、遺伝的・形態的に異なる2系統が含まれると考えていたが、8月の調査で、これらとは遺伝的に異なる第3の系統が得られた。これらの分類学的問題を解決するためには、より詳細な形態学的解析を行う必要がある。また、次年度以降の研究内容の予備的な調査として、今年度は成体の音声と、幼生の生息環境の情報収集にも努めた。平成18年度もその前年に引き続き、対象生物であるボルネオハヤセガエル属の分類学的問題を解決することを目的とした研究を行った。前年度までに採集した標本に加え、平成18年11月に野外調査を行って採集された標本を用い、遺伝的・形態的な解析を行った。またマレーシアのKinabalu Parkに所蔵されている標本に関して、現地で詳細な計測を行うなどしてデータの蓄積を図った。さらに、大阪自然史博物館に所蔵されている標本を借用して計測を行う一方、液浸標本からDNAを抽出する試みを行った。その結果として、平成18年度中には本属の分類学的問題を扱った論文が1編受理された。この論文中では最終的な分類学的措置までは踏み込めなかったものの、Meristogenys amoropalamusなどの種に関して、隠蔽種の存在を示唆するデータを盛り込むことができた。この隠蔽種の問題に関係して、サバ大学から借用した幼生標本に関する報文を現在投稿中であり、また大阪自然史博物館に基準標本シリーズが収蔵されているため、この標本からDNA抽出を試みたところ、パラタイプ標本に関してDNAの増幅に成功した。また、先述の論文においては、これまで混乱状態にあった本属の幼生と成体の対応関係を整理し、4つの既知種と1つの未知種の幼生について比較的詳細な形態的記述をすることができた。その結果、これまで様々な先行研究によって発表されてきた本属の幼生の形態に関する記述には、我々の見地から見て支持できるものと支持できないものがあることがわかった。さらに平成17年度と同様、18年度も幼生の生息環境や成体の音声などについてデータを収集した。特に成体の音声に関してはこれまで音声が録音されていなかったいくつかの種に関して録音に成功した。平成19年度は、これまで蓄積したデータをまとめ、必要な部分を補完する研究を行った。前年度までに採集した標本に加え、平成19年7月に野外調査を行って採集された標本を用い、遺伝的・形態的な解析を行った。また前年に引き続き、マレーシアのKinabalu Parkに所蔵されている標本に関して、一週間ほど標本計測のためだけに現地に滞在して、詳細な計測を行った。
KAKENHI-PROJECT-05J02325
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05J02325
ボルネオ島河川急流域にみられるボルネオハヤセガエル属の種分化について
その結果を多変量解析的な手法を用いて解析したところ、これまで検出することができなかった種間差を検出したり、基準標本の分類学的な帰属を議論したりすることが可能になった。また、これまでミトコンドリアDNAのみに基づいて議論を行ってきたが、これにはいくつかの問題点が存在するため、核DNAマーカーの開発を試みた。その結果、これまで両生類で系統解析に用いられたことのない領域を含む4つの核DNA領域の解析に成功した。以上の研究の結果の一部は、報文として公表され、また現在核DNAとミトコンドリアDNAの持つ情報の違いに着目した論文を準備中である。その他の結果は、学位論文の形で完成されているが、その内容に関しては今後順次一般誌に投稿してゆく必要がある。学位論文は、4種の新種の報告を含む、ボルネオハヤセガエル属の系統分類学的研究であり、これまできわめて混乱状態にあった幼生と成体との対応付けや、分布・生息域などの情報に関して多くの新しい知見を盛り込んでいる。また、幼生の生息環境や成体の音声などについても引き続きデータを収集した。その結果はまだ公表するには至っていないが、特に音声に関して、解析機器を改良した結果、これまで単一の音声だと思われていた繁殖音に種間差の存在することを示唆する結果が得られ、今後の情報の蓄積により、分類学的形質として音声を用いることができるようになるかもしれない。
KAKENHI-PROJECT-05J02325
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領域大気モデルを用いた降水過程と陸面水文過程の相互作用に関する研究
降水過程と陸面過程の相互作用の理解を目的として,領域大気モデルによる現実の降水イベントの再現実験を行なった.1998年7月23日の夕刻から深夜に東シベリアYakutsk付近のGAME-Siberiaタイガ班観測地点(Spaskaya-Pad)において観測された強い雷雨を例に取った.これは,例年に比較して少雨乾燥傾向にあったこの年の東シベリアの夏季において,この付近では最大の降水イベントであった.モデルは,CSU-RAMS(Pielke et al.1992)を適宜変更して用いた.初期値,境界値にはECMWF客観解析値を用いた.3重グリッドネスティングを用い,外側,中間,内側の領域をそれぞれ一辺2000km,420km,84kmの正方形とし,グリッドの解像度をそれぞれ50km,10km,2kmとした.第1,第2グリッドにはKuoタイプの積雲対流スキームと雲微物理スキームを併用し,個々の積雲を直接表現する第3グリッドには雲微物理スキームのみを用いた.陸面水文過程は差し当たって単純に湿潤度を一様の値に固定した.計算は7月21日00Zを初期値とし,84時間行なった.昨年度の成果では,23日朝の層状雲の通過に伴う霧雨は良く再現されたが,夕方からの雷雨は第1,第2グリッドではタイミングが早すぎ,第3グリッドでは全く再現されなかった.今年度は,第1,第2グリッドの積雲対流スキームをオフにし,かつ地表の湿潤度をさまざまに変化させた実験を行なった.この結果,第3グリッドで現実的なタイミングで雷雨を再現することに成功した.これにより,現在の積雲対流スキームに問題があり,早すぎる対流が夕方には大気を安定させてしまうことが示唆された.また,地表の湿潤度を変化させることにより雷雨の場所とタイミングが変化した.これにより,朝方に降った霧雨が地表を濡らした効果が,夕方の雷雨に影響を与えていることが示唆された.降水過程と陸面過程の相互作用の理解を目的として,領域大気モデルによる現実の降水イベントの再現実娠を行なった.1998年7月23日の夕刻から深夜に東シベリアYakutsk付近のGAMF-Siberiaタイガ班観測地点(Spaskaya-Pad)において観測された強い雷雨を例に取った.これは,例年に比較して少雨乾燥傾向にあったこの年の東シベリアの夏季において,この付近アは最大の降水イベントであった.モデルは,CSU-RAMS(Pielke ea al.1992)を適宜変更して用いた。初期値,境界値にはECMWF客観解析値を用いた.3重グリッドネステイングを用い,外側,中間,内側の領域をそれぞれ一辺2000km,420km,84kmの正方形とし,グリッドの解像度をそれぞれ50km,10km,2kmとした.第1,第2グリッドにはKuOタイプの積雲対流スキームと雲微物理スキームを併用し,個々の積雲を直接表現する第3グリッドには雲微物理スキームのみを用いた.陸面水文過程は差し当たって単純に湿潤度を一様の値(0.4)に固定した.計算は7月21日00Zを初期値とし,84時間行なった.計算の結果,23日朝の層状雲の通過に伴う霧雨が,各グリッドで良く再現された.現実には,この後昼間に晴れ間があり,次第に曇りだした後に雷雨が発生したのは夕方19時ごろであった.しかし,モデルでは,第1グリッドと第2グリッドで層状雲の通過直後の昼頃から積雲対流スキームによる降水が始まり,夕方まで降り続いた.逆に第3グリッドでは,この後計算終了まで降水は生じず,雷雨を直接シミュレートすることができなかった.この結果は積雲対流を開始させる局所的な上昇流の再現に問題があることを示唆するものと考えられる.局所的な上昇流の発生と陸面の空間的非一様性の関係に注目してさらに実験を行なう.降水過程と陸面過程の相互作用の理解を目的として,領域大気モデルによる現実の降水イベントの再現実験を行なった.1998年7月23日の夕刻から深夜に東シベリアYakutsk付近のGAME-Siberiaタイガ班観測地点(Spaskaya-Pad)において観測された強い雷雨を例に取った.これは,例年に比較して少雨乾燥傾向にあったこの年の東シベリアの夏季において,この付近では最大の降水イベントであった.モデルは,CSU-RAMS(Pielke et al.1992)を適宜変更して用いた.初期値,境界値にはECMWF客観解析値を用いた.3重グリッドネスティングを用い,外側,中間,内側の領域をそれぞれ一辺2000km,420km,84kmの正方形とし,グリッドの解像度をそれぞれ50km,10km,2kmとした.第1,第2グリッドにはKuoタイプの積雲対流スキームと雲微物理スキームを併用し,個々の積雲を直接表現する第3グリッドには雲微物理スキームのみを用いた.陸面水文過程は差し当たって単純に湿潤度を一様の値に固定した.
KAKENHI-PROJECT-10740230
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10740230
領域大気モデルを用いた降水過程と陸面水文過程の相互作用に関する研究
計算は7月21日00Zを初期値とし,84時間行なった.昨年度の成果では,23日朝の層状雲の通過に伴う霧雨は良く再現されたが,夕方からの雷雨は第1,第2グリッドではタイミングが早すぎ,第3グリッドでは全く再現されなかった.今年度は,第1,第2グリッドの積雲対流スキームをオフにし,かつ地表の湿潤度をさまざまに変化させた実験を行なった.この結果,第3グリッドで現実的なタイミングで雷雨を再現することに成功した.これにより,現在の積雲対流スキームに問題があり,早すぎる対流が夕方には大気を安定させてしまうことが示唆された.また,地表の湿潤度を変化させることにより雷雨の場所とタイミングが変化した.これにより,朝方に降った霧雨が地表を濡らした効果が,夕方の雷雨に影響を与えていることが示唆された.
KAKENHI-PROJECT-10740230
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10740230
腎尿細管特異的ナトリウムトランスポーターの発現調節の機序についての検討
平成14年度は13年度に続き腎尿細管のNaトランスポーターの発現機序とその生理的意義についての研究を続け以下の点を明らかにした。1.尿細管ヘンレループ上行脚太部に局在する腎特異的Naトランスポーター(BSC : bumetanide sensitive cotransporter)は発現量の変化により、Na再吸収を調節し、それが尿濃縮に影響することを平成13年度の研究で明らかにした(Kideny Int. 60:672-679,2001)。そこで、平成14年度ではリチウム中毒による腎性尿崩症モデルラットを解析し、このBSCの発現変化は病態に大きく影響するとともに、この膜蛋白発現の知見に基づき、新たな薬理効果もしくは薬物療法の検討が可能であることを証明した(Kideny Int. 63:165・171,2003)。以上の結果から、腎尿細管においてヘンレループ上行脚ではBSCにより再吸収されたNaは水の再吸収に、その遠位のチャンネルによるNaの再吸収はNa自体の調節を介して、結果的に血中Na濃度や血圧の調節に利用される可能性が判明した。平成14年度は13年度に続き腎尿細管のNaトランスポーターの発現機序とその生理的意義についての研究を続け以下の点を明らかにした。1.尿細管ヘンレループ上行脚太部に局在する腎特異的Naトランスポーター(BSC : bumetanide sensitive cotransporter)は発現量の変化により、Na再吸収を調節し、それが尿濃縮に影響することを平成13年度の研究で明らかにした(Kideny Int. 60:672-679,2001)。そこで、平成14年度ではリチウム中毒による腎性尿崩症モデルラットを解析し、このBSCの発現変化は病態に大きく影響するとともに、この膜蛋白発現の知見に基づき、新たな薬理効果もしくは薬物療法の検討が可能であることを証明した(Kideny Int. 63:165・171,2003)。以上の結果から、腎尿細管においてヘンレループ上行脚ではBSCにより再吸収されたNaは水の再吸収に、その遠位のチャンネルによるNaの再吸収はNa自体の調節を介して、結果的に血中Na濃度や血圧の調節に利用される可能性が判明した。平成13年度は以下の点において研究を終了し、論文報告を行った。腎尿細管ナトリウムトランスポーター(Bumetanide sensitive cotransporter : BSC)の発現調節は尿の最大能力を発揮するための必要条件であることの証明:我々はすでに、脱水負荷による最大尿濃縮時にはBSCの発現増加が認められることは証明しているが(Kidney Int 54 : 877-888,1998)、BSCの発現障害と尿濃縮との関連の証明はされていなかった。そこで正常腎、一側腎摘出後の残存腎(片腎)、腎移植後の移植腎において脱水負荷前後における生理変化と腎の組織像、BSC発現を観察した。その結果、移植腎では腎虚血時間を最小限度に留め、同種ラットでの移植であったため、片腎と同様に組織学的に代償性肥大を示し、腎糸球体、尿細管ともに病理的変化が認められなかった。さらに、正常腎と比較して、片腎と移植腎ともに機能代償のためと考えられるBSCの増加が認められた。しかし、脱水負荷により、尿尿の最大濃縮が必要な条件下では正常腎、片腎ともにBSCの発現を増加させ尿の最大濃縮を達成したが、移植腎ではBSCの増加の反応がなく、尿濃縮も不完全であった。従って、尿の最大濃縮にはBSCの発現増加が必須条件であることが判明した。平成14年度は13年度に引き続き腎尿細管のNaトランスポーターを中心に、腎におけるNa再吸収の機序と生理的意義についての研究を続け以下の点を明らかにした。1.尿細管ヘンレループ上行脚太部に局在する腎特異的Naトランスポーター(BSC : bumetanide sensitive cotransporter)は発現量の変化により、Na再吸収を調節し、それが尿濃縮に影響することを平成13年度の研究で明らかにした(Kideny Int. 60:672-679,2001)。そこで、平成14年度ではリチウム中毒による腎性尿崩症モデルラットを解析し、このBSCの発現変化は病態に大きく影響するとともに、この膜蛋白発現の知見に基づき、新たな薬理効果もしくは薬物療法の検討が可能であることを証明した(Kideny Int. 63:165-171,2003)。以上の結果から、腎尿細管においてヘンレループ上行脚ではBSCにより再吸収されたNaは水の再吸収に、その遠位のチャンネルによるNaの再吸収はNa自体の調節を介して、結果的に血中Na濃度や血圧の調節に利用される可能性が判明した。
KAKENHI-PROJECT-13671095
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13671095
ヒドラの散在神経系における神経回路網の形成と維持の分子機構
ヒドラは、動物界で最も単純な神経系・散在神経系を持ち、脳や神経節の分化が見られず、体全体に神経網を形成している。最近、神経ペプチドの抗血清および単一クローン抗体を用いた蛍光染色法により、この神経網を全載標本で正確に、かつ詳細に観察することが可能になった。また、ヒドラの神経細胞は、位置環境に依存して神経ペプチドの発現を切り替えたり、異なった神経細胞タイプ間の変換をする能力を持ち、神経系の動的側面を顕著に示すことも申請者らによって判明した。又、申請者は、頭部再生中の神経網の形成過程と出芽中の頭部神経網の形成過程について、形態形成異常の突然変異体とそのキメラを用いて検討し、その結果、神経網形成は、環境の上皮細胞に支配されることを、明確に示すことができた。本研究では、散在神経系における神経回路網の形成と維持の機構を理解するため、神経網の形成と維持における神経細胞(前駆細胞も含む)と上皮細胞の相互作用の分子機構について検討した。その結果以下のことが判明した。1、ヒドラの神経網における各神経部分集合の一定の空間分布を規定している上皮細胞の分子メカニズムは何か。この点を形態形成能力の勾配に異常を示す各種突然変異体と上皮細胞が野生株由来で神経細胞が突然変異株由来のキメラ、また、その逆の組み合わせのキメラなどを用いて検討した結果、形態形成能力の勾配が神経網の空間分布の決定に重要な働きをしていることが判明した。2、細胞の外部情報を受け入れる機構の一つであるprotein kinase Cを介したトランスダクション機構が、ヒドラの神経回路網の形成と維持に重要な働きをしていることが、C kinase系の2nd messengerであるDAG(diacylglycerol)の処理実験によって明らかになった。3、現在、本研究室では、神経細胞を全然含まない上皮ヒドラを維持・増殖している。この上皮ヒドラに神経細胞の前駆細胞である幹細胞を導入し、神経網の形成の様子を各部位、各神経部分集合について比較検討した。その結果、触手と口丘では全く異なった神経網形成の機構が働いてモザイク状の神経網の維持に寄与していることが判明した。ヒドラは、動物界で最も単純な神経系・散在神経系を持ち、脳や神経節の分化が見られず、体全体に神経網を形成している。最近、神経ペプチドの抗血清および単一クローン抗体を用いた蛍光染色法により、この神経網を全載標本で正確に、かつ詳細に観察することが可能になった。また、ヒドラの神経細胞は、位置環境に依存して神経ペプチドの発現を切り替えたり、異なった神経細胞タイプ間の変換をする能力を持ち、神経系の動的側面を顕著に示すことも申請者らによって判明した。又、申請者は、頭部再生中の神経網の形成過程と出芽中の頭部神経網の形成過程について、形態形成異常の突然変異体とそのキメラを用いて検討し、その結果、神経網形成は、環境の上皮細胞に支配されることを、明確に示すことができた。本研究では、散在神経系における神経回路網の形成と維持の機構を理解するため、神経網の形成と維持における神経細胞(前駆細胞も含む)と上皮細胞の相互作用の分子機構について検討した。その結果以下のことが判明した。1、ヒドラの神経網における各神経部分集合の一定の空間分布を規定している上皮細胞の分子メカニズムは何か。この点を形態形成能力の勾配に異常を示す各種突然変異体と上皮細胞が野生株由来で神経細胞が突然変異株由来のキメラ、また、その逆の組み合わせのキメラなどを用いて検討した結果、形態形成能力の勾配が神経網の空間分布の決定に重要な働きをしていることが判明した。2、細胞の外部情報を受け入れる機構の一つであるprotein kinase Cを介したトランスダクション機構が、ヒドラの神経回路網の形成と維持に重要な働きをしていることが、C kinase系の2nd messengerであるDAG(diacylglycerol)の処理実験によって明らかになった。3、現在、本研究室では、神経細胞を全然含まない上皮ヒドラを維持・増殖している。この上皮ヒドラに神経細胞の前駆細胞である幹細胞を導入し、神経網の形成の様子を各部位、各神経部分集合について比較検討した。その結果、触手と口丘では全く異なった神経網形成の機構が働いてモザイク状の神経網の維持に寄与していることが判明した。
KAKENHI-PROJECT-04804062
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04804062
活性酸素センサー分子とそのシグナル伝達機構
(1)本研究では活性酸素センサー分子PRLとその標的分子のMg2+トランスポーターMagEx/CNNMに関する研究を進めている。CNNMと協調して細胞内や個体でのMg2+レベル調節に重要な働きをしているTRPM6を腎臓で特異的に欠損させたマウスの作成を進めており、表現型解析に十分な数のマウスを作出することに成功した。また線虫でのCNNM変異体で寿命が短縮すると共に活性酸素の量が変化していることが示唆されていたので、異なる原理の活性酸素プローブを用いてその検証を行った。その結果、腸細胞の中で特異的に活性酸素が増加していることを明らかにできた。さらにこの変異体線虫を抗酸化剤として汎用されるNアセチルシステインで処理すると、野生型の線虫と同程度まで寿命を回復させることもできた。これらの研究成果からCNNMの機能異常が腸での活性酸素産生や寿命短縮に重要であることが明確に示された。(2)本研究開始当初より我々は、活性酸素センサーのひとつであるPP5-KLHDC10システムの応答機構および生理的意義の解明に注力してきたが、併せて、長年研究を続けている活性酸素応答性のリン酸化酵素であるASK1の解析も行い、ASK1が過酸化脂質の蓄積に応答して活性化することを新たに見出した。また、細胞内の過酸化脂質の蓄積はフェロトーシスという種類の細胞死を導くことが知られているが、その制御メカニズムの多くは未解明であったため、ASK1がフェロトーシスの新たな制御因子ではないかと仮説を立て、さらに解析を進めた。その結果、複数のフェロトーシス誘導モデルにおいてASK1が関与することを見出した。フェロトーシスが深く関与することが知られている虚血性疾患モデルにおいて、ASK1の関与がすでに報告されていることを鑑みると、ASK1を介したフェロトーシスの制御が新たな疾患治療戦略として期待される。本研究では、活性酸素の直接の酸化標的となる活性酸素センサー分子に着目して、細胞の活性酸素応答を分子レベルで明らかにすることを目的としており、センサー分子PRLやKLHDC10-PP5の酸化に始まる分子応答機序や、その下流で起こるCNNMによるMg2+輸送やASK1による細胞死などに関する解析を進めている。29年度およびその繰越金を利用した研究によって、交付申請書に記した研究計画の重要な部分をほぼ実施することができただけでなく、CNNM変異による腸細胞特異的な活性酸素増加の確認や、ASK1のフェロトーシスへの関与およびマウスモデルでの重要性の検証など当初予想していなかった重要な研究成果が得られた。特に生体内での局所的な活性酸素増加は、本新学術領域研究全体のテーマ「酸素リモデリング」の追究に合致している。今後これらの発見をベースにさらなる発展が期待できる成果であり、その基礎となる重要な発見と位置付けられる。これらの理由から、29年度およびその繰越金を利用した研究はおおむね順調に進展していると判断した。順調に進展した上記の研究成果を受けて、基本的には申請時の大まかな方向に沿って、さらに発展させてゆく形で今後の研究を進めて行くことを計画している。またそれと共に、新規に見出したCNNM変異体線虫での部位特異的な活性酸素増加やASK1のフェロトーシスにおける役割などの重要な成果については、それを明確にしてゆくための研究計画を追加したり、よりフォーカスを強めた内容になっている。本研究の所期の目的である「細胞の活性酸素応答を分子レベルで明らかにする」に合致しており、これらの研究計画を実施することでさらに大きな発展が期待できる。(1)活性酸素センサー分子PRLの結合標的CNNM/MagExが上皮細胞の基側部に局在する分子機構を明らかにするため、培養系の上皮細胞MDCKを用いて各種変異体の局在解析や関連因子のノックダウン解析などを行った。その結果、CNNM4/MagEx4のC末端部に存在するいくつかのLLモチーフにAP-1複合体が結合して基側部に運んでいることを明らかにした。また、腎臓の遠位尿細管に発現するCNNM2/MagEx2のヘテロ欠損マウスでの血圧異常を確認していたので、血圧制御に重要な因子群の発現解析を行ったが、特に顕著な変化は見られなかった。このマウスの腎臓で網羅的な遺伝子発現解析などを行ったところ、Mg2+輸送に重要なTRPM6などいくつかの興味深い因子の発現が大きく変化していることを見つけた。またこの発現変化は培養細胞系でCNNM/MagExをノックダウンした際にも確認され、しかもそれが活性酸素応答性であることも明らかとなった。(2)主にTNFα大量投与による全身炎症モデルにおけるKLHDC10の生理機能解析を中心に研究を進めた。その結果、KLHDC10欠損マウスにおいてはTNFα大量投与後、炎症性サイトカインの1つIL-6量の低下が認められた。一方、ネクロプトーシスの程度の指標となる各種組織障害性マーカー(ALT, LDH)や、ネクロプトーシスを起こした細胞から放出されるDAMPsマーカーの1つであるミトコンドリアDNAの量等には、KLHDC10欠損マウスにおいては野生型マウスと比較して顕著な差は認められなかった。さらに、in vitroにおけるTNFα誘導性ネクロプトーシスモデルにおいても、KLHDC10欠損によってネクロプトーシスに大きな差は認められなかった。以上の結果は、KLHDC10がネクロプトーシス以降の過程に関与している可能性が高いことを示唆するものと考えている。(1)活性酸素
KAKENHI-PLANNED-26111007
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