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第2章
農業科の
各科目
1 内容の構成及び取扱い
この科目は,目標に示す資質・能力を身に付けることができるよう,
(1)
「栽培と環
境」とプロジェクト学習,
(2)
栽培と環境の診断・実験の方法,
(3)
栽培植物と環境要素,
(4)
栽培植物の育成環境,
(5)
環境に配慮した栽培の実践の五つの指導項目で,2~6単
位程度履修されることを想定し,内容を構成している。また,内容を取り扱う際の配慮
事項は次のように示されている。
(内容を取り扱う際の配慮事項)
ア
「作物」
,
「野菜」
,
「果樹」
,
「草花」などの科目と関連付けて指導計画を作成する
とともに,
〔指導項目〕の
(1)
から
(5)
まで横断的に学習できるようにすること。
この科目の指導に当たっては,栽培関係科目との連携を図りながら,プロジェクト学
習の中で,栽培環境の内容を学習できるようにすることが大切である。
また,この科目は,栽培関係科目と密接な関連をもたせながら,その補完的な役割を
担う科目として位置付けている。
この科目では,栽培と環境を学ぶ目的を明確に示し,栽培関係科目と深い関わりがあ
ることと,栽培プロジェクト学習において,環境要素の調査,観察,診断,実験と検証
活動の役割と方法を理解し,その実践を通して分析や考察を行い,科学的及び論理的な
思考力を培うとともに,栽培植物の生理・生態的な特性や栽培に適した環境及びそれら
と生育の相互関係などの基本を理解するよう工夫して,課題の解決力や探究する力を養
うことが必要である。
イ
〔指導項目〕の
(1)
については,科目学習の導入として扱うこと。また,
(5)
につ
いては,
(1)
を踏まえ,
(2)
から
(4)
までと並行して,又はそれらを学習した後に扱
うこと。
〔指導項目〕の
(1)
については,栽培と環境を学ぶ目的を明確に示し,栽培関係科目と
深い関わりがあることと,栽培プロジェクト学習において,農業生産工程管理(GAP)
の過程で,環境要素の調査,観察,診断,実験と検証活動を行うなど,プロジェクト学
習の具体的な進め方について理解できるようにすることが必要である。
また,環境要素の調査,観察,診断,実験や検証活動を実践し,その分析や考察を通
して科学的及び論理的な思考力を培うとともに,学習を通して栽培環境における課題の
解決力や探究する力を養うことが大切である。
ウ
〔指導項目〕の
(2)
については,調査と観察,診断の方法,各種の実験と検証の方
法を理解させ,科学的な見方と実践力が身に付くよう工夫して指導すること。また,
(3)
については,栽培植物の種類と特性に応じた育成管理と環境要素との関係につ
いて理解できるよう工夫して指導すること。
(4)
については,栽培のプロジェクト
学習を通して,実践的・体験的に取り組めるようにすること。施設型農業について
は,施設内の栽培環境と環境制御について理解できるよう工夫して指導すること。
〔指導項目〕の
(2)
については,栽培プロジェクトにおける,調査,観察,診断,実験
第2 内容とその取扱い
|
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10
栽培と環境
と検証,記録などの学習活動を通して,栽培植物の特性や栽培環境,またそれらと生育
の相互関係などを理解して,関連する技術を習得できるようにすることが必要である。
その際,地域農業の実態,学科の目標や特色,学校農場や地域の施設などの活用を考
慮しながら,栽培植物を選択して課題を設定し,栽培植物の生育診断や環境の調査,観
察,実験と検証,継続的な記録,情報の収集や資料の活用,データの図表化と分析,仮
説の検証などにより,科学的かつ論理的に考察できるようにすることが大切である。
2 内容
2 内 容
1に示す資質・能力を身に付けることができるよう,次の〔指導項目〕を指導す
る。
〔指導項目〕
(1)
「栽培と環境」とプロジェクト学習
ア 栽培と環境に関するプロジェクト学習の意義
イ プロジェクト学習の進め方
(内容の範囲や程度)
ア
〔指導項目〕の
(1)
については,
「作物」
,
「野菜」
,
「果樹」
,
「草花」などの科目と
関連付けながら,科目全体で科学的かつ創造的に学習を進めるように扱うこと。
(1)
「栽培と環境」とプロジェクト学習
ここでは,
「栽培と環境」とプロジェクト学習について,栽培植物と環境を科学的に
捉え,自ら学び,取り組むことができるようにすることをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 栽培と環境に関するプロジェクト学習の意義や進め方について理解するとともに,
関連する技術を身に付けること。
② 栽培と環境に関する課題を発見し,プロジェクト学習により科学的な根拠に基づい
て創造的に解決すること。
③ 栽培と環境について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。
ア 栽培と環境に関するプロジェクト学習の意義
ここでは,常に科学的な見方と,自ら課題意識をもち,その課題を解決するための
実践力を身に付けることが重要であることから栽培の飼育と環境に関するプロジェク
ト学習の意義について理解できるよう指導する。
イ プロジェクト学習の進め方
ここでは,
「農業と環境」で習得したプロジェクト学習の方法を踏まえ,課題設定,
計画立案,実施,まとめ(反省・評価)の一連の流れをもとに,栽培と環境に関する
諸課題を主体的に解決するための具体的な実践事例を取り上げて指導する。
課題設定に当たっては,
「作物」
,
「野菜」
,
「果樹」
,
「草花」などにおける栽培プロ
|
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第2章
農業科の
各科目
ジェクトの一環として進められることから,例えば,統一テーマを「栽培植物の育成
に環境要素が及ぼす影響」として示し,グループや個人で,気象要素,土壌要素,生
物要素などに関する具体的な小テーマを設定する方法が考えられる。なお,課題設定
では,環境に配慮した栽培等のあるべき姿と,それに対する現状の認識から問題点を
抽出・整理し,達成する目標を明確にすることが必要である。
また,設定した課題の解決に向けては,仮説を設定して目標を明確にした上で計画
を立案し,その計画に沿って,栽培植物の農業生産工程管理(GAP)に基づいた調査,
観察,診断,実験などを継続的に実施し,その結果を分析,考察,評価してまとめる
など,主体的な学習活動を展開する。なお,学習成果を共有し,取組を評価して次に
つなげるなど,学習を確かなものにするために発表の機会を設けることが大切である。
〔指導項目〕
(2)栽培と環境の診断・実験の方法
ア 調査と観察
イ 生育と環境の診断
ウ 実験と検証
(内容の範囲や程度)
イ
〔指導項目〕の
(2)
については,栽培植物の育成と環境要素に関する実験,調査,
観察,診断などの方法と進め方について基礎的な内容を扱うこと。
(2)
栽培と環境の診断・実験の方法
ここでは,栽培環境の要素に関する各種の調査,観察,診断,実験と検証の方法や手
順を理解して実践できるようにすることをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 栽培と環境の診断・実験の方法について理解するとともに,関連する技術を身に付
けること。
② 栽培と環境の診断・実験に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に
解決すること。
③ 栽培と環境の診断・実験の方法について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこ
と。
ア 調査と観察
ここでは,栽培植物の生育段階における葉や茎,根の形態や色調などの生育調査,
観察,記録,スケッチなどの活動について取り上げて指導する。
気象要素では,光,温度,湿度,降水量,降雪量などを取り上げ,気象要素が作物
の生育過程と生理作用に及ぼす影響などについて調査と観察を実施して考察する学習
活動を取り入れる。その際,気象図の見方を学習することも大切である。
土壌要素では,土壌の働きや土質と組成,土壌の構造,土壌水分,土壌中の空気,
水素イオン濃度(pH)
,土中の塩類濃度,土壌の有機成分と無機成分,土壌生物や土
|
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10
栽培と環境
壌微生物を取り上げ,土壌の調査と観察を実施して考察する学習活動を取り入れる。
生物要素では,栽培植物の保護と生物要素との関係,微生物,土壌動物,昆虫,雑
草,外来生物,野生鳥獣などを取り上げる。微生物では,細菌,かびやウイルスを扱
い,ダニ,センチュウ,ネズミなどの有害動物や,ミツバチなどの有用動物など,雑
草では,水田雑草や畑地雑草などを取り上げるとともに,生き物の調査と観察を実施
して考察する学習活動を取り入れる。
イ 生育と環境の診断
ここでは,栽培植物における生育診断や収量診断,栄養診断,土壌診断,雑草診断,
病害虫診断,環境診断などの方法と具体的な進め方について取り上げ,各種の診断を
実施して考察する学習活動を取り入れる。
ウ 実験と検証
ここでは,学科の特性や各学校の施設などに応じた各種の実験として,栽培植物の
育成技術に関する各種の実験や,大気環境,土壌環境,生物環境などの育成環境に関
する各種の実験と検証の方法と進め方について取り上げて考察する学習活動を取り入
れる。
〔指導項目〕
(3)栽培植物と環境要素
ア 環境の要素
イ 物質の循環
ウ 栽培技術と環境
(内容の範囲や程度)
ウ
〔指導項目〕の
(3)
については,栽培植物の育成に関わる環境要素の役割や物質循
環,栽培技術と環境との相互関係について基礎的な内容を扱うこと。
(3)
栽培植物と環境要素
ここでは,栽培植物の育成と環境要素との相互関係について理解できるようにするこ
とをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 栽培植物と環境要素の関係について理解するとともに,関連する技術を身に付ける
こと。
② 栽培植物と環境要素に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に解決
すること。
③ 栽培植物と環境要素について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。
ア 環境の要素
ここでは,栽培環境の要素として,気象的要素,土壌的要素,生物的要素を取り上
げ,各要素間の相互関係などについて考察する学習活動を取り入れる。
イ 物質の循環
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第2章
農業科の
各科目
ここでは,自然環境と生物との関係,栽培環境における物質循環の特徴について取
り上げ,物質の循環について考察する学習活動を取り入れる。
ウ 栽培技術と環境
ここでは,栽培環境の特徴と利用,栽培植物の生育と環境,栽培管理と環境につい
て取り上げ,品種の選定や播種時期,作付方式,病害虫防除や雑草防除の決定など,
栽培管理技術と栽培環境との相互関係について考察する学習活動を取り入れる。
〔指導項目〕
(4)栽培植物の育成環境
ア 気象と災害対策
イ 土壌の管理と改良
ウ 肥料の性質と施肥の方法
エ 農薬の特性と防除の方法
オ 施設型農業の栽培環境
(内容の範囲や程度)
エ
〔指導項目〕の
(4)
については,栽培管理における環境要素の活用や,環境に配慮
した栽培管理の方法,農業生産工程管理やポジティブリスト制度,生態的な防除の
方法など具体的な内容を扱うこと。
(4)
栽培植物の育成環境
ここでは,栽培のプロジェクトにおける育成環境と各環境要素の調節について,管理
と改善の方法を科学的に捉え,自ら学び実践できるようにすることをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 環境要素の調節,管理と改善について理解するとともに,関連する技術を身に付け
ること。
② 環境要素の調節,管理と改善に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造
的に解決すること。
③ 環境要素の調節,管理と改善について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。
ア 気象と災害対策
ここでは,栽培植物の生育と気象との関係,風害,水害,雪害,冷害,凍霜害,冷
水害,干害,風食,水食,大気汚染害などの主な気象災害の原因,発生条件,被害の
様相及び抑止対策の要因,気象災害発生と抑止策,栽培技術的な対策や気候変動につ
いて取り上げ,災害対策について考察する学習活動を取り入れる。
イ 土壌の管理と改良
ここでは,土壌の種類別管理の方法,土壌の診断方法と改良,有機物の施用と地力
の維持,輪作や混作などの作付方式,農業生産工程管理(GAP)について取り上げ,
土壌の適切な管理と改良に取り組む学習活動を取り入れる。
ウ 肥料の性質と施肥の方法
|
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栽培と環境
ここでは,肥料の性質と種類,栽培植物の栄養生理に応じた施肥の方法について取
り上げる。その際,栽培植物の生育に必要な養分や肥料成分,施肥量や施肥時期の決
定の方法,栽培植物の生育にあわせた施肥,農業生産工程管理(GAP)について取
り上げ,作業の適期を判断して施肥を適切に実施し,考察する学習活動を取り入れる。
また,環境に負荷をかけない施肥の方法についても取り上げ,資源の循環や再生利
用と環境の保全について考察する学習活動を取り入れる。
エ 農薬の特性と防除の方法
ここでは,農薬の特性と種類や,病害虫,雑草を防除する基本的な態度,農薬の使
用法や環境への影響と負荷の減少,有用生物の保護と利用,生態的な防除,農業生産
工程管理(GAP)
,ポジティブリスト制度について取り上げ,病害虫の早期発見と防
除の方法を判断して,適切な防除に取り組む学習活動を取り入れる。
その際,農薬の毒性,作物への効果と薬害についても取り上げ,
農薬の使用では常
に取扱いと安全面に細心の注意を払い,適切な農薬の散布と維持管理について取り組
む学習活動を取り入れる。また,生態的な防除の方法と環境保全について考察する学
習活動も取り入れる。
オ 施設型農業の栽培環境
ここでは,施設型栽培における栽培環境の特徴と環境条件,温室,植物工場,環境
制御システムなどの人工環境などについて取り上げて指導する。
具体的には,施設栽培と環境との関係について,施設型栽培の目的と動向,作型,
温室,植物工場,環境制御システム,温度,湿度,光などの気象要素や土壌要素,生
物要素と環境条件との関係について考察する学習活動を取り入れる。
〔指導項目〕
(5)環境に配慮した栽培の実践
(内容の範囲や程度)
オ
〔指導項目〕の
(5)
については,環境に配慮した栽培技術を踏まえ,環境の保全や
創造に関する地域や学校での実践的な活動を行うこと。
(5)
環境に配慮した栽培の実践
ここでは,農業の持つ物質循環機能を生かし,化学肥料や農薬の使用などによる環境
への負荷を軽減する持続可能な栽培植物の育成や,生物多様性と生態系を維持する里地
里山の役割と機能,環境の保全について理解できるようにすることをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 環境に配慮した栽培技術と環境保全について理解するとともに,関連する技術を身
に付けること。
② 環境に配慮した栽培技術と環境保全に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づい
て創造的に解決すること。
③ 環境に配慮した栽培技術と環境保全について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組
|
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第2章
農業科の
各科目
むこと。
環境に配慮した栽培の実践では,農業生産や農業経営のあるべき姿を捉えながら,今
日の栽培と環境との関係性に対応して,選定した植物に応じて環境に配慮した栽培と環
境保全型農業や栽培環境の創造,自然環境と調和した栽培技術などを取り上げる。また,
堆肥などによる土づくり,化学肥料や農薬使用量の低減,家畜の糞尿や稲わらなどを利
用した実践的なプロジェクト学習や地域活動などを取り入れる。
特に,それらを有機的に学校での学習活動で展開するために,外部機関,例えば,研
究機関や大学及び農業大学校,先進農業経営者などと連携を図りながら,栽培植物によ
る景観の保持機能,生物多様性を生かした栽培植物の生産,里地里山の役割と機能,農
業環境政策についても取り上げるとともに,生物多様性の保護と環境の保全に配慮した
栽培技術の探究などについて取り組むことも重要である。
また,地域環境との調和を目指した取り組みの中で,地域の実態に応じた植物の栽培,
野生植物の保護や病害虫対策など,人と植物の共存のための取り組み等についても取り
上げることが大切である。
|
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11
飼育と環境
この科目は,動物の飼育と環境について学習する科目であり,
「農業生産や農業経営に
関する分野」に属する科目である。今回の改訂では,動物を取り扱う産業の広がりに対応
して,従前の「動物バイオテクノロジー」の学習内容を「飼育と環境」とし,各種動物の
飼育管理について幅広く学習できるように分類整理した。さらに,
「畜産」との関連を図
り,その補完的・発展的な役割を有する科目として,家畜を含む動物の繁殖や飼料作物の
栽培などについてより深く学習できるよう内容の充実を図った。また,課題意識をもって
学習に臨むことが重要であることから,プロジェクト学習の意義や実践について明確に位
置付けた。
1 目 標
農業の見方・考え方を働かせ,実践的・体験的な学習活動を行うことなどを通し
て,飼育動物の育成環境の調節・管理に必要な資質・能力を次のとおり育成するこ
とを目指す。
(1)飼育と環境について体系的・系統的に理解するとともに,関連する技術を身に
付けるようにする。
(2)飼育と環境に関する課題を発見し,農業や農業関連産業に携わる者として合理
的かつ創造的に解決する力を養う。
(3)飼育と環境について農業生物の飼育や管理に応用できるよう自ら学び,農業の
振興や社会貢献に主体的かつ協働的に取り組む態度を養う。
この科目においては,動物の飼育を社会的な意義や役割の視点で捉え,動物と私たちの
生活を関連付けて考察するとともに,動物の飼育と環境に関するプロジェクト学習などの
実践的・体験的な課題解決学習を通して,動物の飼育とその飼育環境の創造に必要な資
質・能力を育成することをねらいとしている。
目標の
(1)
については,動物の発育と環境に関するプロジェクト学習を通して,動物の
生理・生態や生育環境などの動物の発育に関する知識と飼育計画,管理,評価などの動物
の飼育に関する知識と技術を体系的・系統的に理解し,身に付けるようにすることを意味
している。
目標の
(2)
については,動物の飼育と環境に関して,飼育技術や飼育環境,経費などの
飼育や環境に関する課題を発見し,動物飼育の実践事例や動物飼育が果たす社会的な意義
と役割などを踏まえるとともに,生きた動物を教材として用いることの重要性を命の尊重
などの倫理面から十分に理解し,さらに,環境への配慮や法令遵守など,職業人に求めら
れる倫理観をもって,科学的な根拠などに基づいて創造的に解決する力を養うことを意味
している。
目標の
(3)
については,動物飼育の学習を通して,動物が人々の生命の維持や豊かな生
第1 目標
第11 節 飼育と環境
|
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第2章
農業科の
各科目
活を提供するという社会的な役割を担っていることを理解し,私たちの生活の質の向上を
図るとともに,その振興や社会貢献に主体的かつ協働的に取り組む態度を養うことを意味
している。
1 内容の構成及び取扱い
この科目は,目標に示す資質・能力を身に付けることができるよう,
(1)
「飼育と環
境」とプロジェクト学習,
(2)
飼育の目的と現状,
(3)
飼育と環境,
(4)
飼育技術と管
理・評価,
(5)
飼育の実践の五つの指導項目で,2~6単位程度履修されることを想定
し,内容を構成している。また,内容を取り扱う際の配慮事項は次のように示されてい
る。
(内容を取り扱う際の配慮事項)
ア
「畜産」などの科目と関連付けて指導計画を作成するとともに,
〔指導項目〕の
(1)
から
(5)
まで横断的に学習できるようにすること。
この科目の指導に当たっては,
「畜産」などの関係科目との連携を図りながら,飼育
に関するプロジェクト学習の中で,飼育環境の内容を学習できるようにすることが大切
である。特に,この科目は,
「畜産」などの関係科目と密接な関連を持たせながら,そ
の補完的な役割を担う科目として位置付けている。
また,飼育と環境を学ぶ目的を明確に示し,飼育関係科目と深い関わりがあることと,
動物の飼育と環境に関するプロジェクト学習において,環境要素の調査,観察,診断,
実験と検証活動の役割と方法,プロジェクト学習の具体的な進め方について理解し,そ
の実践を通して,分析や考察を行い,科学的及び論理的な思考力を培うとともに,それ
らの学習を通して動物の飼育と飼育環境における課題を解決する力や探究する力を養う
ことが大切である。
イ
〔指導項目〕の
(1)
については,科目学習の導入として扱うこと。また,
(5)
につ
いては,
(1)
を踏まえ,
(2)
から
(4)
までと並行して,又はそれらを学習した後に扱
うこと。
〔指導項目〕の
(1)
については,課題意識をもって学習に臨むことが重要であることか
ら,
「農業と環境」で習得したプロジェクト学習の方法を踏まえ,飼育と環境に関する
プロジェクト学習の意義と役割について明確に位置付け,科目学習の最初に扱い,プロ
ジェクト学習を活用した学習展開がスムーズに行われることが大切である。
また,
(5)
については,
(2)
から
(4)
までの学習と並行して,あるいはその学習の後に,
実際に一連の動物の飼育と環境の創造に取り組む実践的・体験的な学習を通して,目的
に応じた動物の飼育に主体的,意欲的に取り組むことができるようにすることが大切で
ある。
第2 内容とその取扱い
|
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11
飼育と環境
2 内容
2 内 容
1に示す資質・能力を身に付けることができるよう,次の〔指導項目〕を指導す
る。
〔指導項目〕
(1)
「飼育と環境」とプロジェクト学習
ア 飼育と環境に関するプロジェクト学習の意義
イ プロジェクト学習の進め方
(内容の範囲や程度)
ア
〔指導項目〕の
(1)
については,
「畜産」などの科目と関連付けながら科目全体で
科学的かつ創造的に学習を進めるように扱うこと。
(1)
「飼育と環境」とプロジェクト学習
ここでは,
「飼育と環境」とプロジェクト学習について,動物の飼育と環境を科学的
に捉え,自ら学び,取り組むことができるようにすることをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 動物の飼育と環境に関するプロジェクト学習の意義や進め方について理解するとと
もに,関連する技術を身に付けること。
② 動物の飼育と環境に関する課題を発見し,プロジェクト学習により科学的な根拠に
基づいて創造的に解決すること。
③ 動物の飼育と環境について自ら学び,プロジェクト学習に必要な情報収集と分析に
主体的かつ協働的に取り組むこと。
ア 飼育と環境に関するプロジェクト学習の意義
ここでは,常に科学的な見方と,自ら課題意識をもち,その課題を解決するための
実践力を身に付けることが重要であることから,動物の飼育と環境に関するプロジェ
クト学習の意義について理解できるよう指導する。
イ プロジェクト学習の進め方
ここでは,
「農業と環境」で習得したプロジェクト学習の方法を踏まえ,課題設定,
計画立案,実施,まとめ(反省と評価)の一連の流れをもとに,動物の飼育と環境に
関する諸課題を主体的に解決するための具体的な実践事例を取り上げて指導する。
課題設定に当たっては,例えば,統一テーマを「動物の快適性や動物福祉に配慮し
た飼育管理」や「飼育環境が動物の生育に及ぼす影響」として示し,グループや個人
で具体的な小テーマを設定する方法が考えられる。なお,課題設定では,動物の快適
性や動物福祉に配慮した飼育管理などのあるべき姿と,それに対する現状の認識から
問題点を抽出・整理し,達成する目標を明確にすることが大切である。
また,設定した課題の解決に向けては,仮説を設定した上で計画を立案し,その計
画に沿って,動物飼育の工程管理に基づいた調査,観察,実験,記録などを継続的に
|
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第2章
農業科の
各科目
実施し,その結果を分析,考察,評価してまとめるなど,主体的な学習活動を展開す
る必要がある。なお,学習成果を共有し,取組を評価して次につなげるなど学習を確
かなものにするために発表の機会を設けることが大切である。
〔指導項目〕
(2)飼育の目的と現状
ア 飼育の目的
イ 飼育の現状と動向
(内容の範囲や程度)
イ
〔指導項目〕の
(2)
については,飼育目的ごとの動物の利活用の概要について基礎
的な内容を扱うこと。
(2)
飼育の目的と現状
ここでは,動物飼育の目的や現状,社会の需要に応じた今後の動向について,適切な
情報収集と分析ができるようにすることをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 動物飼育の現状と動向について理解するとともに,関連する技術を身に付けるよう
にする。
② 動物飼育の現状と動向に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に解
決すること。
③ 動物飼育の現状と動向について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。
ア 飼育の目的
ここでは,現代社会における動物飼育の目的について取り上げ,動物の飼育や利用
上の特性,動物飼育と地域環境との関係について考察する学習活動を取り入れる。
イ 飼育の現状と動向
ここでは,動物飼育の現状,人々の生活における動物の需給と動向について取り上
げ,動物飼育の可能性と課題について考察する学習活動を取り入れる。また,動物が
人々の生命の維持や豊かな生活を提供する社会的な役割を担っていることを理解し,
私たちの生活の質の向上について考察する学習活動を取り入れる。
〔指導項目〕
(3)飼育と環境
ア 動物の種類と特性
イ 発育と環境
ウ 衛生と環境
(内容の範囲や程度)
ウ
〔指導項目〕の
(3)
については,動物の発育過程や生理・生態,飼育環境の調節,
環境に配慮した動物の飼育技術や飼料生産,健康な動物を飼育するための飼養衛生
|
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11
飼育と環境
管理技術などについて基礎的な内容を扱うこと。なお,必要に応じて,農業生産工
程管理や危害分析・重要管理点方式などについても扱うこと。
(3)
飼育と環境
ここでは,動物の飼育技術と飼育環境について,動物の種類と特徴,生理・生態と特
性,発育と飼育環境との関連性,動物の病気と予防及び衛生管理について理解した上で,
動物の飼育ができるようにすることをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 動物の飼育技術と環境について理解するとともに,関連する技術を身に付けること。
② 動物の飼育技術と環境に関する課題を発見し,科学的な根拠などに基づいて創造的
に解決すること。
③ 動物の飼育技術と環境について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。
ア 動物の種類と特性
ここでは,動物の分類法や特徴,生理・生態的な特性と発育の特徴,食性や習性な
どの行動的な特性について取り上げ,観察や調査を通して,その特性と飼育環境との
関係などについて分析し,考察する学習活動を取り入れる。
イ 発育と環境
ここでは,実際に選択した動物の飼育管理,動物の飼育環境が発育に与える影響や
その調節技術について取り上げて指導する。また,快適性に配慮した家畜の飼養管理
(アニマルウェルフェア)の考え方に対応した飼養管理や現場での実践例について分
析し,考察する学習活動を取り入れる。
ウ 衛生と環境
ここでは,動物の生理的特性と健康管理,動物の法定伝染病や人間との共通の病気
等の発症条件,症状などについて取り上げ,病気の発症や感染を未然に防ぐための飼
養管理の重要性について考察し,動物の健康管理と病気の予防など日頃の衛生管理,
疾病動物の早期発見と適切な初期対応や発症後の処置に取り組む学習活動を取り入れ
る。また,現在,地球規模で発生が見られる家畜伝染病の現状や防疫体制などについ
て取り上げて指導する。
その際,農業生産工程管理(GAP)や危害分析・重要管理点方式(HACCP)等に
より,衛生管理や環境保全に関する法令などを遵守するための生産工程の管理や改善
を行う学習活動を取り入れることが大切である。
〔指導項目〕
(4)飼育技術と管理・評価
ア 飼育と管理・評価
イ 飼料と管理
ウ 動物バイオテクノロジーと繁殖技術
|
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第2章
農業科の
各科目
(内容の範囲や程度)
エ
〔指導項目〕の
(4)
については,それぞれの飼育目的に応じた動物の役割や飼育管
理の方法,動物実験の基礎について体系的な内容を扱うこと。
(4)
飼育技術と管理・評価
ここでは,動物の飼育技術と管理・評価について,動物の飼育や実験に取り組むプロ
ジェクト学習を通して,実際の動物の飼育と管理や基礎的な実験ができるようにするこ
とをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
なお,動物の実験については,生命尊重の視点から,実験の意義と実験動物の役割に
ついて十分に理解させ,倫理面に配慮して扱うよう留意する。
① 動物の飼育技術と管理・評価について理解するとともに,関連する技術を身に付け
ること。
② 動物の飼育技術と管理・評価に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造
的に解決すること。
③ 動物の飼育技術と管理・評価について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。
ア 飼育と管理・評価
ここでは,動物の生理・生態や飼育環境に対する適応性などの飼育的な特性につい
て取り上げ,その特性と飼育管理との関係などについて分析し,考察する学習活動を
取り入れる。
「産業動物」については,ウマ,ヤギ,ヒツジなど,ニワトリ,ブタ,
ウシ以外の家畜の体の構造と機能,飼育や管理の方法,それぞれの家畜の特性に応じ
た飼育方法や環境管理などについて取り上げて指導する。
「社会動物」については,
イヌ,ネコ,ウサギなどのほ乳類,小鳥などの鳥類,その他爬虫類などの社会動物の
体の構造と機能,飼育や管理の方法,それぞれの動物の特性や飼育目的に応じた飼育
方法や環境管理などについて取り上げて指導する。その際,動物の尊い犠牲により行
われる動物の実験が,生命現象の理解や医学・医療への応用,人類の健康と福祉に貢
献している現状も踏まえ,
「実験動物」の生命尊重の観点から,学校の判断で適宜,
実験動物の体の構造と機能,飼育や管理の方法,動物実験の基礎的な知識と技術,各
分野への応用などについて取り上げて指導する。
なお,
「実験動物」については,生徒が動物や家畜の生理・生態や習性など飼育や
繁殖につながる実践的な学習をすることが重要であり,
「野生動物」については,野
生動物の現状や保護活動の取組などについて取り上げて指導する。
イ 飼料と管理
ここでは,動物の消化吸収の機能,動物体内における栄養素の代謝,飼料の栄養価,
飼料給与,飼料作物の栽培などについて取り上げ,飼料摂取による動物個体の維持や
生産活動,飼料の生産などに取り組む学習活動を取り入れる。飼料作物の素材につい
ては,地域農業の実態,動物の種類や飼料の需給の動向などに応じて,適切な飼料作
物を選定する。なお,
「畜産」を補完する内容として,飼料作物の栽培や家畜の飼料
|
Page 111 | 1407073_13_1_1_2.pdf | 103
11
飼育と環境
設計に基づく飼料給与についての学習内容を取り扱う。
ウ 動物バイオテクノロジーと繁殖技術
ここでは,動物の繁殖生理,交配,出産などの繁殖管理について取り上げ,繁殖技
術の基礎を身に付ける学習活動を取り入れる。なお,
「畜産」を補完する内容として,
家畜の生殖器の構造や神経と内分泌,生殖生理,妊娠,分娩などの繁殖の仕組みや家
畜人工授精技術や家畜受精卵移植技術などの繁殖技術,さらには新技術や制度などに
ついての学習内容を取り扱う。
〔指導項目〕
(5)飼育の実践
(内容の範囲や程度)
オ
〔指導項目〕の
(5)
については,動物の飼育や実験,畜産経営の深化などに関する
実践的な活動を行うこと。
(5)
飼育の実践
ここでは,動物の飼育と飼育環境について,動物の発育と飼育環境の関連から捉える
実践的なプロジェクト学習により,動物の飼育と飼育環境に関する課題の解決や実験目
的の達成,畜産経営の深化に主体的,意欲的に取り組むことができるようにすることを
ねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 動物飼育の実践について理解するとともに,関連する技術を身に付けること。
② 動物飼育の実践に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に解決する
こと。
③ 動物飼育の実践について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。
飼育の実践では,農業生産や農業経営のあるべき姿を捉えながら,今日の動物を扱う
様々な産業に対応して,実際に選定した動物の飼育とその飼育環境の創造に関する実践
的なプロジェクト学習や地域活動などを取り入れる。
特に,それらを有機的に学校での学習活動で展開するために,外部機関,例えば,研
究機関や大学及び農業大学校,先進農業経営者などと連携を図りながら,地域における
動物産業の実態や動物飼育の実践事例を把握し,今後の動物飼育の在り方を考察する学
習活動を行うことが重要である。
また,地域環境との調和を目指した取組の中で,地域の実態に応じた動物の飼育,野
生動物の保護や鳥獣害対策等,人と動物の共存のための取組などについても取り上げる
ことが大切である。
さらに,畜産経営の深化を図るために,家畜を含む動物の繁殖や飼料作物の栽培など
について実践する学習活動に取り組むことが必要である。
|
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第2章
農業科の
各科目
この科目は,農業経営とマーケティングについて学習する科目であり,
「農業生産や農
業経営に関する分野」に属する科目である。今回の改訂では,従前の「農業経済」と「農
業経営」を整理統合し,経済活動の視野を広げ,経営感覚の醸成を図るため経営管理や
マーケティングに関する学習内容を充実した。また,課題意識をもって学習に臨むことが
重要であることから,プロジェクト学習の意義や実践について明確に位置付けた。
1 目 標
農業の見方・考え方を働かせ,実践的・体験的な学習活動を行うことなどを通し
て,農業経営とマーケティングに必要な資質・能力を次のとおり育成することを目
指す。
(1)農業経営について体系的・系統的に理解するとともに,関連する技術を身に付
けるようにする。
(2)農業経営に関する課題を発見し,農業や農業関連産業に携わる者として合理的
かつ創造的に課題を解決する力を養う。
(3)農業経営のマネジメントやマーケティングが経営発展へつながるよう自ら学び,
農業の振興や社会貢献に主体的かつ協働的に取り組む態度を養う。
この科目においては,将来,農業生産分野の経営やマーケティングに必要な問題解決の
能力などを育成し深める科目であることから,農業を取り巻く社会経済環境を踏まえつつ,
その中で,農業経営の現状や今日的な課題などについて考察できるよう留意して指導する。
その際に農業経営に関するプロジェクト学習などの実践的・体験的な課題解決学習を通し
て,農業経営と農業のマーケティングに必要な資質・能力を育成することをねらいとして
いる。
目標の
(1)
については,農業経営の学習に当たって,学校農場や地域の農業経営などの
身近な事例のプロジェクト学習を通して,人材・製品・サービス・資金・情報などマネジ
メント全体,さらに顧客を創造するために必要なマーケティングに関して,知識と技術を
体系的・系統的に理解し,身に付けるようにすることを意味している。
目標の
(2)
については,農業経営の課題の探究に自分の意思や判断に基づいて取り組み,
経営の発展に関する課題を発見し,消費者ニーズの多様化,個性化に伴う市場変化を踏ま
えて対応するとともに,法令遵守などの職業人にもとめられる倫理観をもって,科学的な
根拠などに基づいて創造的に解決する力を養うことを意味している。
目標の
(3)
については,農業経営に関するプロジェクト学習を通して,農産物などの流
通・販売を中心とした食料などの需給に関する社会的な役割を担っていることを理解し,
農業経営のグローバル化や法人化,六次産業化の中での自らの職業生活について考えると
ともに企業倫理や社会的責任についても考察し,農業の振興や社会貢献に主体的かつ協働
第1 目標
第12 節 農業経営
|
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12
農業経営
的に取り組む態度を養うことを意味している。
1 内容の構成及び取扱い
この科目は,目標に示す資質・能力を身に付けることができるよう,
(1)
「農業経営」
とプロジェクト学習,
(2)
農業の動向と農業経営,
(3)
農業のマネジメント,
(4)
農業の
マーケティング,
(5)
農業経営とマーケティングの活動,
(6)
農業経営とマーケティング
の実践の六つの指導項目で,4~6単位程度履修されることを想定し,内容を構成して
いる。また,内容を取り扱う際の配慮事項は次のように示されている。
(内容を取り扱う際の配慮事項)
ア 農業経営とマーケティングの基本的な内容について,学校農場の経営に関する事
例を通して理解させ,農業経営者の先駆的な実践に触れるよう留意して指導するこ
と。なお,地域の実態や学科の特色に応じて,適切な題材を選定すること。
この科目の指導に当たっては,地域農業の経営事例や統計資料などを用いて,地域や
我が国及び世界の農業の動向,並びに農業経営の形態について学習し,農業経営の仕組
みや課題について理解するとともに,農業経営とマーケティングの分野に関心を持つこ
とが大切である。
また,環境保全型農業や有機農産物の生産の動向についても理解するよう留意して指
導することが必要である。その際には,
「課題研究」や「総合実習」で行われる実践的
なプロジェクト学習の基礎とするため,先進事例など触れることも大切である。
イ
〔指導項目〕の
(1)
については,科目学習の導入として扱うこと。また,
(6)
につ
いては,
(1)
を踏まえ,
(2)
から
(5)
までと並行して,又はそれらを学習した後に扱
うこと。
〔指導項目〕の
(1)
については,課題意識をもって学習に臨むことが重要であることか
ら,
「農業と環境」で習得したプロジェクト学習の方法を踏まえ,農業経営に関するプ
ロジェクト学習の意義と役割について明確に位置付け,科目学習の最初に扱い,プロ
ジェクト学習を活用した学習展開がスムーズに行われることが大切である。
また,
〔指導項目〕の
(6)
については,
(2)
から
(5)
までの学習と並行して,あるいはそ
の学習の後に,実際に一連の農業経営・マーケティングに取り組む実践的・体験的な学
習を通して,その地域に適した農業経営に主体的,意欲的に取り組むことができるよう
にすることが大切である。
2 内容
2 内 容
1に示す資質・能力を身に付けることができるよう,次の〔指導項目〕を指導す
る。
第2 内容とその取扱い
|
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第2章
農業科の
各科目
〔指導項目〕
(1)
「農業経営」とプロジェクト学習
ア 農業経営に関するプロジェクト学習の意義
イ プロジェクト学習の進め方
(内容や範囲と程度)
ア
〔指導項目〕の
(1)
については,農業科に属する他の科目と関連付けながら科目全
体で科学的かつ創造的に学習を進めるように扱うこと。
(1)
「農業経営」とプロジェクト学習
ここでは,
「農業経営」とプロジェクト学習について,農業経営を科学的に捉え,自
ら学び,実践できるようにすることをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 農業経営に関するプロジェクト学習について理解するとともに,関連する技術を身
に付けること。
② 農業経営に関するプロジェクト学習に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づい
て創造的に解決すること。
③ 農業経営に関するプロジェクト学習について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組
むこと。
ア 農業経営に関するプロジェクト学習の意義
ここでは,常に科学的な見方と,自ら課題意識をもち,その課題を解決する実践力
を身に付けることが重要であることなど,農業経営に関するプロジェクト学習の意義
について指導する。
イ プロジェクト学習の進め方
ここでは,
「農業と環境」で習得したプロジェクト学習の方法を踏まえ,課題設定,
計画立案,実施,まとめ(反省と評価)の一連の流れをもとに,農業経営とマーケ
ティングに関する諸課題を主体的に解決するための具体的な実践事例を取り上げ指導
する。
課題設定に当たっては,例えば,統一テーマを「学校農場の経営分析」として示し,
グループや個人で具体的な小テーマを設定する方法が考えられる。なお,課題設定で
は,地域農業の見学,先進農業経営者などのビジネスモデルを分析する事で,農業経
営のあるべき姿を検討することが大切である。その際には,現状の認識から問題点を
抽出・整理し,達成する目標を明確にすることが必要である。
また,設定した課題の解決に向けては,仮説を設定した上で計画を立案し,その計
画に沿って,経営理念などの成功要因や未解決の課題を人材,製品,サービス,資金,
情報などの視点から調査,観察,実験,記録などを継続的に実施し,その結果をグ
ループ討議などにより分析,考察,評価してまとめるなど,主体的な学習活動を展開
する必要がある。なお,学習成果を共有し,取組を評価して次につなげるなど学習を
確かなものにするために発表の機会を設けることが大切である。
|
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12
農業経営
さらに,
〔指導項目〕の
(5)
(6)
で行う実践的な経営能力を学ぶプロジェクト学習の
ために,経営目標を設定し具体化して,経営計画立案・実施・評価の一連の流れをも
とに,農業経営とマーケティングの諸課題を,自分の意志や判断に基づいて考察する
ことを取り上げ指導する。
〔指導項目〕
(2)農業の動向と農業経営
ア 我が国と世界の農業
イ 農業経営の動向
ウ 食料・農業・農村政策と関係法規
エ 農産物消費の動向と社会経済環境
(内容や範囲と程度)
イ
〔指導項目〕の
(2)
については,グローバル化,消費者ニーズの多様化などに関わ
る消費者と農業・食とをめぐる課題や社会構造の変化に着目し,六次産業化や農産
物の輸出入などに関する農業経営の動向を扱うこと。
(2)
農業の動向と農業経営
ここでは,農業の動向と農業経営について,我が国と世界の農業の動向とその相互関
係や主な農業政策と関係法規及び協定を,農業経営の形態や特色から捉えることができ
るようにすることをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 農業の動向と農業経営について理解するとともに,関連する技術を身に付けること。
② 農業の動向と農業経営に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に解
決すること。
③ 農業の動向と農業経営について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。
ア 我が国と世界の農業
ここでは,我が国の農業と世界とのつながりを時事的な内容も踏まえて理解できる
よう指導する。
イ 農業経営の動向
ここでは,農業経営の個人経営から法人経営への変化や形態とその特色,課題につ
いて理解できるよう指導する。
ウ 食料・農業・農村政策と関係法規
ここでは,我が国の食料・農業・農村基本法や食料,農業,農村に関連した政策や
事業,関係法規や協定などについてグローバルな視点で世界諸国の取組が理解できる
よう指導する。
エ 農産物消費の動向と社会経済環境
ここでは,社会経済環境の実際について市場調査などを踏まえて指導する。また,
農産物の輸出入についても取り上げ,社会経済環境のグローバル化の利点と欠点につ
|
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第2章
農業科の
各科目
いても考察する学習活動を取り入れて指導する。
〔指導項目〕
(3)農業のマネジメント
ア 農業マネジメントの概要
イ 組織のマネジメント
ウ 人材のマネジメント
エ 会計のマネジメント
(内容の範囲や程度)
ウ
〔指導項目〕の
(3)
については,農業協同組合や生産組合の事業,農業生産組織や
農地所有適格法人の運営及び経営について,簿記などの内容を踏まえた基礎的な内
容を扱うこと。
(3)
農業のマネジメント
ここでは,農業のマネジメントについて,人材・製品・サービス・資金・情報などの
マネジメントの視点に着目して捉えることができるようにすることをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 農業のマネジメントについて理解するとともに,関連する技術を身に付けること。
② 農業のマネジメントに関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に解決
すること。経営体を内部環境の強みと弱み,外部環境の機会と脅威に分けて分析する
SWOT 分析を用いた経営環境分析を取り上げて指導する。
③ 農業のマネジメントについて自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。
ア 農業マネジメントの概要
ここでは,農業生産の三要素である土地,労働力,資本について基本的な概要につ
いて取り上げ,経営体を内部環境の強みと弱み,外部環境の機会と脅威に分けて分析
するSWOT 分析を用いた経営環境分析を指導する。なお,その際,農業生産工程管
理(GAP)などを取り上げ,環境保全,労働安全,経営管理などに関する視点に着
目することができるよう指導することも重要である。
イ 組織のマネジメント
ここでは,農協の仕組みや,農業法人,企業組織の形態,人材・製品・サービス・
資金・情報などの概要について取り上げて指導する。
ウ 人材のマネジメント
ここでは,生産法人での人材活用などの人材資源管理について取り上げて指導する。
エ 会計のマネジメント
ここでは,学校農場の会計事例,農業会計の原理,農業簿記の仕組み,売上と費用
の関係(売価の想定・原価計算・利益の確保)について取り上げて指導する。
|
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12
農業経営
〔指導項目〕
(4)農業のマーケティング
ア 農業マーケティングの概要
イ 農業のマーケティング戦略
ウ 農産物のブランド化
(内容の範囲や程度)
エ
〔指導項目〕の(4)については,顧客の視点から見た農産物の価値の創造やマー
ケティングを実践する過程について,マーケティング戦略の視点から扱うこと。ま
た,
(4)及び(5)については,マーケティングや経営管理に取り組むプロジェク
ト学習を扱うこと。
(4)
農業のマーケティング
ここでは,農業のマーケティングの意義と体系を把握し,農産物をブランド化するた
めの戦略を理解できるようにすることをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 農業のマーケティングについて理解するとともに,関連する技術を身に付けること。
② 農業のマーケティングに関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に解
決すること。
③ 農業のマーケティングについて自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。
ア 農業マーケティングの概要
ここでは,企業から消費者への販売,企業から企業への販売などの様々な顧客の定
義を踏まえ,顧客の視点を重視したマーケティングの発想の大切さとマーケティング
の基本的な考え方を取り上げて指導する。
イ 農業のマーケティング戦略
ここではマーケティング戦略の策定として,市場環境の分析,市場細分化,標的市
場の選定,ポジショニング,マーケティングの一連の流れを取り上げ,製品戦略,価
格戦略,プロモーション戦略,流通戦略の視点からマーケティング戦略について取り
上げて指導する。
ウ 農産物のブランド化
ここでは,農産物のブランド化の意義やブランド化のための戦略を指導する。その
際は,顧客満足や顧客維持など顧客との関係性の構築について取り上げて指導するこ
とが大切である。
〔指導項目〕
(5)農業経営とマーケティングの活動
ア 市場調査・環境分析
イ 農業の起業計画・マーケティング戦略の策定
ウ 農業経営の実践と評価
|
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第2章
農業科の
各科目
(内容の範囲や程度)
オ
〔指導項目〕の
(4)
については,顧客の視点から見た農産物の価値の創造やマーケ
ティングを実践する過程について,マーケティング戦略の視点から扱うこと。また,
(4)
及び
(5)
については,マーケティングや経営管理に取り組むプロジェクト学習を
扱うこと。
(5)
農業経営とマーケティングの活動
ここでは,農業経営とマーケティングの活動について,地域の特性に合わせ実践する
プロジェクト学習活動を通して,起業の方法やマーケティングの意義について自ら学び,
自分の意志や判断に基づき,目標を共有する他者と力を合わせて取り組む態度を育成す
ることができるようにすることをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 農業経営とマーケティングの活動について理解するとともに,関連する技術を身に
付けること。
② 農業経営とマーケティングの活動に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて
創造的に解決すること。
③ 農業経営とマーケティングの活動について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組む
こと。
ア 市場調査・環境分析
ここでは,地域の状態や学科の特性を踏まえた課題を取り上げて指導する。具体的
には,市場調査を踏まえた上での経営・環境分析を取り上げて指導する。
イ 農業の起業計画・マーケティング戦略の策定
ここでは,地域の状態や学科の特性を踏まえた課題を取り上げて指導する。具体的
には,模擬農業経営者の実践活動を行い農業の起業計画・マーケティング戦略の策定
について取り上げて指導する。
ウ 農業経営の実践と評価
ここでは,地域の状態や学科の特性を踏まえた課題を取り上げて指導する。具体的
には,
〔指導項目〕アからイについておこなったプロジェクト学習(課題設定,計画
立案,実施,まとめ(反省と評価)
)を取り上げて指導する
〔指導項目〕
(6)農業経営・マーケティングの実践
(内容の範囲や程度)
カ
〔指導項目〕の
(6)
については,農業経営とマーケティングに関する実践的な活動
を行うこと。なお,起業や六次産業化に関わる内容についても扱うこと。
(6)
農業経営・マーケティングの実践
ここでは,農業経営とマーケティングの実践について,地域の特性に合わせ実践する
プロジェクト学習活動を通して,起業の方法やマーケティングの意義について自ら学び,
|
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12
農業経営
自分の意志や判断に基づき,目標を共有する他者と力を合わせて取り組む態度を育成す
ることができるようにすることをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 農業経営とマーケティングの実践について理解するとともに,関連する技術を身に
付けること。
② 農業経営とマーケティングの実践に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて
創造的に解決すること。
③ 農業経営とマーケティングの実践について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組む
こと。
農業経営・マーケティングの実践では,農業生産や農業経営のあるべき姿を捉えなが
ら,今日の農業の在り方や地域農業の実態,地域特有の農業経営などに対応して,実際
に選定した農産物の生産と経営に関する実践的なプロジェクト学習や地域活動などを取
り入れて指導する。
特に,それらを有機的に学校での学習活動で展開するために,外部機関,例えば,研
究機関や大学及び農業大学校,先進農業経営者などと連携を図りながら,地域における
農業の実態を把握し,今後の農業経営の在り方を考察する学習活動を行うことが重要で
ある。
また,起業や六次産業化,ブランド化など,幅広い視点をもって創造的に農業経営を
考える学習活動に取り組むことが大切である。
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第2章
農業科の
各科目
この科目は,農業機械の取扱いと維持管理及び利用について学習する科目であり,
「農
業生産や農業経営に関する分野」に属する科目である。今回の改訂では,農業機械は,農
業の生産性の向上や農作業の効率化を目的に活用するものであることから,安全な取扱い
とともに,それぞれの作業内容の特性に応じた農業機械の有効な活用や,
「農業機械化の
展望」として,農業技術の革新と高度化などに対応するよう最新の農業機械の実用化など
を学習できるようにした。また,他の農業科目で位置付けたプロジェクト学習と連携を密
にし,関連する農業機械を活用できるようにした。
1 目 標
農業の見方・考え方を働かせ,実践的・体験的な学習活動を行うことなどを通し
て,農業機械の取り扱いと維持管理に必要な資質・能力を次のとおり育成すること
を目指す。
(1)農業機械について体系的・系統的に理解するとともに,関連する技術を身に付
けるようにする。
(2)農業機械に関する課題を発見し,農業や農業関連産業に携わる者として合理的
かつ創造的に解決する力を養う。
(3)農業機械について特性を理解し,効率的な利用へつながるよう自ら学び,農業
の振興や社会貢献に主体的かつ協働的に取り組む態度を養う。
この科目においては,農業機械の活用を農業経営の発展を図る視点で捉え,農業の生産
性及び効率性の向上と関連付けて考察するとともに,農業機械の操作,点検,整備などの
実践的・体験的な学習活動を通して,農業機械の取扱いと維持管理及び利用に必要な資
質・能力を育成することをねらいとしている。
目標の
(1)
については,農業機械の操作,点検,整備に関する実験・実習などの学習活
動を通して,農業機械の構造と機能や作業特性の相互関係について理解し,農業機械の正
確で安全な取扱いと維持管理に必要な知識と技術を体系的・系統的に理解し,身に付ける
ようにすることを意味している。
目標の
(2)
については,農業機械の利用の現状や農業機械化に伴う課題を発見し,農業
機械化が農業生産に果たす意義と役割などを踏まえるとともに,環境への配慮や法令遵守
など,職業人に求められる倫理観をもって,科学的な根拠などに基づいて創造的に解決す
る力を養うことを意味している。
目標の
(3)
については,耕うん・整地実習,管理作業実習,収穫・調製実習などの実践
的な学習活動を通して,トラクタと作業機の作業上の特性と安全性について理解し,農業
機械を効率的に利用して生産性と品質の向上を図るとともに,農業の振興や社会貢献に主
体的かつ協働的に取り組む態度を養うことを意味している。
第1 目標
第13 節 農業機械
|
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13
農業機械
1 内容の構成及び取扱い
この科目は,目標に示す資質・能力を身に付けることができるよう,
(1)
農業機械の
役割,
(2)
農業機械の構造と操作,
(3)
農業機械と安全,
(4)
農業生産における農業機械
の利用,
(5)
農業機械化の展望の五つの指導項目で,4~6単位程度履修されることを
想定し,内容を構成している。また,内容を取り扱う際の配慮事項は次のように示され
ている。
(内容の取り扱う際の配慮事項)
ア 農業機械の構造と作業特性の相互関係から機械の点検や整備及び操作方法につい
て理解できるよう留意して指導すること。また,実験・実習を通して,科学的かつ
創造的に学習を進め,農業機械の維持管理を図る実践力が身に付くようにすること。
なお,地域農業の実態や学科の特色等に応じて,適切な題材を選定すること。
この科目の指導に当たっては,農業機械の構造や機能と農作業の特性との相互関係に
ついて取り上げ,農業機械の操作や点検,整備の方法について理解し,農業機械の操作
技術を身に付けることにより,生産性向上と効率的な農業生産に取り組む意欲を醸成す
ることが大切である。
また,耕うん・整地実習,管理作業実習,収穫・調製実習などの実践的・体験的な学
習活動を通して,トラクタと作業機の作業上の特性と安全性について理解し,農業機械
を効率的に利用することができる体系的な知識と技術を身に付けることが必要である。
さらに,農作業体系の変化や農業機械の進化に対応できるように,地域産業界との連
携を図ることが大切である。
なお,農業機械の取り扱いと維持管理については,例えば,農業生産工程管理
(GAP)との関連において食品の安全,環境の保全,農作業の安全などの意識を高め,
持続可能な農業生産を行う実践力を身に付けることが大切である。
なお,情報通信技術(ICT)や人工知能(AI)などの先端技術を活用し,省力化や精
密化,大規模生産や品質の向上などに取り組む次世代農業について,先進的な農業経営
者や外部機関での視察や研修などを実施するとともに,農業科に属する他の科目と連携
を図りながら学習活動を進めることも大切である。
イ 機械及び燃料の安全な取扱いについて指導し,事故の防止に努めること。
この科目の指導に当たっては,仕業点検や基本的な整備に必要な知識と技術を体験的
な学習を通して理解し,安全性への配慮と日常の維持管理を図る実践力を身に付けるこ
とが大切である。
2 内容
2 内 容
1に示す資質・能力を身に付けることができるよう,次の〔指導項目〕を指導す
る。
第2 内容とその取扱い
|
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第2章
農業科の
各科目
〔指導項目〕
(1)農業機械の役割
ア 農業機械化の意義
イ 農業機械の利用と現状
(内容の範囲や程度)
ア
〔指導項目〕の
(1)
については,農業機械の利用の現状及び農業の生産性の向上と
機械化との相互関係,農業の機械化に伴う今後の課題について扱うこと。
(1)
農業機械の役割
ここでは,地域における農業機械の利用状況などの具体的な事例等を通して,農業機
械の役割や合理的な利用について自ら学ぶとともに,農業の生産性の向上と農業機械化
との相互関係や農業機械化の必要性について自ら考え,農業機械の操作と効率的な利用
に関心を持つことができるようにすることをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 業機械の役割について理解するとともに,関連する技術を身に付けること。
② 農業機械の利用に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に解決する
こと。
③ 農業機械の役割について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。
ア 農業機械化の意義
ここでは,農作業の特徴と農業機械の役割,農業と機械化の関連性について取り上
げ,農業機械化に伴う今後の課題について考察させる学習活動を取り入れる。
イ 農業機械の利用と現状
ここでは,水稲,畑作露地園芸,施設園芸,工芸作物,畜産など作物体系別の農業
機械の種類と利用,農業機械を利用した作業体系について取り上げ,農業機械の操作
と利用に興味と関心を持つような学習活動を取り入れる。
〔指導項目〕
(2)農業機械の構造と操作
ア 原動機
イ トラクタ
ウ 作業機
エ 燃料と潤滑油
(内容の範囲や程度)
イ
〔指導項目〕の
(2)
については,原動機・トラクタ・作業機の構造と種類,正しい
操作技術,点検や整備の方法,トラクタと作業機のマッチングや接続の原理につい
ての基礎的な内容を扱うこと。
(2)
農業機械の構造と操作
ここでは,原動機,トラクタ及び作業機の作動原理と構造,点検・整備の方法,運転
|
Page 123 | 1407073_13_1_1_2.pdf | 115
13
農業機械
操作技術並びに燃料と潤滑油の特質について自ら学ぶとともに,農業機械の操作・利用
及び点検・整備に必要な基本的,体系的な知識と技術を身に付け,機械の維持管理や農
業機械を適切かつ安全に操作する能力と実践力を養うことができるようにすることをね
らいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 農業機械の構造と操作について理解するとともに,関連する技術を身に付けること。
② 農業機械の構造と操作に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に解
決すること。
③ 農業機械の構造と操作について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。
ア 原動機
ここでは,内燃機関と電動機について,それぞれの種類,作動原理,構造と性能,
取扱いと点検・整備の方法,整備用機器や工具について取り上げて指導する。
イ トラクタ
ここでは,トラクタの構造と点検・整備について,トラクタの種類,作動原理,構
造と性能,油圧のしくみ,点検・整備の方法,整備用機器や工具について取り上げて
指導する。また,乗用トラクタや歩行用トラクタの正確で,安全な運転操作ができる
よう指導する。
ウ 作業機
ここでは,耕うん・整地用機械,育成・管理用機械,稲作用収穫・調製用機械,畑
作用収穫・調製用機械,飼料作物用収穫・調製用機械,運搬用機械,環境調節用機械
などの作業機の種類と用途,作動原理と基本的な構造,取扱いと点検・整備について
取り上げて指導する。また,作業機とその操作について,作物体系別の作業機の機能
と作業原理,トラクタとのマッチングや接続の原理について取り上げ,作業機の正確
な操作と調整ができるよう指導する。稲作用作業機械,畑作用作業機械,飼料作物用
作業機械については,機械化体系と関連付けて指導する。
エ 燃料と潤滑油
ここでは,燃料の種類と性質,潤滑油の役割と種類について取り上げて指導する。
〔指導項目〕
(3)農業機械と安全
ア 農作業と安全
イ 農業機械の安全な取扱い
(内容の範囲や程度)
ウ
〔指導項目〕の
(3)
については,農業機械の安全な取扱いや操作方法などの基礎的
な内容を扱うこと。
(3)
農業機械と安全
ここでは,地域における農業機械の事故の実態などの具体的な事例を通して,事故や
|
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第2章
農業科の
各科目
健康障害の発生の原因について自ら考え,農業機械を利用した作業における安全確保に
必要な知識と技術を身に付け,農業機械を適切かつ安全に操作する能力を養うことがで
きるようにすることをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 農業機械を用いた農作業の危険性について理解するとともに,安全性に配慮した取
扱い技術を身に付けること。
② 農業機械を取り扱う上での課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に解決す
ること。
③ 農業機械の安全な操作方法や関係法規について自ら学び,主体的かつ協働的に取り
組むこと。
ア 農作業と安全
ここでは,農作業の特徴,農作業における事故の現状と健康障害の発生原因,農作
業時の安全性について取り上げて指導する。
イ 農業機械の安全な取扱い
ここでは,農業機械の危険性や安全な操作方法について取り上げて指導する。その
際,例えば,農業生産工程管理(GAP)との関連において安全な農業生産について
理解できるよう危険作業などの把握や農業機械の安全装備の確認,農薬や燃料などを
管理する学習活動を取り入れる。
〔指導項目〕
(4)農業生産における農業機械の利用
ア 農業機械の効率的利用
イ 農作業体制の変化と機械の利用
ウ 農業機械化体系の作成
(内容の範囲や程度)
エ
〔指導項目〕の
(4)
については,学校農場や地域農業の身近な事例を取り上げて,
機械の作業能率や利用経費など農業機械の効率的な利用と経営形態や目的に応じた
機械の導入及び利用を考慮した農業機械化体系の作成を扱うこと。
(4)
農業生産における農業機械の利用
ここでは,農業生産における農業機械の利用について,学校農場や地域農業などの身
近な事例を通して自ら学び,農業機械の効率的な利用と経営形態や目的に応じた機械の
導入及び利用に必要な知識と技術を身に付けるとともに,具体的な農業機械化体系を作
成することができるようにすることをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。また,関連する生産系科目と連動してプロジェクト学習や演
習・実習などが実施できるようにする。
① 農業生産における農業機械の利用について理解するとともに,関連する技術を身に
|
Page 125 | 1407073_13_1_1_2.pdf | 117
13
農業機械
付けること。
② 農業生産における農業機械の利用に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて
創造的に解決すること。
③ 農業生産における農業機械の利用について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組む
こと。
ア 農業機械の効率的利用
ここでは,農業機械の利用に関する地域の具体的な事例を通して,作業効率,経費
と経営について取り上げ,農業機械の効率的な利用ができるよう指導する。
イ 農作業体制の変化と機械の利用
ここでは,経営の形態によって適切な機械の導入と利用を図っている具体的な事例
を通して,農業機械の適切な導入と利用ができるよう指導する。
ウ 農業機械化体系の作成
ここでは,学校農場や地域農業の具体的な事例を通して,農業機械の効率的な利用
と選択について取り上げ,経営形態や目的に応じた農業機械化体系が作成できるよう
指導する。
〔指導項目〕
(5)農業機械化の展望
ア 農作業の自動化・機械化
イ 農業機械の高度化・実用化
(内容の範囲や程度)
オ
〔指導項目〕の
(5)
については,自動制御機器や人工知能などの技術の進展に対応
した題材を取り上げ,その活用について基礎的な内容を扱うこと。
(5)
農業機械化の展望
ここでは,農業機械化の展望について,環境制御機器や各種の作業工程における自動
化及び農業用ロボットの活用,情報通信技術(ICT)や人工知能(AI)などの農業への
活用などについて自ら学び,作業の効率化や精密性の向上と農業機械による自動化の相
互関係と活用の意義について自ら考え,農業機械の操作とその先端技術の活用に関心を
持つようにすることをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 農業機械化の展望について理解するとともに,関連する技術を身に付けること。
② 農業機械化の展望に関する課題を発見し,科学的な根拠などに基づいて創造的に解
決すること。
③ 農業機械化の展望について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。
ア 農作業の自動化・機械化
ここでは,温室の自動観察システム,無人栽培システム,植物工場などの生産,加
工,調整などの各作業工程の自動化や,温室の環境制御,温風暖房機,ヒートポンプ
|
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第2章
農業科の
各科目
(EHP・GHP 等)
,ボイラ,冷凍機,予冷装置などの環境調節用の機械や装置につい
て取り上げて指導する。
イ 農業機械の高度化・実用化
ここでは,搾乳,接ぎ木,挿し木,収穫などに用いられる農業用ロボット,ビッグ
データの活用による予測や生産性の向上,見える化,IoT による生産・流通・販売の
連携と効率化,全地球測位システム(GPS)や無人航空機の活用など,情報通信技術
(ICT)や人工知能(AI)などの農業への活用について取り上げて指導する。
また,これらの先端技術を活用し,省力化や精密化,大規模生産や品質の向上など
を進めた次世代農業についての学習は,先進的な農業経営者や外部機関での視察や研
修などを実施するとともに,農業科に属する他の科目と連携を図りながら学習活動を
進めることも大切である。
|
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14
植物バイオ
テクノロジー
この科目は,植物バイオテクノロジーについて学習する科目であり,
「農業生産や農業経
営に関する分野」に属する科目である。今回の改訂では,栽培系科目との関連を図る中で,
植物バイオテクノロジーについて,農業生産や国土保全,環境創造の視点で捉えて活用す
ることが重要であることから,学習内容の充実を図った。また,課題意識をもって学習に
臨むことが重要であることから,
プロジェクト学習の意義と実践について明確に位置付けた。
1 目 標
農業の見方・考え方を働かせ,実践的・体験的な学習活動を行うことなどを通し
て,植物に関するバイオテクノロジーを農業の各分野で活用するために必要な資
質・能力を次のとおり育成することを目指す。
(1)植物バイオテクノロジーについて体系的・系統的に理解するとともに,関連す
る技術を身に付けるようにする。
(2)植物バイオテクノロジーに関する課題を発見し,農業や農業関連産業に携わる
者として合理的かつ創造的に解決する力を養う。
(3)植物バイオテクノロジーについて特質を理解し,農業の各分野で活用できるよ
う自ら学び,農業の振興や社会貢献に主体的かつ協働的に取り組む態度を養う。
この科目においては,植物バイオテクノロジーの活用を農業経営及び関連産業の振興の
視点で捉え,生産性及び品質向上や経営発展と関連付けて考察するとともに,植物バイオ
テクノロジーに関するプロジェクト学習などの実践的・体験的な課題解決学習を通して,
植物に関するバイオテクノロジーを農業の各分野で活用するために必要な資質・能力を育
成することをねらいとしている。
目標の
(1)
については,植物組織培養などの植物バイオテクノロジーに関するプロジェ
クト学習を通して,植物体の持つ分化全能性などの特性やバイオテクノロジーの技術的特
質,無菌操作から培養,順化等の一連の知識と技術,植物遺伝情報の利用等の仕組みなど,
植物バイオテクノロジーに関する知識と技術を体系的・系統的に理解し,身に付けるよう
にすることを意味している。
目標の
(2)
については,農業の各分野における植物バイオテクノロジーの利用に関する
課題を発見し,農業への実践事例や植物バイオテクノロジーが果たす社会的な意義と役割
などを踏まえるとともに,環境への配慮や法令遵守など,職業人に求められる倫理観をも
って,科学的な根拠などに基づいて創造的に解決する力を養うことを意味している。
目標の
(3)
については,植物バイオテクノロジーの学習を通して,農産物等の品質改善
や品種改良,生産性の向上を図るとともに,安全で安心できる農産物の生産や生活環境の
創造を目指し,植物バイオテクノロジーを活用した農業及び関連産業の振興や社会貢献に
主体的かつ協働的に取り組む態度を養うことを意味している。
第1 目標
第14 節 植物バイオテクノロジー
|
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第2章
農業科の
各科目
1 内容の構成及び取扱い
この科目は,目標に示す資質・能力を身に付けることができるよう,
(1)
「植物バイオ
テクノロジー」とプロジェクト学習,
(2)
バイオテクノロジーの意義と役割,
(3)
植物バ
イオテクノロジーの特質と基本操作,
(4)
植物の増殖能力の利用,
(5)
植物バイオテクノ
ロジーの展望,
(6)
植物バイオテクノロジーの実践の六つの指導項目で,4~6単位程
度履修させることを想定し,内容を構成している。また,内容を取り扱う際の配慮事項
は次のように示されている。
(内容を取り扱う際の配慮事項)
ア 植物バイオテクノロジー技術を農業の各分野に活用する仕組みやその役割につい
て理解できるよう留意して指導すること。また,プロジェクト学習では観察や実
験・実習を通して,科学的かつ創造的に学習を進め,植物バイオテクノロジー技術
の活用に関する実践力が身に付くようにすること。なお,地域農業の実態や学科の
特色等に応じて,適切な題材を選定すること。
この科目の指導に当たっては,植物バイオテクノロジーが農業生産に果たす意義と役
割や農業の各分野に活用する仕組みなど,活用の現状や今日的な課題などについて取り
上げ,植物バイオテクノロジー技術を農業生産や経営に活用する意欲を醸成することが
大切である。
また,植物バイオテクノロジーに関するプロジェクト学習を取り入れ,体験的,継続
的な培養や栽培活動と観察,実験,調査,記録などの学習活動を通して,植物体の持つ
分化全能性などの特性やバイオテクノロジーの技術的特質などの基本を理解するよう工
夫することも必要である。一方,技術の習熟を図る実践的な培養及び栽培活動と,知識
の深化を図る探究的な学習活動などを通して,農業生産の各分野で活用できる体系的・
系統的な知識と技術を身に付けることも重要である。
さらに,植物バイオテクノロジーの農業生産への活用に関する分野における自らの職
業生活について考えるために,地域の農業経営者や農業法人などの協力を得て就業体験
を行うなど,地域産業界との連携を図ることも大切である。
また,学習題材として取り扱う植物は,主として作物,野菜,果樹,草花と樹木であ
るが,地域農業の実態,学科の目標や特色,地域の自然環境,バイオテクノロジーの実
用化の状況,生徒の必要などに応じて選定することが大切である。
イ
〔指導項目〕の
(1)
については,科目学習の導入として扱うこと。また,
(6)
につ
いては,
(1)
を踏まえ,
(2)
から
(5)
までと並行して,又はそれらを学習した後に扱
うこと。
〔指導項目〕の
(1)
については,課題意識をもって学習に臨むことが重要であることか
ら,
「農業と環境」で習得したプロジェクト学習の方法を踏まえ,植物バイオテクノロ
ジーに関するプロジェクト学習の意義と役割について明確に位置付け,科目学習の最初
第2 内容とその取扱い
|
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14
植物バイオ
テクノロジー
に扱い,プロジェクト学習を活用した学習展開がスムーズに行われることが大切である。
また,
(6)
については,
(2)
から
(5)
までの学習と並行して,あるいはその学習の後に,
実際に一連の植物バイオテクノロジーを活用した実践的・体験的な学習を通して,地域
農業や学科,学校農場の実態を考慮した課題に主体的,意欲的に取り組むことができる
ようにすることが大切である。
ウ
〔指導項目〕の
(5)
及び
(6)
について,遺伝子組換えを扱う際には,適切な拡散防
止の措置を講じるなど安全に十分留意して指導し,雑菌による機器や施設などの汚
染防止を図ること。
〔指導項目〕の
(5)
及び
(6)
について,遺伝子組換えを扱う際には,遺伝子組換え生物
等の使用等の規制による法律(カルタヘナ法)に定めるルール等に従い,適切な拡散防
止の措置を講じるなど安全の指導に十分留意することが大切である。
2 内容
2 内 容
1に示す資質・能力を身に付けることができるよう,次の〔指導項目〕を指導す
る。
〔指導項目〕
(1)
「植物バイオテクノロジー」とプロジェクト学習
ア 植物バイオテクノロジーに関するプロジェクト学習の意義
イ プロジェクト学習の進め方
(内容の範囲や程度)
ア
〔指導項目〕の
(1)
については,農業科に属する他の科目と関連付けながら科目全
体で科学的かつ創造的に学習を進めるように扱うこと。
(1)
「植物バイオテクノロジー」とプロジェクト学習
ここでは,
「植物バイオテクノロジー」とプロジェクト学習について,植物バイオテ
クノロジーを科学的に捉え,自ら学び取り組むことができるようにすることをねらいと
している。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 植物バイオテクノロジーに関するプロジェクト学習の意義や進め方について理解す
るとともに,関連する技術を身に付けること。
② 植物バイオテクノロジーの利用に関する課題を発見し,プロジェクト学習により科
学的な根拠に基づいて創造的に解決すること。
③ 植物バイオテクノロジーについて自ら学び,プロジェクト学習に必要な情報収集と
分析に主体的かつ協働的に取り組むこと。
ア 植物バイオテクノロジーに関するプロジェクト学習の意義
ここでは,常に科学的な見方と,自ら課題意識をもち,その課題を解決するための
|
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第2章
農業科の
各科目
実践力を身に付けることが重要であることから,植物バイオテクノロジーに関するプ
ロジェクト学習の意義について理解できるよう指導する。
イ プロジェクト学習の進め方
ここでは,
「農業と環境」で習得したプロジェクト学習の方法を踏まえ,課題設定,
計画立案,実施,まとめ(反省と評価)の一連の流れをもとに,植物バイオテクノロ
ジーの利用に関する諸課題を主体的に解決するための具体的な実践事例を取り上げて
指導する。
課題設定に当たっては,例えば,統一テーマとして「植物バイオテクノロジー技術
を活用した各種農産物の安定した品質の種苗生産について」として示し,グループや
個人で具体的な小テーマを設定する方法が考えられる。なお,課題設定では,安定し
た品質の種苗生産のあるべき姿と,それに対する現状の認識から問題点を抽出・整理
し,達成する目標を明確にすることが大切である。
また,設定した課題の解決に向けては,仮説を設定した上で計画を立案し,その計
画に沿って,植物バイオテクノロジーに関する一連の培養管理や,調査,観察,実験,
記録などを継続的に実施し,その結果を分析,考察,評価してまとめるなど,主体的
な学習活動を展開する必要がある。なお,学習成果を共有し,取組を評価して次につ
なげるなど学習を確かなものにするために発表の機会を設けることが大切である。
〔指導項目〕
(2)バイオテクノロジーの意義と役割
ア バイオテクノロジーの意義
イ 産業社会とバイオテクノロジー
(内容の範囲や程度)
イ
〔指導項目〕の
(2)
については,植物の繁殖などの機能を利用するバイオテクノロ
ジーの技術体系及び農業などの産業各分野における利用の概要を扱うこと。
(2)
バイオテクノロジーの意義と役割
ここでは,バイオテクノロジーの意義と役割について,農業や関連産業における利用
の可能性や課題との関連から捉えることができるようにすることをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① バイオテクノロジーの意義や役割について理解するとともに,関連する技術を身に
付けること。
② バイオテクノロジーの意義や役割に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて
創造的に解決すること。
③ バイオテクノロジーの意義と役割について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組む
こと。
ア バイオテクノロジーの意義
ここでは,植物の繁殖などの機能やバイオテクノロジーの技術体系に関する学習を
|
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14
植物バイオ
テクノロジー
通して,バイオテクノロジーが,生物の持つ成長,繁殖,遺伝等の機能を人間生活に
役立てる生物利用技術であることを考察する学習活動を取り入れる。
イ 産業社会とバイオテクノロジー
ここでは,バイオテクノロジーの利用に関する具体的な事例を通して,バイオテク
ノロジーが,農林業,食品産業,発酵工業,水産業,医薬品製造業等の各分野で利用
されていることを理解するよう指導するとともに,農業各分野におけるバイオテクノ
ロジー利用の可能性と課題について考察する学習活動を取り入れる。
〔指導項目〕
(3)植物バイオテクノロジーの特質と基本操作
ア 植物の構造と機能
イ 無菌操作の基本
(内容の範囲や程度)
ウ
〔指導項目〕の
(3)
については,茎頂など植物の組織・器官の構造と機能,植物ホ
ルモンの作用及び無菌的条件の設定も扱うこと。
(3)
植物バイオテクノロジーの特質と基本操作
ここでは,植物バイオテクノロジーの特質と基本操作について,植物の構造と機能や
無菌操作の基本等との関連から捉える学習活動により,基本的な無菌操作ができるよう
にすることをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 植物バイオテクノロジーの特質と基本操作について理解するとともに,関連する技
術を身に付けること。
② 植物バイオテクノロジーの特質と基本操作に関する課題を発見し,科学的な根拠に
基づいて創造的に解決すること。
③ 植物バイオテクノロジーの特質と基本操作について自ら学び,主体的かつ協働的に
取り組むこと。
ア 植物の構造と機能
ここでは,植物の組織・細胞,遺伝子及び植物ホルモンの作用について取り上げて
指導する。植物体の組織・器官及び細胞や遺伝子の構造と機能について取り上げ,植
物の持つ機能の利用について考察する学習活動を取り入れる。
イ 無菌操作の基本
ここでは,器具の殺菌など無菌的条件の設定,無菌培養の基本操作及び機器と薬品
の取扱いについて取り上げて指導する。無菌は種の実習などを通して,培養の過程に
おける無菌状態の確保の必要性を把握し,無菌操作の基本的な知識と技術の習得に重
点を置いた学習活動を取り入れる。
|
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第2章
農業科の
各科目
〔指導項目〕
(4)植物の増殖能力の利用
ア 組織培養の目的と技術体系
イ 培地の組成と調整
ウ 培養植物体の生育と環境
エ 野菜や草花への活用
オ 果樹や作物への活用
カ バイオテクノロジーの活用実態
(内容の範囲や程度)
エ
〔指導項目〕の
(4)
については,植物細胞の分化全能性,培地の調整,組織培養及
び培養植物体の順化,育成を中心に扱うこと。カについては,地域の野菜や草花な
ど身近な植物や貴重な遺伝資源植物の種苗生産や品種改良などの具体的な実践を扱
うこと。
(4)
植物の増殖能力の利用
ここでは,植物の増殖能力の利用について,農業の各分野に利用される植物組織培養
技術との関連から捉える学習活動により,植物組織培養技術などを各分野で実際に活用
できるようにすることをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 植物の増殖能力の利用について理解するとともに,関連する技術を身に付けること。
② 植物の増殖能力の利用に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に解
決すること。
③ 植物の増殖能力の利用について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。
ア 組織培養の目的と技術体系
ここでは,やく培養,胚培養,茎頂培養など組織培養の種類,技術体系及び培養素
材の管理について取り上げ,繁殖,育種などそれぞれの目的によって培養素材が異な
ることを考察する学習活動を取り入れる。
イ 培地の組成と調整
ここでは,寒天,ショ糖,植物ホルモンなど培地の組成及び調合,殺菌など培地の
調整法について取り上げ,培養植物体の形態形成を植物ホルモンが制御することを考
察する学習活動を取り入れる。
ウ 培養植物体の生育と環境
ここでは,植物の組織培養に関する実験・実習を通して,培養植物体の再生や生育
と光,温度,湿度,培地,空気などの環境との関係について考察する学習活動を取り
入れる。
エ 野菜や草花への活用
ここでは,組織培養が実用化されている野菜,草花の繁殖,育種について取り上げ,
やく培養,胚培養,茎頂培養などが育種の効率化や種苗の大量生産に利用されている
|
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14
植物バイオ
テクノロジー
ことを考察する学習活動を取り入れる。その際,無菌個体の育成,
培養,順化,植え
出し,ウイルス検定などの一連の実験実習を取り入れた活動となるよう留意する。
オ 果樹や作物への活用
ここでは,組織培養が実用化されている果樹,作物,樹木の繁殖,育種について取
り上げ,やく培養,胚培養,茎頂培養などが育種の効率化や種苗の大量生産に利用さ
れていることを考察する学習活動を取り入れる。その際,無菌個体の育成,培養,順
化,植え出し,ウイルス検定などの一連の実験実習を取り入れた活動となるよう留意
する。
カ バイオテクノロジーの活用実態
ここでは,保護を必要とする地域の絶滅危惧植物などの貴重な遺伝資源植物及び野
菜や草花など身近な植物などの種苗生産や品種改良などへのバイオテクノロジーの具
体的な活用の実態について取り上げ,バイオテクノロジーの活用の現状に関する課題
等を考察する学習活動を取り入れる。
〔指導項目〕
(5)植物バイオテクノロジーの展望
ア 植物の遺伝情報の利用
イ バイオマス・エネルギーの利用
ウ 産業社会とバイオテクノロジーの動向
(内容の範囲や程度)
オ
〔指導項目〕の
(5)
については,細胞融合や遺伝子組換えなどの遺伝情報及びバイ
オマス・エネルギーの利用など,植物バイオテクノロジーに関する今後の動向,課
題及び可能性について基礎的な内容を扱うこと。
(5)
植物バイオテクノロジーの展望
ここでは,植物バイオテクノロジーの展望について,今後の動向,課題及び可能性と
の関連から捉えることができるようにすることをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 植物バイオテクノロジーの展望について理解するとともに,関連する技術を身に付
けること。
② 植物バイオテクノロジーの展望に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創
造的に解決すること。
③ 植物バイオテクノロジーの展望について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこ
と。
ア 植物の遺伝情報の利用
ここでは,細胞融合や遺伝子組換え,ゲノム編集など,植物の遺伝情報の利用に関
する基本的な内容や実用化の事例を取り上げ,今後の課題等について考察する学習活
動を取り入れる。また,遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確
|
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第2章
農業科の
各科目
保に関する法律(カルタヘナ法)など遺伝子組換えに関する法規の概要についても取
り上げて指導する。
イ バイオマス・エネルギーの利用
ここでは,林業と関連させた森林バイオマスの変換利用と農産廃棄物や林産廃棄物
などの有機廃棄物の利用について取り上げ,バイオマス・エネルギーの実用化の事例
から課題等について考察する学習活動を取り入れる。
ウ 産業社会とバイオテクノロジーの動向
ここでは,バイオテクノロジーの産業社会における動向や可能性について,実用化
の事例から課題等について考察する学習活動を取り入れる。
〔指導項目〕
(6)植物バイオテクノロジーの実践
(内容の範囲や程度)
カ
〔指導項目〕の
(6)
については,植物バイオテクノロジーの技術を活用した農業の
各分野での種苗生産や品種改良,絶滅危惧植物の保護や環境保全活動などに関する
実践的な活動を行うこと。
(6)
植物バイオテクノロジーの実践
ここでは,植物バイオテクノロジーの実践的なプロジェクト学習や地域連携活動など
を通して,植物バイオテクノロジーを活用した農産物の種苗生産などに関する課題の解
決に向けて主体的,意欲的に取り組むことができるようにすることをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 植物バイオテクノロジーの実践について理解するとともに,関連する技術を身に付
けること。
② 植物バイオテクノロジーの実践に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創
造的に解決すること。
③ 植物バイオテクノロジーの実践について自ら学び,
主体的かつ協働的に取り組むこと。
植物バイオテクノロジーの実践では,農業生産や農業経営のあるべき姿を捉えながら,
今日の農業や環境保全の在り方,地域農業や環境の実態,地域特有の農業経営などに対
応して,実際に選定した題材の種類に応じた種苗生産技術等に関する実践的なプロジェ
クト学習や地域連携活動などを取り入れる。
特に,それらを有機的に学校での学習活動で展開するために,外部機関,例えば,研
究機関や大学及び農業大学校,先進農業経営者などと連携を図りながら,地域における
農業経営と種苗生産等の実態を把握し,今後の農業経営における種苗生産や地域環境保
全等の在り方を考察する学習活動を行うことが必要である。
その際,起業や六次産業化,バイオテクノロジー技術の多面的な活用など,幅広い視
点をもって農業生産や経営,環境保全等に創造的に活用し,実践する学習活動に取り組
むことが大切である。
|
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15
食品製造
この科目は,食品の原材料と加工について学習する科目であり,
「食品製造や食品流通
に関する分野」に属する科目である。今回の改訂では,地域農業の発展の視点から地域農
産物を使った商品開発やブランド化,六次産業化など地域振興についても触れ,より実践
的な学習となるよう学習内容の充実を図った。また,課題意識をもって学習に臨むことが
重要であることから,プロジェクト学習の意義や実践について明確に位置付けた。
1 目 標
農業の見方・考え方を働かせ,実践的・体験的な学習活動を行うことなどを通し
て,食品製造に必要な資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
(1)食品製造について体系的・系統的に理解するとともに,関連する技術を身に付
けるようにする。
(2)食品製造に関する課題を発見し,農業や農業関連産業に携わる者として合理的
かつ創造的に解決する力を養う。
(3)食品製造について生産性や品質の向上が経営発展へつながるよう自ら学び,農
業の振興や社会貢献に主体的かつ協働的に取り組む態度を養う。
この科目においては,食品製造から流通・消費までの食料供給の視点から食品産業を捉
え,生産性や品質の向上と関連付けて考察するとともに,食品製造に関するプロジェクト
学習などの実践的・体験的な課題解決学習を通して,食品の安全・安定製造に必要な資
質・能力の育成をねらいとしている。
目標の
(1)
については,食品製造に関するプロジェクト学習を通して,製造原理や原材
料特性など食品製造に必要な知識と技術,食品の安全性や品質表示など食品製造に関する
知識と技術を体系的・系統的に理解し,身に付けるようにすることを意味している。
目標の
(2)
については,食品産業の現状と動向,生産工程管理に関する課題を発見し,
食品の安全性や環境への配慮,法令順守などの職業人としての倫理観をもって,科学的な
根拠などに基づいて創造的に解決する力を養うことを意味している。
目標の
(3)
については,食品製造が人々の生命の維持や豊かな食生活を提供するという
社会的な役割を担っていることを理解し,生産性と品質の向上を図るとともに,地域農業
発展の視点から地域農産物を使った商品開発やブランド化,六次産業化など,その振興や
社会貢献に主体的かつ協働的に取り組む態度を養うことを意味している。
1 内容の構成及び取扱い
この科目は,目標に示す資質・能力を身に付けることができるよう,
(1)
「食品製造」
第1 目標
第2 内容とその取扱い
第15 節 食品製造
|
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第2章
農業科の
各科目
とプロジェクト学習,
(2)
食品産業の現状と動向,
(3)
製造原理と原材料特性,
(4)
食品
の安全と品質表示,
(5)
機械と装置の利用,
(6)
生産工程の管理と改善,
(7)
食品の製造
実習,
(8)
食品製造の実践の八つの指導項目で,4~8単位程度履修されることを想定
し,内容を構成している。また,内容を取扱う際の配慮事項は次のように示されている。
(内容を取り扱う際の配慮事項)
ア 農業生産,食品製造から流通・消費まで食料供給の仕組みを理解できるよう留意
して指導すること。また,プロジェクト学習では観察や実験・実習を通して,科学
的かつ創造的に学習を進め,食品製造技術の活用に関する実践力が身に付くように
すること。なお,地域農業の実態や学科の特色等に応じて,適切な題材を選定する
こと。
この科目の指導に当たっては,食料供給の社会的な意義と役割や食品製造技術の仕組
みなど,食品製造の現状や今日的な課題などについて取り上げ,学習意欲を醸成するこ
とが重要である。
また,食品製造に関するプロジェクト学習を取り入れ,体験的,継続的な生産活動と
観察,実験,調査,記録などの学習活動を通して,原材料の特性や製造環境及びそれら
と製造過程との相互関係などの基本を理解するよう工夫することも大切である。
さらに,校内実習のみに留まらず,製造した製品の販売実習や地域の食品製造施設の
見学や就業体験などを通して学習成果の評価と経営感覚の醸成を図ること。
また,地域農産物を使った商品開発やブランド化,六次産業化など地域農業や食品産
業との連携を図る態度を養うことが大切である。
イ
〔指導項目〕の
(1)
については,科目学習の導入として扱うこと。また,
(8)
につ
いては,
(1)
を踏まえ,
(2)
から
(7)
までと並行して,又はそれらの内容を学習した
後に扱うこと。
〔指導項目〕の
(1)
については,課題意識をもって臨むことが重要であることから,科
目「農業と環境」で習得したプロジェクト学習の方法を踏まえ,食品製造に関するプロ
ジェクト学習の意義と役割について明確に位置付け,科目学習の最初に扱い,プロジェ
クト学習を活用した学習展開がスムーズに行われることが大切である。
また,
〔指導項目〕の
(8)
については,内容の
(2)
から
(7)
までの学習と並行して,ある
いはその学習の後に,実際に一連の食品製造に取り組む実践的・体験的な学習を通して,
その地域に適した食品の製造に主体的,意欲的に取り組むことができるようにすること
が大切である。
ウ
〔指導項目〕の
(4)
から
(8)
までについては,食品衛生上の危害発生の防止と適正
な品質表示,製造用機器・器具の安全な取扱いに努めること。
〔指導項目〕の
(4)
から
(8)
までについては,食品衛生上の危害発生防止のため,危害
分析・重要管理点方式(HACCP)などを取り上げ,製造に活用することが重要である。
さらに,食の安全と品質表示,製造用機械・器具の安全な取扱いや作業体系の改善など,
食品製造の質の確保・向上に取り組むことができるようにすることが大切である。
|
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15
食品製造
2 内容
2 内 容
1に示す資質・能力を身に付けることができるよう,次の〔指導項目〕を指導す
る。
〔指導項目〕
(1)
「食品製造」とプロジェクト学習
ア 食品製造に関するプロジェクト学習の意義
イ プロジェクト学習の進め方
(内容の範囲や程度)
ア
〔指導項目〕の
(1)
については,農業科に属する他の科目と関連付けながら科目全
体で科学的かつ創造的に学習を進めるように扱うこと。
(1)
「食品製造」とプロジェクト学習
ここでは,
「食品製造」とプロジェクト学習について,食品製造を科学的に捉え,自
ら学び取り組むことができるようにすることをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 食品製造に関するプロジェクト学習の意義や進め方について理解するとともに,関
連する技術を身に付けること。
② 食品製造に関する課題を発見し,プロジェクト学習により科学的な根拠に基づいて
創造的に解決すること。
③ 食品製造について自ら学び,プロジェクト学習に必要な情報収集と分析に主体的か
つ協働的に取り組むこと。
ア 食品製造に関するプロジェクト学習の意義
ここでは,常に科学的な見方と自ら課題意識をもち,その課題を解決するための実
践力を身に付けることが重要であることから,食品製造に関するプロジェクト学習の
意義について理解できるよう指導する。
イ プロジェクト学習の進め方
ここでは,
「農業と環境」で習得したプロジェクト学習の方法を踏まえ,課題設定,
計画立案,実施,まとめ(反省と評価)の一連の流れをもとに,食品製造に関する諸
課題を主体的に解決するための具体的な実践事例を取り上げて指導する。
課題設定に当たっては,例えば,統一テーマを「安定した品質の食品製造」として
示し,グループや個人で具体的な小テーマを設定する方法が考えられる。なお,課題
設定では,地域の食品産業や安定した品質の食品製造のあるべき姿と,それに対する
現状の認識から問題点を抽出・整理し,達成する目標を明確にすることが大切である。
また,設定した課題の解決に向けては,仮説を設定した上で計画を立案し,その計
画に沿って,食品製造の危害分析・重要管理点方式(HACCP)に基づいた調査,観
察,実験,記録などを継続的に実施し,その結果を分析,考察,評価してまとめるな
|
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第2章
農業科の
各科目
ど,主体的な学習活動を展開する必要がある。なお,学習成果を共有し,取組を評価
して次につなげるなど学習を確かなものにするために発表の機会を設けることが大切
である。
〔指導項目〕
(2)食品産業の現状と動向
ア 食品産業の現状
イ 食品産業の動向
(内容の範囲や程度)
イ
〔指導項目〕の
(2)
については,我が国の食生活における食品産業の現状と動向に
ついて扱うこと。
(2)
食品産業の現状と動向
ここでは,食品産業の現状と動向について,食品産業の特性や食生活との関連から捉
えることができるようにすることをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 食品産業の現状と動向について理解するとともに,関連する技術を身に付けること。
② 食品産業の現状と動向に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に解
決すること。
③ 食品産業の現状と動向について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。
ア 食品産業の現状
ここでは,食生活と地域の食品産業,我が国の食品産業の現状について代表的事例
を具体的に取り上げ,食品製造と食品産業が安全で良質,多様な食品を提供するなど,
現在の豊かな食生活の実現に果たしている役割を理解できるよう指導する。
イ 食品産業の動向
ここでは,食品製造技術の進展について取り上げ,食品製造の意義や役割,食品産
業の発展と課題について考察する。なお,これからのグローバル化する社会と農業の
関係から,特に高度な農業技術や製造技術による生産性の向上と食品の輸出入につい
て考察する学習活動を行う。
〔指導項目〕
(3)製造原理と原材料特性
ア 食品加工の原理
イ 原材料の特性と加工
(内容の範囲や程度)
ウ
〔指導項目〕の
(3)
については,原材料の特性を利用した加熱,塩漬や発酵などの
食品加工の方法とその基本的な原理を扱うこと。
|
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15
食品製造
(3)
製造原理と原材料特性
ここでは,食品の製造原理と原材料特性について,科学的に捉えることができるよう
にすることをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 食品製造原理と原材料特性に関する学習の意義について理解するとともに,関連す
る技術を身に付けること。
② 食品製造原理と原材料特性に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的
に解決すること。
③ 食品製造原理と原材料特性について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。
ア 食品加工の原理
ここでは,食品加工の3つの原理を取り上げる。物理的な方法では,混合,攪拌,
分離,細断,粉砕,乾燥,冷却や濃縮などの原理を,化学的な方法では,加水分解,
溶解,蒸留・抽出や酸化・還元などの原理を,生物的な作用では,代謝や発酵など生
物的な作用の原理を理解できるよう指導する。
イ 原材料の特性と加工
ここでは,主要な食品の加工に必要な基本的な内容を取り上げる。穀物・小麦粉・
豆類・イモ類,野菜・果実,畜産物,発酵食品などに関する材料の特性と加工を理解
できるよう指導する。
〔指導項目〕
(4)食の安全と品質表示
ア 食品の安全性
イ 食品の衛生
ウ 食品の貯蔵
エ 食品の包装と品質表示
(内容の範囲や程度)
エ
〔指導項目〕の
(4)
については,食品による危害の要因や食品の安全に関する法規
の概要について,危害分析・重要管理点方式や食品安全マネジメントシステムなど
と関連付けて扱うこと。
(4)
食の安全と品質表示
ここでは,食の安全と品質表示について,食生活との関連から捉えることができるよ
うにすることをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 食の安全と品質表示に関する学習の意義について理解するとともに,関連する技術
を身に付けること。
② 食の安全と品質表示に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に解決
|
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第2章
農業科の
各科目
策を見いだすこと。
③ 食の安全と品質表示について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。
ア 食品の安全性
ここでは,有害微生物の制御,化学物質の適切な利用,食品による感染症の予防な
ど食品の安全性について取り上げる。食中毒の有害微生物や異物の排除,食品添加物
の適切な利用についても触れ,健全な食生活を維持するためには食品の安全性の確保
が重要であることを理解できるよう指導する。
イ 食品の衛生
ここでは,食中毒などの具体的な事例を通して,食品による危害の要因について取
り上げる。法規及び危害分析・重要管理点方式(HACCP)や食品安全マネジメント
システム(ISO22000)などに基づいた施設・設備,食品の安全な確保と衛生管理に
関する知識と技術など安全で衛生的な食品の製造について考察する学習活動を取り入
れる。
ウ 食品の貯蔵
ここでは,食品の貯蔵に関して,貯蔵の原理,腐敗や酸化など食品の変質する要因,
それに伴う価値の変化について取り上げる。さらに,乾燥や冷蔵,冷凍,塩蔵,くん
蔵,ガス貯蔵,真空貯蔵などについても理解できるよう指導する。
エ 食品の包装と品質表示
ここでは,食品の包装や包装材料,品質表示について法令に従い表示することを取
り上げる。さらに,包装や包装用機械,自動包装設備などについても理解できるよう
指導する。
〔指導項目〕
(5)機械と装置の利用
ア 製造用の機械と装置の利用
イ ボイラと冷却装置の利用
(内容の範囲や程度)
オ
〔指導項目〕の
(5)
については,食品製造の機械と装置,ボイラと冷却装置の基本
的な操作や安全にかかる整備について扱うこと。
(5)
機械と装置の利用
ここでは,食品製造の機械と装置について,構造と機能について理解し,操作や運転
など利用できるようにすることをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 機械と装置の利用に関する学習の意義について理解するとともに,関連する技術を
身に付けること。
② 機械と装置の利用に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に解決す
ること。
|
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15
食品製造
③ 機械と装置の利用について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。
ア 製造用の機械と装置の利用
ここでは,食品製造工場の主要機械の特性,自動制御装置などの装置について取り
上げる。食品製造用の輸送機器,伝熱装置,分離装置などを利用した実習を通して,
構造と機能について理解できるよう指導する。その際,主な製造用機械や装置の操作
と整備に関する学習活動を取り入れる。
また,必要に応じて,施設・設備を効率的に利用する技術,情報通信技術(ICT)
や人工知能(AI)などの先端技術を活用し,省力化や精密化,大規模製造や品質の
向上などに取り組む次世代の食品工場などについても取り上げる。
イ ボイラと冷却装置の利用
ここでは,工場に付帯するボイラと冷却装置の構造と機能について取り上げる。さ
らに,基本的な操作と整備並びに燃料に関する学習活動を取り入れる。
〔指導項目〕
(6)生産工程の管理と改善
ア 品質管理
イ 作業体系の改善
(内容の範囲や程度)
カ
〔指導項目〕の
(6)
については,食品企業における従業員の教育や管理の手法,作
業の体系について扱うこと。
(6)
生産工程の管理と改善
ここでは,品質と生産性の向上に必要な品質,工程,環境の管理方法や作業体系の構
築及び食品産業における従業員の教育の重要性などを理解した上で,生産工程の管理と
改善ができるようにすることをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 生産工程の管理と改善に関する学習の意義について理解するとともに,関連する技
術を身に付けること。
② 生産工程の管理と改善に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に解
決すること。
③ 生産工程の管理と改善について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。
ア 品質管理
ここでは,品質管理,生産環境管理及び衛生検査について取り上げる。危害分析・
重要管理点方式(HACCP)などの具体的な手法を通して,品質管理の意義や動向に
ついて理解できるよう指導する。さらに,品質管理の高度化など考察する学習活動を
取り入れる。
イ 作業体系の改善
ここでは,食品産業に関する国際規格や環境問題について取り上げる。製造責任者
|
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第2章
農業科の
各科目
法(PL 法)や国際規格である食品安全マネジメントシステム(ISO22000)
,環境問
題などに適切に対応し,それらが食品産業の従業員教育に生かされていることを理解
できるよう指導する。さらに,技術の進展や社会のニーズに対応した作業体系を考察
する学習活動を取り入れる。
〔指導項目〕
(7)食品の製造実習
ア 穀物,小麦粉
イ 豆類,イモ類
ウ 野菜,果実
エ 畜産物
オ 発酵食品
(内容の範囲や程度)
キ
〔指導項目〕の
(7)
については,代表的な食品の製造方法について実習を行うこと。
なお,製品の原価計算についても扱うこと。
(7)
食品の製造実習
ここでは,代表的な食品の製造実習について,食品製造を科学的に捉え,各種の食品
製造に自ら学び取り組むことができるようにすることをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 食品の製造実習に関する学習について理解するとともに,関連する技術を身に付け
ること。
② 食品の製造実習に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に解決する
こと。
③ 食品の製造実習について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。
ここでは,代表的な食品の製造に関する実習を通して,原材料の選択と処理,食品の
加工,製造用機械・器具の取り扱いに関する知識と技術,食品の特性と加工方法との関
係を取り上げる。なお,実習では,食品製造に必要な基本的な内容を扱う。また,地域
の特産や学科の特色などに応じて選択することもできる。さらに,製造した食品の原価
計算も行い,食品ロスの防止の観点から製造時に発生する規格外品の活用についても触
れる学習活動を取り入れる。
ア 穀類,小麦粉
ここでは,米と小麦,トウモロコシを主原料とした食品の製造実習を取り上げる。
また,小麦粉では小麦粉の特性を生かしたパン類や菓子類を取り上げる。
イ 豆類,イモ類
ここでは,豆類とイモ類を主原料とした食品の製造実習を取り上げる。また,豆類
では,特に主成分によりタンパク質と脂質を主成分としたもの,炭水化物を主成分と
したものの違いを理解できるよう指導する。
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15
食品製造
ウ 野菜,果実
ここでは,野菜と果実を主原料とした食品の製造実習を取り上げる。また,ジャム
類の製造ではゼリー化の3要素を理解できるように指導する。さらに,地域の特産物
を利用するなど地域との関連性を持たせることが大切である。
エ 畜産物
ここでは,牛・豚・鶏などの食肉や牛乳を主原料とした食品の製造実習を取り上げ
る。特に製造衛生と関係付けて学習する必要がある。
オ 発酵食品
ここでは,農産物や畜産物などを主原料とし,微生物の働きを利用して加工する食
品の製造実習を取り上げる。特に,みそやしょうゆでは麹菌について学び,我が国の
醸造文化を理解できるよう指導する。
〔指導項目〕
(8)食品製造の実践
(内容の範囲や程度)
ク
〔指導項目〕の
(8)
については,食品製造に関する実践的な活動を行うこと。なお,
地域農業の発展の視点で,食品産業との関連性や食品ブランドの活用や創造につい
ても扱うこと。
(8)
食品製造の実践
ここでは,食品製造の実践について,食品製造を科学的に捉え,自ら学び取り組むこ
とができるようにすることをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 食品製造の実践に関する学習について,理解するとともに,関連する技術を身に付
けること。
② 食品製造の実践に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に解決する
こと。
③ 食品製造の実践について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。
ここでは,地域農業や食品産業の発展の視点から,実際に選定した食品に関する実践
的なプロジェクト学習や地域連携などを取り上げる。
特に,それらを有機的に学校での学習活動で展開するために,外部機関,例えば,研
究機関や大学及び農業大学校,先進農業経営者などと連携を図りながら地域における食
品産業の実態を把握し,今後の在り方を考察する学習活動を行うことが大切である。
その際,地域農産物の商品開発やブランド化,六次産業化,起業など地域振興につい
ても触れ,幅広い視点をもって創造的に食品製造を実践する学習活動に取り組むことが
重要である。
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第2章
農業科の
各科目
この科目は,食品の成分と栄養的価値について学習する科目であり,
「食品製造や食品
流通の分野」に属する科目である。今回の改訂では,食品成分の化学的性質の理解だけで
なく食品の栄養的価値を重視するとともに,食品衛生検査のうち微生物検査に関する内容
を「食品微生物」に移行し,一連の学習活動を整理して学習内容の充実を図った。また,
課題意識をもって学習に臨むことが重要であることから,プロジェクト学習の意義と実践
について明確に位置付けた。
1 目 標
農業の見方・考え方を働かせ,実践的・体験的な学習活動を行うことなどを通し
て,食品の成分と栄養価値の利用に必要な資質・能力を次のとおり育成することを
目指す。
(1)食品化学について体系的・系統的に理解するとともに,関連する技術を身に付
けるようにする。
(2)食品化学に関する課題を発見し,農業や農業関連産業に携わる者として合理的
かつ創造的に解決する力を養う。
(3)食品化学について食品の成分や栄養を理解し,農業の各分野で応用できるよう
自ら学び,農業の振興や社会貢献に主体的かつ協働的に取り組む態度を養う。
この科目においては,食品産業における食品化学の社会的役割を捉え,食品の成分分析
や栄養的価値の評価と関連付けて考察するとともに,食品化学に関するプロジェクト学習
などの実践的・体験的な課題解決学習を通して,食品の成分分析や栄養的価値の評価に必
要な資質・能力の育成をねらいとしている。
目標の
(1)
については,食品化学に関するプロジェクト学習を通して,食品成分分析や
栄養的価値の評価などに必要な知識と技術を体系的・系統的に理解し,身に付けるように
することを意味している。
目標の
(2)
については,食品産業の現状と動向,食品分析の方法や栄養的価値の評価な
どから課題を発見し,食品の安全性や環境への配慮,法令順守などの職業人としての倫理
観をもって,科学的な根拠などに基づいて創造的に解決する力を養うことを意味している。
目標の
(3)
については,食品の成分や栄養が人々の生命の維持に直結していることを理
解し,生産性と品質の向上を図るとともに,安全で安心できる食品製造と衛生管理を目指
し,その振興や社会貢献に主体的かつ協働的に取り組む態度を養うことを意味している。
第1 目標
第16 節 食品化学
|
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16
食品化学
1 内容の構成及び取扱い
この科目は,目標に示す資質・能力を身に付けることができるよう,
(1)
「食品化学」
とプロジェクト学習,
(2)
食品の成分,
(3)
食品の栄養,
(4)
食品の成分分析,
(5)
食品化
学の実践の五つの指導項目で,4~8単位程度履修されることを想定し,内容を構成し
ている。また,内容を取り扱う際の配慮事項は次のように示されている。
(内容を取り扱う際の配慮事項)
ア 食品の成分や栄養的な機能や性質が,食品製造や食生活の改善を果たしている役
割を理解できるよう留意して指導すること。また,プロジェクト学習では観察や実
験・実習を通して,科学的かつ創造的に学習を進め,食品化学に関する実践力が身
に付くようにすること。なお,地域農業の実態や学科の特色等に応じて,適切な題
材を選定すること。
この科目の指導に当たっては,食生活や地域の食品産業などの具体的な事例を通して,
食品の成分分析と栄養的価値について学習し,成分分析が食品の品質向上に必要である
ことを体験し,食品の栄養的価値を理解する意欲を醸成することが重要である。
また,食品製造における食品化学に関するプロジェクト学習を取り入れ,体験的,継
続的な生産活動と検査などの学習活動を通して,原材料の特性や製造環境及びそれらと
製造過程との相互関係などの基本を理解するよう工夫することも必要である。一方,危
害分析・重要管理点方式(HACCP)や食品製造に応用できる体系的・系統的な食品化
学の知識と技術を身に付けることも必要である。
さらに,校内実習のみに留まらず,食品工場の見学や食品製造施設など地域の外部機
関における就業体験を行い,地域農産物のブランド化や六次産業化など地域農業との連
携を通して地域振興と社会貢献を図る態度を養うことが大切である。
イ
〔指導項目〕の
(1)
については,科目学習の導入として扱うこと。また,
(5)
につ
いては,
(1)
を踏まえ,
(2)
から
(4)
までと並行して,又はそれらを学習した後に扱
うこと。
〔指導項目〕の
(1)
については,課題意識をもって臨むことが重要であることから,科
目「農業と環境」で習得したプロジェクト学習の方法を踏まえ,食品化学に関するプロ
ジェクト学習の意義と役割について明確に位置付け,科目学習の最初に扱い,プロジェ
クト学習を活用した学習展開がスムーズに行われることが重要である。
また,
〔指導項目〕の
(5)
については,
(2)
から
(4)
までの学習と並行して,あるいはそ
の学習の後に,実際に一連の成分分析と衛生検査に取り組む実践的・体験的な学習を通
して,その地域に適した食品の製造に主体的,意欲的に取り組むことができるようにす
ることをねらいとしている。
第2 内容とその取扱い
|
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第2章
農業科の
各科目
2 内容
2 内 容
1に示す資質・能力を身に付けることができるよう,次の〔指導項目〕を指導す
る。
〔指導項目〕
(1)
「食品化学」とプロジェクト学習
ア 食品化学に関するプロジェクト学習の意義
イ プロジェクト学習の進め方
(内容の範囲や程度)
ア
〔指導項目〕の
(1)
については,農業科に属する他の科目と関連付けながら科目全
体で科学的かつ創造的に学習を進めるように扱うこと。
(1)
「食品化学」とプロジェクト学習
ここでは,
「食品化学」とプロジェクト学習について,食品を科学的に捉え,自ら学
び取り組むことができるようにすることをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 食品化学に関するプロジェクト学習の意義や進め方について理解するとともに,関
連する技術を身に付けること。
② 食品化学に関する課題を発見し,プロジェクト学習により科学的な根拠に基づいて
創造的に解決すること。
③ 食品化学について自ら学び,プロジェクト学習に必要な情報収集と分析に主体的か
つ協働的に取り組むこと。
ア 食品化学に関するプロジェクト学習の意義
ここでは,常に科学的な見方と,自ら課題意識をもち,その課題を解決する実践力
を身に付けることが重要であることなど,食品化学に関するプロジェクト学習の意義
について取り上げる。
イ プロジェクト学習の進め方
ここでは,
「農業と環境」で習得したプロジェクト学習の方法を踏まえ,課題設定,
計画立案,実施,まとめ(反省と評価)の一連の流れをもとに,食品化学における食
品化学に関する諸課題を主体的に解決するための具体的な実践事例を取り上げる。
課題設定に当たっては,例えば,統一テーマを「三大栄養素の成分分析と栄養的価
値」として示し,グループや個人で具体的な小テーマを設定する方法が考えられる。
なお,課題設定では,安定した成分分析と栄養的価値のあるべき姿と,それに対する
現状の認識から問題点を抽出・整理し,達成する目標を明確にすることが大切である。
また,設定した課題の解決に向けては,仮説を設定した上で計画を立案し,その計
画に沿って,食品製造の危害分析・重要管理点方式(HACCP)に基づいた調査,観
察,実験,記録などを継続的に実施し,その結果を分析,考察,評価してまとめるな
|
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16
食品化学
ど,主体的な学習活動を展開する必要がある。なお,学習成果を共有し,取組を評価
して次につなげるなど学習を確かなものにするために発表の機会を設けることが大切
である。
〔指導項目〕
(2)食品の成分
ア 食品成分の分類
イ 食品成分の機能
ウ 食品成分の変化
(内容の範囲や程度)
イ
〔指導項目〕の
(2)
については,食品中のタンパク質,脂質,ビタミンなどの性質
や機能を扱うこと。また,それらの化学式,構造式及び化学反応式を扱う場合は,
基礎的な内容を扱うこと。
(2)
食品の成分
ここでは,食品の成分について,成分の性質や機能の視点から科学的に捉え,自ら学
び取り組むことができるようにすることをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 食品の成分について理解するとともに,関連する技術を身に付けること。
② 食品の成分に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に解決すること。
③ 食品の成分について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。
ア 食品成分の分類
ここでは,食品を構成している水分,タンパク質,脂質,炭水化物,無機質やビタ
ミンなど主要成分や微量成分について取り上げ,化学的性質の分類について考察する
学習活動を取り入れる。
イ 食品成分の機能
ここでは,食品を構成している水分,タンパク質,脂質,炭水化物,無機質やビタ
ミンなど主要成分や微量成分について取り上げ,生体に及ぼす影響や生理的特性に関
する機能について考察する学習活動を取り入れる。
ウ 食品成分の変化
ここでは,食品の加工,貯蔵や流通の過程における成分変化について取り上げ,該
当食品の成分に生じる変化と,他の食品成分との相互作用による成分変化について考
察する学習活動を取り入れる。
〔指導項目〕
(3)食品の栄養
ア 食品成分の代謝と栄養
イ 栄養改善と機能性食品
|
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第2章
農業科の
各科目
ウ 食品成分表と栄養的価値
(内容の範囲や程度)
ウ
〔指導項目〕の
(3)
については,食品成分の体内での消化・吸収や変化を中心に,
機能性食品についても扱うこと。
(3)
食品の栄養
ここでは,食品の栄養について,食品成分の体内での消化・吸収や変化の視点から科
学的に捉え,自ら学び取り組むことができるようにすることをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 食品の栄養について理解するとともに,関連する技術を身に付けること。
② 食品の栄養に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に解決すること。
③ 食品の栄養について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。
ア 食品成分の代謝と栄養
ここでは,食品群別の成分と栄養,栄養素の代謝及び栄養改善について学習し,主
な栄養素の体内における消化,吸収や代謝について理解できるよう指導する。
イ 栄養改善と機能性食品
ここでは,栄養素の代謝の仕組みを学習し,機能性食品の特性や有用性について理
解できるよう指導する。
ウ 食品成分表と栄養的価値
ここでは,食品成分表を通して栄養成分を量的に把握し,食品の栄養的価値やその
評価に必要な事項を学習し,栄養素のバランスや加工食品の栄養的価値について理解
できるよう指導する。
〔指導項目〕
(4)食品の成分分析
ア 基本操作
イ 定量分析
ウ 水分
エ タンパク質,脂質,炭水化物
オ 無機質,ビタミン
(内容の範囲や程度)
エ
〔指導項目〕の
(4)
については,食品成分の分析方法とその原理及び分析機器の操
作を扱うこと。
(4)
食品の成分分析
ここでは,食品の成分分析について,分析方法と原理の視点から捉え,自ら学び取り
組むことができるようにすることをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
|
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16
食品化学
① 食品の成分分析について理解するとともに,関連する技術を身に付けること。
② 食品の成分分析に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に解決する
こと。
③ 食品の成分分析について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。
ア 基本操作
ここでは,成分分析の基本操作や重量分析,容量分析を取り上げ,食品の成分分析
について考察する学習活動を取り入れる。さらに,分析に用いる機器の操作技術につ
いて習得できるよう指導する。
イ 定量分析
ここでは,身近な食品をサンプルとした分析実験を取り上げ,分析方法の原理と測
定値の取り扱いについて考察する学習活動を取り入れる。さらに,水分,タンパク質,
脂質,炭水化物など主要成分の定量分析の技術について習得できるよう指導する。
ウ 水分
ここでは,水分の定量分析と測定値の取扱いを取り上げ,定量分析について考察す
る学習活動を取り入れる。さらに,水分の分析に用いる分析機器の操作技術について
習得できるよう指導する。
エ タンパク質,脂質,炭水化物
ここでは,タンパク質,脂質,炭水化物など主要成分の分析方法と測定値の取り扱
いを取り上げ,定量分析について考察する学習活動を取り入れる。さらに,主要成分
の分析に用いる分析機器の操作技術について習得できるよう指導する。
オ 無機質,ビタミン
ここでは,無機質やビタミンなど微量成分の分析方法と測定値の取り扱いを取り上
げ,定量分析について考察する学習活動を取り入れる。さらに,微量成分の分析に用
いる分析機器の操作技術について習得できるよう指導する。
〔指導項目〕
(5)食品化学の実践
ア 成分分析の実践
イ 食品の衛生検査
(内容の範囲や程度)
オ
〔指導項目〕の
(5)
については,身近な食品を試料とした成分分析を行うこと。ま
た,危害分析・重要管理点方式や食品安全マネジメントシステムなどにおける衛生
検査に関する内容を扱うこと。
(5)
食品化学の実践
ここでは,成分分析の実践と衛生検査について,分析の応用と安全マネジメントの視
点から捉え,自ら学び取り組むことができるようにすることをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
|
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第2章
農業科の
各科目
① 食品の成分分析と衛生検査の実践について理解するとともに,関連する技術を身に
付けること。
② 食品の成分分析と衛生検査の実践に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて
創造的に解決すること。
③ 食品の成分分析と衛生検査の実践について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組む
こと。
ア 成分分析の実践
ここでは,学校の農産物や食品製造の実習製品などを食品サンプルとして取り上げ,
成分分析を実践する学習活動を取り入れる。さらに,分析に用いる分析機器の操作に
ついて,実践的な技術を習得できるよう指導する。
また,それらを学校での学習活動で有機的に展開するためには,地域の食品企業や
食品製造施設などの外部機関や社会人講師との連携を図りながら,地域の農産物や製
品などを食品サンプルとして活用するなどの学習活動を行うことが重要である。その
際,地域農産物のブランド化や六次産業化,起業など,幅広い視点をもって創造的に
実践する学習活動として取り組むことが大切である。
イ 食品の衛生検査
ここでは,食品製造における食品の安全性を確保するために,必要な衛生検査を実
践する学習活動を取り入れる。
食品製造における衛生検査の意義を理解し,食品における危害分析・重要管理点方
式(HACCP)や食品安全マネジメントシステム(ISO22000)などにおける化学分析
検査に関する活動を取り上げ,食品製造における危害の発生防止に努める態度を育成
する学習活動を取り入れる。
導入に当たって,学校の農産物や食品製造の実習製品などを食品サンプルとして衛
生検査を行う。さらに,食品工場の見学や食品製造施設における就業体験を行い,食
品の衛生や製造環境衛生の重要性を理解できる活動を展開することが大切である。
なお,食品や製造施設内の細菌検査などの微生物衛生に関する項目は,科目「食品
微生物」に移行し一連の微生物学習として取り扱う。
|
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17
食品微生物
この科目は,食品と微生物の関連性及び微生物の利用と制御について学習する科目であ
り,
「食品製造や食品流通の分野」に属する科目である。今回の改訂では,世界やアジア
モンスーン地域に広がる発酵文化並びに我が国の醸造文化を学ぶとともに,微生物の新し
い活用技術を学ぶ観点から,
「微生物利用」を「食品微生物」と変更した。さらに,従前
の「食品化学」の衛生検査から微生物検査の内容を移行し,微生物に関する一連の学習内
容を統合し学習内容の充実を図った。また,課題意識をもって学習に臨むことが重要であ
ることから,プロジェクト学習の意義と実践について明確に位置付けた。
1 目 標
農業の見方・考え方を働かせ,実践的・体験的な学習活動を行うことなどを通し
て,食品微生物の利用に必要な資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
(1)食品微生物について,体系的・系統的に理解するとともに,関連する技術を身
に付けるようにする。
(2)食品微生物に関する課題を発見し,農業や農業関連産業に携わる者として合理
的かつ創造的に課題を解決する力を養う。
(3)食品微生物について特質を理解し,農業の各分野で利用できるよう自ら学び,
農業の振興や社会貢献に主体的かつ協働的に取り組む態度を養う。
この科目においては,食品と微生物の関連性及び微生物の利用と制御について学習する。
さらに,微生物と気候風土との関連性や多様な発酵文化について考察するとともに,食品
微生物に関するプロジェクト学習などの実践的・体験的な課題解決学習を通して,食の文
化や微生物の利用に必要な資質・能力の育成をねらいとしている。
目標の
(1)
については,食品微生物に関するプロジェクト学習を通して,発酵に関する
文化や原理,微生物特性など食品微生物に必要な知識と技術,食品の安全性など食品微生
物に関する知識と技術を体系的・系統的に理解し,身に付けるようにすることを意味して
いる。
目標の
(2)
については,食品産業の現状と動向,生産工程管理などから課題を発見し,
食品の安全性や環境への配慮,法令順守などの職業人としての倫理観をもって,科学的な
根拠などに基づいて創造的に解決する力を養うことを意味している。
目標の
(3)
については,食品微生物が多様な発酵食品や飲料などの製造や豊かな食生活
に不可欠であることを理解し,品質と生産性の向上を図るとともに,安全で安心できる食
品衛生を目指し,その振興や社会貢献に主体的かつ協働的に取り組む態度を養うことを意
味している。
第1 目標
第17 節 食品微生物
|
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第2章
農業科の
各科目
1 内容の構成及び取扱い
この科目は,目標に示す資質・能力を身に付けることができるよう,
(1)
「食品微生
物」とプロジェクト学習,
(2)
食品微生物の種類,
(3)
食品微生物の実験,
(4)
微生物利
用の動向,
(5)
微生物利用の実践の五つの指導項目で構成しており,4~6単位程度履
修されることを想定している。また,内容を取り扱う際の配慮事項は次のように示され
ている。
(内容を取り扱う際の配慮事項)
ア 微生物の形態的特徴と生理的特性を理解できるよう留意して指導すること。また,
プロジェクト学習では観察や実験・実習を通して,科学的かつ創造的に学習を進め,
微生物の応用を図る実践力が身に付くようにすること。なお,地域農業の実態や学
科の特色等に応じて,適切な題材を選定すること。
この科目の指導に当たっては,食品微生物の形態や増殖の観察,分離・培養及び代謝
に関する実験・実習などの体験的な学習を通して,微生物の形態的特徴と生理的特性並
びに分離と培養の方法について取り上げ,学習意欲を醸成することが重要である。
また,食品微生物に関するプロジェクト学習を取り入れ,体験的,継続的な活動と観
察,実験,調査,記録などの学習活動を通して,基本を理解するよう工夫することも大
切である。一方,技術の習熟を図る実践的な生産活動と,知識の深化を図る課題探究的
な学習活動として,危害分析・重要管理点方式(HACCP)や食品安全マネジメントシ
ステム(ISO22000)などにおける微生物検査に関する学習を取り上げ,食品の安全に
ついて理解し,発酵食品の製造や衛生検査に応用できる体系的な知識と技術を身に付け
ることも必要である。
さらに,自らの職業生活について考えるために,校内実習のみに留まらず,地域の食
品工場の見学や食品製造施設での就業体験活動などを行い,地域産業界との連携を図る
ことが大切である。
イ
〔指導内容〕の
(1)
については,科目学習の導入として扱うこと。また,
(5)
につ
いては,
(1)
を踏まえ,
(2)
から
(4)
までと並行あるいはそれらを学習した後に扱う
こと。
〔指導内容〕の
(1)
については,課題意識をもって臨むことが重要であることから,科
目「農業と環境」で習得したプロジェクト学習の方法を踏まえ,食品微生物に関するプ
ロジェクト学習の意義と役割について明確に位置付け,科目学習の最初に扱い,プロ
ジェクト学習を活用した学習展開がスムーズに行われることが大切である。
また,
〔指導内容〕の
(5)
については,実際に一連の発酵食品の製造に取り組む実践
的・体験的な学習を通して,その地域に適した発酵食品の製造に主体的,意欲的に取り
組むことができるようにすることが必要である。
ウ
〔指導項目〕の
(3)
及び
(5)
の指導に当たっては,実験・実習を通して,微生物の
安全な取扱について指導すること。特に,有害微生物を扱う際には,適切な拡散防
第2 内容とその取扱い
|
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17
食品微生物
止の措置を講じるなど安全に十分留意して指導すること。
〔指導項目〕の
(3)
及び
(5)
については,実験・実習を通して,微生物の安全な移植や
培養,保存について指導すること。さらに,微生物の操作は,クリーンベンチなどの空
気清浄度の高い機器の中で操作するとともに,特に,有害微生物を扱う際には実験終了
後は菌体や器具などを確実に滅菌し汚染防止を講じることが必要である。
2 内容
2 内 容
1に示す資質・能力を身に付けることができるよう,次の〔指導項目〕を指導す
る。
〔指導項目〕
(1)
「食品微生物」とプロジェクト学習
ア 食品と微生物
イ 食品微生物に関するプロジェクト学習の意義
ウ プロジェクト学習の進め方
(内容の範囲や程度)
ア
〔指導項目〕の
(1)
については,農業に属する他の科目と関連付けながら科目全体
で科学的かつ創造的に学習を進めるように扱うこと。
(1)
「食品微生物」とプロジェクト学習
ここでは,
「食品微生物」とプロジェクト学習について,食品微生物を科学的に捉え,
自ら学び取り組むことができるようにすることをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 食品微生物に関するプロジェクト学習の意義や進め方について理解するとともに,
関連する技術を身に付けること。
② 食品微生物に関する課題を発見し,プロジェクト学習により科学的な根拠に基づい
て創造的に解決すること。
③ 食品微生物について自ら学び,プロジェクト学習に必要な情報収集と分析に主体的
かつ協働的に取り組むこと。
ア 食品と微生物
ここでは,人類が古くから微生物を利用して製造してきた発酵食品や発酵飲料,世
界やアジアに広がる発酵文化,とりわけ我が国の醸造文化を概観し,食品微生物利用
の現状と動向について大局的に学習する。例えば,ヨーロッパとアジアや日本では気
候風土の違いから利用菌種が異なり,独特の発酵食品や発酵飲料が製造され,現地の
気候風土に適した微生物や食品・飲料を利用した生活や行事を行っていることが理解
できるよう指導する。
イ 食品微生物に関するプロジェクト学習の意義
|
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第2章
農業科の
各科目
ここでは,常に科学的な見方と,自ら課題意識をもち,その課題を解決するための
実践力を身に付けることが重要であることから,食品微生物に関するプロジェクト学
習の意義について理解できるよう指導する。
ウ プロジェクト学習の進め方
ここでは,科目「農業と環境」で習得したプロジェクト学習の方法を踏まえ,課題
設定,計画立案,実施,まとめ(反省と評価)の一連の流れをもとに,食品微生物に
関する諸課題を主体的に解決するための具体的な実践事例を取り上げて指導する。
課題設定に当たっては,例えば,統一テーマを「安全・安心で均質な発酵食品の製
造」として示し,グループや個人で小テーマを設定する方法が考えられる。なお,課
題設定では,安定した品質の発酵食品のあるべき姿と,それに対する現状の認識から
問題点を抽出・整理し,達成する目標を明確にすることが大切である。
また,設定した課題の解決に向けては,仮説を設定したうえで計画を立案し,その
計画に基づいて食品の製造工程管理や調査,観察,実験,記録などを継続的に実施し,
その結果を分析,考察,評価してまとめるなど,主体的な学習活動を展開する必要が
ある。なお,学習成果を共有し,取組を評価して次につなげるなど学習を確かなもの
にするために発表の機会を設けることが大切である。
〔指導項目〕
(2)食品微生物の種類
ア 微生物の形態と種類
イ 微生物の栄養と生育
ウ 微生物の増殖と遺伝
エ 微生物の酵素と種類
オ 微生物の代謝
(内容の範囲や程度)
イ
〔指導項目〕の
(2)
については,微生物の学名や英名及び化学式や構造式を扱う場
合は基礎的な内容を扱うこと。
(2)
食品微生物の種類
ここでは,食品微生物の種類について,多様な食品微生物を総合的に捉え,自ら学び
取り組むことができるようにすることをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 食品微生物の種類について理解するとともに,関連する技術を身に付けること。
② 食品微生物の種類に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に解決す
ること。
③ 食品微生物の種類について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。
ア 微生物の形態と種類
ここでは,かび,酵母,細菌の順に大きさや形態,分類について取り上げ,微生物
|
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17
食品微生物
の生物学的分類を理解できるよう指導する。さらに,光学顕微鏡の操作や標本作成に
関する知識と技術を習得する学習活動を取り入れる。
イ 微生物の栄養と生育
ここでは,食品に関する微生物の菌体成分や微生物の栄養素,増殖に関する環境条
件について取り上げる。微生物の種類による栄養要求と生育因子の違いについて,温
度,pH,酸素,光など環境因子の違いによる変化に関する実験などを通して,微生
物の増殖と環境の関係について考察できるよう指導する。
ウ 微生物の増殖と遺伝
ここでは,微生物の特徴的な増殖について,培養時間の経過と菌数の関係をグラフ
化するなどして考察できるよう指導する。また,遺伝子の本体であるDNA の構造や
複製の仕組み,変異,遺伝情報発現の仕組みなどについて取り上げる。さらに,微生
物の遺伝や,DNA 複製と突然変異,遺伝情報の発現などについて考察できるよう指
導する。
エ 微生物の酵素と種類
ここでは,酵素の特異性や触媒作用,酵素の本体や酵素作用に影響する因子,代表
的な酵素の分類と種類について取り上げ,微生物の酵素について考察できるよう指導
する。
オ 微生物の代謝
ここでは,微生物の代謝,呼吸と発酵,糖質の代謝,糖の分解とエネルギーについ
て取り上げる。例えば,アルコール生産菌やアルコール発酵,乳酸・酢酸・クエン酸
発酵などの有機酸発酵,アミノ酸生産菌やアミノ酸発酵について考察できるよう指導
する。
〔指導項目〕
(3)食品微生物の実験
ア 基本操作
イ かびの分離と培養
ウ 酵母の分離と培養
エ 細菌の分離と培養
オ きのこの培養
(内容の範囲や程度)
ウ
〔指導項目〕の
(3)
については,観察・実験を通して,微生物の形態的特徴と生理
的特性を具体的に扱うこと。
(3)
食品微生物の実験
ここでは,食品微生物の実験について,多様な食品微生物を形態的,生理的に捉え,
自ら学び取り組むことができるようにすることをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
|
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第2章
農業科の
各科目
① 食品微生物の実験の動向について理解するとともに,関連する技術を身に付けるこ
と。
② 食品微生物の実験に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に解決す
ること。
③ 食品微生物の実験について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。
ここでは,食品に関連する主なかび,酵母,細菌の形態観察や増殖法の実験などを取
り上げ,微生物の増殖と環境や栄養との関係について考察できるよう指導する。さらに,
有用微生物と有害微生物の種類,形態的特徴や生理的特性,増殖過程の測定と制御に関
する基本的な知識・技術について取り上げる。なお,学科の特色などに応じて,適切な
菌種を選定することが大切である。
ア 基本操作
ここでは,培地の調整など微生物実験の基本操作や微生物の純粋分離・培養の方法
を取り上げ,実験器具の殺菌や滅菌と無菌操作,培地の種類と調整,有用菌株の保存
法など基本操作について習得できるよう指導する。
イ かびの分離と培養
ここでは,有用かびの分離と培養,形態的特徴と生理的特性の観察について学習す
る。特に代表的なかびの菌種として,けかび属,くものすかび属,こうじかび属,あ
おかび属を取り上げる。
ウ 酵母の分離と培養
ここでは,有用酵母の分離と培養,形態的特徴と生理的特性の観察について学習す
る。代表的な菌種としてパン酵母,醸造酵母を取り上げる。
エ 細菌の分離と培養
ここでは,有用細菌の分離と培養,形態的特徴と生理的特性の観察について学習す
る。特に代表的な菌種として乳酸菌,酢酸菌を取り上げる。また,納豆菌など耐熱性
胞子を形成する菌種を扱う場合は,特に周辺への汚染や使用後の滅菌の徹底などに留
意する。
オ きのこの培養
ここでは,有用きのこの形態的特徴と生理的特性を取り上げ,きのこの種菌づくり
や培養方法について考察する学習活動を取り入れる。
〔指導項目〕
(4)微生物利用の動向
ア 微生物の改良
イ 固定化生体触媒
ウ エネルギー生産
エ 環境保全と浄化
(内容の範囲や程度)
エ
〔指導項目〕の
(4)
については,微生物及び微生物酵素利用の動向について扱い,
|
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17
食品微生物
特に遺伝子組換え,バイオリアクター,バイオマスなどの原理を扱うこと。
(4)
微生物利用の動向
ここでは,微生物利用の動向について,バイオテクノロジーなど現代科学の進歩の視
点から捉え,自ら学び取り組むことができるようにすることをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 微生物利用の動向について理解するとともに,関連する技術を身に付けること。
② 微生物利用の実践に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に解決す
ること。
③ 微生物利用の実践について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。
ア 微生物の改良
ここでは,微生物の改良について,突然変異株や細胞融合,遺伝子組換えを利用し
た有用物質の生産について取り上げる。さらに,利用に伴う倫理的な問題について考
察できるよう指導する。
イ 固定化生体触媒
ここでは,生体触媒の固定化法,バイオリアクターの種類と特徴について取り上げ,
生体触媒の固定化について考察できるよう指導する。
ウ エネルギー生産
ここでは,バイオマスとその利用システムについて取り上げ,微生物によるエタ
ノール,メタンなどのエネルギー生産への利用と応用について考察できるよう指導す
る。
エ 環境保全と浄化
ここでは,地球環境保全と微生物について学習する。例えば,微生物による難分解
性物質の分解などの環境汚染の浄化や環境負荷の低い製品の生産技術への応用などに
ついて取り上げる。
〔指導項目〕
(5)微生物利用の実践
ア 食品微生物を利用した実習
イ 食品の微生物検査
(内容の範囲や程度)
オ
〔指導項目〕の
(5)
については,微生物の有用性を確認するために,多様な発酵食
品の製造を扱うとともに,危害分析・重要管理点方式や食品安全マネジメントシス
テムなどにおける微生物検査に関する活動を行うこと。
(5)
微生物利用の実践
ここでは,微生物利用の実践について,発酵食品の製造と衛生管理の視点から科学的
に捉え,自ら学び取り組むことができるようにすることをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
|
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第2章
農業科の
各科目
〔指導項目〕を指導する。
① 微生物利用の実践について理解するとともに,関連する技術を身に付けること。
② 微生物利用の実践に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に解決す
ること。
③ 微生物利用の実践について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。
ア 食品微生物を利用した実習
ここでは,食品製造における食品微生物の働きを捉えながら,微生物の有用性や気
候風土に応じた発酵食品や醸造食品の分布を確認するために,地域の伝統的な発酵食
品や醸造食品など多様な発酵食品の製造を行うことが大切である。また,それらを学
校での学習活動に有機的に展開するためには,地域の食品工場の見学や食品製造施設
などの外部機関や社会人講師との連携を図りながら,地域の農産物や製品などを食品
サンプルとして活用するなど学習活動を行うことが重要である。その際,地域農産物
のブランド化や六次産業化,起業など,幅広い視点をもって創造的に実践する学習活
動を通して取り組むことが大切である。
イ 食品の微生物検査
ここでは,食品製造における食品の安全性を確保するために,必要な微生物に関す
る衛生検査を通して理解できるよう指導する。食品中の一般細菌の総菌数や生菌数,
大腸菌群の検査など微生物学的試験法による細菌数検査,製造施設内の落下性細菌検
査など,食品の衛生や製造環境衛生の重要性を理解できる活動を展開することが大切
である。
加えて,食品製造施設における危害分析・重要管理点方式(HACCP)や食品安全
マネジメントシステム(ISO22000)などにおける微生物検査に関する学習を行い,
食品の安全について理解できるよう指導する。また,それらを学校での学習活動に有
機的に展開するためには,外部機関や社会人講師との連携を図りながら,食品工場の
見学や食品製造施設での就業体験を行い,食品の衛生や製造環境衛生の重要性を理解
できる活動を展開することが大切である。
さらに,微生物の検査では,光学顕微鏡に加えて走査型電子顕微鏡(SEM)の導
入や活用を通して,より微細な構造を観察したり,菌種を特定したりして解析するこ
とは,高度な農業技術による生産性の向上の観点からも今後有効である。
|
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18
食品流通
この科目は,食品の流通とマーケティングについて学習する科目であり,
「食品製造や
食品流通の分野」に属する科目である。今回の改訂では,安全・安心と顧客ニーズを踏ま
えた合理的な食品流通に加え,顧客を創造する活動であるマーケティングを重視し,より
実践的な学習内容になるよう充実を図った。また,課題意識をもって学習に臨むことが重
要であることから,プロジェクト学習の意義や実践について明確に位置付けた。
1 目 標
農業の見方・考え方を働かせ,実践的・体験的な学習活動を行うことなどを通し
て,食品の流通とマーケティングに必要な資質・能力を次のとおり育成することを
目指す。
(1)食品流通について体系的・系統的に理解するとともに,関連する技術を身に付
けるようにする。
(2)食品流通に関する課題を発見し,農業や農業関連産業に携わる者として合理的
かつ創造的に解決する力を養う。
(3)食品流通の合理的な管理とマーケティングが経営発展へつながるよう自ら学び,
農業の振興や社会貢献に主体的かつ協働的に取り組む態度を養う。
この科目においては,食品製造から消費までの食品流通の視点から食品産業を捉え,品
質管理や作業体系の向上と関連付けて考察するとともに,食品マーケティングに関するプ
ロジェクト学習などの実践的・体験的な課題解決学習を通して,合理的な食品流通やマー
ケティングの展開に必要な資質・能力の育成をねらいとしている。
目標の
(1)
については,食品流通やマーケティングに関するプロジェクト学習を通して,
食品の品質管理や流通などに関する知識と技術を体系的・系統的に理解し,身に付けるよ
うにすることを意味している。
目標の
(2)
については,食を巡る世界の動向,食生活と健康などから課題を発見し,食
品流通やマーケティングが果たす社会的な意義と役割を踏まえるとともに,食品の安全性
や環境への配慮,法令順守などの職業人としての倫理観をもって,科学的な根拠などに基
づいて創造的に解決する力を養うことを意味している。
目標の
(3)
については,合理的な食品流通やマーケティングの展開を通して,食品流通
が人々の豊かな食生活を提供するという社会的な役割を担っていることを理解し,その振
興や社会貢献に主体的かつ協働的に取り組む態度を養うことを意味している。
第1 目標
第18 節 食品流通
|
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第2章
農業科の
各科目
1 内容の構成及び取扱い
この科目は,目標に示す資質・能力を身に付けることができるよう,
(1)
「食品流通」
とプロジェクト学習,
(2)
食と消費の動向,
(3)
食品の流通・保管と物流,
(4)
食品の
マーケティング,
(5)
食品流通とマーケティングの実践の五つの指導項目で,4~6単
位程度履修されることを想定している。また,内容を取り扱う際の配慮事項は次のよう
に示されている。
(内容を取り扱う際の配慮事項)
ア 農業生産,食品製造から流通・消費までの食料供給の仕組みを理解できるよう留
意して指導すること。また,プロジェクト学習では観察や実験・実習を通して,科
学的かつ創造的に学習を進め,食品流通に関する実践力が身に付くようにすること。
なお,地域農業の実態や学科の特色等に応じて,適切な題材を選定すること。
この科目の指導に当たっては,食品流通が果たす社会的な意義や役割,安全・安心を
踏まえた合理的な仕組みに加え,顧客を創造する活動であるマーケティングの実践的学
習を行い,食品流通とマーケティングに対する学習意欲を醸成することが重要である。
なお,経営感覚の醸成を図り,学習成果を評価するため,実践的学習としてマーケ
ティング実習や販売実習を取り入れることが大切である。
また,自らの職業生活について考えるために,学校の販売施設に留まらず,地域の食
品流通施設の見学やマーケティング活動に関する就業体験を行い,地域農産物のブラン
ド化や六次産業化など,地域農業や食品産業との連携を図る態度を養うことが大切であ
る。
イ
〔指導項目〕の
(1)
については,科目学習の導入として扱うこと。また,
(5)
につ
いては,
(1)
を踏まえ,
(2)
から
(4)
までと並行して,又はそれらを学習した後に扱
うこと。
〔指導項目〕の
(1)
については,課題意識をもって臨むことが重要であることから,科
目「農業と環境」で習得したプロジェクト学習の方法を踏まえ,食品流通とマーケティ
ングに関するプロジェクト学習の意義と役割について明確に位置付け,科目学習の最初
に扱い,プロジェクト学習を活用した学習展開がスムーズに行われることが大切である。
〔指導項目〕の
(5)
については,内容の
(2)
から
(4)
までの学習と並行して,あるいはそ
の学習の後に学習する。その際,マーケティング戦略を策定し実践する。さらに,その
活動の分析・評価を主体的,意欲的に取り組むことができるようにすることが大切であ
る。
2 内容
2 内 容
1に示す資質・能力を身に付けることができるよう,次の〔指導項目〕を指導す
る。
第2 内容とその取扱い
|
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18
食品流通
〔指導項目〕
(1)
「食品流通」とプロジェクト学習
ア 食品流通に関するプロジェクト学習の意義
イ プロジェクト学習の進め方
(内容の範囲や程度)
ア
〔指導項目〕の
(1)
については,農業に属する他の科目と関連付けながら科目全体
で科学的にかつ創造的に学習を進めるように扱うこと。
(1)
「食品流通」とプロジェクト学習
ここでは,
「食品流通」とプロジェクト学習について,食品流通とマーケティングを
科学的に捉え,自ら学び取り組むことができるようにすることをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 食品流通とマーケティングに関するプロジェクト学習の意義や進め方について理解
するとともに,関連する技術を身に付けること。
② 食品流通とマーケティングに関する課題を発見し,プロジェクト学習により科学的
な根拠に基づいて創造的に解決すること。
③ 食品流通とマーケティングについて自ら学び,プロジェクト学習に必要な情報収集
と分析に主体的かつ協働的に取り組むこと。
ア 食品流通に関するプロジェクト学習の意義
ここでは,常に科学的な見方と自ら課題意識をもち,その課題を解決するための実
践力を身に付けることが重要であることから食品流通とマーケティングに関するプロ
ジェクト学習の意義について理解できるよう指導する。
イ プロジェクト学習の進め方
ここでは,科目「農業と環境」で習得したプロジェクト学習の方法を踏まえ,課題
設定,計画立案,実践,まとめ(反省と評価)の一連の流れをもとに,食品流通と
マーケティングに関する諸課題を具体的な実践事例を取り上げて指導する。
また,課題設定に当たっては,例えば,統一テーマを「実習製品のマーケティン
グ」として示し,グループや個人で具体的な小テーマを設定する方法が考えられる。
なお,課題設定では,安全・安心と顧客ニーズを踏まえた合理的な食品流通や顧客を
創造する活動であるマーケティングのあるべき姿と,それに対する現状の認識から問
題点を抽出・整理し,達成する目標を明確にすることが大切である。
また,設定した課題の解決に向けては,仮説を設定した上で計画を立案し,その計
画に沿って,食品製造の危害分析・重要管理点方式(HACCP)や顧客ニーズの調査,
観察,実験,記録などを継続的に実施し,その結果を分析,考察,評価してまとめる
など,主体的な学習活動を展開する必要がある。なお,学習成果を共有し,取組を評
価して次につなげるなど学習を確かなものにするために発表の機会を設けることが大
切である。
|
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第2章
農業科の
各科目
〔指導項目〕
(2)食と消費の動向
ア 食をめぐる世界の動向
イ 食と生活の動向
ウ 食生活と健康
(内容の範囲や程度)
イ
〔指導項目〕の
(2)
については,世界と日本の食の動向について,世界的な視点と
身近な食生活の視点から扱うこと。
(2)
食と消費の動向
ここでは,世界の農業と食糧供給の現状や課題について,世界的な視点と身近な食生
活の視点から捉えることができるようにすることをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 食と消費の動向について理解するとともに,関連する技術を身に付けること。
② 食と消費の動向に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に解決する
こと。
③ 食と消費の動向について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。
ア 食をめぐる世界の動向
ここでは,世界と日本の農業及び農産物の動向とその相互関係について統計データ
や指標を用いながら大局的に学び,我が国の農業の特質について理解できるよう指導
する。
なお,これからのグローバル化する社会と農業の関係性,特に高度な農業技術によ
る生産性の向上と農産物の輸出入についても学習することが重要である。
イ 食と生活の動向
ここでは,世界の食料供給と日本の需給について統計データや指標を用いながら理
解できるよう指導する。また,食料・農業・農村基本法など我が国の主な農業政策と
関係法規及び世界貿易機関(WTO)の農業に関する協定などを取り上げる。
ウ 食生活と健康
ここでは,正しい食生活があって健康になり,健康を維持することができるという
食と健康の関係を通して,適時に食品を流通させるシステムが重要であることを取り
上げる。例えば,野菜不足による体調不良,鉄分不足による貧血の発生など具体的な
健康被害の例を通して理解できるよう指導する。
〔指導項目〕
(3)食品の流通・保管と物流
ア 食品流通の構造
イ 食品の保管
ウ 物流と情報システム
|
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18
食品流通
エ 食品の品質管理
オ 食品の輸出入
(内容の範囲や程度)
ウ
〔指導項目〕の
(3)
については,食品トレーサビリティシステムなどの品質管理と
適正な食品表示について扱うこと。また危害分析・重要管理点方式及び食品安全マ
ネジメントシステムなどの考え方や方法についても扱うこと。
(3)
食品の流通・保管と物流
ここでは,食品の流通・保管と物流について,品質管理と安全マネジメントの視点か
ら捉えることができるようにすることをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 食品の流通・保管と物流について理解するとともに,関連する技術を身に付けること。
② 食品の流通・保管と物流に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に
解決すること。
③ 食品の流通・保管と物流について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。
ア 食品流通の構造
ここでは,食品の消費量や消費形態など国民の食生活の動向について取り上げ,食
品流通の社会的機能について理解できるよう指導する。さらに,食品流通とニーズを
考察する学習活動を行う。
イ 食品の保管
ここでは,農産物や加工食品のコールドチェーンなどの輸送の方法と特色について
取り上げ,荷傷み防止や品質維持・管理について考察する学習活動を行う。
ウ 物流と情報システム
ここでは,農産物や加工食品の保管及び施設,保管中の変化と品質管理について取
り上げ,物流の効率化,安全性の確保,顧客ニーズへの対応など物流システムの合理
化について理解できるよう指導する。さらに,食品トレーサビリティシステムなど物
流の情報化,情報の収集・分析・管理について取り上げ,食品流通における情報シス
テムについて考察する学習活動を行う。
エ 食品の品質管理
ここでは,食品の品質管理において,特に農業生産工程管理(GAP)や危害分析・
重要管理点方式(HACCP)について取り上げ,食品情報の収集・分析・管理につい
て理解できるよう指導する。また,残留農薬のポジティブリスト制度や食品トレーサ
ビリティシステムなどについて取り上げ,食の安全性について考察する学習活動を行
う。
オ 食品の輸出入
ここでは,我が国や地域の農産物の輸出や諸外国からの輸入について消費傾向及び
流通の手段などについて取り上げ,食品の輸出入状況と流通経路との関係について考
察する学習活動を行う。
|
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第2章
農業科の
各科目
〔指導項目〕
(4)食品のマーケティング
ア 食品マーケティングの概要
イ 食品のマーケティング戦略
ウ 食品のブランド化
(内容の範囲や程度)
エ
〔指導項目〕の(4)については,マーケティングの原理,方法,ブランド化につ
いて具体的に扱うこと。
(4)
食品のマーケティング
ここでは,食品マーケティングについて,地域農産物を取り上げる活動を通して,地
域農産物の顕在化やブランド化の視点から捉えることができるようにすることをねらい
としている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 食品のマーケティングについて理解するとともに,関連する技術を身に付けること。
② 食品のマーケティングに関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に解
決すること。
③ 食品のマーケティングについて自分の意思や判断に基づき,主体的かつ協働的に取
り組むこと。
ア 食品マーケティングの概要
ここでは,顧客の求めている価値やニーズ,消費動向の把握などを取り上げ,顧客
の視点に立った食品マーケティングの概要を理解できるよう指導する。
イ 食品のマーケティング戦略
ここでは,
「顧客目線からの発想」をもとにした提案や開発を行う。顧客のニーズ
を聞いて提案する姿勢や,先進事例から価値を形にする創造的な活動を行い,顧客の
ニーズから顧客を創造する仕組みの構築がマーケティング戦略であることを考察する
学習活動を行う。
ウ 食品のブランド化
ここでは,食品のブランド化の意義について取り上げ,地域の農産物をブランド化
する方策について考察する学習活動を行う。その際,ブランド化とは「その食品の品
質や価格を超えた価値の創造」であること,また,単にその食品という「モノ」を売
るのではなく,その食品の活用により発生する付加価値や,その食品に関わる「コ
ト」や「物語」を形にする戦略が,その食品のブランド化となることを考察する学習
活動を行う。
〔指導項目〕
(5)食品流通・マーケティングの実践
ア 市場調査・環境分析
|
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18
食品流通
イ マーケティング戦略の策定
ウ 食品マーケティングの実践と評価
(内容の範囲や程度)
オ
〔指導項目〕の
(5)
については,顧客の視点からの分析,マーケティング戦略の策
定,実践と評価を具体的に行うこと。
(5)
食品流通・マーケティングの実践
ここでは,食品流通・マーケティングの実践について,地域農産物のブランド化や六
次産業化の視点から捉えることができるようにすることをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 食品流通・マーケティングの実践について理解するとともに,関連する技術を身に
付けること。
② 食品流通・マーケティングの実践に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて
創造的に解決すること。
③ 食品流通・マーケティングの実践について合理的な管理と経営発展につながるよう
自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。
ここでは,食品流通・マーケティングのあるべき姿を捉えながら,今日の食品流通・
マーケティングの在り方や地域農業の実態,地域特有の食品などに対応して,実際に選
定した食品に関する実践的なプロジェクト学習や地域活動などを取り入れる。
さらに,それらを学校での学習活動に有機的につなげるため,外部機関や社会人講師
などと連携を図りながら,地域における食品流通の実態を把握し,今後の食品流通・
マーケティングの在り方を考察する学習活動へと展開することが重要である。その際,
ブランド化や六次産業化,起業など,幅広い視点をもって創造的に食品流通・マーケ
ティングを実践する学習活動に取り組むよう指導する。
ア 市場調査・環境分析
ここでは,マーケティング戦略の策定に向けての一連の作業の前段階として,実施
計画を立案し,その計画に基づいて市場調査や経営環境の分析を行う。さらに,実際
の市場や店舗に出向いて消費の動向を把握できるよう指導する。その際,SWOT 分
析など内部要因から外部要因まで該当の食品に対する環境について種々の要素に分け
て分析することが大切である。
イ マーケティング戦略の策定
ここでは,経営の発展のためのマーケティング戦略を策定する。具体的には,学校
の生産品や地域農産物の商品化を目指して,
「顧客目線からの発想」で企画立案し,
マーケティング戦略を策定できるよう指導する。
ウ 食品マーケティングの実践と評価
ここでは,学校の生産品や地域農産物の商品化を通して,マーケティング戦略を実
践する。その際,経営感覚の醸成が図れるよう,学校売店やマルシェ,農園カフェや
農業経営者レストラン,スーパーマーケットやデパートなどの多様なルートを活用し,
|
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第2章
農業科の
各科目
創造的な能力の育成を図ることが大切である。さらに,ネーミングやパッケージ・デ
ザインなど商品のブランド化の工夫や,インターネットの活用による販売,外部から
の資金調達の検討など,状況に応じて工夫することも大切である。
また,ここで得られた結果を分析,考察,評価しまとめるなど,主体的な学習活動
を展開する。その際,顧客の求めている価値やニーズ,消費動向を把握するアンケー
トなどを基に評価を行い,マーケット感覚の醸成を図ることが必要である。
|
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19
森林科学
この科目は,森林の構造や機能並びに保全技術について学習する科目であり,
「国土保
全や環境創造に関する分野」に属する科目である。今回の改訂では,森林の構造や機能並
びに保全技術などを科学的に捉えるとともに,森林生態系として,その構造の発達段階と
多面的機能の関係や目標林型と森林の取り扱いに関する技術を学べるよう明確に位置付け
た。また,課題意識をもって学習に臨むことが重要であることから,プロジェクト学習の
意義や実践について明確に位置付けた。
1 目 標
農業の見方・考え方を働かせ,実践的・体験的な学習活動を行うことなどを通し
て,森林の構造や機能並びに保全技術などを科学的に捉えるために必要な資質・能
力を次のとおり育成することを目指す。
(1)森林科学について体系的・系統的に理解するとともに,関連する技術を身に付
けるようにする。
(2)森林科学に関する課題を発見し,農業や農業関連産業に携わる者として合理的
かつ創造的に解決する力を養う。
(3)森林を科学的に捉えるよう自ら学び,農業の振興や社会貢献に主体的かつ協働
的に取り組む態度を養う。
この科目においては,森林の構造や機能並びに保全技術を国土保全や環境創造の視点で
捉え,森林科学の基礎である森林生態系の構造と森林の多面的機能を関連付けて考察する
とともに,森林科学に関するプロジェクト学習などの実践的・体験的な課題解決学習を通
して,目標林型の設定,森林の施業・管理技術の習得に必要な資質・能力の育成をねらい
としている。
目標の
(1)
については,森林の構造や機能並びに保全技術に関するプロジェクト学習を
通して,森林生態系の構造や機能に基づく森林の取り扱い技術に必要な知識と技術,森林
生態系の構造の発達段階,森林生態系の構造と多面的機能の関係,森林の機能と目標林型,
森林の施業・管理技術に関する知識と技術を体系的・系統的に理解し,身に付けるように
することを意味している。
目標の
(2)
については,森林の構造や機能並びに保全技術に関して,目標林型の設定と
それに適した施業・管理技術の選択など,主体的に地域現場から課題を発見し,地域の森
林保全の実践事例や森林の多面的機能が果たす社会的な意義と役割などを踏まえるととも
に,環境への配慮や法令遵守など,職業人に求められる倫理観をもって,科学的な根拠な
どに基づいて創造的に解決する力を養うことを意味している。
目標の
(3)
については,森林の構造や機能並びに保全技術の学習を通して,森林の多面
的な機能が人々の生活に重要な役割を担っていることを理解し,森林の取り扱い技術の向
第1 目標
第19 節 森林科学
|
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第2章
農業科の
各科目
上を図るとともに,森林の多面的機能をより高度に発揮させることを目指し,その振興や
社会貢献に主体的かつ協働的に取り組む態度を養うことを意味している。
1 内容の構成及び取扱い
この科目は,目標に示す資質・能力を身に付けることができるよう,
(1)
「森林科学」
とプロジェクト学習,
(2)
森林と樹木,
(3)
森林生態系の構造と多面的機能,
(4)
森林の
機能と目標林型,
(5)
森林の施業技術や管理技術,
(6)
木材の収穫,
(7)
森林の育成と活
用の実践の七つの指導項目で,6~8単位程度履修されることを想定し,内容を構成し
ている。また,内容を取り扱う際の配慮事項は次のように示されている。
(内容を取り扱う際の配慮事項)
ア 森林生態系の構造と多面的機能,目標林型,森林の施業技術や管理技術の仕組み
を理解できるよう留意して指導すること。また,プロジェクト学習では観察や実
験・実習を通して,科学的かつ創造的に学習を進め,森林科学に関する実践力が身
に付くようにすること。なお,地域林業の実態や学科の特色等に応じて,適切な題
材を選定すること。
この科目の指導に当たっては,森林の多面的機能が果たす社会的な意義や役割,森林
の施業・管理技術の仕組み,森林生態系保全の現状などの今日的課題などについて取り
上げ,森林の施業による森林の変化の楽しさや面白さを体験し,森林生態系の保全に対
する意欲を醸成することが大切である。
また,森林の構造や機能並びに保全技術に関するプロジェクト学習を取り入れ,体験
的,継続的な森林の保全活動と観察,実験,調査,記録などの学習活動を通して,森林
や樹木の生理・生態的な特性や生育に適した環境の相互関係などの基本を理解するよう
工夫することも必要である。一方,技術の習熟を図る実践的な保全活動や,知識の深化
を図る課題探究的な学習活動などを通して,各種森林の保全に応用できる体系的・系統
的な知識と技術を身に付けることも大切である。
さらに,森林・林業において自らの職業生活について考えるよう,地域の林業経営者
や法人などと連携し就業体験など地域産業界と連携を図ることが大切である。
イ
〔指導項目〕の
(1)
については,科目学習の導入として扱うこと。また,
(7)
につ
いては,
(1)
を踏まえ,
(2)
から
(6)
までと並行して,又はそれらを学習した後に扱
うこと。
〔指導項目〕の
(1)
については,課題意識をもって学習に臨むことが重要であることか
ら,
「農業と環境」で習得したプロジェクト学習の方法を踏まえ,森林科学に関するプ
ロジェクト学習の意義と役割について明確に位置づけ,科目学習の最初に扱い,プロ
ジェクト学習を活用した学習展開がスムーズに行われることが大切である。
また,
〔指導項目〕の
(7)
については,
(2)
から
(6)
までの学習と並行して,あるいはそ
の学習の後に,森林の構造や機能並びに保全技術の学習に取り組む実践的・体験的な学
第2 内容とその取扱い
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19
森林科学
習を通して,森林の取り扱い技術の向上や森林の多面的機能の発揮に主体的,意欲的に
取り組むことができるようにすることが大切である。
2 内容
2 内 容
1に示す資質・能力を身に付けることができるよう,次の〔指導項目〕を指導す
る。
〔指導項目〕
(1)
「森林科学」とプロジェクト学習
ア 森林科学に関するプロジェクト学習の意義
イ プロジェクト学習の進め方
(内容の範囲や程度)
ア
〔指導項目〕の
(1)
については,農業科に属する他の科目と関連付けながら科目全
体で科学的かつ創造的に学習を進めるように扱うこと。
(1)
「森林科学」とプロジェクト学習
ここでは,
「森林科学」とプロジェクト学習について,森林を科学的に捉え,自ら学
び取り組むことができるようにすることをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 森林科学に関するプロジェクト学習の意義や進め方について理解するとともに,関
連する技術を身に付けること。
② 森林科学に関する課題を発見し,プロジェクト学習により科学的な根拠に基づいて
創造的に解決すること。
③ 森林科学について自ら学び,プロジェクト学習に必要な情報収集と分析に主体的か
つ協働的に取り組むこと。
ア 森林科学に関するプロジェクト学習の意義
ここでは,常に科学的な見方と,自ら課題意識をもち,その課題を解決するための
実践力を身に付けることが重要であることなど,森林科学に関するプロジェクト学習
の意義について理解できるよう指導する。
イ プロジェクト学習の進め方
ここでは,
「農業と環境」で習得したプロジェクト学習の方法を踏まえ,課題設
定・計画立案,実施,まとめ(反省と評価)の一連の流れをもとに,森林科学に関す
る諸課題を主体的に解決するための具体的な実践事例を取り上げて指導する。
課題設定に当たっては,例えば,統一テーマを「森林の育成と活用」として示し,
グループや個人で具体的な小テーマを設定する方法が考えられる。なお,課題設定で
は,森林の育成等のあるべき姿とそれに対する現状の認識から問題点を抽出・整理し,
達成する目標を明確にすることが大切である。
|
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第2章
農業科の
各科目
また,設定した課題の解決に向けては,仮説を設定した上で計画を立案し,その計
画に沿って地域の森林の構造や機能並びに保全技術に基づいた,調査,観察,実験,
記録などを継続的に実施し,その結果を分析,考察,評価してまとめるなど,主体的
な学習活動を展開する必要がある。なお,学習成果を共有し,取組を評価して次につ
なげるなど学習を確かなものにするために発表の機会を設けることが大切である。
〔指導項目〕
(2)森林と樹木
ア 森林の特性
イ 樹木の特性
ウ 林木の立地環境
(内容の範囲や程度)
イ
〔指導項目〕の
(2)
については,様々な森林のタイプ分けについてその意義を扱う
こと。
(2)
森林と樹木
ここでは,森林と樹木について,森林の定義やさまざまな森林のタイプ,個々の樹木
について理解することができるようにすることをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 森林と樹木について理解するとともに,関連する技術を身に付けること。
② 森林と樹木に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に解決すること。
③ 森林と樹木について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。
ア 森林の特性
ここでは,森林の定義と森林のタイプ分けについて取り上げ,森林の定義が世界で
は異なっていることや森林の定義が必要となった時代背景,森林のタイプ分けに人工
林,天然林,天然生林の3 種類が必要な理由について考察する学習活動を取り入れる。
森林のタイプについて,
更新の仕方と人手の加わり方の度合いによるもの(人工林,
天然林,天然生林)
,相観によるもの(常緑広葉樹林,落葉広葉樹林,針葉樹林,針
広混交林など)
,遷移段階によるもの(極相林,二次林)
,生育段階によるもの(幼齢
林,若齢林,成熟林(壮齢林)
,老齢林)
,幾何学的構造によるもの(単層林,複層
林)
,構成木の更新時期によるもの(同齢林,異齢林)
,樹種タイプの構成によるもの
(単純林,混交林)
,森林の機能によるもの(生産林(経済林,生活林)
,環境林)な
どを取り上げ,森林のタイプ分けが目標林型を求める際に必要であることについて考
察する学習活動を取り入れる。
イ 樹木の特性
ここでは,樹木の形態と内部構造,樹冠構造と幹の成長を取り上げ,樹木の生育特
性について考察する学習活動を取り入れる。
|
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19
森林科学
ウ 林木の立地環境
ここでは,気象,地形,地質,土壌などを取り上げ,林木の立地環境について考察
する学習活動を取り入れる。
〔指導項目〕
(3)森林生態系の構造と多面的機能
ア 森林生態系の構造
イ 森林植生遷移と森林の発達段階
ウ 森林の構造と多面的機能との関係
(内容の範囲や程度)
ウ
〔指導項目〕の
(3)
については,森林生態系について図などを活用してわかりやす
く丁寧に扱うこと。
(3)
森林生態系の構造と多面的機能
ここでは,森林生態系の構造と多面的機能について,森林の発達段階を踏まえた森林
生態系の構造や森林生態系の果たす地球や地域に対する大きな機能や意義について理解
することができるようにすることをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 森林生態系の構造と多面的機能について理解するとともに,関連する技術を身に付
けること。
② 森林生態系の構造と多面的機能に関する課題を発見し,科学的な根拠などに基づい
て創造的に解決すること。
③ 森林生態系の構造と多面的機能について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこ
と。
ア 森林生態系の構造
ここでは,生態系の概念,森林生態系の概念,光合成と物質・エネルギーの流れな
どについて取り上げ,森林生態系の構造が機能を理解する基礎となっていることにつ
いて考察する学習活動を取り入れる。
イ 森林植生遷移と森林の発達段階
ここでは,森林の植生遷移,森林の発達段階について取り上げ,これらが森林管理
の考え方の基礎となっていることについて考察する学習活動を取り入れる。
ウ 森林の構造と多面的機能との関係
ここでは,森林の構造と森林生態系の多面的機能の関係について取り上げ,機能間
の同調関係について考察する学習活動を取り入れる。
〔指導項目〕
(4)森林の機能と目標林型
ア 森林の機能と生態系サービス
|
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第2章
農業科の
各科目
イ 目標林型
ウ ゾーニング
(内容の範囲や程度)
エ
〔指導項目〕の
(4)
については,森林の機能と生態系サービスとの関係,目標林型,
生態系サービスと目標林型の関係などを扱うこと。
(4)
森林の機能と目標林型
ここでは,森林の機能と目標林型について,森林の多面的機能を高度に発揮させる観
点から捉えることができるようにすることをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 森林の機能と目標林型について,理解するとともに,関連する技術を身に付けるこ
と。
② 森林の機能と目標林型に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に解
決すること。
③ 森林の機能と目標林型について自ら学び,生態系の健全な管理へ向けて主体的かつ
協働的に取り組むこと。
ア 森林の機能と生態系サービス
ここでは,森林の多面的機能(生物多様性保全機能,地球環境保全機能,土壌保全
機能,水源涵養機能,物質生産機能,保健文化機能など)と生態系サービスの関係を
取り上げ,各種機能について考察する学習活動を取り入れる。
イ 目標林型
ここでは,機能目的ごとの目標林型を取り上げ,木材生産を主目的とする「生産
林」と公益的機能発揮を主目的とする「環境林」を取り上げ,
「生産林」を,さらに
「経済林」と「生活林」に区分し考察する学習活動を取り入れる。
ウ ゾーニング
ここでは,目標林型を地域に配置するゾーニングを取り上げ,立地環境に留意しな
がら,森林所有者や地域住民のニーズに応え,流域全体として森林の多面的機能を発
揮させるためのゾーニングについて考察する学習活動を取り入れる。
〔指導項目〕
(5)森林の施業技術や管理技術
ア 全体技術と個別技術
イ 生産林の施業技術
ウ 環境林の管理技術
(内容の範囲や程度)
オ
〔指導項目〕の
(5)
については個別技術の意義や意味,技術の関連性と全体像,生
産林に対して人間が関与する意義,環境林の空間利用を含めた取扱いなどを扱うこ
と。
|
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19
森林科学
(5)
森林の施業技術や管理技術
ここでは,森林の施業・管理技術について,現実の森林を目標林型(生産林,環境
林)へ向けて取り組む観点から捉えることができるようにすることをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 森林の施業や管理技術について,理解するとともに,関連する技術を身に付けるこ
と。
② 森林の施業や管理技術に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に解
決すること。
③ 森林の施業や管理技術について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。
ア 全体技術と個別技術
ここでは,施業体系である全体技術と更新や保育の個別技術を取り上げるとともに,
生育期間の長い林木,森林との付き合いにおいては,長期間にわたる施業体系の中で
個別技術を見ていく必要性について考察する学習活動を取り入れる。
イ 生産林の施業技術
ここでは,生産林の施業技術として,更新,植生制御,枝打ち,間伐,主伐,択伐,
伐期を取り上げ,生産に適した立地環境を選んでそこの環境に適した施業及び施業体
系について考察する学習活動を取り入れる。
ウ 環境林の管理技術
ここでは,環境林の目標林型(老齢段階)
,誘導方法や森林の空間利用に関する歴
史的経緯,現状などを取り上げ,環境林の管理技術について考察する学習活動を取り
入れる。
〔指導項目〕
(6)木材の収穫
ア 作業システム
イ 林道,作業道
ウ 伐採,造材,集材
エ 労働安全
(内容の範囲や程度)
カ
〔指導項目〕の
(6)
については,集材方法を考えた伐採,路網の設計,
機械を使用
する際の安全性などを扱うこと。
(6)
木材の収穫
ここでは,木材の収穫について,その個別技術を,全体システムとして捉える学習活
動を通して,実際の木材の収穫ができるようにすることをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 木材の収穫について理解するとともに,関連する技術を身に付けること。
|
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第2章
農業科の
各科目
② 木材の収穫に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に解決すること。
③ 木材の収穫について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。
ア 作業システム
ここでは,収穫作業において,小型作業システムや,大型作業システムなどを取り
上げ,地形や地質,事業規模によるシステムの選択について考察する学習活動を取り
入れる。
イ 林道,作業道
ここでは,林道,作業道について,意義,開設実績,規格,開設方法などについて
取り上げ,森林の機能を維持し利用するためには,林道,作業道の作設ルートの選定
や地形や地質,事業規模に応じた道づくりが重要であることを考察する学習活動を取
り入れる。
ウ 伐採,造材,集材
ここでは,チェンソー,ハーベスタなどによる林木の伐採,造材および架線やグ
ラップルなどによる集材,積み込み,さらにフォワーダ―や作業車による運材,ト
ラックによる運搬などについて取り上げ,伐採,造材,集材の間の作業システムにつ
いて考察する学習活動を取り入れる。また,玉切りについて幹の形質の状態,取引に
おける材質重視の度合い,作業効率を勘案して行うことが大切であることを取り上げ
る。
エ 労働安全
ここでは,チェンソーを中心とする作業の危険性および事故の実態,安全確保策,
関係法令などを取り上げ,法令による作業基準の設定,各種技能講習の義務づけなど
について考察する学習活動を取り入れる。
〔指導項目〕
(7)森林の育成と活用の実践
(内容の範囲や程度)
キ
〔指導項目〕の
(7)
については,森林の育成と活用に関する実践的な活動を行うこ
と。
(7)
森林の育成と活用の実践
ここでは,森林の育成と活用について,実践的なプロジェクト学習や地域連携活動な
どを通して,主要な森林の育成や地域特有な森林の活用などに関する課題の解決に向け
て主体的,意欲的に取り組むことができるようにすることをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 森林の育成と活用の実践について理解するとともに,関連する技術を身に付けるこ
と。
② 森林の育成と活用の実践に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に
解決すること。
|
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19
森林科学
③ 森林の育成と活用の実践について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。
森林の育成と活用の実践では,国土保全と環境創造のあるべき姿を捉えながら,今日
の森林の在り方や地域の森林の実態,地域特有の森林経営などに対応して,実際に選定
した森林の種類に応じた育成と活用に関する実践的なプロジェクト学習や地域連携活動
などを取り入れる。
特に,それらを有機的に学校での学習活動で展開するために,外部機関,例えば,研
究機関や大学及び農業大学校,先進林業経営者などと連携を図りながら,地域における
森林の活用の実態を把握し,今後の森林の活用の在り方を考察する学習活動を行うこと
が必要である。
|
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第2章
農業科の
各科目
この科目は,森林の経営や政策について学習する科目であり,
「国土保全や環境創造の
分野」に属する科目である。今回の改訂では,持続可能な森林経営や森林経営の組織と計
画などについて理解するとともに,国や都道府県・市町村等の公的管理による森林経営に
ついての学習が重要であることから内容の充実を図った。また,課題意識をもって学習に
臨むことが重要であることから,プロジェクト学習の意義や実践について明確に位置付け
た。
1 目 標
農業の見方・考え方を働かせ,実践的・体験的な学習活動を行うことなどを通し
て,森林経営に必要な資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
(1)森林経営について体系的・系統的に理解するとともに,関連する技術を身に付
けるようにする。
(2)森林経営に関する課題を発見し,農業や農業関連産業に携わる者として合理的
かつ創造的に解決する力を養う。
(3)森林経営について持続的な経営発展へ向けて自ら学び,農業の振興や社会貢献
について主体的かつ協働的に取り組む態度を養う。
この科目においては,国土の7 割を占める森林の経営を担う人材に必要とされる知識を
体系的・系統的に理解させるとともに,森林経営に関するプロジェクト学習などの実践
的・体験的な課題解決学習を通して,森林経営に必要な資質・能力を育成することをねら
いとしている。
目標の
(1)
については,森林経営や政策に関するプロジェクト学習を通して,世界や日
本の森林・林業事情,持続可能な森林経営の考え方,森林・林業に関する法律や制度,山
地や農山村の保全などに関する知識と技術を体系的・系統的に理解し,身に付けるように
することを意味している。
目標の
(2)
については,森林経営や政策に関して,地域における実践事例に関する課題
を発見し,環境への配慮や法令順守などの職業人としての倫理観をもって,科学的な根拠
などに基づいて創造的に解決する力を養うことを意味している。
目標の
(3)
については,人が森林を適正に管理することにより健全な森林を育成するこ
とが人々の生活環境を改善し,安全・安心な生活を保障し,大切な素材を提供するという
社会的な役割を担っていることを理解し,持続可能な森林経営を目指しその振興や社会貢
献に主体的かつ協働的に取り組む態度を養うことを意味している。
第1 目標
第20 節 森林経営
|
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20
森林経営
1 内容の構成及び取扱い
この科目は,目標に示す資質・能力を身に付けることができるよう,
(1)
「森林経営」
とプロジェクト学習,
(2)
世界と日本の森林・林業,
(3)
森林経営の目標と組織,
(4)
森
林の測定と評価,
(5)
森林・林業の制度と政策,
(6)
山地と農山村の保全,
(7)
森林経営
の実践の七つの指導項目で,4~8単位程度履修させることを想定し,内容を構成して
いる。また,内容を取り扱う際の配慮事項は次のように示されている。
(内容を取り扱う際の配慮事項)
ア 持続可能な森林経営や森林経営の組織と計画などについて理解できるよう留意し
て指導すること。また,プロジェクト学習では観察や実験・実習を通して,科学的
かつ創造的に学習を進め,森林経営に関する実践力が身に付くようにすること。な
お,地域林業の実態や学科の特色等に応じて,適切な題材を選定すること。
この科目の指導に当たっては,持続可能な森林経営が果たす社会的な意義や役割,森
林経営の仕組みなど,森林経営の現状や今日的な課題等について取り上げ,世界の森
林・林業と日本との比較等の面白さを体験し,森林経営に対する意欲を醸成することが
大切である。
また,森林経営や政策に関するプロジェクト学習を取り入れ,体験的,継続的な学校
林等の現実の森林を対象とした森林認証制度を運用する活動と観察,実験,調査,記録
などの学習活動を通して,森林認証制度の基本を理解するよう工夫することも必要であ
る。一方,森林の調査,計測及び地理的情報システムの構築などの技術の習熟を図る実
践的な活動と,知識の深化を図る課題探究的な学習活動などを通して,持続可能な森林
経営に応用できる体系的・系統的な知識と技術を身に付けることも重要である。
さらに,森林・林業において自らの職業生活について考えるよう,地域の林業経営者
や法人などと連携し就業体験など地域産業界と連携を図ることが大切である。
イ
〔指導項目〕の
(1)
については,科目学習の導入として扱うこと。また,
(7)
につ
いては,
(1)
を踏まえ,
(2)
から
(6)
までと並行して,又はそれらを学習した後に扱
うこと。
〔指導項目〕の
(1)
については,課題意識をもって学習に臨むことが重要であることか
ら,
「農業と環境」で習得したプロジェクト学習の方法を踏まえ,森林経営に関するプ
ロジェクト学習の意義と役割について明確に位置づけ,科目学習の最初に扱い,プロ
ジェクト学習を活用した学習展開がスムーズに行われることが大切である。
また,指導項目の
(7)
については,
(2)
から
(6)
までの学習と並行して,あるいはその
学習の後に,森林の経営や政策の学習に取り組む実践的・体験的な学習を通して,持続
可能な森林経営に主体的,意欲的に取り組むことができるようにすることが大切である。
ウ
〔指導項目〕の
(4)
については,学校林などを対象に森林認証制度についても学習
すること。
〔指導項目〕の
(4)
については,プロジェクト学習を通して持続可能な森林経営の概念
第2 内容とその取扱い
|
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第2章
農業科の
各科目
を多面的に理解し,その具体化である森林認証制度について理解するとともに,学校林
等の現実の森林を対象として模擬的に森林認証制度の運用を試みることで,体系的・系
統的に理解することが大切である。
2 内容
2 内 容
1に示す資質・能力を身に付けることができるよう,次の〔指導項目〕を指導す
る。
〔指導項目〕
(1)
「森林経営」とプロジェクト学習
ア 森林経営に関するプロジェクト学習の意義
イ プロジェクト学習の進め方
(内容の範囲や程度)
ア
〔指導項目〕の
(1)
については,農業科に属する他の科目と関連付けながら科目全
体で科学的かつ創造的に学習を進めるように扱うこと。
(1)
「森林経営」とプロジェクト学習
ここでは,
「森林経営」とプロジェクト学習について森林経営を科学的に捉え,自ら
学び,実践できるようにすることをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 森林経営に関するプロジェクト学習の意義や進め方について理解するとともに,関
連する技術を身に付けること。
② 森林経営に関する課題を発見し,プロジェクト学習により科学的な根拠に基づいて,
創造的に解決すること。
③ 森林経営について自ら学び,プロジェクト学習に必要な情報収集と分析に主体的か
つ協働的に取り組むこと。
ア 森林経営に関するプロジェクト学習の意義
ここでは,常に科学的な見方と,自ら課題意識をもち,その課題を解決するための
実践力を身に付けることが重要であることから,森林経営に関するプロジェクト学習
の意義について理解できるよう指導する。
イ プロジェクト学習の進め方
ここでは,
「農業と環境」で学習したプロジェクト学習の方法を踏まえ,課題設定,
計画立案,実施,まとめ(反省と評価)の一連の流れをもとに,森林の持続的経営に
関する諸課題を主体的に解決するための具体的な実践事例を取り上げて指導する。
課題設定に当たっては,例えば,統一テーマを「日本の森林・林業の特徴」として
示し,グループや個人で具体的な小テーマを設定する方法が考えられる。なお,課題
設定では,日本の森林・林業のあるべき姿とそれに対する現状の認識から問題点を抽
|
Page 179 | 1407073_13_1_1_2.pdf | 171
20
森林経営
出・整理し,達成する目標を明確にすることが大切である。
また,設定した課題の解決に向けては,仮説を設定したうえで計画を立案し,その
計画に沿って地域林業の実態に基づいた,調査,観察,記録などを継続的に実施し,
その結果を分析,考察,評価してまとめるなど,森林の持続的発展に反映できるよう
主体的な学習活動を展開する必要がある。なお,学習成果を共有し,取組を評価して
次につなげるなど学習を確かなものにするために発表の機会を設けることが大切であ
る。
〔指導項目〕
(2)世界と日本の森林・林業
ア 世界の森林・林業
イ 日本の森林・林業
(内容の範囲や程度)
イ
〔指導項目〕の
(2)
については,地球的規模で森林・林業の現状を取り上げるとと
もに,世界各国の森林・林業事情を踏まえ,我が国の森林・林業の特徴と問題点を
扱うこと。また,木材の貿易,価格,流通についても扱うこと。
(2)
世界と日本の森林・林業
ここでは,世界と日本の森林・林業について,グローバルな視点から捉えることがで
きるようにすることをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 世界と日本の森林・林業について理解するとともに,関連する技術を身に付けるこ
と。
② 世界と日本の森林・林業に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に
解決すること。
③ 世界と日本の森林・林業について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。
ア 世界の森林・林業
ここでは,世界の森林帯,森林資源状況,林産物生産状況などを取り上げ,これま
で世界の森林が直面してきた諸課題について考察する学習活動を取り入れる。
ここでは,ドイツ,フィンランド,アメリカ,中国,ニュージーランド,インドネ
シアなどを具体的な対象として,各国の森林・林業の概要を取り上げ,それぞれが我
が国の森林・林業とどのように関連しているのか考察する学習活動を取り入れる。
イ 日本の森林・林業
ここでは,我が国の森林帯,林種別資源状況,所有別森林状況,木材生産状況,特
用林産物生産状況,バイオマス生産状況などの概要と特徴,木材の貿易,価格,流通
を取り上げ,現在直面しているさまざまな課題について考察する学習活動を取り入れ
る。
|
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第2章
農業科の
各科目
〔指導項目〕
(3)森林経営の目標と組織
ア 持続可能な森林経営
イ 森林経営の組織
ウ 森林経営の計画
(内容の範囲や程度)
ウ
〔指導項目〕の
(3)
については,持続可能な森林経営の概念,森林経営を担う組織
及び森林経営に関する計画などについて扱うこと。
(3)
森林経営の目標と組織
ここでは,森林経営の目標と組織について,世界的な視野と歴史的な観点から捉える
ことができるようにすることをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 森林経営の目標と組織について理解するとともに,関連する技術を身に付けること。
② 森林経営の目標と組織に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に解
決すること。
③ 森林経営の目標と組織について,持続可能な森林経営の考え方を基礎に具体的な森
林を対象として自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。
ア 持続可能な森林経営
ここでは,持続可能な森林経営の考え方が登場してきた背景,概念の内容,特徴,
具体的には科学的かつ客観的な基準・指標を用いた森林政策などについて取り上げ,
その取組を考察する学習活動を取り入れる。
また,森林認証制度が誕生してきた経緯とその内容を取り上げ,各種の森林認証制
度について比較するとともにその成果と課題について考察する学習活動を取り入れる。
合法木材制度についても取り上げ,その意義について考察する学習活動を取り入れる。
イ 森林経営の組織
ここでは,我が国における森林経営を担う組織・団体や経営体の概要について取り
上げる。
我が国の森林経営に大きなウェイトを持つ森林組合について,その歴史的経緯,組
織,役割,具体的活動内容を取り上げ,課題などについて考察する学習活動を取り入
れる。
木材の生産を担う素材生産業について,全国的概観,役割,組織形態(認定事業体,
一人親方等)
,活動内容などを取り上げ,当面する課題などについて考察する学習活
動を取り入れる。
近年,注目されている環境保全型で持続可能な森林経営に取り組む自伐型林業経営
者について,その概要を取り上げ,意義と課題などについて考察する学習活動を取り
入れる。
また,我が国の森林経営を担っている行政組織として,林野庁,都道府県,市町村
|
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20
森林経営
などの事業や動きについても取り上げる。
国民による森林管理について,森林ボランティア活動,企業の社会的責任(CSR)
,
市民と研究者の共働による森林機能評価,緑の募金,森林環境税,森林のクレジット
化などを取り上げ,国民が森林管理に関わることができる内容について考察する学習
活動を取り入れる。
ウ 森林経営の計画
ここでは,森林経営が,生産・管理に要する期間が長期でかつ国民の要求が多様で
あることから,長期的で多面的な視点に立った森林経営の計画の必要性を取り上げ,
当面する課題などについて考察する学習活動を取り入れる。また,従来の森林計画に
追加する項目として,森林経営に対する組織の公約の策定と公開,経営計画段階にお
ける環境,社会側面の評価,目的及び目標の設定,実行段階での教育,訓練,事業の
制御,照査における短期及び長期のモニタリング及びすべての段階における文書化と
情報公開などを取り上げる。
〔指導項目〕
(4)森林の測定と評価
ア 森林の測定
イ リモートセンシングの利用
ウ 森林の評価
(内容の範囲や程度)
エ
〔指導項目〕の
(4)
については,持続可能な森林経営の基礎となる森林の測定と評
価について扱うこと。
(4)
森林の測定と評価
ここでは,森林の測定と評価について,森林計画や環境保全の観点から捉えることが
できるようにすることをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 森林の測定と評価について理解するとともに,関連する技術を身に付けること。
② 森林の測定と評価に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に解決す
ること。
③ 森林の測定と評価について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。
ア 森林の測定
ここでは,森林情報の階層性(目的によって必要な情報が異なること)を踏まえて
自治体等の公的管理に必要な森林管理情報を中心に取り上げ,それに必要な各種の新
たな森林調査法・計測法を取り上げるとともに,それらを地理的情報システムとして
構築・運用する学習活動を取り入れる。
イ リモートセンシングの利用
ここでは,リモートセンシングを利用した森林情報の収集と分析について取り上げ,
|
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第2章
農業科の
各科目
森林を広域的に測定,評価する学習活動を取り入れる。
ウ 森林の評価
ここでは,森林経営に必要な森林の評価方法を取り上げ,目的に応じた適切な評価
の必要性について考察する学習活動を取り入れる。
〔指導項目〕
(5)森林・林業の制度と政策
ア 制度と政策の特徴
イ 制度と政策の体系
ウ 政策主体と近年の政策動向
(内容の範囲や程度)
オ
〔指導項目〕の
(5)
については,森林経営に関する制度や政策の概要を取り上げる
とともに,国や自治体の制度や政策の重要性について扱うこと。また,森林経営に
関する法規の概要について扱うこと。
(5)
森林・林業の制度と政策
ここでは,森林・林業の制度と政策について,その特徴と重要性や制度と政策を体系
的に捉えることができるようにすることをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 森林・林業の制度と政策について理解すること。
② 森林・林業の制度と政策に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に
解決すること。
③ 森林・林業の制度と政策について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。
ア 制度と政策の特徴
ここでは,制度や政策の特徴として,森林の多面的機能及び林業における予定調和
論,林業の長期性,森林所有の多様性と零細分散性などを取り上げ,市場経済に任せ
ることの困難性,国や地方自治体の政策の重要性について考察する学習活動を取り入
れる。
イ 制度と政策の体系
ここでは,森林法,森林・林業基本法,その他の法律など,具体的な内容として,
国有林制度,民有林制度,森林計画制度,保安林制度,造林・間伐・主伐制度,森林
組合制度,林業労働力,林道・作業道・機械化,山村などを取り上げる。さらに,国
等の各種補助事業(交付金事業を含む)についても取り上げる。
ウ 政策主体と近年の政策動向
ここでは,まず政策主体について取り上げ,さらに近年の政策の特徴である,間伐
や主伐の推進,林業の成長産業化,森林環境税,自伐型林業などについて取り上げ,
それらの課題について考察する学習活動を取り入れる。
|
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20
森林経営
〔指導項目〕
(6)山地と農山村の保全
ア 山地の保全
イ 治山事業
ウ 日本の農山村
(内容の範囲や程度)
カ
〔指導項目〕の
(6)
については,農山村の振興方策など幅広く扱うこと。
(6)
山地と農山村の保全
ここでは,山地と農山村の保全について,近年多発する災害との関連,治山事業との
関連,山村の持つ多面的な機能などの関連から捉えることができるようにすることをね
らいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 山地と農山村の保全について理解するとともに,関連する技術を身に付けること。
② 山地と農山村の保全に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づき創造的に解決す
ること。
③ 山地と農山村の保全について自ら学び,その保全に向けて主体的かつ協働的に取り
組むこと。
ア 山地の保全
ここでは,山地荒廃の歴史,さまざまな山地災害の形態,被害の実態について取り
上げ,治山の重要性と流域圏管理の考え方について考察する学習活動を取り入れる。
イ 治山事業
ここでは,山地の地形や地質,森林土壌の特性,渓流水理や治山工事の対象地を取
り上げ,森林の理水効果や国土保全機能及び治水との関連について考察する学習活動
を取り入れる。治山事業の具体的内容である,山腹工事,渓流工事,地すべり防止工
事などを取り上げ,事業主体について考察する学習活動を取り入れる。
ウ 日本の農山村
ここでは,日本の農山村について,かつての姿を取り上げるとともに,現在の農山
村の実態(面積,人口など)や過疎化の経緯を取り上げ,現在直面しているさまざま
な課題について考察する学習活動を取り入れる。農山村と森林・林業の関係,農山村
のその他の役割などを取り上げるとともに,今後の農山村振興について,六次産業化,
下流域住民との連携などを含め多様な方策について考察する学習活動を取り入れる。
〔指導項目〕
(7)森林経営の実践
(内容の範囲や程度)
キ
〔指導項目〕の
(7)
については,森林経営に関する実践的な活動を行うこと。なお,
起業や六次産業化に関わる内容についても扱うこと。
|
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第2章
農業科の
各科目
(7)
森林経営の実践
ここでは,森林経営について,実践的なプロジェクト学習や地域連携活動などを通し
て,主要な林産物の生産や地域特有な森林経営などに関する課題の解決に向けて主体的,
意欲的に取り組むことができるようにすることをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 森林経営の実践について理解するとともに,関連する技術を身に付けること。
② 森林経営の実践に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に解決する
こと。
③ 森林経営の実践について,主体的かつ協働的に取り組むこと。
森林経営の実践では,国土保全と環境創造のあるべき姿を捉えながら,今日の森林経
営の在り方や地域の森林経営の実態,地域特有の森林経営などに対応して,実際に選定
した森林経営に関する実践的なプロジェクト学習や地域連携活動などを取り入れる。
特に,それらを有機的に学校での学習活動で展開するために,外部機関,例えば,研
究機関や大学及び農業大学校,先進林業経営者などと連携を図りながら,地域における
森林経営の実態を把握し,今後の森林経営の在り方を考察する学習活動を行うことが重
要である。
その際,起業や六次産業化,ブランド化や森林の多面的・多角的活用など,幅広い視
点をもって創造的に森林経営を実践する学習活動に取り組むことが大切である。
|
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21
林産物利用
この科目は,森林資源を活用する林産物利用について学習する科目であり,
「国土保全
や環境創造の分野」に属する科目である。今回の改訂について,森林資源を活用する林産
物利用では,化石資源への依存を減らし,循環資源である木材等の有効活用に対応した林
産業の発展に寄与できるような学習が重要であることから内容の充実を図った。また,課
題意識をもって学習に臨むことが重要であることから,プロジェクト学習の意義や実践に
ついて明確に位置付けた。
1 目 標
農業の見方・考え方を働かせ,実践的・体験的な学習活動を行うことなどを通し
て,林産物の利用に必要な資質・能力を次の通り育成することを目指す。
(1)林産物の利用について体系的・系統的に理解するとともに,関連する技術を身
に付けるようにする。
(2)林産物の利用に関する課題を発見し,農業や農業関連産業に携わる者として合
理的かつ創造的に解決する力を養う。
(3)林産物が多様な利用につながるよう自ら学び,農業の振興や社会貢献に主体的
かつ協働的に取り組む態度を養う。
この科目においては,森林資源を活用する林産物利用について,地球の未来を創る産業
の視点で捉え,地球環境問題と関連付けて考察するとともに,林産物利用に関するプロ
ジェクト学習などの実践的・体験的な課題解決学習を通して,林産業の発展に必要な資
質・能力の育成をねらいとしている。
目標の
(1)
については,森林資源を活用する林産物利用に関するプロジェクト学習を通
して,木材や特用林産物の加工と利用に必要な知識と技術を体系的・系統的に理解し,身
に付けるようにすることを意味している。
目標の
(2)
については,森林資源を活用する林産物利用に関して,林産業の概要,製
材・加工と木工,木材の改良と成分の利用,特用林産物の生産と加工などに関する課題を
発見し,地域の林産業の実態や林産物利用が果たす社会的な意義と役割等を踏まえるとと
もに,環境への配慮や法令順守などの職業人としての倫理観をもって,科学的な根拠など
に基づいて創造的に解決する力を養うことを意味している。
目標の
(3)
については,森林資源を活用する林産物利用の学習を通して,林産業が「地
球の未来を創る産業」であり,
「地域を創造する産業」でもあることを理解し,森林の多
面的な利用と林業経営の健全化を図るとともに,循環資源としての林産物の多様な利用を
目指し,林産業の振興や地域振興に主体的かつ協働的に取り組む態度を養うことを意味し
ている。
第1 目標
第21 節 林産物利用
|
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第2章
農業科の
各科目
1 内容の構成及び取扱い
この科目は,目標に示す資質・能力を身に付けることができるよう,
(1)
「林産物利
用」とプロジェクト学習,
(2)
循環資源としての木材,
(3)
林産業の概要,
(4)
製材・加
工と木工,
(5)
木材の改良と成分の利用,
(6)
特用林産物の生産と加工,
(7)
林産物利用
の実践の七つの指導項目で,6~8単位程度履修されることを想定し,内容を構成して
いる。また,内容を取り扱う際の配慮事項は次のように示されている。
(内容を取り扱う際の配慮事項)
ア 再生可能な森林資源を利用する林産物利用の意義と役割を理解できるよう留意し
て指導すること。また,プロジェクト学習では観察や実験・実習を通して,科学的
かつ創造的に学習を進め,林産物利用に関する実践力が身に付くようにすること。
なお,地域林業の実態や学科の特色等に応じて,適切な題材を選定すること。
この科目の指導に当たっては,林産物の利用が果たす社会的な意義や役割,木材や特
用林産物の利用方法など,林産業の現状や今日的課題等について取り上げ,実際に林産
物の加工や利用を体験することで,
林産物利用に対する意欲を醸成することが大切である。
また,林産物の利用に関するプロジェクト学習による体験的な製作活動と,観察,実
験,調査,記録などの学習活動を通して,木材の特性や環境の相互関係などの基本を理
解するとともに,技術の習熟を図る実践的な生産活動と知識の深化をはかる課題探究的
な学習活動などを通して,各種林産物の加工に応用できるようにすることが必要である。
さらに,森林・林業において自らの職業生活について考えるよう,地域の林業経営者
や法人などと連携し就業体験など地域産業界と連携を図ることが大切である。
イ
〔指導項目〕の
(1)
については,科目学習の導入として扱うこと。また,
(7)
につ
いては,
(1)
を踏まえ,
(2)
から
(6)
までと並行して,又はそれらを学習した後に扱
うこと。
〔指導項目〕の
(1)
については,課題意識をもって学習に臨むことが重要であることか
ら,
「農業と環境」で習得したプロジェクト学習の方法を踏まえ,林産物利用に関する
プロジェクト学習の意義と役割について明確に位置付け,科目学習の最初に扱い,プロ
ジェクト学習を活用した学習展開がスムーズに行われることが大切である。
また,
〔指導項目〕の
(7)
については,
(2)
から
(6)
までの学習と並行して,あるいはそ
の学習の後に,森林資源を活用する林産物利用に取り組む実践的・体験的な学習を通し
て,その地域に適した林産業の振興に主体的,意欲的に取り組むことができるようにす
ることが大切である。
2 内容
2 内 容
1に示す資質・能力を身に付けることができるよう,次の〔指導項目〕を指導す
る。
第2 内容とその取扱い
|
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21
林産物利用
〔指導項目〕
(1)
「林産物利用」とプロジェクト学習
ア 林産物利用に関するプロジェクト学習の意義
イ プロジェクト学習の進め方
(内容の範囲や程度)
ア
〔指導項目〕の
(1)
については,農業科に属する他の科目と関連付けながら科目全
体で科学的かつ創造的に学習を進めるように扱うこと。
(1)
「林産物利用」とプロジェクト学習
ここでは,
「林産物利用」とプロジェクト学習について,林産物利用を科学的に捉え,
自ら学び取り組むことができるようにすることをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 林産物利用に関するプロジェクト学習の意義や進め方について理解するとともに,
関連する技術を身に付けること。
② 林産物利用に関する課題を発見し,プロジェクト学習により科学的な根拠に基づい
て創造的に解決すること。
③ 林産物利用について自ら学び,プロジェクト学習に必要な情報収集と分析に主体的
かつ協働的に取り組むこと。
ア 林産物利用に関するプロジェクト学習の意義
ここでは,常に科学的な見方と,自ら課題意識をもち,その課題を解決するための
実践力を身に付けることが重要であることなど,林産物利用に関するプロジェクト学
習の意義について理解できるよう指導する。
イ プロジェクト学習の進め方
ここでは,
「農業と環境」で習得したプロジェクト学習の方法を踏まえ,課題設定,
計画立案,実施,まとめ(反省と評価)の一連の流れをもとに,林産物の利用に関す
る諸課題を主体的に解決するための具体的な実践事例を取り上げて指導する。課題設
定に当たっては,例えば,統一テーマを「林産物の生産,加工と販売」として示し,
グループや個人で具体的な小テーマを設定する方法が考えられる。なお,課題設定で
は,林産物の生産,加工のあるべき姿とそれに対する現状の認識から問題点を抽出・
整理し,達成する目標を明確にすることが大切である。
また,設定した課題の解決に向けては,仮説を設定した上で計画を立案し,その計
画に沿って地域の林産業の実態に基づいた,調査,観察,実験,記録などを継続的に
実施し,その結果を分析,考察,評価してまとめるなど,林産物の多様な利用に反映
するよう主体的な学習活動を展開する必要がある。なお,学習成果を共有し,取組を
評価して次につなげるなど学習を確かなものにするために発表の機会を設けることが
大切である。
|
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第2章
農業科の
各科目
〔指導項目〕
(2)循環資源としての木材
ア 木材の性質
イ 木材の用途
ウ 循環資源と環境
(内容の範囲や程度)
イ
〔指導項目〕の
(2)
については,バイオマス利用と化石燃料との代替関係などにつ
いて扱うこと。
(2)
循環資源としての木材
ここでは,循環資源としての木材について,木材の性質や用途及び循環資源と環境と
の関連から捉えることができるようにすることをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 循環資源としての木材について理解するとともに,関連する技術を身に付けること。
② 循環資源としての木材に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に解
決すること。
③ 循環資源としての木材について自ら学び,その活用について主体的かつ協働的に取
り組むこと。
ア 木材の性質
ここでは,木材の物理的性質,機械的性質,化学的性質について取り上げ,木材の
強度や弾性などと木材の比重,含有水分や傷などとの関係について考察する学習活動
を取り入れる。
イ 木材の用途
ここでは,木材の特性や製材用,パルプ・チップ用,合板用などの様々な木材の用
途について取り上げ,木材の特性と用途との関係について考察する学習活動を取り入
れる。
ウ 循環資源と環境
ここでは,木材がカーボンニュートラルであることの重要性について取り上げると
ともに,地球温暖化防止の観点から,伐採木材製品(HWP)の取り扱いについても
取り上げる。さらに,木材の利用と森林の多面的機能の発揮などとの関係について考
察する学習活動を取り入れる。
〔指導項目〕
(3)林産業の概要
ア 林産業の現状
イ 木材需要の構造
ウ 外国の林産業
|
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21
林産物利用
(内容の範囲や程度)
ウ
〔指導項目〕の
(3)
については,林産業の現状,木材需要の構造,各国の林産業の
比較とともに,各国の森林資源の成熟度や森林所有者団体などの比較も扱うこと。
(3)
林産業の概要
ここでは,林産業の概要について,全体像を把握するとともに,そのなかで各個別産
業の位置付けを木材需要構造から捉えることができるようにすることをねらいとしてい
る。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 林産業の概要について理解するとともに,関連する技術を身に付けること。
② 林産業の概要に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に解決するこ
と。
③ 外国の林産業との比較を通して,身近な林産業について現場で自ら学び,主体的か
つ協働的に取り組むこと。
ア 林産業の現状
ここでは,製材・チップ産業,合板・集成材・ボード産業,紙パルプ産業,木質バ
イオマス産業,住宅産業などの各林産業の概要を取り上げ,近年の動向の特徴につい
て考察する学習活動を取り入れる。
イ 木材需要の構造
ここでは,木材需要の全体動向を取り上げるとともに,製材用材,合板用材,パル
プ・チップ用材,バイオマス用材などに区分して,国産材,外材別に時系列的に取り
上げ,自給率について考察する学習活動を取り入れる。
ウ 外国の林産業
ここでは,アメリカ,ドイツ,北欧などの林産業の概要を取り上げ,我が国林産業
との比較について考察する学習活動を取り入れる。
〔指導項目〕
(4)製材・加工と木工
ア 製材・加工
イ 木工
ウ 安全衛生
(内容の範囲や程度)
エ
〔指導項目〕の
(4)
については,製材と木材の乾燥,木工,安全衛生について扱う
こと。
(4)
製材・加工と木工
ここでは,製材・加工と木工について,そのあり方が我が国の森林・林業に大きな影
響を与えていることを捉えることができるようにすることをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
|
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第2章
農業科の
各科目
〔指導項目〕を指導する。
① 製材・加工と木工について理解するとともに,関連する技術を身に付けること。
② 製材・加工と木工に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に解決す
ること。
③ 製材
・
加工と木工について身近な事例を自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。
ア 製材・加工
ここでは,製材木取り,製材工程や製材機械,主な樹種の乾燥,用途に応じた乾燥,
木材乾燥の施設・設備,木材の乾燥と保存などを取り上げ,木材資源の効率的利用や
木材利用における保存の必要性について考察する学習活動を取り入れる。
イ 木工
ここでは,木材の種類や状態に応じた切削加工,面削り作業などを取り上げ,木工
工作法及び塗装,刃物と切削との関係について考察する学習活動を取り入れる。
ウ 安全衛生
ここでは,木材加工機械の操作及び各種薬剤などによる事故防止のため,安全衛生
について取り上げ,事故防止について考察する学習活動を取り入れる。
〔指導項目〕
(5)木材の改良と成分の利用
ア 木質材料の製造
イ 木材パルプと和紙
ウ 木質バイオマスの利用
(内容の範囲や程度)
オ
〔指導項目〕の
(5)
については,木材の材質の改良,木材の物理的処理と化学的処
理及び木質バイオマスのエネルギー利用について基礎的な内容を扱うこと。
(5)
木材の改良と成分の利用
ここでは,木材の改良と成分の利用について,合板など改良木材,木材パルプと和紙,
バイオマスの変換利用との関連から捉えることができるようにすることをねらいとして
いる。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 木材の改良と成分の利用について理解するとともに,関連する技術を身に付けるこ
と。
② 木材の改良と成分の利用に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に
解決すること。
③ 木材の改良と成分の利用について身近な事例を自ら学び,主体的かつ協働的に取り
組むこと。
ア 木質材料の製造
ここでは,合板と集成材の接着法など製造法や用途などを取り上げ,改良木材の特
|
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21
林産物利用
性について考察する学習活動を取り入れる。
イ 木材パルプと和紙
ここでは,パルプの製造法や用途などを取り上げ,パルプ原料としての木材の重要
性について考察する学習活動を取り入れる。また,和紙の製造法や用途などを取り上
げ,その特色や製品の工芸的価値について考察する学習活動を取り入れる。
ウ 木質バイオマスの利用
ここでは,木質バイオマスの変換法などを取り上げ,エネルギー効率などバイオマ
スの変換利用の課題について考察する学習活動を取り入れる。
〔指導項目〕
(6)特用林産物の生産と加工
ア きのこの生産と加工
イ 木炭及び薪の生産と利用
ウ その他の特用林産物
(内容の範囲や程度)
カ
〔指導項目〕の
(6)
については,特用林産業が林業経営や地域社会の振興及び持続
的発展に寄与していることを扱うこと。
(6)
特用林産物の生産と加工
ここでは,特用林産物の生産と加工について,農山村における位置づけの重要性や広
葉樹林業との関連から捉えることができるようにすることをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 特用林産物の生産と加工について理解するとともに,関連する技術を身に付けるこ
と。
② 特用林産物の生産と加工に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に
解決すること。
③ 特用林産物の生産と加工について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。
ア きのこの生産と加工
ここでは,きのこ産業について,歴史的経緯,現行の生産方式や生産工程の管理,
生産の担い手,製品流通・消費動向などを取り上げ,当面する課題などについて考察
する学習活動を取り入れる。
イ 木炭及び薪の生産と利用
ここでは,木炭産業および薪産業について,歴史的経緯,現行の生産方式,生産の
担い手,製品流通・消費動向などを取り上げ,当面する課題などについて考察する学
習活動を取り入れる。
ウ その他の特用林産物
ここでは,その他の特用林産業として,竹,桐,山菜,薬用植物などを取り上げ,
それぞれの加工法の特性について考察する学習活動を取り入れる。
|
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第2章
農業科の
各科目
〔指導項目〕
(7)林産物利用の実践
(内容の範囲や程度)
キ
〔指導項目〕の
(7)
については,林産物利用に関する実践的な活動を行うこと。な
お,起業や六次産業化に関わる内容についても扱うこと。
(7)
林産物利用の実践
ここでは,林産物利用について,実践的なプロジェクト学習や地域連携活動などを通
して,主要な林産物の生産や地域特有な林産物の利用などに関する課題の解決に向けて
主体的,意欲的に取り組むことができるようにすることをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 林産物利用の実践について理解するとともに,関連する技術を身に付けること。
② 林産物利用の実践に関する課題を発見し,科学的な根拠などに基づいて創造的に解
決すること。
③ 林産物利用の実践について,主体的かつ協働的に取り組むこと。
林産物利用の実践では,国土保全と環境創造のあるべき姿を捉えながら,今日の林産
業の在り方や地域林産業の実態,地域特有の林産物利用などに対応して,実際に選定し
た林産物の種類に応じた林産物の生産と活用に関する実践的なプロジェクト学習や地域
連携活動などを取り入れる。
特に,それらを有機的に学校での学習活動で展開するために,外部機関,例えば,研
究機関や大学及び農業大学校,先進林業経営者などと連携を図りながら,地域における
林産物利用の実態を把握し,今後の林産物利用の在り方を考察する学習活動を行うこと
が重要である。
その際,起業や六次産業化,ブランド化など幅広い視点をもって創造的に林産物利用
を実践する学習活動に取り組むことが大切である。
|
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22
農業土木
設計
この科目は,農地の保全や整備の設計について学習する科目であり,
「国土保全や環境
創造に関する分野」に属する科目である。今回の改訂では,これからの農業土木設計には,
持続可能な農業・農村の発展や国土保全・環境創造の視点で捉えた農業土木事業の計画及
び農業土木施設の設計が重要であることから学習内容の充実を図った。また,課題意識を
もって学習に臨むことが重要であることから,プロジェクト学習の意義や実践について明
確に位置づけた。
1 目 標
農業の見方・考え方を働かせ,実践的・体験的な学習活動を行うことなどを通し
て,農業土木事業の計画と設計に必要な資質・能力を次のとおり育成することを目
指す。
(1)農業土木設計について体系的・系統的に理解するともに,関連する技術を身に
付けるようにする。
(2)農業土木設計に関する課題を発見し,農業や農業関連産業に携わる者として合
理的かつ創造的に解決する力を養う。
(3)農業土木設計について,農業土木事業が自然環境との調和へつながるよう自ら
学び,農業の振興や社会貢献に主体的かつ協働的に取り組む態度を養う。
この科目においては,農業土木設計を持続可能な農業・農村の発展や国土保全・環境創
造の視点で捉え,地域計画と関連付けて考察するとともに,農業土木設計に関するプロ
ジェクト学習などの実践的・体験的な課題解決学習を通して,農業土木事業の計画や農業
土木施設の設計に必要な資質・能力を育成することをねらいとしている。
目標の
(1)
については,農業土木設計に関するプロジェクト学習を通して,農業・農村
の発展や国土保全・環境創造を図り,自然環境との調和に配慮した農業土木事業の計画及
び基礎的で汎用性の高い農業土木施設の設計に必要な知識と技術を体系的・系統的に理解
し,身に付けるようにすることを意味している。
目標の
(2)
については,各種農業土木事業の計画及び農業土木施設の設計における課題
を発見し,農業土木事業が果たす社会的な意義と役割を踏まえるとともに,環境への配慮
や法令遵守などの職業人としての倫理観をもって,科学的な根拠などに基づいて創造的に
解決する力を養うことを意味している。
目標の
(3)
については,農業土木設計の学習を通して,農業土木事業が農業・農村の発
展や国土保全・環境創造を図るという社会的な役割を担っていることを理解し,農業土木
事業の振興や社会貢献に主体的かつ協働的に取り組む態度を養うことを意味している。
第1 目標
第22 節 農業土木設計
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第2章
農業科の
各科目
1 内容の構成及び取扱い
この科目は,目標に示す資質・能力を身に付けることができるよう,
(1)
「農業土木設
計」とプロジェクト学習,
(2)
農業土木事業の計画と設計,
(3)
水と土の性質,
(4)
構造
物の設計,
(5)
農業土木構造物,
(6)
農業土木設計の実践の六つの指導項目で,6~8単
位程度履修されることを想定し,内容を構成している。また,内容を取り扱う際の配慮
事項は次のように示されている。
(内容を取り扱う際の配慮事項)
ア 農村の発展や国土保全・環境創造を担う農業土木事業の事例を通して,計画と設
計について理解できるよう留意して指導すること。また,プロジェクト学習では見
学や実験・実習を通して,科学的かつ創造的に学習を進め,農業土木事業の計画と
設計に関する実践力が身に付くようにすること。なお,地域農業の実態や学科の特
色等に応じて,適切な題材を選定すること。
この科目の指導に当たっては,農業土木事業が果たす社会的な意義と役割など,農業
土木事業の現状や今日的な課題などについて取り上げ,農業土木設計に対する学習意欲
を醸成することが大切である。
また,農業土木設計に関するプロジェクト学習を取り入れ,体験的,継続的な産業現
場での見学・体験などの学習活動を通して,農業土木事業の計画や農業土木施設の設計
の基本を理解するよう工夫することが必要である。一方,技術の習熟を図る実践的な活
動と,知識の深化を図る探究的な学習活動などを通して,持続可能な農業・農村の発展
や国土保全・環境創造に応用できる体系的・系統的な知識と技術を身に付けることも重
要である。
さらに,農業土木において自らの職業生活について考えるよう,官公庁や企業などで
就業体験を行うなど,地域産業界と連携を図ることが大切である。
イ
〔指導項目〕の
(1)
については,科目学習の導入として扱うこと。また,
(6)
につ
いては,
(1)
を踏まえ,
(2)
から
(5)
までと並行して,又はそれらを学習した後に扱
うこと。
〔指導項目〕の
(1)
については,課題意識をもって学習に臨むことが重要であることか
ら,
「農業と環境」で習得したプロジェクト学習の方法を踏まえ,農業土木設計に関す
るプロジェクト学習の意義と役割について明確に位置付け,科目学習の最初に扱い,プ
ロジェクト学習を活用した学習展開がスムーズに行われることが大切である。
また,
〔指導項目〕の
(6)
については,
(2)
から
(5)
までの学習と並行して,あるいはそ
の学習の後に,実際に農業土木事業の計画や農業土木施設の設計に取り組む実践的・体
験的な学習を通して農業・農村の発展や国土保全・環境創造につながる農業土木事業の
計画立案や農業土木施設の設計に主体的,意欲的に取り組むことができるようにするこ
とが大切である。
第2 内容とその取扱い
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22
農業土木
設計
2 内容
2 内 容
1に示す資質・能力を身に付けることができるよう,次の〔指導項目〕を指導す
る。
〔指導項目〕
(1)
「農業土木設計」とプロジェクト学習
ア 農業土木設計に関するプロジェクト学習の意義
イ プロジェクト学習の進め方
(内容の範囲や程度)
ア
〔指導項目〕の
(1)
については,農業科に属する他の科目と関連付けながら科目全
体で科学的かつ創造的に学習を進めるように扱うこと。
(1)
「農業土木設計」とプロジェクト学習
ここでは,
「農業土木設計」とプロジェクト学習について,農業土木設計を科学的に
捉え,自ら学び取り組むことができるようにすることをねらいとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 農業土木設計に関するプロジェクト学習の意義や進め方について理解するとともに,
関連する技術を身に付けること。
② 農業土木設計に関する課題を発見し,プロジェクト学習により科学的な根拠に基づ
いて創造的に解決すること。
③ 農業土木設計について自ら学び,プロジェクト学習に必要な情報収集と分析に主体
的かつ協働的に取り組むこと。
ア 農業土木設計に関するプロジェクト学習の意義
ここでは,常に科学的な見方と,自ら課題意識をもち,その課題を解決するための
実践力を身に付けることが重要であることから,農業土木設計に関するプロジェクト
学習の意義について理解できるよう指導する。
イ プロジェクト学習の進め方
ここでは,
「農業と環境」で習得したプロジェクト学習の方法を踏まえ,課題設定,
計画立案,実施,まとめ(反省と評価)の一連の流れをもとに,農業土木設計に関す
る諸課題を主体的に解決するための具体的な実践事例を取り上げて指導する。課題設
定に当たっては,例えば,統一テーマを「持続可能な農業及び農村の創造や国土保全
などの視点で計画・設計する農業土木事業」として示し,グループや個人で具体的な
小テーマを設定する方法が考えられる。なお,課題設定では,農業土木事業のあるべ
き姿と,それに対する現状の認識から問題点を抽出・整理し,達成する目標を明確に
することが大切である。
また,設定した課題の解決に向けては,仮説を設定した上で計画を立案し,その計
画に沿って,地域の農業土木事業の計画や農業土木施設の設計について,調査,観察,
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第2章
農業科の
各科目
実験,記録などを継続的に実施し,その結果を分析,考察,評価してまとめるなど,
主体的な学習活動を展開する必要がある。なお,学習成果を共有し,取組を評価して次
につなげるなど学習を確かなものにするために発表の機会を設けることが大切である。
〔指導項目〕
(2)農業土木事業の計画と設計
ア 農業土木事業の意義と役割
イ 農業土木事業の計画
ウ 農業土木構造物の設計
(内容の範囲や程度)
イ
〔指導項目〕の
(2)
については,農業土木事業の計画,農業土木構造物の目的や特
徴,種類及び特質について,国土保全や環境創造と関連付けて扱うこと。
(2)
農業土木事業の計画と設計
ここでは,農業・農村の発展や国土保全,環境創造との関連から捉えた農業土木事業
の計画や設計に主体的・意欲的に取り組むことができるようにすることをねらいとして
いる。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 農業土木事業が果たしている社会的意義や役割について,農業・農村の発展や国土
保全・環境創造と関連付けて理解するとともに,関連する技術を身に付けること。
② 農業・農村の発展や国土保全・環境創造を図る農業土木事業の計画や農業土木構造
物の設計に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に解決すること。
③ 農業土木事業について自ら学び,農業・農村の発展や国土保全・環境創造に主体的
かつ協働的に取り組むこと。
ア 農業土木事業の意義と役割
ここでは,農業土木の意義や社会的役割について,農業土木の歴史的展開,地域計
画や地域の環境保全計画と関連付けて理解できるよう指導する。
イ 農業土木事業の計画
ここでは,農業土木事業の計画について理解できるように,農地の大区画化や農業
水利システムの構築,農業土木施設の長寿命化などに関する事業計画,農村地域の防
災・減災対策,自然環境の保全や修復などに関する事業計画など,具体的な事例を取
り上げて指導する。
ウ 農業土木構造物の設計
ここでは,農業土木構造物を設計する際の基礎的事項と,農業土木構造物の概要や
目的,種類や特徴,性質について理解できるように,具体的な事例を取り上げて指導
する。また,目的に応じた,自然環境との調和に配慮した農業土木構造物を設計する
ための課題について考える学習活動を取り入れて指導する。設計製図では,基本図法
や製図の規約,仕様書や設計基準及び設計手順や設計計算書を取り上げ指導する。
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22
農業土木
設計
〔指導項目〕
(3)水と土の性質
ア 水の基本的性質
イ 土の基本的性質
ウ 土中の水
(内容の範囲や程度)
ウ
〔指導項目〕の
(3)
については,水路やせきなどの水利構造物,擁壁や農業土木構
造物の基礎の設計・施工・維持管理に必要な水と土の物理的性質について基礎的な
内容を扱うこと。
(3)
水と土の性質
ここでは,利水や治水のための施設の設計・施工・維持管理に必要な水や土の物理的
性質を数量的に取り扱う知識と技術を習得し,設計に活用できるようにすることをねら
いとしている。
このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
〔指導項目〕を指導する。
① 利水や治水,地盤の安定という視点で捉えた水や土の物理的性質について理解する
とともに,関連する技術を身に付けること。
② 利水や治水のための施設の設計に必要な水や土の性質に関する課題を発見し,科学
的な根拠に基づいて創造的に解決すること。
③ 利水や治水のための施設の設計・施工・維持管理に必要な水や土の物理的性質につ
いて自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。
ア 水の基本的性質
ここでは,利水及び治水施設や構造物の設計,施工,維持管理に関連する計算が理
解できるように,水の密度,粘性,毛管現象などの物理的性質と静水圧,水の流れ,
オリフィス,せき,ベルヌーイの定理と流速及び流量の理論を取り扱う。
イ 土の基本的性質
ここでは,土圧,地盤の支持力や斜面の安定,圧密現象や土のせん断強さなどに関
連する計算が理解できるように,土の生成と分類,構造,比重,間隙量,コンシステ
ンシー,締め固め特性などの物理的性質などを取り扱う。
ウ 土中の水
ここでは,ダムや堤防の漏水,地下水汲み上げと地盤沈下,地下水汚染の拡散など
について理解できるように,土の中の水の動きについて,ダルシーの法則,毛管現象,
パイピング現象,クイックサンド現象などを取り扱う。水や土の性質については,水
理実験や土質試験を通して,体験的に理解させることが大切である。
〔指導項目〕
(4)構造物の設計
ア 設計の基礎
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Subsets and Splits
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