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190 第2章 農業科の 各科目 イ はり ウ 柱 エ トラス オ ラーメン (内容の範囲や程度) エ  〔指導項目〕の (4) については,農業土木構造物の構造材料である木材や鋼材,コ ンクリートなどの強さと特性,はり,柱とトラスに作用する外力と応力及びその計 算方法について基礎的な内容を扱うこと。また,ラーメン構造については概要を扱 うこと。 (4) 構造物の設計 ここでは,農業土木構造物の構造材料の力学的な性質や構造物の部材に作用する外力 及び応力の計算技術を設計に活用できるようにすることをねらいとしている。 このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう, 〔指導項目〕を指導する。 ① 構造及び部材の力学的な性質及び基礎的な計算について理解するとともに,関連す る技術を身に付けること。 ② 構造及び部材の計算と設計に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的 に解決すること。 ③ 構造及び部材の計算と設計について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。 ア 設計の基礎 ここでは,設計の基礎として,力の釣り合いの基礎が理解できるよう,力の種類, 力の合成と分解,モーメント,釣合い条件について取り扱う。また,平面図形の性質 では,断面一次モーメント,断面二次モーメント,断面係数,断面二次半径,核点, 構造部材の強さに関係する性質について取り上げて指導する。材料の性質と強さでは, 構造材料が外力を受けた場合の応力とひずみ,弾性係数,ポアソン比,許容応力度, 安全率について取り上げて指導する。 イ はり ここでは,静定ばりや不静定ばりの設計計算が理解できるように,はりに作用する 荷重と反力,せん断力,曲げモーメントやはりのたわみ,曲げ応力,せん断応力など を取り扱う。 ウ 柱 ここでは,短柱公式と長柱公式による柱の設計計算が理解できるよう指導する。 エ トラス ここでは,トラスの構造,種類,特徴,トラス構造物の内的静定と不静定など力学 的な性質とトラスの応力の解法が理解できるよう指導する。 オ ラーメン ここでは,ラーメンの種類,特徴,用途,ラーメンの構造と形式,力学的性質につ いて,その概要と解法が理解できるよう指導する。
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191 22 農業土木 設計 〔指導項目〕 (5)農業土木構造物 ア コンクリート構造 イ 鉄筋コンクリート構造 ウ 鋼構造 (内容の範囲や程度) オ  〔指導項目〕の (5) については,コンクリート構造と鉄筋コンクリート構造,鋼構 造の特性や構造物設計に必要な基礎的な内容を扱うこと。 (5) 農業土木構造物 ここでは,コンクリート構造及び鉄筋コンクリート構造,鋼構造の性質や許容応力度 設計法及び限界状態設計法について理解し,設計に活用できるようにすることをねらい としている。 このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう, 〔指導項目〕を指導する。 ① 農業土木構造物の設計について理解するとともに,関連する技術を身に付けること。 ② 農業土木構造物の設計について課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に解 決すること。 ③ 農業土木構造物の設計について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。 ア コンクリート構造 ここでは,コンクリート構造の設計計算が理解できるように,コンクリート構造の 性質や特徴,設計の目的,設計の順序,設計方法や各種の設計基準を取り扱う。 イ 鉄筋コンクリート構造 ここでは,鉄筋コンクリート構造の設計計算が理解できるように,鉄筋コンクリー ト構造の性質や特徴,設計の目的,設計の順序,設計方法や各種の設計基準,許容応 力度設計法及び限界状態設計法を取り扱う。 ウ 鋼構造 ここでは,鋼構造の設計計算が理解できるように,鋼構造の性質及び特徴,鋼材の 特徴及び種類,鋼構造設計の目的,設計の順序,設計方法,部材の接合及び鋼げた, 鋼断面や許容応力を取り扱う。 〔指導項目〕 (6)農業土木設計の実践 (内容の範囲や程度) カ  〔指導項目〕の (6) については,農業土木設計に関する実践的な活動を行うこと。 (6) 農業土木設計の実践 ここでは,基礎工や擁壁,水利構造物や道路など汎用性の高い施設の計画及び設計に 取り組むことができるようにすることをねらいとしている。 このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう,
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192 第2章 農業科の 各科目 〔指導項目〕を指導する。 ① 農業土木施設の計画及び設計について理解するとともに,関連する技術を身に付け ること。 ② 農業土木施設の計画及び設計について課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造 的に解決すること。 ③ 農業土木施設の計画及び設計について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。 農業土木設計の実践では,国土保全と環境創造のあるべき姿を捉えながら,今日の農 業の在り方や地域農業の実態,地域計画などに対応して,農業土木施設の計画や設計に 関する実践的なプロジェクト学習や地域連携活動などを取り入れる。 特に,それらを有機的に学校での学習活動で展開するために,外部機関,例えば,企 業並びに官公庁などの研究機関,大学などと連携を図りながら,地域における農業土木 事業の実態を検証し,今後の農業土木施設の計画や設計の在り方を考察する学習活動を 行うことが重要である。 その際,学校農場などを活用し,農道や林道,水利施設,擁壁,構造物基礎の設計, 圃場整備の計画など,幅広い視点をもって創造的に農業土木事業の計画や農業土木施設 の設計を実践する学習活動に取り組むことが大切である。 さらに,地域の団体と連携して,棚田,里山,耕作放棄地の再生・整備など発展的な 活動に取り組み,地域の活性化と環境保全につなげることが重要である。
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193 23 農業土木 施工 この科目は,農地の保全や整備の施工について学習する科目であり, 「国土保全や環境 創造に関する分野」に属する科目である。今回の改訂では,これからの農業土木施工には, 持続可能な農業・農村の発展や国土保全・環境創造の視点で捉え,環境に配慮した施工が 重要であることから学習内容の充実を図った。また,課題意識をもって学習に臨むことが 重要であることから,プロジェクト学習の意義や実践について明確に位置づけた。 1 目 標 農業の見方・考え方を働かせ,実践的・体験的な学習活動を行うことなどを通し て,農業土木事業における施工と管理に必要な資質・能力を次のとおり育成するこ とを目指す。 (1)農業土木施工について,体系的・系統的に理解するとともに,関連する技術を 身に付けるようにする。 (2)農業土木施工に関する課題を発見し,農業や農業関連産業に携わる者として合 理的かつ創造的に解決する力を養う。 (3)農業土木施工について自然環境や安全に配慮し,合理的な施工・管理ができる よう自ら学び,農業の振興や社会貢献に主体的かつ協働的に取り組む態度を養う。 この科目においては,農業土木施工を持続可能な農業・農村の発展や国土保全・環境創 造の視点で捉え,地域計画と関連付けて考察するとともに,農業土木施工に関するプロ ジェクト学習などの実践的・体験的な課題解決学習を通して,農業土木施工及び管理に必 要な資質・能力を育成することをねらいとしている。 目標の (1) については,農業土木施工に関するプロジェクト学習を通して,自然環境と の調和や安全に配慮した施工計画や仮設計画を立案し,合理的な施工及び管理を実践する ことができる知識と技術を体系的・系統的に理解し,身に付けるようにすることを意味し ている。 目標の (2) については,地域の農業土木施設の施工及び管理にあたっての課題を発見し, 農業土木施工が果たす社会的な意義と役割を踏まえるとともに,環境への配慮や法令遵守 などの職業人としての倫理観をもって,科学的な根拠などに基づいて創造的に解決する力 を養うことを意味している。 目標の (3) については,農業土木施工の学習を通して,農業土木施工が農業・農村の発 展や国土保全・環境創造などの社会的な役割を担っていることを理解し,自然環境の保全 に配慮し,安全かつ合理的な施工管理の知識と技術を活用し,農業の振興や社会貢献に主 体的かつ協働的に取り組む態度を養うことを意味している。 第1 目標 第23 節 農業土木施工
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194 第2章 農業科の 各科目 1 内容の構成及び取扱い この科目は,目標に示す資質・能力を身に付けることができるよう, (1) 「農業土木施 工」とプロジェクト学習, (2) 施工計画の基本, (3) 工事の管理, (4) 農業土木関係法規, (5) 農業土木工事の施工, (6) 農業土木施工の実践の六つの指導項目で,4~6単位程度 履修されることを想定し,内容を構成している。また,内容を取り扱う際の配慮事項は 次のように示されている。 (内容を取り扱う際の配慮事項) ア 農村の発展や国土保全・環境創造を担う農業土木工事の事例を通して,農業土木 施工・管理について理解できるよう留意して指導すること。また,プロジェクト学 習では見学や実験・実習を通して,科学的かつ創造的に学習を進め,農業土木施 工・管理に関する実践力が身に付くようにすること。なお,地域農業の実態や学科 の特色等に応じて,適切な題材を選定すること。 この科目の指導に当たっては,農業土木施工が果たす社会的な意義と役割について, 農地の大区画化や農業水利システムの構築,農業土木施設の長寿命化などに関する施工, 農村地域の防災・減災対策,自然環境の保全や修復などに関する施工など,具体的な事 例を示し,農業土木施工の現状や今日的な課題などについて取り上げ,農業土木施工に 対する学習意欲を醸成することが大切である。 また,農業土木施工に関するプロジェクト学習を取り入れ,体験的,継続的な産業現 場での見学・体験などの学習活動を通して,農業土木施工の基本を理解するよう工夫す ることが必要である。一方,技術の習熟を図る実践的な活動と,知識の深化を図る探究 的な学習活動などを通して,持続可能な農業・農村の発展や国土保全・環境創造に応用 できる体系的・系統的な知識と技術を身に付けることも重要である。 さらに,農業土木において自らの職業生活について考えるよう,官公庁や企業などで 就業体験を行うなど,地域産業界と連携を図ることが大切である。 イ  〔指導項目〕の (1) については,科目学習の導入として扱うこと。また, (6) につ いては, (1) を踏まえ, (2) から (5) までと並行して,又はそれらを学習した後に扱 うこと。 〔指導項目〕の (1) については,課題意識をもって学習に臨むことが重要であることか ら, 「農業と環境」で習得したプロジェクト学習の方法を踏まえ,農業土木施工に関す るプロジェクト学習の意義と役割について明確に位置付け,科目学習の最初に扱うとと もに,プロジェクト学習を活用した学習展開がスムーズに行われることが大切である。 また, 〔指導項目〕の (6) については, (2) から (5) までの学習と並行して,あるいはそ の学習の後に,実際に農業土木施工に取り組む実践的・体験的な学習を通して,農業・ 農村の発展や国土保全・環境創造につながり,自然環境に配慮した農業土木施工に主体 的,意欲的に取り組むことができるようにすることが大切である。 第2 内容とその取扱い
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195 23 農業土木 施工 2 内容 2 内 容 1に示す資質・能力を身に付けることができるよう,次の〔指導項目〕を指導す る。 〔指導項目〕 (1) 「農業土木施工」とプロジェクト学習 ア 農業土木施工に関するプロジェクト学習の意義 イ プロジェクト学習の進め方 (内容の範囲や程度) ア  〔指導項目〕の (1) については,農業科に属する他の科目と関連付けながら科目全 体で科学的かつ創造的に学習を進めるように扱うこと。 (1) 「農業土木施工」とプロジェクト学習 ここでは, 「農業土木施工」とプロジェクト学習について,農業土木施工を科学的に 捉え,自ら学び取り組むことができるようにすることをねらいとしている。 このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう, 〔指導項目〕を指導する。 ① 農業土木施工とプロジェクト学習の意義や進め方について理解するとともに,関連 する技術を身に付けること。 ② 農業土木施工に関する課題を発見し,プロジェクト学習を通して科学的な根拠に基 づいて創造的に解決すること。 ③ 農業土木施工について自ら学び,プロジェクト学習に必要な情報収集と分析に主体 的かつ協働的に取り組むこと。 ア 農業土木施工に関するプロジェクト学習の意義 ここでは,常に科学的な見方と,自ら課題意識をもち,その課題を解決するための 実践力を身に付けることが重要であることから,農業土木施工に関するプロジェクト 学習の意義について理解できるよう指導する。 イ プロジェクト学習の進め方 ここでは, 「農業と環境」で習得したプロジェクト学習の方法を踏まえ,課題設定, 計画立案,実施,まとめ(反省と評価)の一連の流れをもとに,農業土木施工に関す る諸課題を主体的に解決するための具体的な実践事例を取り上げて指導する。 課題設定に当たっては,例えば,統一テーマを「持続可能な農業・農村を創造する 土木施工」として示し,グループや個人で具体的な小テーマを設定する方法が考えら れる。なお,課題設定では,農業土木事業のあるべき姿と,それに対する現状の認識 から問題点を抽出・整理し,達成する目標を明確にすることが大切である。 また,設定した課題の解決に向けては,仮説を設定した上で計画を立案し,その計 画に沿って,地域の農業土木工事について,調査,観察,実験,記録などを継続的に 実施し,その結果を分析,考察,評価してまとめるなど,主体的な学習活動を展開す
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196 第2章 農業科の 各科目 る必要がある。なお,学習成果を共有し,取組を評価して次につなげるなど学習を確 かなものにするために発表の機会を設けることが大切である。 〔指導項目〕 (2)施工計画の基本 ア 施工計画の立案 イ 仮設計画 ウ 仕様と積算 (内容の範囲や程度) イ  〔指導項目〕の (2) については,合理的かつ自然環境に配慮した施工計画の立案や 工事費と工期の関係,設計図書について基礎的な内容を扱うこと。 (2) 施工計画の基本 ここでは,自然環境に配慮した農業土木施工の計画が立案できるようにすることをね らいとしている。 このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう, 〔指導項目〕を指導する。 ① 施工計画について理解するとともに,関連する技術を身に付けること。 ② 施工計画に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に解決すること。 ③ 施工計画について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。 ア 施工計画の立案 ここでは,施工計画の手順や施工計画を立案する上で必要な点が理解できるよう, 地域の農業土木施工の具体的な事例を通して,合理的かつ自然環境に配慮した施工計 画の立案方法について考察する学習活動を取り入れて指導する。 イ 仮設計画 ここでは,小規模工事から大規模工事までにおける仮設計画の意義や役割,仮設工 事の種類や進め方,仮設計画を立案するための基礎的事項と用語について理解できる よう指導する。 ウ 仕様と積算 ここでは,農業土木施工における仕様書の作成方法や工事費の積算方法,農業土木 工事の請負契約の方法について理解できるよう,具体的な事例を取り上げ指導する。 〔指導項目〕 (3)工事の管理 ア 工事の運営組織 イ 工程管理 ウ 品質管理 エ 安全管理
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197 23 農業土木 施工 (内容の範囲や程度) ウ  〔指導項目〕の (3) については,工事の運営手順や工程図の種類とそれぞれの特徴 及び作成方法,品質管理手法や安全衛生管理について基礎的な内容を扱うこと。 (3) 工事の管理 ここでは,農業土木工事の安全かつ合理的な工程管理や品質管理,安全管理が取り組 むことができるようにすることをねらいとしている。 このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう, 〔指導項目〕を指導する。 ① 工事の管理について理解するとともに,関連する技術を身に付けること。 ② 工事の管理に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に解決すること。 ③ 工事の管理について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。 ア 工事の運営組織 ここでは,農業土木工事現場の組織や工事の運営及び管理,工事の監督及び工事の 検査について理解できるよう指導する。 イ 工程管理 ここでは,工程図の種類やそれぞれの長所,短所,工程図の作成方法や工程管理に ついて理解できるよう,工程表を作成する学習活動を取り入れ指導する。 ウ 品質管理 ここでは,品質管理手法と品質管理のPDCA サイクル,工事の品質向上について 理解できるよう指導する。 エ 安全管理 ここでは,安全管理や安全衛生管理の基本事項について理解できるよう,災害発生 の原因と対策に関する事例を通して,これを考察する学習活動を取り入れ指導する。 〔指導項目〕 (4)農業土木関係の法規 ア 農村計画関連の法規 イ 環境保全関連の法規 (内容の範囲や程度) エ  〔指導項目〕の (4) については,施工計画や施工管理に関連付けながら,農村計画 関連法規及び環境保全関連法規の目的と概要について扱うこと。 (4) 農業土木関係の法規 ここでは,農業土木施工に関する法規について,これらの目的と概要を理解し,農業 土木技術者として倫理観をもって農業土木工事の施工と管理に取り組むことができるよ うにすることをねらいとしている。 このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう, 〔指導項目〕を指導する。 ① 農業土木関係法規と工事の施工及び管理の関連性について理解するとともに,関連
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198 第2章 農業科の 各科目 する技術を身に付けること。  ② 農業土木関係法規と工事の施工及び管理に関する課題を発見し,科学的な根拠に基 づいて創造的に解決すること。 ③ 農業土木施工で遵守すべき農業土木関連法規について自ら学び,主体的かつ協働的 に取り組むこと。 ア 農村計画関連の法規 ここでは,農業土木施工と土地改良法,農地法との関連性について理解できるよう 指導する。 イ 環境保全関連の法規 ここでは,農業土木施工と環境基本法,騒音規制法,振動規制法,廃棄物処理法と の関連性について理解できるよう指導する。 〔指導項目〕 (5)農業土木工事の施工 ア 土木材料 イ 土工 ウ コンクリート工 エ 鉄筋コンクリート工 オ 基礎工  カ 道路工 キ 植栽工 ク いろいろな施工技術 (内容の範囲や程度) オ  〔指導項目〕の (5) については,農業土木構造物の新設工事,既設構造物の補修・ 補強工事,災害復旧工事の特質や各種施工法の特徴について基礎的な内容を扱うこ と。なお,イについては,農地整備と農地造成についても扱うこと。 (5) 農業土木工事の施工 ここでは,農業土木工事の見学,調査や実習を通して,農業土木工事の特質や各種施 工法の特徴,施工機械について理解し,自然環境に配慮した合理的かつ安全な工事に取 り組むことができるようにすることをねらいとしている。 このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう, 〔指導項目〕を指導する。 ① 農業土木工事について理解するとともに,関連する技術を身に付けること。 ② 農業土木工事に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に解決するこ と。 ③ 農業土木工事について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。 ア 土木材料 ここでは,日本工業規格(JIS)や日本農林規格(JAS) ,日本水道協会規格
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199 23 農業土木 施工 (JWWA)と関連付けながら,木材,石材,金属,鉄筋,セメント・コンクリート及 びその製品,アスファルトなどの基本的な性質や特徴,用途を理解できるよう指導す る。 イ 土工 ここでは,土工に関係する土の基本的な性質,土工計画の基本や掘削と運搬,盛土 工やのり面保護,浚渫,埋立及び軟弱地盤対策工法,農地造成工や農地整備工,休耕 農地の施工及び農地の補修工事について理解できるよう指導する。 ウ コンクリート工 ここでは,コンクリートの性質やコンクリートの配合及び配合設計,型枠工,支保 工,目地,コンクリートの打設と養生,特殊コンクリート施工方法,コンクリート構 造物の補修と補強工事について理解できるよう指導する。 エ 鉄筋コンクリート工 ここでは,鉄筋コンクリートの性質やコンクリートの配合及び配合設計,鉄筋コン クリート工の施工方法,鉄筋コンクリート構造物の補修と補強工事について理解でき るよう指導する。 オ 基礎工 ここでは,基礎工の種類と特徴,地盤改良,根掘り工,基礎地盤の支持力や掘削の 方法,直接基礎工や杭基礎工,ケーソン基礎工,基礎の補修と補強工事について理解 できるよう指導する。 カ 道路工 ここでは,アスファルト舗装やコンクリート舗装,道路付帯構造物の施工やのり面 工,排水路の施工や道路付帯設備,道路の補修工事について理解できるよう指導する。 また,農村計画における農道の機能を考察する学習活動を取り入れて指導する。 キ 植栽工 ここでは,農業土木工事における植栽の意義や役割,植栽工事の計画・設計や樹木 の植栽方法とその管理,のり面の植栽工,植栽の効果について理解できるよう指導す る。 ク いろいろな施工技術 ここでは,ダムや砂防ダム,流路工や調整池,橋梁やトンネルの施工及びこれらの 補修や補強工事,災害復旧工事について理解できるよう指導する。なお,災害復旧工 事については主に農地や農業用施設を対象として,その意義や災害復旧工事の沿革, 工事の流れ,農地や農業施設が担う防災機能や減災機能について取り上げ指導する。 〔指導項目〕 (6)農業土木施工の実践  (内容の範囲や程度) カ  〔指導項目〕の (6) については,農業土木施工に関する実践的な活動を行うこと。
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200 第2章 農業科の 各科目 (6) 農業土木施工の実践 ここでは,農業土木施工・管理に主体的,意欲的に取り組むことができるようにする ことをねらいとしている。 このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう, 〔指導項目〕を指導する。 ① 農業土木施工・管理について理解するとともに,関連する技術を身に付けること。 ② 農業土木施工・管理について課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に解決 すること。 ③ 農業土木施工・管理について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。 農業土木施工の実践では,国土保全や環境創造のあるべき姿を捉えながら,今日の農 業の在り方や地域農業の実態,地域計画などに対応して,農業土木施工に関する実践的 なプロジェクト学習や地域活動などを取り入れる。 特に,それらを有機的に学校での学習活動で展開するために,外部機関,例えば,企 業並びに官公庁などの研究機関,大学などと連携を図りながら,地域における農業土木 事業の実態を把握し,今後の農業土木施工の在り方を考察する学習活動を行うことが必 要である。 その際,学校農場や学校林などを活用し,農道や林道,水利施設の新設や修復,擁壁 や構造物基礎の新設や補修,圃場整備など,幅広い視点をもって創造的に農業土木施工 を実践する学習活動に取り組むことが大切である。 さらに,地域の農業団体や企業と連携して,農道やコンクリート構造物,水利施設の 補修,棚田,里山,耕作放棄地の再生・整備などの発展的な活動に取り組み,地域の活 性化と環境保全につなげることが重要である。
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201 24 水循環 この科目は,地球上を循環する水について学習する科目であり, 「国土保全と環境創造 に関する分野」に属する科目である。今回の改訂では,これからの水循環には,持続可能 な農業・農村の発展や国土保全・環境創造を図る健全な水循環系の構築という視点で捉え, 水の有効かつ継続的な利用につなげることが重要であることから学習内容の充実を図った。 また,課題意識をもって学習に臨むことが重要であることからプロジェクト学習の意義や 実践について明確に位置付けた。 1 目 標 農業の見方・考え方を働かせ,実践的・体験的な学習活動を行うことなどを通し て,循環する水を有効に活用するために必要な資質・能力を次のとおり育成するこ とを目指す。 (1)水循環について体系的・系統的に理解するとともに,関連する技術を身に付け るようにする。 (2)水循環に関する課題を発見し,農業や農業関連産業に携わる者として合理的か つ創造的に解決する力を養う。 (3)水循環について環境保全や農業の持続的な発展へつながるよう自ら学び,農業 の振興や社会貢献に主体的かつ協働的に取り組む態度を養う。 この科目においては,水循環を,持続可能な農業・農村の発展,農地,森林,緑地空間 の創造や保全,自然環境の修復,水循環の過程で引き起こされる水害とその対策という視 点で捉え,地球規模の水循環の現状や今日的な課題と関連付けて考察するとともに,水循 環に関するプロジェクト学習などの実践的・体験的な課題解決学習を通して,人間活動の 中で水を有効かつ継続的に活用するために必要な資質・能力を育成することをねらいとし ている。 目標の (1) については,水循環に関するプロジェクト学習を通して,健全な水循環系を 構築し,農業・農村の発展や国土保全・環境創造に水を有効かつ継続的に活用するための 知識と技術を体系的・系統的に理解し,身に付けるようにすることを意味している。 目標の (2) については,水循環に関する課題を発見し,水循環が果たす社会的な意義と 役割などを踏まえるとともに,環境への配慮や法令遵守などの職業人としての倫理観をも って,科学的な根拠などに基づいて創造的に解決する力を養うことを意味している。 目標の (3) については,水循環の学習を通して,地球上を循環する水が,農業・農村の 発展や国土保全・環境創造という社会的な役割を担っていることを理解し,水を有効かつ 継続的に活用し,農業の振興や社会貢献に主体的かつ協働的に取り組む態度を養うことを 意味している。 第1 目標 第24 節 水循環
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202 第2章 農業科の 各科目 1 内容の構成及び取扱い この科目は,目標に示す資質・能力を身に付けることができるよう, (1) 「水循環」と プロジェクト学習, (2) 水と地球環境, (3) 水と生活環境, (4) 水と農林業, (5) 農業水利, (6) 水資源の保全と活用の実践の六つの指導項目で,4~6単位程度履修されることを 想定し,内容を構成している。また,内容を取り扱う際の配慮事項は次のように示され ている。 (内容を取り扱う際の配慮事項) ア 水循環と環境や生物との関わり,水資源の確保など水を総合的に理解できるよう 留意して指導すること。また,プロジェクト学習では見学や実験・実習を通して, 科学的かつ創造的に学習を進め,農業の持続的な発展と国土保全・環境創造に水を 有効かつ継続的に利用する実践力が身に付くようにすること。なお,地域農業の実 態や学科の特色等に応じて,適切な題材を選定すること。 この科目の指導に当たっては,地球規模の水循環が果たす社会的な意義と役割など, 水循環の現状や今日的な課題などについて取り上げ,水の有効的な活用や利水や治水な どの水の制御について考察することで水循環の重要性を理解し,水循環に対する意欲を 醸成することが大切である。 また,水循環に関するプロジェクト学習を取り入れ,体験的,継続的な調査・記録, 実習などの学習活動を通して,水循環の基本を理解するよう工夫することが必要である。 一方,技術の習熟を図る実践的な活動と,知識の深化を図る探究的な学習活動などを通 して,地球の環境創造や農業の持続的な発展に水を有効かつ継続的に活用できる体系 的・系統的な知識と技術を身に付けることも重要である。 さらに,健全な水循環系の構築において自らの職業生活について考えるよう,官公庁 や企業などで就業体験を行うなど,地域産業界と連携を図ることが大切である。 イ  〔指導項目〕の (1) については,科目学習の導入として扱うこと。また, (6) につ いては, (1) を踏まえ, (2) から (5) までと並行して,又はそれらを学習した後に扱 うこと。 〔指導項目〕の (1) については,課題意識をもって学習に臨むことが重要であることか ら, 「農業と環境」で習得したプロジェクト学習の方法を踏まえ,水循環に関するプロ ジェクト学習の意義と役割について明確に位置付け,科目学習の最初に扱いプロジェク ト学習を活用した学習展開がスムーズに行われることが大切である。 また, 〔指導項目〕の (6) については, (2) から (5) までの学習と並行して,あるいはそ の学習の後に,水循環に関する実践的・体験的な学習を通して,持続的な農業・農村の 発展,国土保全や地球の環境創造に応用できる水の有効活用に主体的,意欲的に取り組 むことができるようにすることが大切である。 第2 内容とその取扱い
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203 24 水循環 2 内容 2 内 容 1に示す資質・能力を身に付けることができるよう,次の〔指導項目〕を指導す る。 〔指導項目〕 (1) 「水循環」とプロジェクト学習 ア 水循環に関するプロジェクト学習の意義 イ プロジェクト学習の進め方 (内容の範囲や程度) ア  〔指導項目〕の (1) については,農業に属する他の科目と関連付けながら科目全体 で科学的かつ創造的に学習を進めるように取り組むこと。 (1) 「水循環」とプロジェクト学習 ここでは, 「水循環」とプロジェクト学習について,水循環を科学的に捉え,自ら学 び取り組むことができるようにすることをねらいとしている。 このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう, 〔指導項目〕を指導する。 ① 水循環に関するプロジェクト学習の意義や進め方について理解するとともに,関連 する技術を身に付けること。 ② 水循環に関する課題を発見し,プロジェクト学習により科学的な根拠に基づいて創 造的に解決すること。 ③ 水循環について自ら学び,プロジェクト学習に必要な情報収集と分析に主体的かつ 協働的に取り組むこと。 ア 水循環に関するプロジェクト学習の意義 ここでは,常に科学的な見方と,自ら課題意識をもち,その課題を解決するための 実践力を身に付けることが重要であることから,水循環に関するプロジェクト学習の 意義について理解できるよう指導する。 イ プロジェクト学習の進め方 ここでは, 「農業と環境」で習得したプロジェクト学習の方法を踏まえ,課題設定, 計画立案,実施,まとめ(反省と評価)の一連の流れをもとに,水循環に関する諸課 題を主体的に解決するための具体的な実践事例を取り上げて指導する。課題設定に当 たっては,例えば,統一テーマを「持続可能な農業及び農村や国土保全,環境創造に 必要な水循環」として示し,グループや個人で具体的な小テーマを設定する方法が考 えられる。なお,課題設定では,地域の水循環系のあるべき姿と,それに対する現状 の認識から問題点を抽出・整理し,達成する目標を明確にすることが大切である。 また,設定した課題の解決に向けては,仮説を設定した上で計画を立案し,その計 画に沿って,地域の水循環系について,調査・観察,実験,記録などを継続的に実施 し,その結果を分析,考察,評価してまとめるなど,主体的な学習活動を展開する必
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204 第2章 農業科の 各科目 要がある。なお,学習成果を共有し,取組を評価して次につなげるなど学習を確かな ものにするために発表の機会を設けることが大切である。 〔指導項目〕 (2)水と地球環境 ア 水と大気 イ 水文循環 ウ 水と森林・河川・農地 エ 水と生態系 (内容の範囲や程度) イ  〔指導項目〕の (2) については,地球全体と流域における森林・河川・農地それぞ れの水循環の視点で捉えた大気や水,生物のあり方とそれぞれの相互関係及び環境 について基礎的な内容を扱うこと。 (2) 水と地球環境 ここでは,地球全体の水循環の視点と,流域における森林,河川,農地 の水循環の 視点で,大気,水,生物の在り方を捉え,水と環境及び人間の相互関係並びに水循環に ついて関心をもたせ,地球環境における水の役割について理解し,利水や治水のための 調査と計画に活用できるようにすることをねらいとしている。 このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう, 〔指導項目〕を指導する。 ① 水と地球環境について理解するとともに,関連する技術を身に付けること。 ② 水と地球環境に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に解決するこ と。 ③ 水と地球環境について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。 ア 水と大気 ここでは,地球環境と水の関係について理解できるよう,海洋,氷,地下水,湖沼, 河川,大気中などの水の存在形態や三態変化などの水の特性について取り上げ指導す る。また,大気の成分や循環,気象現象と気候,降水のメカニズムを取り上げ,エネ ルギー循環や温室ガス循環の基礎について理解できるよう指導し,地球の温暖化のメ カニズムと気象変動について考察する学習活動を取り入れて指導する。 イ 水文循環 ここでは,水収支のバランスや水循環に伴う物質循環の基礎について取り上げ,地 球規模の水文循環や流域の水文循環についての基礎的な内容を理解できるよう指導す る。 ウ 水と森林・河川・農地 ここでは,河川の特徴や流域の降雨特性と流出機構について取り上げ,森林,農地 の降雨などの流出特性と,緑のダムとしての機能や地下水涵養の機能について理解で きるよう指導する。
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205 24 水循環 エ 水と生態系 ここでは,森林,河川,湖沼,農地の生態系を形成している生物の主な種類や特徴, 生物相互の関係や生態系の危機について取り上げ,水が生態系の維持に不可欠であり, 生態系による淡水の供給や水質改善の機能もあることについて理解できるよう指導す る。その際,身近な地域環境の観察やリモートセンシングによる観測成果及び情報通 信ネットワークによる環境情報の収集などを組み合わせた学習活動を取り入れて指導 する。 〔指導項目〕 (3)水と生活環境 ア 水と人間の歴史 イ 資源としての水 ウ 水の有効利用と水質保全 (内容の範囲や程度) ウ  〔指導項目〕の (3) については,水の制御と技術の発達,水と農業形態や農業技術 の発達,地球規模での水資源の種類や分布,農業用水や工業用水,生活用水や環境 用水の機能や相互の関係,水の量的な不足や質的な変化について基礎的な内容を扱 うこと。 (3) 水と生活環境 ここでは,歴史的視点からの水と人間の営みとの関係及び経済的視点から資源として 価値を高めている水の現状を理解し,水を資源として活用できるようにすることをねら いとしている。 このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう, 〔指導項目〕を指導する。 ① 水と生活環境について理解するとともに,関連する技術を身に付けること。 ② 水と生活環境に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に解決するこ と。 ③ 水と生活環境について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。 ア 水と人間の歴史 ここでは,文明における水の役割を理解できるよう,水と世界の文明,水と日本の 歴史,水の制御と技術の発達,水と農業形態や農業技術の発達,ため池の役割や水利 権などを取り上げる。また,これからの水と人間の関係を考察する学習活動を取り入 れて指導する。 イ 資源としての水 ここでは,水資源の確保と水の適正利用の重要性と効果的な配分が理解できるよう, 地球上の水と水資源の種類や分布,食 料の輸出入による仮想水の移動と再生されな い地下水の枯渇,世界の水ビジネスについて取り上げる。また,世界と日本の水資源 の現状と課題について考察する学習活動を取り入れて指導する。
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206 第2章 農業科の 各科目 ウ 水の有効利用と水質保全 ここでは,水質を保全し,水資源を有効に利用することの重要性について理解でき るよう,下水道や園芸施設,畜産施設,食品加工施設などからの農業集落排水や下水, 雨水の有効利用の具体的方法及び水質の調査や保全について取り扱う。 〔指導項目〕 (4)水と農林業 ア 水と農地の土壌 イ 水と農業生物の栽培 ウ 水と森林の土壌 (内容の範囲や程度) エ  〔指導項目〕の (4) については,水の動きに伴う肥料や農薬の動きと環境との関わ り,農地と森林の水源涵 かん 養機能及び環境保全への寄与について扱うこと。 (4) 水と農林業 ここでは,農業生物の栽培における水の動きや役割,農地や森林の土壌と水の関係を 理解した上で,農地や森林の水資源を国土保全や環境創造に活用できるようにすること をねらいとしている。 このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう, 〔指導項目〕を指導する。 ① 水と農林業の関係について理解するとともに,関連する技術を身に付けること。 ② 水の農林業に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に解決すること。 ③ 水と農林業の関係について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。 ア 水と農地と土壌 ここでは,農地の土壌が持つ地下水涵養や洪水緩和の機能とメカニズムについて理 解できるよう,水田及び農地における土壌の生成,構造と特徴,土壌水の種類と動き について取り上げ,土壌水の動きに伴う肥料や農薬の動きと環境への影響と土壌及び 土壌水の維持・管理について考察する学習活動を取り入れて指導する。また,台風や 高潮などによる農地への冠水,地盤沈下や地下水への海水の浸入などにより発生する 塩害に伴う農地や農作物への影響と塩害対策について取り上げ指導する。 イ 水と農業生物の栽培 ここでは,農業生物の種類や栽培方法と水の関係について理解できるよう,土壌水 分の吸収と植物体内の水の動き,光合成における水の役割について取り上げ指導する。 ウ 水と森林の土壌 ここでは,森林土壌の持つ水の貯留や流出量調節,水質浄化などの機能とメカニズ ムについて理解できるよう,森林土壌の生成,構造と特徴,森林土壌中の水の動きと 物質移動について取り上げ指導する。
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207 24 水循環 〔指導項目〕 (5)農業水利 ア 利水と治水 イ かんがいと排水 ウ 水利施設 エ 農業用水の多面的機能 (内容の範囲や程度) オ  〔指導項目〕の (5) については,用排水機場や水門など主な水利施設の計画・施 工・維持管理について基礎的な内容を扱うこと。なお,アについては,利水や治水 に関連付けながら,水害や干ばつによる被害とそれらの対策についても扱うこと。 (5) 農業水利 ここでは,水資源の安定的な確保及びその利用と制御が農業生産基盤の重要な要素で あることを理解した上で,利水や治水,水利施設の調査,計画,施工,運用,維持管理 に活用できるようにすることをねらいとしている。 このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう, 〔指導項目〕を指導する。 ① 農業水利について理解するとともに,関連する技術を身に付けること。 ② 農業水利に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に解決すること。 ③ 農業水利について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。 ア 利水と治水 ここでは,利水と治水の意義や役割と自然環境との調和の重要性について理解でき るよう,広域的な環境保全を考慮した利水や治水,水資源の開発と水源,農業用水, 生活用水,環境用水などの用水と水防並びに洪水調整,水害の種類や内容,水害の原 因や要素,水害をもたらした気象事例などを取り上げ指導する。 イ かんがいと排水 ここでは,水田と畑地のかんがいと排水の意義や役割,種類や方式,調査,計画, 施工,運用,維持管理などについて取り上げ指導する。 ウ 水利施設 ここでは, 水利構造物の必要性と自然環境との調和の重要性について理解できるよう, ダムや頭首工,揚水機場と排水機場,用水路と排水路などの水利施設の構造や機能, 意義や役割と,水利施設の調査,計画,施工,運用,維持管理などについて取り扱う。 エ 農業用水の多面的機能 ここでは,農業用水や水田,畑地などの多面的な役割と機能の重要性について理解 できるよう,農業用水の歴史や特徴,農業用水の現状と今後,工業用水,生活用水, 環境用水の機能や用水相互の関係,水の量的な不足や質的な変化への対応などについ て具体的な事例を取り上げ指導する。また,地域の農業用水利施設や水田,畑地の多 面的機能を評価することにより課題を抽出し,これを考察する学習活動を取り入れて 指導する。
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208 第2章 農業科の 各科目 〔指導項目〕 (6)水資源の保全と活用の実践 (内容の範囲や程度) カ  〔指導項目〕の (6) については,水資源の保全と活用に関する実践的な活動を行う こと。 (6) 水資源の保全と活用の実践 ここでは,地域の水循環系について持続的な水資源の保全と活用に関する課題の解決 に主体的,意欲的に取り組むことができるようにすることをねらいとしている。 このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう, 〔指導項目〕を指導する。 ① 水資源の保全と活用について理解するとともに,関連する技術を身に付けること。 ② 水資源の保全と活用について課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に解決 すること。 ③ 水資源の保全と活用について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。 水資源の保全と活用の実践では,国土保全と環境創造のあるべき姿を捉えながら,今 日の農業の在り方や地域農業の実態,地域における水循環の実態などに対応して,水資 源の保全と活用に関する実践的なプロジェクト学習や地域連携活動などを取り入れる。 特に,それらを有機的に学校での学習活動で展開するために,外部機関,例えば,企 業並びに官公庁などの研究機関,大学などと連携を図りながら,地域における水循環の 実態を把握し,今後の水資源の保全と管理の在り方を考察する学習活動を行うことが必 要である。 その際,地域の水源や水源周辺の土地の利用状況,水利施設の保全状況などについて 取り上げ,河川やため池などの水質保全や土地の適正利用の推進,水源を中心とした水 利施設の修復及び再生など,水源地域を守り育む学習活動に地域の農業団体や企業と連 携して取り組み,地域の活性化と環境保護につなげていくようにすることが重要である。
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209 25 造園計画 この科目は,造園の計画と設計について学習する科目であり, 「国土保全や環境創造に 関する分野」に属する科目である。今回の改訂では,これからの造園には,持続可能で多 様な環境や住宅の形態,都市環境の変化に対応した計画と設計についての学習が重要であ ることから内容の充実を図った。また,課題意識をもって学習に臨むことが重要であるこ とから,プロジェクト学習の意義や実践について明確に位置付けた。 1 目 標 農業の見方・考え方を働かせ,実践的・体験的な学習活動を行うことなどを通し て,造園計画に必要な資質・能力を次のとおり育成することを目指す。 (1)造園計画について体系的・系統的に理解するとともに,関連する技術を身に付 けるようにする。 (2)造園計画に関する課題を発見し,農業や農業関連産業に携わる者として合理的 かつ創造的に解決する力を養う。 (3)造園計画について目的や環境に応じた造園空間の創造につながるよう自ら学び, 農業の振興や社会貢献に主体的かつ協働的に取り組む態度を養う。 この科目においては,造園の現状や今日的な課題などを国土保全や環境創造の視点で捉 え,環境問題の解決や快適な生活環境を創造する役割と,造園空間の計画・設計と施工を 関連付けて考察するとともに,造園計画に関するプロジェックト学習等の実践的・体験的 な課題解決学習を通して,造園の計画・設計に必要な資質・能力を育成することをねらい としている。 目標の (1) については,造園計画に関するプロジェクト学習を通して,身近な庭園や公 園,緑地及びその周囲の環境などの造園空間の持つ機能を理解し,目的や環境に応じた計 画の立案,機能美あるデザインを盛り込んだ設計及び正確で美しい設計図の作成に関する 知識と技術を体系的・系統的に理解し,身に付けるようにすることを意味している。 目標の (2) については,環境の創造や環境修復のための造園計画や身近な造園空間の計 画・設計の課題を発見し,造園が果たす社会的な意義と役割を踏まえるとともに,目的や 環境に応じた造園空間を創造する能力と環境への配慮や法令遵守等の職業人としての倫理 観をもって,科学的な根拠などに基づいて創造的に解決する力を養うことを意味している。 目標の (3) については,造園計画の学習を通して,造園が国土保全や環境創造を提供す るという社会的な役割を担っていることを理解し,造園の振興や社会貢献に主体的かつ協 働的に取り組む態度を養うことを意味している。 第1 目標 第25 節 造園計画
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210 第2章 農業科の 各科目 1 内容の構成及び取扱い この科目は,目標に示す資質・能力を身に付けることができるよう, (1) 「造園計画」 とプロジェクト学習, (2) 造園計画の意義と役割, (3) 環境と造園の様式, (4) 造園デザ インと造園製図, (5) 造園の計画・設計, (6) 公園や緑地の計画・設計, (7) 造園計画の 実践の七つの指導項目で,6~8単位程度履修されることを想定し,内容を構成してい る。また,内容を取り扱う際の配慮事項は次のように示されている。 (内容を取り扱う際の配慮事項) ア 緑地環境や造園空間の機能と生活空間での造園の役割について理解できるよう留 意して指導すること。また,プロジェクト学習では見学や実験・実習を通して,科 学的かつ創造的に学習を進め,造園計画に関する実践力が身に付くようにすること。 なお,地域の緑地環境の実態や学科の特色等に応じて,適切な題材を選定すること。 この科目の指導に当たっては,緑地環境や造園空間の機能と造園が果たす社会的な役 割など,造園の現状や今日的な課題などについて関心をもち,造園計画・設計の有意義 さを体験するとともに,緑地環境や造園空間に対する学習意欲を醸成することが大切で ある。 また,造園計画に関するプロジェクト学習を取り入れ,学校庭園をはじめとした緑地 環境における体験的,継続的な観察,実験,調査,記録などの学習活動を通して,造園 計画の特性を理解するよう工夫することも必要である。一方,技術の習熟を図る実践的 な活動と,知識の深化を図る課題探究的な学習活動などを通して,農村の発展や国土保 全,環境創造に応用できる体系的・系統的な知識と技術を身に付けることも重要である。 さらに,造園において自らの職業生活について考えるよう,地域の造園建設業や造園 コンサルタント業などでの就業体験を行うなど,地域産業界との連携を図ることが大切 である。 イ  〔指導項目〕の (1) については,科目学習の導入として扱うこと。また, (7) につ いては, (1) を踏まえ, (2) から (6) までと並行して,又はそれらを学習した後に扱 うこと。 〔指導項目〕の (1) については,課題意識をもって臨むことが重要であることから, 「農業と環境」で習得したプロジェクト学習の方法を踏まえ,造園計画に関するプロ ジェクト学習の意義と役割について明確に位置付け,科目学習の最初に扱い,プロジェ クト学習を活用した学習展開がスムーズに行われることが大切である。 また,内容の (7) については,内容の (1) を踏まえ,内容の (2) から (6) までの学習と並 行して,あるいはその学習の後に,造園施工管理を踏まえた造園計画,植物や自然素材 の特徴を活 い かした造園計画,学校庭園を事例とした造園計画など,身近な緑地環境と関 わりながら主体的,意欲的に取り組むことが大切である。 第2 内容とその取扱い
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211 25 造園計画 2 内容 2 内 容 1に示す資質・能力を身に付けることができるよう,次の〔指導項目〕を指導す る。 〔指導項目〕 (1) 「造園計画」とプロジェクト学習 ア 造園計画に関するプロジェクト学習の意義 イ プロジェクト学習の進め方 (内容の範囲や程度) ア  〔指導項目〕の (1) については,農業科に属する他の科目と関連付けながら科目全 体で科学的かつ創造的に学習を進めるように扱うこと。 (1) 「造園計画」とプロジェクト学習 ここでは, 「造園計画」とプロジェクト学習について,造園計画を科学的に捉え,自 ら学び実践ができるようにすることをねらいとしている。 このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう, 〔指導項目〕を指導する。 ① 造園計画に関するプロジェクト学習の意義や進め方について理解するとともに,関 連する技術を身に付けること。 ② 造園計画に関する課題を発見し,プロジェクト学習により科学的な根拠に基づいて 創造的に解決すること。 ③ 造園計画について自ら学び,プロジェクト学習に必要な情報収集と分析に主体的か つ協働的に取り組むこと。 ア 造園計画に関するプロジェクト学習の意義 ここでは,常に科学的な見方と,自ら課題意識をもち,その課題を解決するための  実践力を身に付けることが重要であることから,造園計画に関するプロジェクト学習 の意義について理解できるよう指導する。 イ プロジェクト学習の進め方 ここでは, 「農業と環境」で習得したプロジェクト学習の方法を踏まえ,課題設定, 計画立案,実施,まとめ(反省と評価)の一連の流れをもとに,造園計画に関する諸 課題を主体的に解決するための具体的な実践事例を取り上げて指導する。 課題設定に当たっては,例えば,統一テーマを「植物や自然素材を活 い かした造園計 画や緑地空間の創造」として示し,グループや個人で具体的な小テーマを設定する方 法が考えられる。なお,課題設定では,地域環境の中で人々にとって快適な環境が創 造できる造園計画のあるべき姿と,それに対する現状の認識から問題点を抽出・整理 し,達成する目標を明確にすることが大切である。 また,設定した課題の解決に向けては,仮説を設定した上で計画を立案し,その計 画に沿って地域の住宅庭園や都市公園,緑地空間の役割について,調査,観察,実験,
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212 第2章 農業科の 各科目 記録などを継続的に実施し,その結果を分析,考察,評価してまとめるなど,主体的 な学習活動を展開する必要がある。なお,学習成果を共有し,取組を評価して次につ なげるなど学習を確かなものにするために発表の機会を設けることが大切である。 〔指導項目〕 (2)造園計画の意義と役割 ア 地球環境と造園 イ 生活環境と緑地環境 ウ 造園計画と造園空間 (内容の範囲や程度) イ  〔指導項目〕の (2) については,造園の目的と計画及びそれに基づく造園空間の創 造と利用,緑地環境の種類,快適な生活環境を創造する造園計画の役割の概要につ いて扱うこと。 (2) 造園計画の意義と役割 ここでは,造園空間の創造と利用における造園計画の意義を理解し,快適な生活環境 を創造する造園計画に関心を持つことができるようにすることをねらいとしている。 このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう, 〔指導項目〕を指導する。 ① 造園計画の意義や緑地環境の役割について理解するとともに,関連する技術を身に 付けること。 ② 造園計画に関する課題を発見し,造園に係る様々な学習により科学的な根拠に基づ いて創造的に解決すること。 ③ 造園計画について自ら学び,造園の計画・設計に必要な情報収集と分析に主体的か つ協働的に取り組むこと。 ア 地球環境と造園 ここでは,地球環境の問題,自然の保全,修復,再生について取り上げる。緑地と 環境問題の関わりを考察し,地球環境の課題と関連させた学習活動を取り入れる。 イ 生活環境と緑地環境 ここでは,生活環境と緑地環境の心理的効果,生徒の発達段階と緑地環境の関わり について取り上げる。景観の提供,微気象の調節,やすらぎの場の提供などの緑地の 役割を理解し,造園の計画や設計に興味と関心がもてる学習活動を取り入れる。 ウ 造園計画と造園空間 ここでは,造園計画の目的と方法,造園の領域,造園計画の目標,造園計画の方法, 造園空間の創造と利用について取り上げる。造園空間の創造における造園計画の意義 を理解し,造園の計画や設計における課題について考察する学習活動を取り入れる。
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213 25 造園計画 〔指導項目〕 (3)環境と造園の様式 ア 我が国の緑地環境と造園様式 イ 外国の緑地環境と造園様式 (内容の範囲や程度) ウ  〔指導項目〕の (3) については,我が国と外国の主な造園様式と実際の造園との関 わり,時代の変遷並びにそれを取り巻く自然環境,文化的環境及び社会的環境で捉 え,総合的に扱うこと。 (3) 環境と造園の様式 ここでは,主な造園様式に関する知識を習得し,造園の様式とそれを取り巻く自然環 境,文化的環境及び社会的環境との関係について理解できるようにすることをねらいと している。 このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう, 〔指導項目〕を指導する。 ① 緑地環境と造園様式について,我が国と外国のそれぞれの地域の自然環境,文化環 境及び社会的環境と関連付けて理解するとともに,関連する技術を身に付けること。 ② 緑地環境や造園様式に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づき創造的に解決す ること。 ③ 緑地環境や造園様式について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。 ア 我が国の緑地環境と造園様式 ここでは,我が国の緑地環境と造園様式の歴史,現代の緑地環境と造園について取 り上げる。日本庭園の様式,歴史及びそれを取り巻く環境について考察し,主な造園 様式や造園様式と自然環境,文化的環境及び社会的環境を関連付けた学習活動を取り 入れる。また,庭園や造園作品の鑑賞を通して,空間の構成と造園技術との関わり方 を考察する学習活動を取り入れる。 イ 外国の緑地環境と造園様式 ここでは,アジアの造園,ヨーロッパの造園,アメリカの造園,日本で活用されて いる外国の造園様式について取り上げる。外国の主な造園様式の特徴を考察するとと もに,それぞれの国の造園様式と歴史や自然環境,文化的環境及び社会的環境と関連 付けた学習活動を取り入れる。 〔指導項目〕 (4)造園デザインと造園製図 ア 造園デザイン イ 造園製図 (内容の範囲や程度) エ  〔指導項目〕の (4) については,造園デザインと身近な造園空間との関わり,図面 の種類や製図技術の基礎的な内容について総合的に扱うこと。
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214 第2章 農業科の 各科目 (4) 造園デザインと造園製図 ここでは,正確で美しい各種の設計図の作成に必要な知識と技術を習得し,造園製図 は造園の計画や設計内容を記録,伝達する技術であることを理解できるようにすること をねらいとしている。 このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう, 〔指導項目〕を指導する。 ① 造園デザインと造園製図について理解するとともに, 関連する技術を身に付けること。 ② 造園デザインや造園製図に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に 解決すること。 ③ 造園デザインや造園製図の技術について自ら学び, 主体的かつ協働的に取り組むこと。 ア 造園デザイン ここでは,造園デザインの手法,造園デザイン技法について取り上げる。デザイン の技法,基礎デザインの要素,色使いなど造園デザインに関する知識と技術を学習し, 美的構成の原理を考察する学習活動を取り入れる。 イ 造園製図 ここでは,図面の種類,製図技術について取り上げる。造園製図に関する各種の製 図法,基本構想図や実施設計図など図面の種類及び図面の描き方や表示の仕方,図面 の縮小や拡大について,製図実習と関わらせた学習活動を取り入れる。 〔指導項目〕 (5)造園の計画・設計 ア 住宅庭園 イ 屋上・室内・壁面緑化 ウ その他の造園  (内容の範囲や程度) オ  〔指導項目〕の (5) については,様々な造園の調査,構想,地割・動線及び計画・ 設計や機能,構成の基礎的な内容を扱うこと。 (5) 造園の計画・設計 ここでは,調査,構想など庭園の計画・設計に関して実習するとともに,配置・配植 の重点など庭園美化の方法について考察ができるようにすることをねらいとしている。 このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう, 〔指導項目〕を指導する。 ① 庭園等の計画・設計に係る技術について理解するとともに,関連する技術を身に付 けること。 ② 庭園等の計画・設計に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に解決 すること。 ③ 庭園等の計画・設計について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。 ア 住宅庭園
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215 25 造園計画 ここでは,庭園の機能と環境条件,住宅庭園の計画・設計,住宅庭園の構成につい て取り上げ,個人住宅庭園及び集合住宅庭園の計画・設計に必要な庭園の構成と機能 について理解する学習活動を取り入れる。個人住宅庭園では,計画・設計に関する知 識と技術を習得し,構成及び機能について考察する学習活動を取り入れる。集合住宅 庭園では個人住宅庭園で扱う施設を活用し,集合住宅庭園の計画・設計に関する知識 と技術を習得し,構成及び機能について考察する学習活動を取り入れる。 イ 屋上・室内・壁面緑化 ここでは,機能と環境条件,計画・設計,構成について取り上げる。特殊基盤緑化 の一つである屋上・室内・壁面緑化の計画・設計に必要な庭園の構成と機能について 理解し,計画・設計に関する知識と技術を習得する学習活動を取り入れる。 ウ その他の造園 ここでは,学校庭園,公共空間の庭園,景観の計画・設計,自然環境の修復につい て取り上げる。その他の庭園として学びの場である学校庭園,公共空間の庭園の計 画・設計に必要な庭園の構成と機能について理解する学習活動を取り入れる。景観の 計画・設計については,樹木の成長と景観に及ぼす影響について考察する学習活動を 取り入れる。自然環境の修復については,破壊,損失した環境の修復や現存する自然 環境の維持について考察する学習活動を取り入れる。 〔指導項目〕 (6)公園や緑地の計画・設計 ア 都市緑地 イ 農村緑地 ウ 自然公園,緑地 (内容の範囲や程度) カ  〔指導項目〕の (6) については,緑地や公園の機能,特徴や種類,都市公園法によ る公園の計画・設計の基礎的な内容を扱うこと。なお,イ及びウについては,設計 を扱わないことができること。 (6) 公園や緑地の計画・設計 ここでは,公園,緑地の役割,環境条件など公園や緑地の計画・設計に関する知識と 技術を習得し,公園,緑地の機能について理解するととともに,生態系を重視した環境 を創造することの大切さについて考察ができるようにすることをねらいとしている。 このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう, 〔指導項目〕を指導する。 ① 公園,緑地の計画 ・ 設計について理解するとともに,関連した技術を身に付けること。 ② 公園,緑地の計画・設計に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に 解決すること。 ③ 公園,緑地の計画・設計について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。 ア 都市緑地
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216 第2章 農業科の 各科目 ここでは,都市緑地の機能と都市公園の種類,都市公園の計画・設計について取り 上げる。都市緑地の役割と機能について学習し,各種の都市公園の計画・設計に関す る知識と技術を習得するための学習活動を取り入れる。また,多くの人々が快適に利 用できる都市公園の計画・設計について考察する学習活動を取り入れる。 イ 農村緑地 ここでは,農村緑地の特徴,種類と機能,計画について取り上げる。自然の生態系 を重視した緑地の計画 ・ 設計に関する知識と技術を習得し,景観形成機能やレクリエー ション資源機能など農村緑地の役割と機能について考察する学習活動を取り入れる。 ウ 自然公園,緑地 ここでは,我が国の自然公園,緑地,外国の自然公園や緑地について取り上げる。 日本や外国の自然公園の種類や内容及び環境アセスメントについて学習し,生態系と 生物多様性の維持を重視した自然公園の計画について考察する学習活動を取り入れる。 〔指導項目〕 (7)造園計画の実践 (内容の範囲や程度) キ  〔指導項目〕の (7) については,造園計画に関する実践的な活動を行うこと。 (7) 造園計画の実践 ここでは,住宅庭園や公園,学校庭園などの身近な造園空間の計画・設計に取り組む 活動を行い,造園計画に関する課題の解決に主体的,意欲的に取り組むことができるよ うにすることをねらいとしている。 このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう, 〔指導項目〕を指導する。 ① 造園計画の実践について理解するとともに,関連する技術を身に付けること。 ② 造園計画の実践に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に解決する  こと。 ③ 造園計画の実践について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。 造園計画の実践では,国土保全や環境創造のあるべき姿を捉えながら,今日の農業の 在り方や地域農業の実態,地域特有の都市環境や住宅環境などに対応して,住宅庭園や 学校庭園,都市公園など身近な緑地環境の計画や設計に関する実践的なプロジェクト学 習や地域活動などを取り入れる。 特に,それらを有機的に学校での学習活動で展開するために,外部機関,例えば,企 業並びに官公庁などの研究機関,大学などと連携を図りながら,地域における公園や緑 地の実態を把握し,今後の都市緑地の計画や設計の在り方を考察する学習活動を行うこ とが重要である。  その際,持続可能で多様な環境や住宅の形態や都市環境の変化への対応,国土保全, 地域の環境創造など,幅広い視点をもって創造的に造園計画や設計を実践する学習活動 に取り組むことが大切である。
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217 26 造園施工 管理 この科目は,造園の施工と管理,造園空間の構成に使用する造園施工とその材料につい て学習する科目であり, 「国土保全や環境創造に関する分野」に属する科目である。今回 の改訂では,これからの造園施工と管理には,持続可能で多様な環境や住宅の形態,都市 環境の変化に対応し,造園の持つ多面的な特質を活 い かした造園施工と管理についての学習 が重要であることから内容の充実を図った。さらに,従前の「造園技術」の造園土木施工, 工作物の管理と合理的な施工管理及び「環境緑化材料」の岩石材料と各種材料を整理統合 し,植物を除く造園材料の種類や特性から活用に至るまで系統的に造園施工管理を学習で きるようにした。また,課題意識をもって学習に臨むことが重要であることから,プロジ ェクト学習の意義や実践について明確に位置付けた。  1 目 標 農業の見方・考え方を働かせ,実践的・体験的な学習活動を行うことなどを通し て,造園施工管理に必要な資質・能力を次のとおり育成することを目指す。 (1)造園施工管理について体系的・系統的に理解するとともに,関連する技術を身 に付けるようにする。 (2)造園施工管理に関する課題を発見し,農業や農業関連産業に携わる者として合 理的かつ創造的に解決する力を養う。 (3)造園施工管理について目的や環境に応じた合理的な施工と維持管理につながる よう自ら学び,農業の振興や社会貢献に主体的かつ協働的に取り組む態度を養う。 この科目においては,造園施工管理の特色や役割など,造園の施工及び管理の現状や今 日的な課題などを国土保全や環境創造の視点で捉え,環境問題の解決や快適な生活環境を 創造する役割と,造園空間の計画・設計と施工を相互に考察するとともに,造園施工管理 に関するプロジェクト学習等の実践的・体験的な課題解決学習を通して,造園の施工管理 に必要な資質・能力を育成することをねらいとしている。 目標の (1) については,造園施工管理に関するプロジェクト学習を通して,目的や環境 に応じた施工管理,合理的かつ安全な施工や環境に配慮した管理に関する知識と技術を体 系的・系統的に理解し,身に付けるようにすることを意味している。 目標の (2) については,造園施工管理に関する課題を発見し,造園が果たす社会的な意 義と役割を踏まえるとともに,造園を合理的に施工,維持管理するとともに造園施工材料 を適切に取り扱う能力と環境への配慮や法令遵守等の職業人としての倫理観をもって,科 学的な根拠などに基づいて創造的に解決する力を養うことを意味している。 目標の (3) については,造園施工管理の学習を通して,造園施工で使用する材料などは 自然材料が中心であるため,材料の特性を見極めた施工法などを理解し,造園の振興や社 会貢献に主体的かつ協働的に取り組む態度を養うことを意味している。 第1 目標 第26 節 造園施工管理
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218 1 内容の構成及び取扱い  この科目は,目標に示す資質・能力を身に付けることができるよう, (1) 「造園施工管 理」とプロジェクト学習, (2) 造園施工管理の意義と役割, (3) 造園材料の種類と特性, (4) 造園土木施工, (5) 施設施工管理, (6) 施工計画と工事の管理, (7) 造園施工管理の実 践の七つの指導項目で,4~6単位程度履修されることを想定し,内容を構成している。 また,内容を取り扱う際の配慮事項は次のように示されている。 (内容を取り扱う際の配慮事項) ア 造園や造園施工材料の特質及び合理的な施工管理方法について理解できるよう留 意して指導すること。また,プロジェクト学習では見学や実験・実習を通して,科 学的かつ創造的に学習を進め,造園施工管理に関する実践力が身に付くようにする こと。なお,地域の緑地環境の実態や学科の特色等に応じて,適切な題材を選定す ること。  この科目の指導に当たっては,緑地環境や造園空間の機能と造園が果たす社会的な役 割など,造園の現状や課題,造園や造園材料の特質と合理的な施工や管理など,造園施 工・管理の現状や今日的な課題などについて関心をもち,造園施工・管理の有意義さを 体験し,造園施工管理技術に対する意欲を醸成することが大切である。  また,造園施工管理に関するプロジェクト学習を取り入れ,学校庭園をはじめとした 緑地環境における体験的,継続的な観察,実験,調査,記録などの学習活動を通して, 造園施工材料の特性を理解する必要がある。一方,技術の習熟を図る実践的な活動と, 知識の深化を図る課題探究的な学習活動などを通して,農村の発展や国土保全,環境創 造に応用できる体系的・系統的な知識と技術を身に付けることも重要である。  さらに,造園において自らの職業生活について考えるよう,地域の造園建設業や石材 加工業,建材業などでの就業体験活動を行うなど,地域産業界との連携を図ることが大 切である。 イ  〔指導項目〕の (1) については,科目学習の導入として扱うこと。また, (7) につ いては, (1) を踏まえ, (2) から (6) までと並行して,又はそれらを学習した後に扱 うこと。   〔指導項目〕の (1) については,課題意識をもって臨むことが重要であることから, 「農業と環境」で習得したプロジェクト学習の方法を踏まえ,造園施工管理に関するプ ロジェクト学習の意義と役割について明確に位置付け,科目学習の最初に扱い,プロジ ェクト学習を活用した学習展開がスムーズに行われることが大切である。  また,内容の (7) については,内容の (1) を踏まえ,内容の (2) から (6) までの学習と並 行して,あるいはその学習の後に, 「造園計画」と関連させ,学校庭園など身近な緑地 環境と関わらせながら主体的,意欲的に取り組むことができるようにすることが大切で ある。 第2 内容とその取扱い 第2章 農業科の 各科目
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219 26 造園施工 管理 2 内容 2 内 容 1に示す資質・能力を身に付けることができるよう,次の〔指導項目〕を指導す る。 〔指導項目〕 (1) 「造園施工管理」とプロジェクト学習 ア 造園施工管理に関するプロジェクト学習の意義 イ プロジェクト学習の進め方 (内容の範囲や程度) ア  〔指導項目〕の (1) については,農業科に属する他の科目と関連付けながら科目全 体で科学的かつ創造的に学習を進めるように扱うこと。 (1) 「造園施工管理」とプロジェクト学習 ここでは, 「造園施工管理」とプロジェクト学習について,造園施工管理を科学的に 捉え,自ら学び実践ができるようにすることをねらいとしている。 このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう, 〔指導項目〕を指導する。 ① 造園施工管理に関するプロジェクト学習の意義や進め方について理解するとともに, 関連する技術を身に付けること。 ② 造園施工管理に関する課題を発見し,プロジェクト学習により科学的な根拠に基づ いて創造的に解決すること。 ③ 造園施工管理について自ら学び,プロジェクト学習に必要な情報収集と分析に主体 的かつ協働的に取り組むこと。 ア 造園施工管理に関するプロジェクト学習の意義 ここでは,常に科学的な見方と,自ら課題意識をもち,その課題を解決するための 実践力を身に付けることが重要であることから,造園施工管理に関するプロジェクト 学習の意義について理解できるよう指導する。 イ プロジェクト学習の進め方 ここでは, 「農業と環境」で習得したプロジェクト学習の方法を踏まえ,課題設定, 計画立案,実施,まとめ(反省と評価)の一連の流れをもとに,造園施工管理に関す る諸課題を主体的に解決するための具体的な実践事例を取り上げて指導する。 課題設定に当たっては,例えば,統一テーマを「自然素材を活 い かした緑地空間の施 工と管理」として示し,グループや個人で具体的な小テーマを設定する方法が考えら れる。なお,課題設定では,人々にとって快適な造園空間の創出ができる造園施工管 理のあるべき姿と,それに対する現状の認識から問題点を抽出・整理し,達成する目 標を明確にすることが大切である。  また,設定した課題の解決に向けては,仮説を設定した上で計画を立案し,その計 画に沿って地域の緑地や造園空間の施工と管理について,調査,観察,実験,記録な
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220 どを継続的に実施し,その結果を分析,考察,評価してまとめるなど,主体的な学習 活動を展開する必要がある。なお,学習成果を共有し,取組を評価して次につなげる など学習を確かなものにするために発表の機会を設けることが大切である。 〔指導項目〕 (2)造園施工管理の意義と役割 ア 社会環境と造園施工管理 イ 造園施工管理の意義 ウ 造園施工管理の特色と役割 (内容の範囲や程度) イ  〔指導項目〕の (2) については,緑地環境,造園,造園施工と管理の現状,適切な 施工材料の必要性,施工管理の技術,施工管理の課題の概要について扱うこと。 (2) 造園施工管理の意義と役割 ここでは,造園施工管理が総合的な技術であることを理解するとともに,造園空間の 創出と維持管理を図る造園の施工と管理に関心を持つことができるようにすることをね らいとしている。 このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう, 〔指導項目〕を指導する。 ① 造園施工管理の意義や特色と役割について理解するとともに,関連する技術を身に 付けること。 ② 造園施工管理に関する課題を発見し,造園に関わる様々な学習により科学的な根拠 に基づいて創造的に解決すること。 ③ 造園施工管理について自ら学び,必要な情報収集と分析に主体的かつ協働的に取り 組むこと。 ア 社会環境と造園施工管理 ここでは,日本庭園の伝統,西洋庭園の影響,地域の自然素材を活 い かした造園施工 管理,緑地環境保護,文化財保護について取り上げる。現代社会における造園の役割, 造園施工管理の現状と課題について考察する学習活動を取り入れる。 イ 造園施工管理の意義 ここでは,住宅庭園,街路樹と道路緑化,学校庭園など,造園工事について具体的 な事例について取り上げる。造園施工管理の意義について興味と関心を持つことがで きる学習活動を取り入れる。 ウ 造園施工管理の特色と役割 ここでは,造園施工と管理の現状,施工後の管理,施工現場の管理,適切な施工材 料の選択,施工管理の技術,施工管理の課題について取り上げる。造園施工管理の現 状と役割,課題について考察する学習活動を取り入れる。 第2章 農業科の 各科目
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221 26 造園施工 管理 〔指導項目〕 (3)造園材料の種類と特性 ア 石材 イ 木材,竹材 ウ 金属材料 エ コンクリート材料 オ コンクリート二次製品 カ 窯製品 キ その他の造園材料 (内容の範囲や程度) ウ  〔指導項目〕の (3) については,造園施工材料の種類と特性から造園空間に見合っ た造園施工材料の選定及び施工管理に至るまで系統的に扱うこと。 (3) 造園材料の種類と特性 ここでは,造園空間を構成するために必要な造園施工材料の特性を理解し,造園空間 の目的や地域環境の状況に応じた材料の選択と取扱い,育成に関する知識と技術の習得 ができるようにすることをねらいとしている。 このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう, 〔指導項目〕を指導する。 ① 造園材料と施工管理について理解するとともに,関連する技術を身に付けること。 ② 造園材料と施工管理に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に解決 すること。 ③ 造園材料と施工管理について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。 ア 石材 ここでは,岩石の分類,岩石の種類と特徴,庭石の分類と特質,庭石の産地,土 木・建築用石材,石造製品について取り上げる。自然石材については,石材の特性に ついて考察した学習活動を取り入れる。 イ 木材,竹材 ここでは,木材の分類,木材の特性,製材と規格,防腐処理,竹材の種類と特性, 竹材の規格と用途について取り上げる。木材や竹材の特性がどのように材料として活 かされるのか考察する学習活動を取り入れる。 ウ 金属材料 ここでは,金属材料の種類と特性,鉄鋼製品と用途について取り上げる。金属材料 の特性がどのように材料として活かされるのか考察する学習活動を取り入れる。 エ コンクリート材料 ここでは,セメントの種類と特性,コンクリートの種類と特性を取り上げる。セメ ントの種類と特性,造園空間の目的や施工に応じたセメントの選択,取扱いについて 考察する学習活動を取り入れる。
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222 オ コンクリート二次製品 ここでは,排水用資材,舗装材,組積材について取り上げる。コンクリート製品の 種類や特性,用途について考察する学習活動を取り入れる。 カ 窯製品 ここでは,れんが,瓦,テラコッタについて取り上げる。窯製品の種類と特性がど のように材料として活かされるのか考察する学習活動を取り入れる。 キ その他の造園材料 ここでは,枝材,繊維材,根鉢固定資材,根巻き,幹巻き材,コンテナについて取 り上げる。枝材や繊維材等の種類と特性,造園空間の目的や施工に応じた材料の選択 や取扱いについて学習するとともに,新しい造園材料の選定について,材料の特性や 材料導入の効果について考察する学習活動を取り入れる。 〔指導項目〕 (4)造園土木施工 ア 敷地造成と土壌改良 イ コンクリート工 ウ 給排水工 (内容の範囲や程度) エ  〔指導項目〕の (4) については,造園土木施工で使用する機械,器具について基礎 的な内容を扱うとともに,合理的かつ安全な機械,器具の使用方法について扱うこ と。 (4) 造園土木施工 ここでは,造園における土木施工の特質と各工事に関係する法規や必要な資格につい て理解するとともに,バリアフリーやユニバーサルデザインを考慮した施工に関する知 識と技術の習得ができるようにすることをねらいとしている。 このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう, 〔指導項目〕を指導する。 ① 土木施工の技術について理解するとともに,関連する技術を身に付けること。 ② 土木施工の技術に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に解決する こと。 ③ 土木施工の技術について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。 ア 敷地造成と土壌の改良 ここでは,造成計画,切土と盛土,造成工と土壌改良について取り上げる。 敷地 の造成においては,植物の生育に適する環境について考察する学習活動を取り入れる。 さらに,基盤の造成においては,バリアフリーやユニバーサルデザインに配慮した 施工法について考察する学習活動を取り入れる。 イ コンクリート工 ここでは,コンクリートの特性,コンクリートの配合,コンクリートの施工,鉄筋 第2章 農業科の 各科目
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223 26 造園施工 管理 コンクリート工,コンクリート塀について取り上げる。造園空間と調和したコンク リート構造物の施工やコンクリートの配合割合等について考察する学習活動を取り入 れる。 ウ 給排水工 ここでは,給水工,排水工について取り上げる。工事及び付属施設の工事と水道法 や下水道法に基づいた給排水工について考察する学習活動を取り入れる。 〔指導項目〕 (5)施設施工管理 ア 園路・広場工 イ 水景施設工 ウ 庭園施設工 エ 公園施設工 オ 工作物の管理 カ 景観の管理 (内容の範囲や程度) オ  〔指導項目〕の (5) については,施工に必要な機械,器具について基礎的な内容を 扱うとともに,工作物の補修などの維持管理及び造園の目的に沿った景観の維持管 理について扱うこと。 (5) 施設施工管理 ここでは,施設施工の特質と各工事に関係する技術,法規や必要な資格,工作物の維 持管理及び目的に沿った景観の維持管理について理解ができるようにすることをねらい としている。 このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう, 〔指導項目〕を指導する。 ① 施設施工管理や施設施工の材料について理解するとともに,関連する技術を身に付 けること。 ② 施設施工管理や施設施工の材料に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創 造的に解決すること。 ③ 施設施工管理や施設施工の材料について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこ と。 ア 園路・広場工 ここでは,園路・広場の種類,園路のこう配,園路の幅員,階段,自転車道,歩道, 車道,広場,舗装工について取り上げる。庭園や公園の利用の目的に応じた効果的な 園路や広場の施工について考察する学習活動を取り入れる。 イ 水景施設工 ここでは,池泉工,西洋庭園水景施設について取り上げる。庭園や公園の利用の目 に応じた効果的な水景施設工について考察する学習活動を取り入れる。
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224 ウ 庭園施設工 ここでは,石の施工,垣の施工について取り上げる。庭園を構成している庭園施設 工の実習を通じて,施設の目的と造園空間における構成について考察する学習活動を 取り入れる。 エ 公園施設工 ここでは,運動施設工,運動施設の舗装,遊戯施設工,休養施設工,修景施設工, 管理施設工について取り上げる。公園を構成している園路など庭園施設工の実習を通 じて,施設の目的と造園空間における構成について考察する学習活動を取り入れる。 オ 工作物の管理 ここでは,園路・広場,コンクリート構造物,鉄製工作物,木製工作物について取 り上げる。都市公園法などに基づいた管理,各種の造園工作物の点検,補修など維持 管理について考察する学習活動を取り入れる。 カ 景観の管理 ここでは,公園,庭園内の景観,眺望景観,借景,保全緑地の植生景観,風景保護 について取り上げる。造園空間の目的に沿った景観の保護,育成及び維持管理につい て考察する学習活動を取り入れる。 〔指導項目〕 (6)施工計画と工事の管理 ア 工程管理 イ 品質管理 ウ 安全管理 (内容の範囲や程度) カ  〔指導項目〕の (6) については,実際の工事を想定した施工計画と工事の管理を関 連付けながら,工程管理,安全管理,品質管理に関する基礎的な内容を扱うこと。 (6) 施工計画と工事の管理 ここでは,造園の施工と管理を合理的かつ適切に進めるために,造園空間の施工と管 理は適切な工程管理と安全管理,品質管理が重要であることを理解ができるようにする ことをねらいとしている。 このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう, 〔指導項目〕を指導する。 ① 工程管理,安全管理,品質管理について理解するとともに,関連する技術を身に付 けること。 ② 工程管理,安全管理,品質管理に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創 造的に解決すること。 ③ 工程管理,安全管理,品質管理について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこ と。 第2章 農業科の 各科目
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225 26 造園施工 管理 ア 工程管理 ここでは,工程管理の目的,方法,工程表について取り上げる。具体的な造園工事 の事例から,適切に工程管理が行われているか考察する学習活動を取り入れる。 イ 品質管理 ここでは,品質管理の目的,方法,効果について取り上げる。具体的な造園工事の 事例から,品質管理の必要性について考察する学習活動を取り入れる。 ウ 安全管理 ここでは,安全管理の目的,方法,効果について取り上げる。安全な施工計画や管 理計画について具体的事象と比較しながら考察する学習活動を取り入れる。 〔指導項目〕 (7)造園施工管理の実践 (内容の範囲や程度) キ  〔指導項目〕の (7) については,造園施工管理に関する実践的な活動を行うこと。 (7) 造園施工管理の実践 ここでは,住宅や公園,学校などの身近な造園空間の施工管理に取り組む活動を行い, 造園施工管理に関する課題の解決に主体的,意欲的に取り組むことができるようにする ことをねらいとしている。 このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう, 〔指導項目〕を指導する。 ① 造園施工管理の実践について理解するとともに,関連する技術を身に付けること。 ② 造園施工管理の実践に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に解決 すること。 ③ 造園施工管理の実践について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。 造園施工管理の実践では,国土保全や環境創造のあるべき姿を捉えながら,今日の農 業の在り方や地域農業の実態,地域特有の都市環境や住宅環境などに対応して,住宅庭 園や学校庭園,都市公園など身近な緑地環境に係る造園施工や管理に関する実践的なプ ロジェクト学習や地域活動などを取り入れる。 特に,それらを有機的に学校での学習活動で展開するために,外部機関,例えば,企 業並びに官公庁などの研究機関,大学などと連携を図りながら,地域における公園や緑 地の実態を把握し,今後の都市緑地の施工や管理の在り方を考察する学習活動を行うこ とが重要である。 その際,持続可能で多様な環境や住宅の形態や都市環境の変化への対応,国土保全, 地域の環境創造など,幅広い視点をもって創造的に造園施工や管理を実践する学習活動 に取り組むことが大切である。
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226 この科目は,造園の植栽施工と管理,造園空間の構成に使用する植物材料について学習 する科目であり, 「国土保全や環境創造に関する分野」に属する科目である。今回の改訂 では,これからの造園の植栽では,持続可能で多様な環境や住宅の形態や都市環境の変化 に対応し,造園の持つ多面的な特質を活 い かした造園植栽についての学習が重要であること から内容の充実を図った。さらに,従前の「造園技術」の造園植栽施工と植物の管理及び 「環境緑化材料」の植物材料を整理統合し,植物材料の種類や特性から植物材料の活用に 至るまで系統的に造園植栽を学習できるようにした。また,課題意識をもって学習に臨む ことが重要であることから,プロジェクト学習の意義や実践について明確に位置付けた。 1 目 標 農業の見方・考え方を働かせ,実践的・体験的な学習活動を行うことなどを通し て,造園植栽に必要な資質・能力を次のとおり育成することを目指す。 (1)造園植栽について体系的・系統的に理解するとともに,関連する技術を身に付 けるようにする。 (2)造園植栽に関する課題を発見し,農業や農業関連産業に携わる者として合理的 かつ創造的に解決する力を養う。 (3)造園植栽について目的や環境に応じた合理的な植栽につながるよう自ら学び, 農業の振興や社会貢献に主体的かつ協働的に取り組む態度を養う。 この科目においては,造園植栽の特色や役割など,植栽施工及び管理の現状や課題など を国土保全や環境創造の視点で捉え,環境問題の解決や快適な生活環境を創造する役割と, 造園空間の計画・設計と植栽の施工や管理を相互に考察するとともに,造園植栽に関する プロジェクト学習等の実践的・体験的な課題解決学習を通して,造園植栽に必要な資質・ 能力を育成することをねらいとしている。 目標の (1) については,造園植栽に関するプロジェクト学習を通して,造園空間の創造 に必要な材料の特質や役割を理解し,造園植栽と造園計画・設計や造園施工管理と関連さ せながら,植物の特性を活 い かした植栽施工や景観に配慮した植栽管理に関する知識と技術 を体系的・系統的に理解し,身に付けるようにすることを意味している。 目標の (2) については,造園植栽に関する課題を発見し,造園が果たす社会的な意義と役 割を踏まえるとともに,造園にかかる植栽について合理的に施工,維持管理するとともに, 植栽材料を適切に取り扱う能力と環境への配慮や法令遵守等の職業人として知識と倫理観 をもって,科学的な根拠などに基づいて創造的に解決する力を養うことを意味している。 目標の (3) については,造園植栽の学習を通して,植栽材料の特性を見極めた施工法な どを理解し,造園の振興や社会貢献に主体的かつ協働的に取り組む態度を養うことを意味 している。 第1 目標 第27 節 造園植栽 第2章 農業科の 各科目
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227 27 造園植栽 1 内容の構成及び取扱い  この科目は,目標に示す資質・能力を身に付けることができるよう, (1) 「造園植栽」 とプロジェクト学習, (2) 造園植栽の意義と役割, (3) 植物材料の種類と特性, (4) 植栽 計画, (5) 造園植栽施工, (6) 造園植栽管理, (7) 造園植栽の実践の七つの指導項目で, 4~6単位程度履修されることを想定し,内容を構成している。また,内容を取り扱う 際の配慮事項は次のように示されている。 (内容を取り扱う際の配慮事項) ア 造園や植物材料の特質及び合理的な造園植栽の施工と管理方法について理解でき るよう留意して指導すること。また,プロジェクト学習では観察や実験・実習を通 して,科学的かつ創造的に学習を進め,造園植栽に関する実践力が身に付くように すること。なお,地域の緑地環境の実態や学科の特色等に応じて,適切な題材を選 定すること。  この科目の指導に当たっては,緑地環境や造園空間の機能と造園が果たす社会的な役 割など,造園の現状や課題,造園や造園材料の特質と合理的な施工や管理など,造園植 栽の現状や今日的な課題などについて関心をもち,造園植栽技術に対する意欲を醸成す ることが大切である。  また,造園植栽に関するプロジェクト学習を取り入れ,学校庭園をはじめとした緑地 環境における体験的,継続的な観察,実験,調査,記録などの学習活動を通して,植栽 材料の特性を理解することが必要である。一方,技術の習熟を図る実践的な活動と,知 識の深化を図る課題探究的な学習活動などを通して,農村の発展や国土保全,環境創造 に応用できる体系的・系統的な知識と技術を身に付けることも重要である。  さらに,造園において自らの職業生活について考えるよう,地域の造園建設業や植木 生産農業経営者や草花販売業などでの就業体験を行うなど,地域産業界との連携を図る ことが大切である。 イ  〔指導項目〕の (1) については,科目学習の導入として扱うこと。また, (7) につ いては, (1) を踏まえ, (2) から (6) までと並行して,又はそれらを学習した後に扱 うこと。   〔指導項目〕の (1) については,課題意識をもって臨むことが重要であることから, 「農業と環境」で学習したプロジェクト学習の方法を踏まえ,造園植栽に関するプロジ ェクト学習の意義と役割について明確に位置付け,科目学習の最初に扱い,プロジェク ト学習を活用した学習展開がスムーズに行われることが大切である。  また,内容の (7) については,内容の (1) を踏まえ,内容の (2) から (6) までの学習と並 行して,あるいはその学習の後に, 「造園計画」と関連させ,学校庭園など身近な緑地 環境と関わらせながら主体的,意欲的に取り組むことができるようにすることが大切で ある。 第2 内容とその取扱い
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228 2 内容 2 内 容 1に示す資質・能力を身に付けることができるよう,次の〔指導項目〕を指導す る。 〔指導項目〕 (1) 「造園植栽」とプロジェクト学習 ア 造園植栽に関するプロジェクト学習の意義 イ プロジェクト学習の進め方 (内容の範囲や程度) ア  〔指導項目〕の (1) については,農業に属する他の科目と関連付けながら科目全体 で科学的かつ創造的に学習を進めるように扱うこと。 (1) 「造園植栽」とプロジェクト学習 ここでは, 「造園植栽」とプロジェクト学習について,造園植栽を科学的に捉え,自 ら学び実践ができるようにすることをねらいとしている。 このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう, 〔指導項目〕を指導する。 ① 造園植栽に関するプロジェクト学習の意義や進め方について理解するとともに,関 連する技術を身に付けること。 ② 造園植栽に関する課題を発見し,プロジェクト学習により科学的な根拠に基づいて 創造的に解決すること。 ③ 造園植栽について自ら学び,プロジェクト学習に必要な情報収集と分析に主体的か つ協働的に取り組むこと。 ア 造園植栽に関するプロジェクト学習の意義  ここでは,人間生活と造園,造園植栽と造園施工管理,造園計画の関わりについて 取り上げる。造園は,人間生活と大きく関わりがあり,常に科学的な見方と,自ら課 題意識をもち,課題解決のための実践力が必要であることを理解する学習活動を取り 入れる。 イ プロジェクト学習の進め方 ここでは, 「農業と環境」で習得したプロジェクト学習の方法を踏まえ,課題設定, 計画,立案,実施,まとめ(反省と評価)の一連の流れをもとに,造園植栽に関する 諸課題を主体的に解決するための具体的な実践事例を取り上げて指導する。 課題設定に当たっては,例えば,統一テーマを「植物の地域性を活 い かした緑地空間 の植栽」として示し, グループや個人で具体的な小テーマを設定する方法が考えられる。 なお,課題設定では,地域環境と調和した造園空間の創出ができる造園植栽のある べき姿と,それに対する現状の認識から問題点を抽出・整理し,達成する目標を明確 にすることが大切である。 また,設定した課題の解決に向けては,仮説を設定したうえで計画を立案し,その 第2章 農業科の 各科目
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229 27 造園植栽 計画に沿って地域の植物を用いた庭園や都市公園の植栽について,調査,観察,実験, 記録などを継続的に実施し,その結果を分析,考察,評価してまとめるなど,主体的 な学習活動を展開する必要がある。なお,学習成果を共有し,取組を評価して次につ なげるなど学習を確かなものにするために発表の機会を設けることが大切である。 〔指導項目〕 (2)造園植栽の意義と役割 ア 造園植栽の意義 イ 造園植栽の特色と役割 ウ 植栽と風景 (内容の範囲や程度) イ  〔指導項目〕の (2) については,住宅庭園,都市公園などの緑地や造園植栽の特色 と役割,植栽施工管理の現状と課題,風景の構成要素と植栽,配植のデザインの概 要について扱うこと。 (2) 造園植栽の意義と役割 ここでは,造園植栽技術が造園において基幹的な技術であることを理解するとともに, 植栽空間の創出と維持管理を図る植栽の施工と管理に関心を持つことができるようにす ることをねらいとしている。 このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう, 〔指導項目〕を指導する。 ① 造園植栽の意義や特色と役割について理解するとともに,関連する技術を身に付け ること。 ② 造園植栽に関する課題を発見し,造園に係る様々な学習により科学的な根拠に基づ いて創造的に解決すること。   ③ 造園植栽について自ら学び,植栽と風景の関わりや植物材料を活用した造園の施工 管理に必要な情報収集と分析に主体的かつ協働的に取り組むこと。 ア 造園植栽の意義 ここでは,住宅庭園,街路樹と道路緑化など,植栽工事について具体的な事例につ いて取り上げる。生活環境の快適性の向上や改善を図る植栽の施工と管理に興味と関 心を持つことができる学習活動を取り入れる。 イ 造園植栽の特色と役割 植栽施工と管理の現状,植栽施工後の管理,植栽施工現場の管理,適切な植物材料 の選択,植栽施工管理の技術,植栽施工管理の課題について取り上げる。造園植栽の 現状と役割,課題について考察する学習活動を取り入れる。 ウ 植栽と風景 ここでは,風景の構成要素と植栽,配植のデザイン,樹木の管理について取り上げ る。学校庭園や公園などの身近な事例を通して,植栽が風景を構成している事を考察 し,植栽の特色及び役割について概要を理解する学習活動を取り入れる。
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230 〔指導項目〕 (3)植物材料の種類と特性 ア 造園樹木 イ 地被植物 ウ 造園で活用する草花 (内容の範囲や程度) ウ  〔指導項目〕の (3) については,植物材料の種類や特性及び育成と,植栽施工や管 理の特性を関連付けながら総合的に扱うこと。 (3) 植物材料の種類と特性 ここでは,観察,実習を通して,造園空間を構成するために必要な植物材料の特性を 理解し,造園空間の目的や地域環境の状況に応じた植物材料の取扱いと育成に関する知 識と技術を習得ができるようにすることをねらいとしている。 このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう, 〔指導項目〕を指導する。 ① 植物材料の種類や特性について理解するとともに,関連する技術を身に付けること。 ② 植物材料の種類や特性に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に解 決すること。 ③ 植物材料の種類や特性について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。 ア 造園樹木 ここでは,造園樹木の分類,造園樹木の特性,造園樹木の育成・繁殖,樹木の流通 について取り上げる。造園空間の目的や地域環境に応じた造園樹木の選択,取扱い, 育成及び繁殖,植物材料の特性について考察する学習活動を取り入れる。 イ 地被植物 ここでは,種類,特性,造園で使用する地被植物について取り上げる。造園空間の 目的や地域環境に応じた地被植物の選択,取扱い,育成及び繁殖,地被植物の形態的 な特性生理・生態的な特性について考察する学習活動を取り入れる。 ウ 造園で活用する草花 ここでは,草花の役割,草花の利用,草花を利用した花壇の種類,一・二年草,多 年草,球根草花について取り上げる。造園空間の目的や地域環境に応じた草花の選択, 取扱い,育成及び繁殖,主な花壇用草花の特性について考察する学習活動を取り入れ る。 〔指導項目〕 (4)植栽計画 ア 配植のデザイン イ 植物の特性と植栽計画 (内容の範囲や程度) エ  〔指導項目〕の (4) については,身近な造園空間を題材として,地域的に特色のあ 第2章 農業科の 各科目
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231 27 造園植栽 る植物材料を活 い かした植栽デザインについて基礎的な内容を扱うこと。 (4) 植栽計画 ここでは,地域の実態や学科の特色等に応じて,造園の植栽施工を行う上で適切な庭 園を選定した上で,材料の選択,配植などの植栽計画に関する知識と技術を習得ができ るようにすることをねらいとしている。 このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう, 〔指導項目〕を指導する。 ① 植栽計画について理解するとともに,関連する技術を身に付けること。 ② 植栽計画に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に解決すること。 ③ 植栽計画について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。 ア 配植のデザイン ここでは,自然式植栽法と整形式植栽法,配植の方法,配植単位について取り上げ る。植物材料を機能的に配置するために,造園空間の構成要素と植物材料の特性を考 察しながら配植のデザインを理解する学習活動を取り入れる。 イ 植物の特性と植栽計画 ここでは,樹木の特性を活 い かした配植デザイン,樹木の表裏と立入れについて取り 上げる。葉色や花色,樹形など樹木の特色を活 い かしたデザインについて考察し,植物 の特性を発揮した植栽計画について理解する学習活動を取り入れる。 〔指導項目〕 (5)造園植栽施工 ア 植栽施工 イ 芝生,地被の造成 ウ 花壇の造成 (内容の範囲や程度) オ  〔指導項目〕の (5) については,樹木の根回し,樹木の移植などの植栽工事技術や 芝生,地被,花壇の造成工事に関する基礎的な内容を扱うこと。 (5) 造園植栽施工 ここでは,材料の選択,配植などの植栽及び芝生,花壇の造成に関する知識と技術を 習得するとともに,使用する機械や器具については,基礎的な内容について理解し,使 用法に関する技術を身に付けることができるようにすることをねらいとしている。 このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう, 〔指導項目〕を指導する。 ① 植栽施工について理解するとともに,関連する技術を身に付けること。 ② 植栽施工に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に解決すること。 ③ 植栽施工について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。 ア 植栽施工 ここでは,樹木の移植について取り上げる。植栽の方法,植栽後の養生などについ
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232 て考察し,植物の特性を活 い かした植栽施工について理解する学習活動を取り入れる。 イ 芝生,地被の造成 ここでは,芝生の機能と効果,芝生の造成条件,芝生の造成方法,地被の造成方法 について取り上げる。造成方法や地被植栽地の決定,材料の選択等について考察し, 芝生や地被の造園における役割と日常生活における効用について理解する学習活動を 取り入れる。 ウ 花壇の造成 ここでは,効果,デザイン,造成方法,養生について取り上げる。花壇の設計と造 成について学習するとともに,花壇の様式の決定,材料の選択等について考察し,花 壇の造園における役割と日常生活における効用について理解する学習活動を取り入れ る。 〔指導項目〕 (6)造園植栽管理 ア 樹木の管理 イ 芝生,地被,花壇の管理 ウ 景観と植栽管理 (内容の範囲や程度) カ  〔指導項目〕の (6) については,樹木の整枝剪 せん 定や病害虫の防除,景観に配慮した 管理など植栽管理に関する基礎的な内容を扱うこと。 (6) 造園植栽管理 ここでは,造園樹木の剪定と整姿,工作物の維持管理及び景観の維持管理に関する知 識と技術を関係法規と関連させて習得ができるようにすることをねらいとしている。 このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう, 〔指導項目〕を指導する。 ① 植栽管理について理解するとともに,関連する技術を身に付けること。 ② 植栽管理に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に解決すること。 ③ 植栽管理について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。 ア 樹木の管理 ここでは,整枝と剪定,樹木の保護,病害虫の防除,雑草の防除,農薬の安全使用, 管理に使用する器具について取り上げる。植物の特性と生理・生態的な特性に合わせ た継続的な維持管理の重要性について考察する学習活動を取り入れる。 イ 芝生,地被,花壇の管理 ここでは,芝生の管理,芝生の病害虫の防除,地被の管理,花壇の管理について取 り上げる。植物の特性と生理・生態的な特性に合わせた植物の管理方法について考察 する学習活動を取り入れる。 ウ 景観と植栽管理 ここでは,庭園・公園内の植栽管理,眺望景観と植栽管理,保全緑地の植生管理, 第2章 農業科の 各科目
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233 27 造園植栽 風景保護に基づいた植栽管理について取り上げる。造園植栽が景観に与える影響や, 景観と植栽管理の関わりについて考察した学習活動を取り入れる。 〔指導項目〕 (7)造園植栽の実践 (内容の範囲や程度) カ  〔指導項目〕の (7) については,造園植栽に関する実践的な活動を行うこと。 (7) 造園植栽の実践 ここでは,住宅や公園,学校などの身近な造園空間の植栽に取り組む活動を行い,造 園植栽に関する課題の解決に主体的,意欲的に取り組むことができるようにすることを ねらいとしている。 このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう, 〔指導項目〕を指導する。 ① 造園植栽の実践について理解するとともに,関連する技術を身に付けること。 ② 造園植栽の実践に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に解決する こと。 ③ 造園植栽の実践について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。 造園植栽の実践では,国土保全や環境創造のあるべき姿を捉えながら,今日の農業の 在り方や地域農業の実態,地域特有の都市環境や住宅環境などに対応して,学校庭園, 都市公園,街路樹など身近な緑地環境に係る植栽施工や管理に関する実践的なプロジェ クト学習や地域活動などを取り入れる。 特に,それらを有機的に学校での学習活動で展開するために,外部機関,例えば,企 業並びに官公庁などの研究機関,大学などと連携を図りながら,地域における樹木の植 栽の実態を把握し,今後の植栽施工や管理の在り方を考察する学習活動を行うことが重 要である。 その際,持続可能で多様な環境や住宅の形態や都市環境の変化への対応,国土保全, 地域の環境創造など,幅広い視点をもって創造的に植栽施工や管理を実践する学習活動 に取り組むことが大切である。
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234 第2章 農業科の 各科目 この科目は,測量及び地理空間情報を学習する科目であり, 「国土保全や環境創造に関 する分野」に属する科目である。今回の改訂では,これからの測量には,持続可能な農林 業・農村の発展,国土保全や環境創造の視点で捉えて活用することが重要であることから 内容の充実を図った。また,課題意識をもって学習に臨むことが重要であることからプロ ジェクト学習の意義や実践について明確に位置付けた。 1 目 標 農業の見方・考え方を働かせ,実践的・体験的な学習活動を行うことなどを通し て,測量に必要な資質・能力を次のとおり育成することを目指す。 (1)測量について体系的・系統的に理解するとともに,関連する技術を身に付ける ようにする。 (2)測量に関する課題を発見し,農業や農業関連産業に携わる者として合理的かつ 創造的に解決する力を養う。 (3)測量について国土保全や環境創造に応用できるよう自ら学び,農業の振興や社 会貢献に主体的かつ協働的に取り組む態度を養う。 この科目においては,測量を持続可能な農林業及び農山村の発展,農地や森林の保全, 緑地空間の創造と保全,自然環境の修復と再生,防災や減災,災害復旧などの事業への活 用という視点で捉え,地域計画と関連付けて考察するとともに,測量に関するプロジェク ト学習などの実践的・体験的な学習を通して,測量の実践に必要な資質・能力を体系的に 育成することをねらいとしている。 目標の (1) については,測量に関するプロジェクト学習を通して,測量を農林業・農山 村の発展や国土保全,地域の環境創造を図る事業に活用するための知識と技術を体系的・ 系統的に理解し,身に付けるようにすることを意味している。 目標の (2) については,測量に関する課題を発見し,測量が果たす社会的な意義と役割 を踏まえるとともに,環境への配慮や法令遵守などの職業人としての倫理観をもって,科 学的な根拠などに基づいて創造的に解決する力を養うことを意味している。 目標の (3) については,測量成果の活用が農林業及び農山村の発展や国土保全・環境創 造につながるという社会的な役割を担っていることを理解し,農業の振興や社会貢献に主 体的かつ協働的に取り組む態度を養うことを意味している。 1 内容の構成及び取扱い この科目は,目標に示す資質・能力を身に付けることができるよう, (1) 「測量」とプ 第1 目標 第2 内容とその取扱い 第28 節 測量
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235 節 見出 し 28 測量 ロジェクト学習, (2) 測量の意義と役割, (3) 位置や高さの測量, (4) 地理空間情報, (5) 測量の実践の五つの指導項目で,6~8単位程度履修されることを想定し,内容を構成 している。また,内容を取り扱う際の配慮事項は次のように示されている。 (内容を取り扱う際の配慮事項) ア 農林業の発展や国土保全・環境創造を担う公共測量の身近な事例を通して,測量 について理解できるよう留意して指導すること。また,プロジェクト学習では現地 調査や実験・実習を通して,科学的かつ創造的に学習を進め,測量に関する実践力 が身に付くようにすること。なお,地域の実態や学科の特色等に応じて,適切な題 材を選定すること。 この科目の指導に当たっては,測量が果たす社会的な意義と役割など,測量の現状や 今日的な課題などについて取り上げ,目的に応じた測量技術を実際に活用することで測 量の楽しさや面白さを体験させて,測量に対する意欲を醸成することが大切である。ま た,測量に関するプロジェクト学習を取り入れ,体験的,継続的な実習や産業現場での 見学・体験などを通して,各種事業に活用する測量の基本を理解させることが必要であ る。 一方,技術の習熟を図る実践的な活動と,知識の深化を図る課題探究的な学習活動な どを通して,農林業・農山村の発展や国土保全・環境創造に応用できる体系的な知識と 技術を身に付けることも重要である。 さらに,測量において自らの職業生活について考えるよう,地域の産業界や官公庁な どとの連携を図ることが大切である。 イ  〔指導項目〕の (1) については,科目学習の導入として扱うこと。また, (5) につ いては, (1) を踏まえ, (2) から (4) までと並行して,又はそれらを学習した後に扱 うこと。 〔指導項目〕の (1) については,課題意識をもって学習に臨むことが重要であることか ら, 「農業と環境」で習得したプロジェクト学習の方法を踏まえ,測量に関するプロ ジェクト学習の意義と役割について明確に位置付け,科目学習の最初に扱い,プロジェ クト学習を活用した学習展開がスムーズに行われることが大切である。 また, 〔指導項目〕の (5) については,一連の測量業務に取り組む実践的・体験的な学 習を通して,地域の農林業・農山村の発展や国土保全,地域の環境創造に主体的,意欲 的に取り組むことができるようにすることが大切である。 2 内容 2 内 容 1に示す資質・能力を身に付けることができるよう,次の〔指導項目〕を指導す る。 〔指導項目〕 (1) 「測量」とプロジェクト学習
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236 第2章 農業科の 各科目 ア 測量に関するプロジェクト学習の意義 イ プロジェクト学習の進め方 (内容の範囲や程度) ア  〔指導項目〕の (1) については,農業科に属する他の科目と関連付けながら科目全 体で科学的かつ創造的に学習を進めるように扱うこと。 (1) 「測量」とプロジェクト学習 ここでは, 「測量」とプロジェクト学習について,測量を科学的に捉え,自ら学び取 り組むことができるようにすることをねらいとしている。 このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう, 〔指導項目〕を指導する。 ① 測量に関するプロジェクト学習の意義や進め方について理解するとともに,関連す る技術を身に付けること。 ② 測量に関する課題を発見し,プロジェクト学習により科学的な根拠に基づいて創造 的に解決すること。 ③ 測量について自ら学び,プロジェクト学習に必要な情報収集と分析に主体的かつ協 働的に取り組むこと。 ア 測量に関するプロジェクト学習の意義 ここでは,常に科学的な見方と,自ら課題意識をもち,その課題を解決するための 実践力を身に付けることが重要であることから,測量に関するプロジェクト学習の意 義について理解できるよう指導する。 イ プロジェクト学習の進め方 ここでは, 「農業と環境」で習得したプロジェクト学習の方法を踏まえ,課題設定, 計画立案,実施,まとめ(反省と評価)の一連の流れをもとに,測量に関する諸課題 を主体的に解決するための具体的な実践事例を取り上げて指導する。 課題設定に当たっては,例えば,統一テーマを「持続可能な農業・農山村の発展や 国土保全などの基本となる測量」として示し,グループや個人で具体的な小テーマを 設定する方法が考えられる。なお,課題設定では,測量のあるべき姿と,それに対す る現状の認識から問題点を抽出・整理し,達成する目標を明確にすることが大切であ る。 また,設定した課題の解決に向けては,仮説を設定した上で計画を立案し,その計 画に沿って,農山村の整備や造園緑化事業で活用される測量について,調査,観察, 実験,記録などを継続的に実施し,その結果を分析,考察,評価してまとめるなど, 主体的な学習活動を展開する必要がある。なお,学習成果を共有し,取組を評価して 次につなげるなど学習を確かなものにするために発表の機会を設けることが大切であ る。 〔指導項目〕 (2)測量の意義と役割
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237 28 測量 (内容の範囲や程度) イ  〔指導項目〕の (2) については,測量の意義や役割,座標系と基準点,測定値の処 理と誤差について基礎的な内容を扱うこと。 (2) 測量の意義と役割 ここでは,農林業・農山村の発展や国土保全,地域の環境創造に用いられる測量や地 理空間情報の意味と特質,扱い方,測量及び測地基準系の種類と特徴,それらの役割や 動向について理解した上で,各種事業の計画や施工に活用できるようにすることをねら いとしている。 このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう, 〔指導項目〕を指導する。 ① 測量の意義と役割について理解するとともに,関連する技術を身に付けること。 ② 地理空間情報や測定値の活用に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造 的に解決すること。 ③ 測量の意義と役割,地理空間情報や測定値の活用について自ら学び,主体的かつ協 働的に取り組むこと。 〇 地理空間情報と測量の役割 ここでは,地理空間情報活用推進基本法や利用例を取り上げ,地理空間情報の意味 や情報通信ネットワーク社会の基盤としての測量の役割や多方面で利用されているこ とについて理解できるよう指導する。 〇 座標系と基準点 ここでは,世界測地系や電子基準点などを取り上げ,測量に用いる座標系と基準点 の種類と役割について理解できるよう指導する。 〇 測定値の処理と表現 ここでは,測量における測定値の誤差と処理,それらの計算及び測量結果である位 置情報の図面や画像への表現,情報技術の利用や位置情報に他の情報を関連付けた地 理空間情報の表現について理解できるよう指導する。 〔指導項目〕 (3)位置や高さの測量 ア 平板測量 イ 角測量 ウ トラバース測量 エ 水準測量 オ 基準点測量と衛星測位 (内容の範囲や程度) ウ  〔指導項目〕の (3) については,点の平面的位置や高低位置を決定する測量の原理 や測量機器の操作及び測定値の具体的な処理について基礎的な内容を扱うこと。
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238 第2章 農業科の 各科目 (3) 位置や高さの測量 ここでは,点の平面位置や高低位置を決定する測量の原理,測定機器の操作及び測定 値の具体的な処理方法などを各種事業に活用できるようにすることをねらいとしている。 このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう, 〔指導項目〕を指導する。 ① 位置や高さの測量について理解するとともに,関連した技術を身に付けること。 ② 位置や高さの測量に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に解決す ること。 ③ 位置や高さの測量について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。 ア 平板測量 ここでは,平板測量の特徴,器具の構造と点検法,精度及び誤差の処理,面積の算 定方法,平板測量の製図について理解できるよう指導する。 イ 角測量 ここでは,測量の対象となる角や角測量の種類,角測量の特徴,測角器械の取り扱 いとすえつけ,測角器械の構造と検査方法,角測量の方法,精度,誤差の処理及び座 標位置決定における角の意味について理解できるよう指導する。 ウ トラバース測量 ここでは,トラバース測量の種類,特徴,測定機器及び測定値の誤差とその処理, トラバース測量の結果の利用と製図について理解できるよう指導する。また,幾何学 的条件やトラバース測量の重要性,目的に応じたトラバース測量の選択及び機器の選 定を考察する学習活動を取り入れ指導する。なお,トータルステーションシステムに 関しては,位置情報の計測,記録,転送,解析,図化及び情報管理などの流れ,作業 の効率化とデータの高品質化について理解できるように取り扱う。 エ 水準測量 ここでは,直接水準測量の方法や精度,高さの基準,レベルや標尺などの器具の構 造や点検法及び誤差の処理,間接水準測量の方法,器具及び測定値の処理と精度,水 準測量の結果の利用と製図について理解できるよう指導する。 オ 基準点測量と衛星測位 ここでは,基準点と多角測量や三角測量,三辺測量や衛星測位などの基準点測量の 方法や精度,誤差とその処理,基準点の利用について理解できるよう,基準点測量の 実施計画の作成,踏査・選点,測量標の設置,観測などの学習活動を取り入れて指導 する。なお,衛星測位に関しては,測位法の原理,種類と精度,データ処理,成果の 表現,精密農業などの農業技術,ナビゲーションシステムなどへの応用について理解 できるように取り扱う。 〔指導項目〕 (4)地理空間情報 ア 写真測量の原理
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239 28 測量 イ 写真測量の利用 ウ リモートセンシングの原理と種類 エ リモートセンシングの利用 オ 地理情報システムの原理と役割 カ 地理情報システムの利用 (内容の範囲や程度) エ  〔指導項目〕の (4) については,写真測量やリモートセンシングの測定原理及び データ処理の方法,地理情報システムの原理や表現方法とデータの種類及び処理の 方法について扱うこと。また,基盤地図情報の利用についても扱うこと。 (4) 地理空間情報 ここでは,写真測量とリモートセンシングの原理や測定方法,測定装置及び作業の流 れ,データ処理や地理情報システムへの利用について実習や現場見学を通して一体的に 学習させ,各種事業の目的に応じて測量技術を活用できるようにすることをねらいとし ている。 このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう, 〔指導項目〕を指導する。 ① 地理空間情報とその利用について理解するとともに,関連する技術を身に付けるこ と。 ② 地理空間情報とその利用に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に 解決すること。 ③ 地理空間情報とその利用について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。 ア 写真測量の原理 ここでは,地理空間情報の種類や特徴,環境保全や農林業への利用,空中写真測量 と地上写真測量など写真測量の特徴や写真測量の仕組み,空中写真の投影やひずみ, 空中写真の特殊三点や縮尺,実体視の原理や実体鏡による実体視,実体視による高低 差の測定,空中写真の特徴,判読の方法や実体図化の原理,デジタル図化機の利用と デジタルマッピングシステム,画像データの処理と図化の原理,オルソ画像の特徴と その利用などについて理解できるよう指導する。 イ 写真測量の利用 ここでは,環境の調査,農地や森林の調査,地形や地質の調査,土地利用情報の収 集などへの写真測量の利用について理解できるよう指導する。 ウ リモートセンシングの原理と種類 ここでは,人工衛星を利用したリモートセンシングを中心に,リモートセンシング の原理及び効果,種類や方法,データ処理について取り上げて指導する。 エ リモートセンシングの利用 ここでは,リモートセンシングの写真測量への利用や人工衛星と航空機のセンサ, リモートセンシングの分類画像,画像の作成と判読,リモートセンシングの応用につ いて取り上げて指導する。
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240 第2章 農業科の 各科目 オ 地理情報システムの原理と役割 ここでは,地理情報システムの役割や機能,トータルステーションシステム,全地 球測位システム(GPS) ,リモートセンシングなどの情報を既存のデジタル地図情報 などと組み合わせて一体的に処理する方法について理解できるように指導する。 カ 地理情報システムの利用 ここでは,地理情報システムの構成,解析機能,データの種類や形式,地理情報シ ステムの操作,データの統合,成果の多様な表現方法について理解できるように指導 する。また,基盤地図情報の作成と利用について,概要を取り扱い指導する。 〔指導項目〕 (5)測量の実践 ア 地形測量 イ 路線測量 ウ 工事測量 エ 河川測量 オ 森林測量 (内容の範囲や程度) オ  〔指導項目〕の (5) については,既存の地図情報の利用,各種事業の目的に応じた 測量の選択,データの精度と表現方法に関する基礎的な内容を扱うとともに,実践 的な活動を行うこと。なお,技術の進展に対応した測量技術についても扱うこと。 (5) 測量の実践 ここでは,既存の地理空間情報を利用し,トラバース測量,水準測量,写真測量,リ モートセンシング,全地球測位システム(GPS) ,地理情報システム,CAD システムな ど各種の地理空間情報技術を応用して,持続可能な農林業及び農村の発展や国土保全, 地域の環境創造など事業の目的に応じた測量を実践できるようにすることをねらいとし ている。 このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう, 〔指導項目〕を指導する。 ① 各種事業に活用する測量について理解するとともに,関連する技術を身に付けるこ と。 ② 各種事業に活用する測量に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に 解決すること。 ③ 各種事業に活用する測量について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。 ア 地形測量 ここでは,既存の地図情報の利用,各種事業の目的に応じた測量の選択,データの 精度と表現方法,地形図作成のための地形測量や等高線の測定とその利用,境界の確 定,地理情報システムの活用,地形図の座標系や図式規程,読図や地図計測について 理解できるよう,実践的な学習活動を取り入れて指導する。
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241 28 測量 イ 路線測量 ここでは,道路,水路などを対象とした路線測量の手順や曲線設置の方法,縦断測 量や横断測量の方法と縦横断図の作成及び土量の算出について理解できるよう,実践 的な学習活動を取り入れて指導する。 ウ 工事測量 ここでは,盛土,切土,側溝などの丁張りについて理解できるよう,実践的な学習 活動を取り入れて指導する。 エ 河川測量 ここでは,河川工事に必要な平面の測量,高低の測量及び流量測定について理解で きるよう,実践的な学習活動を取り入れて指導する。 オ 森林測量 ここでは,森林環境の監視や管理,森林の境界や面積の測量及び緑地工事測量につ いて理解できるよう,実践的な学習活動を取り入れて指導する。測量の実践では,国 土保全や環境創造のあるべき姿を捉えながら,今日の農林業の在り方や地域の農林業 の実態,緑化計画の実態などに対応して,測量に関する実践的なプロジェクト学習や 地域連携活動などを取り入れる。 特に,それらを有機的に学校での学習活動で展開するために,外部機関,例えば, 企業並びに官公庁などの研究機関,大学などと連携を図りながら,地域における農林 業及び農村の発展,農地や森林,緑地空間の創造と保全,自然環境の修復,防災や減 災,災害復旧などの各種事業の実態を把握し,今後の測量の在り方を考察する学習活 動を行うことが必要である。
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242 第2章 農業科の 各科目 この科目は,園芸作物や社会動物を心身の健康及び社会的な健康などへ活用することを 学習する科目であり, 「資源活用や地域振興の分野」に属する科目である。今回の改訂で は,園芸作物や社会動物が健康にもたらす効用や生活の質の向上につながる生物の活用を 学ぶこと,交流活動においては活動後に評価を行うことが重要であることから学習内容の 充実を図った。また,課題意識をもって学習に臨むことが重要であることから,プロジェ クト学習の意義や実践について明確に位置付けた。 1 目 標 農業の見方・考え方を働かせ,実践的・体験的な学習活動を行うことなどを通し て,園芸作物や社会動物の活用に必要な資質・能力を次のとおり育成することを目 指す。 (1)生物活用について,体系的・系統的に理解するとともに,関連する技術を身に 付けるようにする。 (2)生物活用に関する課題を発見し,農業や農業関連産業に携わる者として合理的 かつ創造的に解決する力を養う。 (3)生物活用について,生物の特性を活用し生活の質の向上につながるよう自ら学 び,農業の振興や社会貢献に主体的かつ協働的に取り組む態度を養う。 この科目においては,緑のある環境との関わり,園芸作物の栽培・利用,社会動物との ふれあいや飼育を心身の健康及び社会的な健康の視点から捉え,その効用を生活の質の向 上と関連付けて考察するとともに,生物活用に関するプロジェクト学習などの実践的・体 験的な課題解決学習を通して,園芸作物や社会動物の活用に必要な資質・能力の育成をね らいとしている。生物活用とは,健康の増進や教育的効用を期待して行われる園芸活動, 社会動物とのふれあいや飼育活動である。ここで扱う社会動物は,イヌ,ネコ,ウマ,ト リなど愛がんや,健康や生活の質の改善等の目的で飼育・活用される動物である。生活の 質とは,精神・身体・社会・教育的効用がもたらす心の豊かさや満足度である。 目標の (1) については,園芸や社会動物が人の健康にもたらす効用の体験や生物を活用 した交流活動などのプロジェクト学習を通して,緑のある環境・園芸・社会動物の健康効 果と交流対象となる人の発達段階や健康についての基礎的な知識と技術を体系的・系統的 に理解し,身に付けるようにすることを意味している。 目標の (2) については,地域に暮らす人々の健康に関する課題を発見し,緑のある環境 や園芸,社会動物とのふれあいや飼育が健康増進につながるよう科学的な根拠に基づいて 交流活動を計画し,職業人としての倫理観をもって安全で安心して参加できる交流活動に 発展させ,生物活用に関する課題について創造的に科学的な根拠などに基づいて創造的に 解決する力を養うことを意味している。 第1 目標 第29 節 生物活用
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243 29 生物活用 目標の (3) については,園芸や社会動物を活用する学習を通して,地域の人々の生活の 質の向上を目指し,健康増進を付加した農業の振興や社会貢献に,自ら課題解決に向けた 意識をもって主体的かつ協働的に取り組む態度を養うことを意味している。 1 内容の構成及び取扱い この科目は, (1) 「生物活用」とプロジェクト学習, (2) 生物活用の意義と役割, (3) 園 芸作物の栽培と活用, (4) 社会動物の飼育と活用, (5) 生物を活用した療法, (6) 生物活 用の実践の六つの指導項目で,4~6単位程度履修されることを想定し,内容を構成し ている。また,内容を取り扱う際の配慮事項は次のように示されている。 (内容を取り扱う際の配慮事項) ア 生物の特性を活用することで,生活の質の向上につながることを事例を通して理 解できるよう留意して指導すること。また,プロジェクト学習では見学や実験・実 習を通して,科学的かつ創造的に学習を進め,生物活用に関する実践力が身に付く ようにすること。なお,地域の実態や学科の特色等に応じて,適切な題材を選定す ること。 この科目の指導に当たっては,緑のある環境・園芸・社会動物が人の健康にもたらす 特性と健康効果,地域社会や農業・園芸における健康に関する今日的な課題等について 取り上げる。 さらに,園芸・社会動物がもたらす健康効果を体験し,生物活用の意義と役割につい て理解できるよう指導し,園芸作物の栽培と活用,社会動物の飼育と活用を行う。生徒 が身につけた知識や技術で実施可能な交流活動と,専門的な知識・技術を必要とする療 法との違いを理解した上で生物を活用する学習意欲を醸成することが大切である。学習 の始めには,生徒自らが今までに体験した緑のある環境・園芸・社会動物とのふれあい から健康効果を振り返ったり,健康効果を客観的に捉えたりするプロジェクト学習を取 り入れる。そして,生徒が園芸や社会動物が人の健康にもたらす特性を理解するととも に,その後の探究的な学習や実践的な交流活動を通して人々の健康増進を目的とした交 流に必要な体系的・系統的な知識と技術を身に付けることが必要である。 さらに,資源活用や地域振興において自らの職業生活について考えるよう,官公庁や 農業・園芸や社会動物を健康増進に活用している地域の専門機関などで就業体験活動を 行うなど,地域産業界や専門家と連携を図ることが大切である。  イ  〔指導項目〕の (1) については,科目学習の導入として扱うこと。また, (6) につ いては, (1) を踏まえ, (2) から (5) までと並行して,又はそれらを学習した後に扱 うこと。 〔指導項目〕の (1) については,課題意識をもって学習に臨むことが重要であることか ら,科目「農業と環境」で学習したプロジェクト学習の方法を踏まえ, 「生物活用」に 関するプロジェクト学習の意義と役割について明確に位置付け,科目学習の最初に扱い, 第2 内容とその取扱い
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244 第2章 農業科の 各科目 プロジェクト学習を活用した学習展開がスムーズに行われることが大切である。 また, 〔指導項目〕の (6) については, 〔指導項目〕の (2) から (5) までの学習と並行し て,あるいはその学習の後に,交流対象者が園芸や社会動物の健康効果を実感できるよ うな交流を通して,健康効果もねらった農業・園芸や地域社会の健康増進に主体的,意 欲的に取り組むことができるようにすることが大切である。 2 内容 2 内 容 1に示す資質・能力を身に付けることができるよう,次の〔指導項目〕を指導す る。 〔指導項目〕 (1) 「生物活用」とプロジェクト学習 ア 生物活用に関するプロジェクト学習の意義 イ プロジェクト学習の進め方 (内容の範囲や程度) ア  〔指導項目〕の (1) については,農業科に属する他の科目と関連付けながら科目全 体で科学的かつ創造的に学習を進めるように扱うこと。 (1) 「生物活用」とプロジェクト学習 ここでは, 「生物活用」とプロジェクト学習について,生物の活用を科学的に捉え, 自ら学び取り組むことができるようにすることをねらいとしている。 このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう, 〔指導項目〕を指導する。 ① 生物活用に関するプロジェクト学習の意義や進め方について理解するとともに,関 連する技術を身に付けること。 ② 生物活用に関する課題を発見し,プロジェクト学習により科学的な根拠に基づいて 創造的に解決すること。 ③ 生物活用について自ら学び,プロジェクト学習に必要な情報収集と分析について, 主体的かつ協働的に取り組むこと。 ア 生物活用に関するプロジェクト学習の意義 ここでは,常に科学的な見方と,自ら課題意識をもち,その課題を解決するための 実践力を身に付けることが重要であることから,生物活用に関するプロジェクト学習 の意義について理解できるよう指導する。 イ プロジェクト学習の進め方 ここでは, 「農業と環境」で習得したプロジェクト学習の方法を踏まえ,課題設定, 計画立案,実施,まとめ(反省と評価)の一連の流れをもとに,まず,緑のある環境, 園芸や社会動物がもたらす健康効果について,生徒が今まで体験した学習活動を振り 返ったり,健康効果を客観的に捉えたりするための具体的な実践事例を取り上げて指
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245 29 生物活用 導する。課題設定に当たっては,例えば,統一テーマを「園芸活動や社会動物とのふ れあいにおける心理的・生理的変化や社会性の変化」として示し,グループや個人で 具体的な小テーマを設定する方法が考えられる。なお,課題設定では,今まで経験し た園芸活動や社会動物とのふれあいでイメージしている効用とあらためて心理,生理, 社会性などの視点から捉えた時に,生徒がまだ認識していない効用の差異を問題点と して抽出・整理して,これらを客観的に捉えるなど達成する目標を明確にすることが 大切である。 また,交流活動の実施に向けて設定した課題の解決については,仮説を設定した上 で計画を立案し,その計画に沿って交流活動を行い,観察,記録,対象者の心理,身 体,社会性などの変化に関する評価を実施し,その結果を分析,考察,評価しまとめ るなど,主体的な学習活動を展開する必要がある。園芸や社会動物がもたらす健康効 果には,栽培や飼育のように継続的活動によって効果が表れるものと,草花を用いた 創造的な活動や動物とのふれあいのように即効的に効果が表れるものがある。ここで は,即効的に効果が体験できる活動から取り上げる。なお,学習成果を共有し,取組 を評価して次につなげるなど学習を確かなものにするために発表の機会を設けること が大切である。 〔指導項目〕 (2)生物活用の意義と役割 ア 園芸作物,社会動物と健康的な暮らし イ 生物を活用した活動と療法 ウ 緑のある環境・園芸の特性と効用 エ 社会動物の特性と効用 (内容の範囲や程度) イ  〔指導項目〕の (2) については,園芸作物や社会動物が人の健康にもたらす心理 的・身体的・社会的特性及び専門家が療法として行う行為と一般の人々が健康増進 などを目的として行う活動の違いを扱うこと。 (2) 生物活用の意義と役割 ここでは,生物活用の意義と役割について,人々の暮らしに緑のある環境・園芸・社 会動物が用いられてきた経緯から捉えることができるようにすることをねらいとしてい る。 このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう, 〔指導項目〕を指導する。 ① 緑のある環境・園芸や社会動物の特性と効用について理解するとともに,関連する 技術を身に付けること。 ② 緑のある環境・園芸や社会動物の特性と効用を科学的な根拠に基づいて創造的に解 決すること。 ③ 緑のある環境・園芸や社会動物の特性と効用について自ら学び,主体的かつ協働的
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246 第2章 農業科の 各科目 に取り組むこと。 ア 園芸作物,社会動物と健康的な暮らし ここでは,農業・園芸,家畜など動物との暮らしや緑のある環境が,人の健康や生 活の改善に活用されてきた経緯や,街なみ,公園,医療福祉施設,一般建築物におけ る緑の環境や屋内緑化,ガーデニングや社会動物との関わりが健康増進につながるこ とを取り上げて指導する。その際,生物を活用する暮らしにおける課題や今後の可能 性について考察する学習活動を取り入れることが大切である。 イ 生物を活用した活動と療法 ここでは,緑のある環境・園芸・社会動物が健康にもたらす特性を理解して生物を 活用する教育・健康増進・疾患の一次予防などの活動と,医療,福祉,心理,園芸療 法,動物介在療法などについての総合的な知識・技術を持つ専門家が,健康上の支援 を必要とする人に対して疾患や障害の特性を理解して健康の維持・改善を目指す療法 としての行為の違いについて取り上げて指導する。 ウ 緑のある環境・園芸の特性と効用 ここでは,学校の庭園や農場・公園など緑の景観が人に与える心理・身体・社会的 特性,植物の色,形,大きさ,香り,質感,味,成長の様子などが人に与える心理的 特性,園芸作業の動作・姿勢・運動強度などが人に与える身体的特性,達成感のよう な心理的特性,共感・協力・協働など社会的特性について取り上げて指導する。 エ 社会動物の特性と効用 ここでは,社会動物の外観,行動,習性・性質等が人に与える心理的特性,しつけ などの行為が人に与える心理的特性や身体的特性,社会動物を介した交流が人に与え る社会的特性について取り上げて指導する。 〔指導項目〕 (3)園芸作物の栽培と活用 ア 草花・野菜・ハーブの栽培と活用 イ 園芸デザインとその活用 ウ 園芸作物の安全性 (内容の範囲や程度) ウ  〔指導項目〕の (3) については,教育や健康などに関する効用に着目した園芸作物 の栽培や園芸デザインの活動を中心に扱い,それを活用した交流活動の準備や活動 の支援,植物の安全性についても扱うこと。 (3) 園芸作物の栽培と活用 ここでは,園芸作物の栽培と活用について,生徒自らが正確な知識と基本的な技術を 身に付けて交流活動に用いることができるようにすることをねらいとしている。 このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう, 〔指導項目〕を指導する。 ① 園芸作物の栽培と活用について理解するとともに,関連する技術を身に付けること。
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247 29 生物活用 ② 園芸作物の栽培と活用に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に解 決すること。 ③ 園芸作物の栽培と活用について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。 ア 草花・野菜・ハーブの栽培と活用 ここでは,幅広い交流に活用できるよう,人々が小規模の花壇や畑,プランターな どで行う平易な栽培方法に関する知識と技術を身につける学習活動を取り入れ,その 中で健康増進につながる効用が理解できるよう指導する。 イ 園芸デザインとその活用 ここでは,コンテナガーデン,フラワーアレンジメント,押し花などの創造活動の 中から,幅広い交流に活用できるよう平易な内容を取り上げる。 ウ 園芸作物の安全性 ここでは,植物により植物全体や特定の部位にアレルギーや中毒につながる成分が 含まれるので提供する相手によって配慮が必要なことや,用いてはならない場合があ ることが理解できるよう指導する。また,栽培環境や交流活動の環境に生息する微生 物や昆虫による危険についての知識と適切な対処方法について取り上げる。 〔指導項目〕 (4)社会動物の飼育と活用 ア 社会動物の飼育としつけ イ 社会動物の活用 ウ 社会動物の安全性と衛生管理 (内容の範囲や程度) エ  〔指導項目〕の (4) については,教育や健康などに関する効用に着目した社会動物 との交流とそのための飼育やしつけを中心に扱うこと。その際,社会動物を活用し た交流活動の準備や活動の支援も扱うこと。また,ストレスや疾病の軽減など社会 動物の快適性に配慮した飼養管理についても扱うこと。 (4) 社会動物の飼育と活用 ここでは,社会動物の飼育と活用について,生徒自らが正確な知識と基本的な技術を 身につけて交流活動に用いることができるようにすることをねらいとしている。 このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう, 〔指導項目〕を指導する。 ① 社会動物の飼育と活用について理解するとともに,関連する技術を身に付けること。 ② 社会動物の飼育と活用に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に解 決すること。 ③ 社会動物の飼育と活用について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。 ア 社会動物の飼育としつけ ここでは,社会動物の習性や行動特性を理解させ,それらに合わせた適切な飼育環 境や飼料の給与方法及びしつけに関する知識・技術について取り上げて指導する。
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248 第2章 農業科の 各科目 イ 社会動物の活用 ここでは,動物とのふれあいや飼育がもたらす心理的効果や身体的効果,動物を介 在したコミュニケーションなどの社会的効果を実感できる内容を取り上げて指導する。 ウ 社会動物の安全性と衛生管理 ここでは,人畜共通伝染病や社会動物の疾患など安全性と衛生管理,社会動物のス トレス緩和・疾病の軽減といった快適性に配慮した飼養管理(アニマルウェルフェ ア)について取り上げて指導する。 〔指導項目〕 (5)生物を活用した療法 ア 園芸療法 イ 動物介在療法 (内容の範囲や程度) オ  〔指導項目〕の (5) については,園芸療法,動物介在療法の基礎的な内容を扱うこ と。 (5)生物を活用した療法 ここでは,生物を活用した療法について学び,生徒自らが行える範囲の活動と専門的 な療法との違いを理解できるようにすることをねらいとしている。 このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう, 〔指導項目〕を指導する。 ① 生物を活用した療法の特徴及びそれらの活用状況を理解すること。 ② 専門家が行う生物を活用した療法と生徒自らが行える交流活動の違いについて理解 すること。 ③ 専門的知識・技術を有する人とともに,疾患や障害とその支援に関して自ら学び, 主体的かつ協働的に取り組むこと。 ア 園芸療法 ここでは,我が国や海外の園芸療法の現状や役割・効果の他,グリーン・ケアの一 つとして行われる農場を活用して疾患・障害がある人や社会的に弱い立場にある人を 雇用する活動などを取り上げ,生徒が行う園芸を活用した交流活動との違いについて 考察する学習活動を取り入れる。 イ 動物介在療法 ここでは,我が国や海外の動物介在療法,動物介在活動の現状や役割・効果につい て取り上げ,生徒が行う社会動物を活用した交流活動との違いについて考察する学習 活動を取り入れる。 〔指導項目〕 (6)生物活用の実践 ア 対象者の理解と交流の技法
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249 29 生物活用 イ 交流活動と評価 ウ 療法的な活動 (内容の範囲や程度) カ  〔指導項目〕の (6) については,生物活用に関する実践的な活動を行うこと。また, 交流対象者の発達段階や特性,ライフステージ,健康状態の理解及び交流対象者を 想定した試行,交流中の対象者の観察,交流に必要な技術と交流活動の評価につい ても扱うこと。 (6) 生物活用の実践 ここでは,生物を活用した活動の実際に関する対象者の理解,交流技法,交流活動の 計画・実施・評価,療法的な活動について学び,効果的な交流活動が行えるようにする ことをねらいとしている。 このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう, 〔指導項目〕を指導する。 ① 生物活用の実践について理解するとともに,関連する技術を身に付けること。 ② 交流対象者の健康に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に解決す ること。 ③ 生物活用の実践について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。 ア 対象者の理解と交流の技法 ここでは,交流対象者の発達段階やライフステージに応じた精神・身体的特性,支 援方法,疾患や障害に関する基礎的知識や,効果的な交流を行うための技法として対 象者に応じた言葉かけ,インタープリテーションやファシリテーションなどの技術を 取り上げる。 イ 交流活動と評価 ここでは,外部機関や地域との連携を図りながら,交流対象者の健康上のニーズや 発達段階を踏まえて健康増進につながる活動目標や活動計画を立て,適切な活動や支 援方法を判断し,活動目標がどれくらい達成されたかを考察する実践的なプロジェク ト学習を取り入れる。活動後の振り返りは,活動内容や交流活動に用いた植物や動物 の適切性などプログラムに関すること,プログラムの進め方や対象者との関わりなど 対人支援に関すること,交流活動のねらいがどの程度達成されたかなどについて行う。 また,栽培環境や飼育環境,交流活動を行う環境に生息する微生物,昆虫,小動物 による危険についての知識と適切な対処方法について取り上げて指導する。 評価については,交流活動参加者の感想や活動中の会話・行動を記録して図表化し まとめるなど,結果を客観的に捉える学習活動を行う。 生物活用の実践では,資源活用や地域振興のあるべき姿を捉えながら,今日の農業 の在り方や地域農業の実態,地域特有の生活や文化などに対応して,実践的なプロ ジェクト学習や地域連携活動などを取り入れる。 特に,それらを有機的に学校での学習活動で展開するために外部機関,例えば,施 設並びに官公庁などの研究機関,大学などと連携を図りながら,地域における生物活
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250 第2章 農業科の 各科目 用の実態を把握し,今後の地域における園芸や社会動物を健康増進に活用した活動や 事業の在り方について,発展的に考察する学習活動を行うことも大切である。 ウ 療法的な活動 外部機関や地域との連携を図りながら,交流対象者の疾患や障害,健康上のニーズ に応じて健康増進につながる活動目標や活動計画を立て,適切な活動や支援方法を判 断し,活動目標がどれくらい達成されたかを考察する実践的なプロジェクト学習を取 り入れる。活動の評価についても交流活動と同様に行う。
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251 30 地域資源 活用 この科目は,農林業や農山村の特色や地域資源の有用性を理解し,それを活用した地域 振興を学習する科目であり, 「資源活用や地域振興の分野」に属する科目である。今回の 改訂では,従前の「グリーンライフ」の学習内容を踏まえ, 「地域資源活用」とし,地域 振興の担い手として,農業と農村の持つ多面的な特質を地域資源として捉え,その価値や 活用について学習するようにした。また,課題意識をもって学習に臨むことが重要である ことから,プロジェクト学習の意義や実践について明確に位置付けた。 1 目 標 農業の見方・考え方を働かせ,実践的・体験的な学習活動を行うことなどを通し て,地域資源の活用に必要な資質・能力を次のとおり育成することを目指す。 (1)地域資源の活用について体系的・系統的に理解するとともに,関連する技術を 身に付けるようにする。 (2)地域資源の活用に関する課題を発見し,農業や農業関連産業に携わる者として 合理的かつ創造的に解決する力を養う。 (2)地域資源の活用について新たな価値の創造に寄与できるよう自ら学び,農業の 振興や社会貢献に主体的かつ協働的に取り組む態度を養う。 この科目においては,地域の実態,学科の目標や特色及び生徒の必要などに応じて選定 することが必要である。地域資源活用の学習に当たっては,地域資源の役割や活用方法な ど,地域資源の現状や今日的な課題などについて関心をもたせ,実際に地域資源を活用し た地域活性化活動を体験することで,活動に対する意欲を醸成することをねらいとしてい る。 目標の (1) については,農林業・農山村の特色や地域資源の有用性について,農山村と 都市の取組と課題を調べる学習を通して,農林業・農山村の実態や地域社会の在り方,そ こで新たな仕事を産み出す起業活動などに関連する知識と技術を体系的・系統的に理解し, 身に付けるようにすることを意味している。ここで扱う関連技術とは,対人サービスのマ ナー,環境インタープリターの技法,イベントプログラムの企画,サービス利用者の安全 管理などを示している。 目標の (2) については,農林業・農山村の特色を活 い かした生活体験を提供する活動など を体験し,それらを推進している社会的起業家の事例を通して,地域資源を活用した地域 の振興について,環境への配慮や法令遵守などの職業人としての倫理観をもって,科学的 な根拠などに基づいて創造的に解決する力を養うことを意味している。 目標の (3) については,地域振興の担い手として,地域と連携し,地域資源を活用した グリーンツーリズムや商品開発,市民農園運営などの実践を行うなどにより,新たな価値 の創造などに主体的かつ協働的に取り組む態度を養うことを意味している。 第1 目標 第30 節 地域資源活用
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252 第2章 農業科の 各科目 1 内容の構成及び取扱い この科目は,目標に示す資質・能力を身に付けることができるよう, (1) 「地域資源活 用」とプロジェクト学習, (2) 農山村社会の変化と地域振興, (3) 地域資源活用の意義と 役割, (4) 地域資源の価値と活用, (5) 地域と連携した活動, (6) 地域資源活用の実践の 六つの指導項目で,4~8単位程度履修されることを想定し,内容を構成している。ま た,内容を取り扱う際の配慮事項は次のように示されている。 (内容を取り扱う際の留意事項) ア 地域資源の活用や地域振興について身近な事例を通して理解できるよう留意して 指導すること。また,プロジェクト学習では見学や実験・実習を通して,科学的か つ創造的に学習を進め,地域資源の活用に関する実践力が身に付くようにすること。 なお,地域の実態や学科の特色等に応じて,適切な題材を選定すること。 この科目の指導に当たっては,地域資源を活用した地域の活性化事例などを用いて, 農山村の現状や多面的機能について学習し,地域資源を用いた地域振興の仕組みや課題 について理解し,活性化活動に関心を持つよう留意して指導することが必要である。ま た,ユニバーサル農業や地域資源のマーケティングとブランドづくりについても理解で きるよう先進事例見学などの学習活動を取り入れる。学習に当たっては, 「課題研究」 や「総合実習」で行われる実践的なプロジェクト学習の基礎とするため,先進事例など の分析により考察することが大切である。 さらに,資源活用や地域振興において自らの職業生活について考えるよう,官公庁や 地域振興に取り組む団体,農業法人などで就業体験活動を行うなど,地域産業界と連携 を図ることが大切である。  イ  〔指導項目〕の (1) については,科目学習の導入として扱うこと。また, (6) につ いては, (1) を踏まえ, (2) から (5) までと並行して,又はそれらを学習した後に扱 うこと。 〔指導項目〕の (1) については,課題意識をもって学習に臨むことが重要であることか ら, 「農業と環境」で習得したプロジェクト学習の方法を踏まえ,地域資源活用に関す るプロジェクト学習の意義と役割について明確に位置付け,科目学習の最初に扱い,プ ロジェクト学習を活用した学習展開がスムーズに行われることが大切である。 また, 〔指導項目〕の (6) については, (2) から (5) までの学習と並行して,あるいはそ の学習の後に,実際に一連の地域と連携した活動に取り組む実践的・体験的な学習活動 を通して,その地域に適した資源活用に主体的,意欲的に取り組むことができるように することが大切である。 第2 内容とその取扱い
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253 30 地域資源 活用 2 内容 2 内 容 1に示す資質・能力を身に付けることができるよう,次の〔指導項目〕を指導す る。 〔指導項目〕 (1) 「地域資源活用」とプロジェクト学習 ア 地域資源活用に関するプロジェクト学習の意義 イ プロジェクト学習の進め方 (内容の範囲や程度) ア  〔指導項目〕の (1) については,農業科に属する他の科目と関連付けながら科目全 体で科学的かつ創造的に学習を進めるように扱うこと。 (1) 「地域資源活用」とプロジェクト学習 ここでは, 「地域資源活用」とプロジェクト学習について,地域資源の活用例を体験 などの学習活動を通して科学的に捉え,自ら学び・実践できるようにすることをねらい としている。 このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう, 〔指導項目〕を指導する。 ① 地域資源活用に関するプロジェクト学習について理解するとともに,関連する技術 を身に付けること。 ② 地域資源活用に関するプロジェクト学習に関する課題を発見し,科学的な根拠に基 づいて創造的に解決すること。 ③ 地域資源活用に関するプロジェクト学習について自ら学び,主体的かつ協働的に取 り組むこと。 ア 地域資源活用に関するプロジェクト学習の意義 ここでは,常に科学的な見方と,自ら課題意識をもち,その課題を解決するための 実践力を身に付けることが重要であることから,地域資源活用に関するプロジェクト 学習の意義について理解できるよう指導する。 イ プロジェクト学習の進め方 ここでは, 「農業と環境」で習得したプロジェクト学習の方法を踏まえ,課題設定, 計画立案,実施,まとめ(反省と評価)の一連の流れをもとに,地域資源活用に関す る諸課題を主体的に解決するための具体的な実践事例を取り上げて指導する。 課題設定に当たっては,例えば,統一テーマを「地域振興を目指した未利用資源の 調査」として示し,グループや個人で具体的な小テーマを設定する方法が考えられる。 なお,課題設定では,地域資源活用の事例を利用者や消費者の立場で体験したり,先 駆的事例を学んだりして理解する事を取り上げる。学習に当たっては,地域活性化の 成功や事業継続性の要因や,地域資源活用のあるべき姿と,それに対する現状の認識 から問題点を抽出・整理し,達成する目標を明確にすることが大切である。
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254 第2章 農業科の 各科目 また,設定した課題の解決に向けては,仮説を設定した上で計画を立案し,その計 画に沿って,地域資源について多面的・多角的に吟味し,その活用について見定め, 成功要因や未解決の課題を人材,製品,サービス,資金,情報など調査,観察,実験, 記録などを継続的に把握し,その結果を地域資源活用の視点からグループ討議などに より分析,考察,評価してまとめるなど,主体的な学習活動を展開する必要がある。 なお,学習成果を共有し,取組を評価して次につなげるなど学習を確かなものにする ために発表の機会を設けることが大切である。 〔指導項目〕 (2)農山村社会の変化と地域振興 ア 農山村社会の現状と変化 イ 地域活性化に向けた施策・取組 (内容の範囲や程度) イ  〔指導項目〕の (2) については,農山村と都市の現状を考察し,それらに合わせた 異業種との連携及びそこから生み出される地域資源の活用について扱うこと。 (2) 農山村社会の変化と地域振興 ここでは,農山村社会の変化と地域活性化について,農山村と都市の現状と変化を 様々な観点から捉えることができるようにすることをねらいとしている。 このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう, 〔指導項目〕を指導する。 ① 農山村社会の変化と地域振興について理解するとともに,関連する技術を身に付け るようにする。 ② 農山村社会の変化と地域振興に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造 的に解決すること。 ③ 農山村社会の変化と地域振興について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。 ア 農山村社会の現状と変化 ここでは,農山村と都市部の比較(人口・世帯数・年齢構成・職業割合など)から 現状について学び,心の豊かさを重視する生き方から,その地域農業の多面的機能 (生産,環境,社会,経済,健康,心理など)を見直し,それを生かした活動,観光 業との連携,六次産業化や農福連携など,そこから産み出される資源の開発などにつ いて地域の活性化の変化とその要素が理解できるよう指導する。 イ 地域活性化に向けた施策・取組 ここでは,国や地方自治体で行っている施策について理解できるよう指導する。な お,民間などが行っている異業種連携(観光業・福祉施設など) ,六次産業化などの 取組についても指導することが大切である。 〔指導項目〕 (3)地域資源活用の意義と役割
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255 30 地域資源 活用 ア 地域資源の魅力と価値 イ 地域振興に向けた施策・取組 ウ 異業種連携と商品価値の創造 エ 地域資源活用の実践と課題 オ 情報の活用と発信 (内容の範囲や程度) ウ  〔指導項目〕の (3) については,国内外の地域資源活用に関する取組について取り 上げ,生徒自らが身近な地域資源を理解し,その活用を実践できるように扱うこと。 (3) 地域資源活用の意義と役割 ここでは,地域資源活用の概要について,地域外の視点から農の多面的価値へのニー ズの視点から捉えることができるようにすることをねらいとしている。 このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう, 〔指導項目〕を指導する。 ① 地域資源活用の意義と役割について理解するとともに,関連する技術を身に付ける ようにする。 ② 地域資源活用の意義と役割に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的 に解決すること。 ③ 地域資源活用の意義と役割について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。 ア 地域資源の魅力と価値 ここでは,地域資源の魅力創造について,地域ブランドの視点から,地域の歴史を 踏まえて,地域資源(自然環境,農業・農村景観,農村生活・文化,地域特産物な ど)の洗い出しを行い。その活用など国内外の事例について取り上げて指導する。 イ 地域振興に向けた施策と取組 ここでは,食料・農業・農村基本法に加えて,地域振興に向けた施策・取組につい て理解できるよう指導する。 ウ 異業種連携と商品価値の創造 ここでは,農業の多面的特質の活用と異業種と連携した価値創造の事例を取り上げ て指導する。また,異業種参入や地域でのソーシャルファーム,ソーシャルビジネス などへの起業について取り上げることが大切である。 エ 地域資源活用の実践と課題 ここでは,社会的起業家や地域活性化の核となる人材(プランナー,コーディネー ター,マネージャーなどの)の実践例を取り上げて,その役割と課題について理解で きるよう指導する。 オ 情報の活用と発信 ここでは,世界農業遺産などのマーケット情報についてインターネットなどを利用 し,調査活動を行うとともに,ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)などを 活用した地域情報の発信方法について取り上げて指導する。
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256 第2章 農業科の 各科目 〔指導項目〕 (4)地域資源の価値と活用 ア 観光への活用 イ 商品開発への活用 ウ サービス業への活用 エ 教育・福祉への活用 (内容の範囲や程度) エ  〔指導項目〕の (4) 及び (5) については,地域調査から地域の価値を見いだし,魅 力を伝える取組についてプロジェクト学習を通して扱うこと。 (4) 地域資源の価値と活用 ここでは,地域資源の価値と活用や,農業の多面的機能とサービス化について,その 特性とヒューマンサービス技術に着目して捉えることができるようにすることをねらい としている。 このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう, 〔指導項目〕を指導する。 ① 地域資源の価値とその活用について理解するとともに,関連する技術を身に付ける こと。 ② 地域資源の価値とその活用に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的 に解決すること。 ③ 地域資源の価値とその活用について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。 ア 観光への活用 ここでは,農家民泊やグリーンツーリズムなど農の多面的機能を活用した観光につ いて理解できるよう指導する。 イ 商品開発への活用 ここでは, 農業の多面的機能を活用した商品の開発について指導する。その際には, 新商品の主材として地域の在来作物についても学び,加えて種子保存の重要性や,種 苗法の仕組みについて取り上げて指導する。 ウ サービス業への活用 ここでは,直販所や農家レストランの開設や運営について,利用者に農産物加工を 体験してもらうワークショップの運営などについて取り上げて指導する。 また,市民農園の種類や運営,従来の農地と市民農園の違い,開設について,体験 農園の運営などの学習も取り入れることが大切である。 エ 教育・福祉への活用 ここでは,地域資源の経済的特徴だけでなく,食農教育や農福連携の必要性や,そ れらを活用した地域活性化について理解できるよう指導する。 なお,地域資源の経済的な活用だけでなく,教育や福祉など多面的・多角的な活用 に焦点をあて,その基本的な内容を指導する。
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257 30 地域資源 活用 〔指導項目〕 (5)地域と連携した活動 ア 地域資源のマーケティングとブランドづくり イ 地域資源を活用したサービス ウ 農業のユニバーサルデザイン化 エ 地域振興活動と評価 (内容の範囲や程度) エ  〔指導項目〕の (4) 及び (5) については,地域調査から地域の価値を見つけ魅力を 伝える取組についてプロジェクト学習を通して扱うこと。 オ  〔指導項目〕の (5) については,地域資源の活用におけるユニバーサルデザイン化 及び地域振興活動の指標を定める評価方法について基礎的な内容を扱うこと。 (5) 地域と連携した活動 ここでは,地域活性化活動について,地域資源のマーケティングやブランドづくり, 活用したサービスを,学習活動を通して捉えることができるようにすることをねらいと している。 このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう, 〔指導項目〕を指導する。 ① 地域と連携した活動について理解するとともに,関連する技術を身に付けること。 ② 地域と連携した活動に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に解決 すること。 ③ 地域と連携した活動について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。 ア 地域資源のマーケティングとブランドづくり ここでは,地域内外の利用者の視点から地域を見ることで,その地域へのニーズや 地域ブランドづくりについて理解できるよう指導する。 イ 地域資源を活用したサービス ここでは,地域資源を活用したサービス分野のマーケティングについて指導する。 マーケティング戦略の策定に向けての一連の作業の前段階として,実施計画を立案し, その計画に基づいて市場調査や環境分析を行う。ここでは,実際の市場やイベントに 出向いて消費の動向を把握することを取り上げて指導する。なお,該当のサービスに 対する環境についての分析は,内部環境の強みと弱み,外部環境の機会と脅威に分け て分析するSWOT 分析を行うことが大切である。 ウ 農業のユニバーサルデザイン化 ここでは,異業種連携などによる農業の新しい形態やその仕組み,障害者や高齢者 などの多様な農業の担い手について,情報通信技術(ICT)や人工知能(AI)などの 活用やロボット化などを含む,誰にでも,わかりやすく,使いやすい農業のユニバー サルデザイン化について理解できるよう指導する。 また,農業を行うにあたっての作業の標準化,マニュアル化,整理・整頓・清掃な どの3S 活動などについて学ぶ。指導に当たっては,実習を通して,ユニバーサル農
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258 第2章 農業科の 各科目 業の運営と作業環境・作業手順,情報収集と発信について理解させ,生産活動に関す る科学的な見方と実践力を育てる学習活動を取り入れることが大切である。 エ 地域振興活動と評価 ここでは,自分の住む地域の振興と活性化活動を,プロジェクト学習(課題設定, 計画立案,実施,まとめ(反省と評価) )を通して指導する。その際,地域振興の目 標を設定し,地域資源の調査,地域振興活動などについて,自分の意思や判断に基づ き解決する事ができるよう指導することが大切である。 〔指導項目〕 (6)地域資源活用の実践 (内容の範囲や程度) カ  〔指導項目〕の (6) については,地域資源の活用に関する実践的な活動を行うこと。 なお,起業や六次産業化に関わる内容についても扱うこと。 (6) 地域資源活用の実践 ここでは,地域資源活用の実践について,地域の特性に合わせ実践するプロジェクト 学習活動を通して,起業の方法や六次産業化の意義について自ら学び,自分の意志や判 断に基づき,目標を共有する他者と力を合わせて取り組む態度を育成することができる ようにすることをねらいとしている。 このねらいを実現するため,次の①から③までの事項を身に付けることができるよう, 〔指導項目〕を指導する。 ① 地域資源活用の実践について理解するとともに,関連する技術を身に付けること。 ② 地域資源活用の実践に関する課題を発見し,科学的な根拠に基づいて創造的に解決 すること。 ③ 地域資源活用の実践について自ら学び,主体的かつ協働的に取り組むこと。 地域資源活用の実践では,資源活用や地域振興のあるべき姿を捉えながら,今日の農 業の在り方や地域農業の実態,地域特有の生活や文化などに対応して,実際に選定した 地域資源の活用に応じた実践的なプロジェクト学習や地域活動などを取り入れて指導す る。 特に,それらを有機的に学校での学習活動で展開するために,外部機関,例えば,官 公庁や大学,地域振興などに取り組む特定非営利活動法人(NPO)法人などと連携を 図りながら,地域における資源活用の実態を把握し,今後の地域振興の在り方を考察す る学習活動を行うことも考えられる。 また,起業や六次産業化,ブランド化など,幅広い視点をもって創造的に地域資源を 活用する活動に取り組むことが必要である。
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259 1 指導計画の 作成に当た っての配慮 事項 (1)単元など内容や時間のまとまりを見通して,その中で育む資質・能力の育成に向 けて,生徒の主体的・対話的で深い学びの実現を図るようにすること。その際,農 業の見方・考え方を働かせ,安定的な食料生産と環境保全及び資源活用の視点で捉 え,持続可能で創造的な農業や地域振興と関連付けるなどの実践的・体験的な学習 活動の充実を図ること。 この事項は,農業科の指導計画の作成に当たり,生徒の主体的・対話的で深い学びの実 現を目指した授業改善を進めることとし,農業科の特質に応じて,効果的な学習が展開で きるように配慮すべき内容を示したものである。 選挙権年齢や成年年齢の引き下げなど,高校生にとって政治や社会が一層身近なものと なる中,学習内容を人生や社会の在り方と結び付けて深く理解し,これからの時代に求め られる資質・能力を身に付け,生涯にわたって能動的に学び続けることができるようにす るためには,これまでの優れた教育実践の蓄積も生かしながら,学習の質を一層高める授 業改善の取組を推進していくことが求められている。 指導に当たっては, (1) 「知識及び技術」が習得されること, (2) 「思考力,判断力,表現 力等」を育成すること, (3) 「学びに向かう力,人間性等」を涵 かん 養することが偏りなく実現 されるよう,単元など内容や時間のまとまりを見通しながら,生徒の主体的・対話的で深 い学びの実現に向けた授業改善を行うことが重要である。 主体的・対話的で深い学びは,必ずしも1単位時間の授業の中で全てが実現されるもの ではない。単元など内容や時間のまとまりの中で,例えば,主体的に学習に取り組めるよ う学習の見通しを立てたり学習したことを振り返ったりして自身の学びや変容を自覚でき る場面をどこに設定するか,対話によって自分の考えなどを広げたり深めたりする場面を どこに設定するか,学びの深まりをつくりだすために,生徒が考える場面と教師が教える 場面をどのように組み立てるか,といった観点で授業改善を進めることが求められる。ま た,生徒や学校の実態に応じ,多様な学習活動を組み合わせて授業を組み立てていくこと が重要であり,単元など内容や時間のまとまりを見通した学習を行うに当たり基礎となる 「知識及び技術」の習得に課題が見られる場合には,それを身に付けるために,生徒の主 体性を引き出すなどの工夫を重ね,確実な習得を図ることが必要である。 主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を進めるに当たり,特に「深い学 び」の視点に関して,各教科等の学びの深まりの鍵となるのが「見方・考え方」である。 各教科等の特質に応じた物事を捉える視点や考え方である「見方・考え方」を,習得・活 1 主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善 第1節 指導計画の作成に当たっての配慮事項 各科目にわたる指導計画の作成と内容の取扱い 第3章
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260 第3章 各科目にわた る指導計画の 作成と内容の 取扱い 用・探究という学びの過程の中で働かせることを通じて,より質の高い深い学びにつなげ ることが重要である。 農業科においては,農業の見方・考え方を「農業や農業関連産業に関する事象を,安定 的な食料生産と環境保全及び資源活用等の視点で捉え,持続可能で創造的な農業や地域振 興と関連付けること」とし,農業における知識や技術を身に付けるための,科学的な根拠 を踏まえた創造的・実践的な農業学習を地域農業界などと連携することも大切である。 また,主体的・協働的に解決する力を身に付けるために,各科目の中で生徒が課題意識 をもって,主体的・計画的に農業学習に取り組むよう,プロジェクト学習の意義やプロセ ス(①課題設定,②計画立案,③実施,④まとめ(反省・評価) )並びに実践について導 入部分に位置付けている。 (2)農業に関する各学科においては, 「農業と環境」及び「課題研究」を原則として 全ての生徒に履修させること。 「農業と環境」及び「課題研究」については,従前と同様に農業に関する学科における 原則履修科目として位置付けている。 「農業と環境」は,農業生物の育成と環境の保全・創造についての実践的・体験的,探 究的な学習を通して科学的思考力や問題解決能力を育成することをねらいとしている科目 である。各学校においては,本科目の目標・内容等を踏まえて履修させる必要がある。 「課題研究」は,農業に関する基礎的・基本的な学習の上に立って,生徒が自ら設定し た課題を主体的に探究して解決する学習活動を通して,知識と技術の深化,総合化を図る とともに,自ら課題を発見して解決する力や課題の解決に主体的かつ協働的に取り組む態 度を養うことをねらいとした科目である。 科目の性格やねらいなどからみて, 「農業と環境」は入学年次で, 「課題研究」は卒業年 次で履修させることが望ましい。 (3)農業に関する各学科においては,原則として農業科に属する科目に配当する総授 業時数の10 分の5以上を実験・実習に配当すること。また,実験・実習に当たっ ては,ホームプロジェクトを取り入れることもできること。 農業学習においては,従前から,実践的,探究的な学習である実験・実習を通して,知 的好奇心を醸成し,農業の各分野の知識と技術を確実に習得させ,農業の充実を図る創造 的,実践的な能力と態度を育成してきたところである。今後の農業各分野における技術革 新の急速な進展や産業の動向に適切に対応するためには,基礎・基本の確実な習得はもと より,問題解決の能力,主体性,科学性,創造性及び実践力の育成を一層重視して,実 験・実習の充実を図ることが必要である。 2 原則履修科目 3 各科目の履修に関する配慮事項
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261 「農業」の実験・実習には,学習内容の理解を助長する実験・実習,学習内容を検証す る実験・実習,技術の習熟を図る実験・実習などがあるが,その指導に当たっては,いわ ゆる座学との関連を図るとともに,学習の目標や方法を明確に示すことが必要である。生 徒が,その実験や実習の必要性を理解し,主体的に取り組むとともに,問題を発見し,仮 説を立て,思考することのできる場面のある実験・実習とすることが大切である。なお, ここでいう実験・実習は,観察,実験,調査,見学,学校農場等での実習,産業現場等で の実習及びプロジェクト学習などの実践的・体験的な学習である。 また,総則では,ホームプロジェクトに関して,教育課程編成の配慮事項において,農 業等に関する各教科・科目の指導に当たっては,ホームプロジェクトなどの活動を活用し て,学習の効果を上げるよう留意することを示している。 農業学習においては,従前から,学習の仕方の習得,自己評価力の育成など自己教育力 を育てることにつながるプロジェクト学習を重視してきたところである。ここでは,学習 内容を検証したり,技術の習熟を図るホームプロジェクトを実施したりすることで学習目 標が達成できる場合においては,ホームプロジェクトを活用し,取り入れることができる ことを明示している。 (4)地域や産業界,農業関連機関等との連携・交流を通じた実践的な学習活動や就業 体験を積極的に取り入れるとともに,社会人講師を積極的に活用するなどの工夫に 努めること。 学校は,地域や産業界と双方向の連携体制を築き,それらの教育力や教育資源を活用し た生徒の交流を通じた実践的な学習活動により,生徒の学校における学びを定着・発展さ せるとともに,地域に対して,学校の教育力や生徒が身に付けた知識や技術を還元するこ とにより,それぞれの発展に資することが可能となる。 農業科においては,農業経営者・林業経営者,農業法人,食品製造・加工業者,流通・ 販売業者,造園業者,農業土木業者などでの産業現場実習に積極的に取り組み,成果を上 げてきているところである。今回の改訂においても,体験的な学習についての重要性は従 前同様に位置付けられており,キャリア教育の充実も求められている。産業現場等での就 業体験においては,身に付けた知識・技術の役割などを知ることを通して,学習の意義が 理解され,農業学習に対する意欲の向上や自信が生まれる。農業の各分野の最新の知識や 技術を身に付けたり,経営や管理の実際を知ることを通して,勤労観,職業観を育成する ことが可能になる。 また,長期間の継続的な就業体験を実施することにより,農作物や家畜,製造する食品, 取り扱う商品などの経時的な変化を体験することで,各職業についてより深く理解するこ とができる。社会人講師の活用においては,農業各分野の優れた技術者や経営者による指 導を受けることで,生徒の就職への意欲が向上するなど,職業選択能力や職業意識を育成 することが可能になる。 4 地域や産業界等との連携・交流 1 指導計画の 作成に当た っての配慮 事項
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262 第3章 各科目にわた る指導計画の 作成と内容の 取扱い 一方,地域等における奉仕活動やボランティア活動に生徒が教育活動で身に付けた知 識・技術などの成果を用いて参加することで,地域の活性化に貢献することが期待できる。 各科目に設定した指導項目の実践では,農業に関する分野のあるべき姿を捉えながら, 今日の農業の在り方や地域農業の実態,地域特有の農業などに対応して,実際に選定した 実践的なプロジェクト学習や地域活動などを取り入れる。 特に,それらを有機的に学校での学習活動で展開するためには,外部機関や地域農業界 などとの連携を図りながら,地域の実態を把握し,今後の在り方を考察する学習活動を行 うことが重要である。 (5)障害のある生徒などについては,学習活動を行う場合に生じる困難さに応じた指 導内容や指導方法の工夫を計画的,組織的に行うこと。 障害者の権利に関する条約に掲げられたインクルーシブ教育システムの構築を目指し, 児童生徒の自立と社会参加を一層推進していくためには,通常の学級,通級による指導, 小・中学校における特別支援学級,特別支援学校において,児童生徒の十分な学びを確保 し,一人一人の児童生徒の障害の状態や発達の段階に応じた指導や支援を一層充実させて いく必要がある。 高等学校の通常の学級においても,発達障害を含む障害のある生徒が在籍している可能 性があることを前提に,全ての教科等において,一人一人の教育的ニーズに応じたきめ細 かな指導や支援ができるよう,障害種別の指導の工夫のみならず,各教科等の学びの過程 において考えられる困難さに対する指導の工夫の意図,手立てを明確にすることが重要で ある。 これを踏まえ,今回の改訂では,障害のある生徒などの指導に当たっては,個々の生徒 によって,見えにくさ,聞こえにくさ,道具の操作の困難さ,移動上の制約,健康面や安 全面での制約,発音のしにくさ,心理的な不安定,人間関係形成の困難さ,読み書きや計 算等の困難さ,注意の集中を持続することが苦手であることなど,学習活動を行う場合に 生じる困難さが異なることに留意し,個々の生徒の困難さに応じた指導内容や指導方法を 工夫することを,各教科等において示している。 その際,農業科の目標や内容の趣旨,学習活動のねらいを踏まえ,学習内容の変更や学 習活動の代替を安易に行うことがないよう留意するとともに,生徒の学習負担や心理面に も配慮する必要がある。 例えば,農業科における配慮として,次のようなものが考えられる。 実験・実習の全体像を把握できないなど学習活動への参加が困難な場合,学習の見通し をもてるように資料等で示すとともに,手順や方法の理解を促すよう実物を明示したり, 実際の作業を例示したりするなど,全体の流れの中で,この作業にはどのような役割があ り,どのようにつながっているかなど具体的に示すよう配慮すること。 また,機器の操作,薬品の使用などに伴う安全面の留意事項について,集団の場面での 5 障害のある生徒などへの指導
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263 口頭による指示の理解が困難な場合,事故を防止する方法を理解しやすいよう,全    体での指導を行った上で,個別に指導をしたり,実際の動作で示したりするなどの配慮を 行う。なお,学校においては,こうした点を踏まえ,支援の必要な生徒には個別の指導計 画を作成し,必要な配慮事項を記載し,他教科等の担任と共有したり,翌年度の担任等に 引き継いだりすることが必要である。 1 指導計画の 作成に当た っての配慮 事項
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264 第3章 各科目にわた る指導計画の 作成と内容の 取扱い (1)農業に関する課題について,科学的な根拠に基づくプロジェクト学習などによる 課題解決に向けた主体的・協働的な調査や実験などを通して,情報分析,考察,協 議などの言語活動の充実を図ること。 農業科に属する各科目の指導に当たっては,基礎的・基本的な知識と技術の確実な定着 や経済社会の一員として主体的に活動するための能力と態度を育てる観点から,視察や調 査,産業現場等における実習など実践的・体験的な学習を重視し,生徒が自ら学習内容に 興味・関心をもち,学習意欲が高まるよう配慮することが大切である。 特に,各科目の中で行うプロジェクト学習では,大きなテーマを設定し,個人や小グル ープで関連した小さなテーマを設定し,実施,分析,考察,評価しまとめるとともに,大 きなテーマでの考察する場面で協議するなど,生徒の思考力・判断力・表現力を育成する 言語活動を充実するよう工夫することが大切である。 (2)コンピュータや情報通信ネットワークなどの活用を図り,学習の効果を高めるよ う工夫すること。 各科目における調査や研究などにおいては,コンピュータや情報通信ネットワークなど の積極的な活用を図り,情報の検索・収集,他の学校や地域との情報の交流,学習成果の 発表を行うなど,学習の効果を高めるよう配慮することが大切である。 その際,インターネットを活用して入手した情報の信頼性,著作権の侵害の有無などを 見極めること,様々な情報と組み合わせて多面的・多角的に分析した上で活用すること, 入手した情報を活用するに当たって他者の権利を侵害しないことなどに留意するよう指導 することが大切である。 1 言語活動の充実 2 コンピュータや情報通信ネットワークなどの活用 第2 節 内容の取扱いに当たっての配慮事項
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265 3 実験・実習 の実施に当 たっての配 慮事項 3 実験・実習を行うに当たっては,関連する法規等に従い,施設・設備や薬品等の 安全管理に配慮し,学習環境を整えるとともに,事故防止の指導を徹底し,安全と 衛生に十分留意するものとする。 農場,演習林及び農業実験室などの施設・設備については,実験・実習の安全確保を図 るため,日常の点検など安全管理と学習環境の整備が必要である。また,機器類及び機械 類の操作,医薬品・農薬・試薬などの各種薬品,肥飼料,燃料の使用に際しては,関連す る法規等に基づき適正に行うとともに,事故防止に努め,安全・衛生管理を徹底する必要 がある。 なお,実験・実習により発生する廃棄物の処理を適切に行うなど,環境汚染の防止と資 源の再利用等にも十分留意する必要がある。 一方,長時間の実習の際には,適宜休憩等で身体を休めることについても十分留意する とともに,校外に出て調査・研究・実習などを行う際には指導計画を綿密に作成し,事故 防止や安全管理などに配慮し,高校生としての自覚と責任をもって行動し,所期の目的が 効果的に達成されるよう,生徒指導にも十分留意する必要がある。 第3 節 実験・実習の実施に当たっての配慮事項
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266 第3章 各科目にわた る指導計画の 作成と内容の 取扱い 学校における道徳教育は,人間としての在り方生き方に関する教育を学校の教育活 動全体を通じて行うことによりその充実を図るものとし,各教科に属する科目(以下 「各教科・科目」という。 ) ,総合的な探究の時間及び特別活動(以下「各教科・科目 等」という。 )のそれぞれの特質に応じて,適切な指導を行うこと。 高等学校における道徳教育については,各教科・科目等の特質に応じ,学校の教育活動 全体を通じて生徒が人間としての在り方生き方を主体的に探求し,豊かな自己形成ができ るよう,適切な指導を行うことが求められている。 このため,各教科・科目においても目標や内容,配慮事項の中に関連する記述がある。 農業科においては,例えば,教科の目標に,職業人に求められる倫理観を踏まえて課題 を解決する力を養うこと,職業人として必要な豊かな人間性を育むこと,よりよい社会の 構築を目指して自ら学ぶ態度を養うことを示している。このような目標の実現を目指して 実践的・体験的な学習活動を行う際に,相手の立場を尊重すること,義務を果たすこと, よりよい人間関係の構築に配慮すること,自己の役割に対して責任を持つことなどに留意 して指導することは,農業や農業関連産業を通じ,農業をはじめ社会の健全で持続的な発 展を担う職業人の育成につながるものである。 また, 「農業と環境」においては, 「職業人に求められる倫理観を扱う」とともに, 「農 業が有する生命を育むという生命倫理についても扱うこと」としている。 各学校においては,道徳教育の充実が今回の改訂においても重視されていることを踏ま え,校長の方針の下に,道徳教育推進教師を中心に,全教師の連携協力のもと,年間指導 計画に基づき,教育活動全体を通じて人間としての在り方生き方に関する教育が一層具体 的に展開されるよう努める必要がある。 各学校においては,教育課程の編成に当たって,次の表に掲げる主として専門学科 (専門教育を主とする学科をいう。以下同じ。 )において開設される各教科・科目及び 設置者の定めるそれぞれの標準単位数を踏まえ,生徒に履修させる各教科・科目及び その単位数について適切に定めるものとする。 専門教科・科目については,従前から,地域の実態や学科の特色等に応じるため,その 標準単位数の決定を設置者に委ねており,今回の改訂においても同様の扱いとしている。 したがって,これらの各教科・科目について,設置者がその標準単位数を定め,その標準 単位数を標準として各学校が具体的な単位数を定めることになる。各設置者においては, 当該地域の実態や管内の学校の実態等に留意し,適切な標準単位数を定めることが必要で 1 道徳教育との関連(総則第1款2 (2) の2段目) 2 専門教科・科目の標準単位数(総則第2款3 (1) ウ) 第4 節 総則に関連する事項
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267 4 総則に関連 する事項 ある。 農業科に属する科目について,設置者は,地域の実態や設置する学科の特色等に応じて, 本解説第2章を参考にして標準単位数を定めることになる。各学校においては,設置者の 定める標準単位数を踏まえ,学科の特色や生徒の実態などに応じて,適切に科目を選定し, 履修単位数を定めることが必要である。 学校においては,生徒や学校,地域の実態及び学科の特色等に応じ,特色ある教育 課程の編成に資するよう,イ及びウの表に掲げる教科について,これらに属する科目 以外の科目(以下「学校設定科目」という。 )を設けることができる。この場合にお いて,学校設定科目の名称,目標,内容,単位数等については,その科目の属する教 科の目標に基づき,高等学校教育としての水準の確保に十分配慮し,各学校の定める ところによるものとする。 学校設定科目の名称,目標,内容,単位数等は各学校において定めるものとされている が,その際には, 「その科目の属する教科の目標に基づき」という要件が示されているこ と,及び科目の内容の構成については関係する各科目の内容との整合性を図ることに十分 配慮する必要がある。 農業科においては,農業に関する各分野に対応して,通常履修される教育内容などを想 定して,30 科目が示されている。しかし,農業や農業関連産業の多様な発展や地域の実 態等に対応し,新しい分野の教育を積極的に展開する必要がある場合など,学校設定科目 を設けることにより,特色ある教育課程を編成することができる。 (1)専門教科・科目の最低必修単位数 (ア)専門学科においては,専門教科・科目( (1) のウの表に掲げる各教科・科目,同 表に掲げる教科に属する学校設定科目及び専門教育に関する学校設定教科に関する 科目をいう。以下同じ。 )について,全ての生徒に履修させる単位数は,25 単位を 下らないこと。ただし,商業に関する学科においては,上記の単位数の中に外国語 に属する科目の単位を5単位まで含めることができること。また,商業に関する学 科以外の専門学科においては,各学科の目標を達成する上で,専門教科・科目以外 の各教科・科目の履修により,専門教科・科目の履修と同様の成果が期待できる場 合においては,その専門教科・科目以外の各教科・科目の単位を5単位まで上記の 単位数の中に含めることができること。 専門学科における専門教科・科目の最低必修単位数は,従前と同様に25 単位以上と し,生徒の多様な実態に応じた弾力的な教育課程の編成を可能にしている。なお,25 単位を下らないこととしているので,専門教育の深化のため,あるいは職業資格の取得 3 学校設定科目(総則第2款3 (1) エ) 4 専門学科における各教科・科目の履修(総則第2款3 (2) イ)
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268 第3章 各科目にわた る指導計画の 作成と内容の 取扱い 要件等を考慮して教育課程を編成する場合は,当然,最低必修単位数の25 単位を超え て履修することができるよう配慮する必要がある。 学習指導要領では,従前と同様に,専門教科・科目について,第1章総則第2款3 (1) ウの表に掲げる各教科・科目,同表の教科に属する学校設定科目及び専門教育に関 する学校設定教科に関する科目であることを明確にしている。すなわち,学習指導要領 に示されている専門教科・科目及びその教科に属する学校設定科目はもとより,専門教 育の一環として設けられる学校設定教科及び当該教科に関する科目についても,専門教 科・科目に含まれることとなる。 専門教科・科目以外の教科・科目の履修を専門教科・科目の履修とみなす措置につい ては,従前と同様,専門教科・科目の履修単位数を確保する観点から特例として規定し ている。 農業などの専門学科における専門教科・科目の必修単位数は,これまでと同様に25 単位以上としている。今回の改訂において,卒業に必要な修得総単位数や必履修教科・ 科目の最低合計単位数が変更されていないことなどを踏まえ,専門学科については,一 定の専門性を確保する観点から引き続き専門科目を25 単位以上履修させることが適当 であるとされたことによる。 (2)専門教科・科目による必履修教科・科目の代替 (イ)専門教科・科目の履修によって,アの必履修教科・科目の履修と同様の成果が期 待できる場合においては,その専門教科・科目の履修をもって,必履修教科・科目 の履修の一部又は全部に替えることができること。 専門教科・科目を履修することによって,必履修教科・科目の履修と同様の成果が期 待できる場合は,その専門教科・科目の履修をもって必履修教科・科目の履修の一部又 は全部に替えることができる。 これは,各教科・科目間の指導内容の重複を避け,教育内容の精選を図ろうとするも のであり,必履修教科・科目の単位数の一部を減じ,その分の単位数について専門教 科・科目の履修で代替させる場合と,必履修教科・科目の単位数の全部について専門教 科・科目の履修で代替させる場合とがある。 実施に当たっては,専門教科・科目と必履修教科・科目相互の目標や内容について, あるいは代替の範囲などについて十分な検討を行うことが必要である。この調整が適切 に行われることにより,より効果的で弾力的な教育課程の編成に取り組むことができる。 農業に関する学科では,例えば, 「農業と情報」の履修により「情報Ⅰ」の履修に代 替することなどが考えられるが,全部を代替する場合, 「農業と情報」の履修単位数は, 2単位以上必要である。 なお,これらの例示についても,機械的に代替が認められるものではない。代替する 場合には,各学校には説明責任が求められる。
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269 (3)職業学科における総合的な探究の時間の特例 (ウ)職業教育を主とする専門学科においては,総合的な探究の時間の履修により,農 業,工業,商業,水産,家庭若しくは情報の各教科の「課題研究」 ,看護の「看護 臨地実習」又は福祉の「介護総合演習」 (以下「課題研究等」という。 )の履修と同 様の成果が期待できる場合においては,総合的な探究の時間の履修をもって課題研 究等の履修の一部又は全部に替えることができること。また,課題研究等の履修に より,総合的な探究の時間の履修と同様の成果が期待できる場合においては,課題 研究等の履修をもって総合的な探究の時間の履修の一部又は全部に替えることがで きること。  農業に関する学科においては, 「課題研究」が原則履修科目とされている。  この科目では,農業の各分野に関する適切な課題を設定し,主体的かつ協働的に取り 組む学習活動を通して,専門的な知識,技術などの深化・統合化を図り,農業に関する 課題の解決に取り組むことができるようにすることとしており,総合的な探究の時間の 目標と, 「課題研究」の目標が軌を一にする場合も想定される。そのため,総合的な探 究の時間の履修をもって, 「課題研究」の履修の一部又は全部に替えることができると するとともに, 「課題研究」の履修をもって総合的な探究の時間の履修の一部又は全部 に替えることができるとしている。  ただし,相互の代替が可能とされるのは, 「同様の成果が期待できる場合」とされて おり, 「課題研究」の履修によって総合的な探究の時間の履修に代替する場合には, 「課 題研究」を履修した成果が総合的な探究の時間の目標等からみても満足できる成果を期 待できることが必要であり,自動的に代替が認められるものでない。 (1)実験・実習に配当する授業時数の確保 (ア)職業に関する各教科・科目については,実験・実習に配当する授業時数を十分確 保するようにすること。 (ア) は,職業に関する各教科・科目における実験・実習の重視について示したもので ある。また,農業科においては,各科目にわたる指導計画の作成について,原則として 総授業時数の10 分の5以上を実験・実習に配当することが明記されていることにも配 慮すべきである。 職業教育は,各教科・科目の履修を通して一般的教養を身に付けることにとどまらず, 実験・実習という実践的・体験的な学習を一層重視し,実践力を体得することに特色が あると言える。 実験・実習には,体験を通して知識や技術の習得に役立て,技術を習得させるという 側面がある。農業科においても,これまでの実験・実習では,基礎的・基本的事項の習 得という立場から,このねらいを一貫して重視してきた。 一方,グローバル化の進展,情報技術の進歩,産業構造・就業構造の変化等に適切に 5 職業教育を主とする専門学科における配慮事項(総則第2款3 (7) ウ) 4 総則に関連 する事項
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270 第3章 各科目にわた る指導計画の 作成と内容の 取扱い 対応するためには,実際に問題を解決する体験の機会をできる限り拡充していくことに より,よりよい社会の構築を目指して自ら学び,農業や農業関連産業の創造と発展に主 体的かつ協働的に取り組む態度を養うことが必要である。そのため,基礎的・基本的事 項を確実に習得することに加えて,実験・実習のもう一つの側面である生徒の自発的・ 創造的な学習態度の育成を一層重視していく必要がある。特に,主体的に取り組む学習 活動を通して,専門的な知識・技術などの深化・総合化を図ることは重要であり,実 験・実習の一層の充実が求められる。 実験・実習の授業時数の確保に当たっては,いわゆる座学と実験・実習との調和と関 連性,基礎的・基本的事項と発展的・応用的事項との関連,特に新技術等新たな内容の 習得について配慮する必要がある。 (2)生徒の実態に応じた配慮 (イ)生徒の実態を考慮し,職業に関する各教科・科目の履修を容易にするため特別な 配慮が必要な場合には,各分野における基礎的又は中核的な科目を重点的に選択し, その内容については基礎的・基本的な事項が確実に身に付くように取り扱い,また, 主として実験・実習によって指導するなどの工夫をこらすようにすること。 生徒の各教科・科目の履修を容易にするための配慮事項は,従前と同じであり,①各 分野における基礎的又は中核的な科目を重点的に選択すること,②その内容については 基礎的・基本的な事項が確実に身に付くように取り扱うこと,③主として実験・実習に よって指導するなどの工夫をこらすことが示されている。①は職業に関する科目の選択, ②は職業に関する科目の内容の取扱い,③は指導方法の工夫についての配慮事項である。 今回の改訂では,農業科においては科目構成の見直しを図っているが,これらの科目 を網羅的に履修させるのではなく,生徒の実態等に応じて適切に選択して履修させるこ とが大切である。特に1~2単位程度の科目を多く履修させることは避けなければなら ない。また,内容や教材については一層精選し,十分時間をかけて理解させるようにし なければならない。さらに,生徒の理解,習得を容易にするため,いわゆる座学による 説明にとどめず,できるだけ実験・実習を通して体験的に学ばせる機会を多くすること に努める必要がある。 (1)就業体験活動による実習の代替 (ア)職業に関する各教科・科目については,就業体験活動をもって実習に替えること ができること。この場合,就業体験活動は,その各教科・科目の内容に直接関係が あり,かつ,その一部としてあらかじめ計画し,評価されるものであることを要す ること。 就業体験活動を推進する観点から,特に,職業に関する各教科・科目については,就 業体験活動をもって実習に替えることができることを示したものである。なお,この場 6 職業に関する各教科・科目についての配慮事項(総則第2款3 (7) エ)
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271 合の就業体験活動は,関係する科目の指導計画に適切に位置付けて行う必要がある。 就業体験活動は,生徒が実際のビジネスに触れることによる学習意欲の喚起,主体的 な職業選択の能力や高い職業意識の育成,異世代とのコミュニケーション能力の向上な どその教育上の意義が大きいものである。 農業科においては,従来から「課題研究」や「総合実習」などの各科目の学習活動の 一つとして,産業現場等における実習が行われてきている。これらの実践等を踏まえ, 社会人・職業人として自立していくためには,生徒一人一人の勤労観・職業観を育てる キャリア教育を充実することが重要であり,その一環として小学校での職場見学,中学 校での職場体験活動,高等学校での就業体験活動等を通じた体系的な指導も必要である。 また,就業体験活動を通じて実社会や職業と関わりをもち,高い職業意識,勤労観・職 業観,規範意識,コミュニケーション能力等に根ざした実践力を高めることに配慮する ことが必要である。 (2)ホームプロジェクト,学校農業クラブ (イ)農業,水産及び家庭に関する各教科・科目の指導に当たっては,ホームプロジェ クト並びに学校家庭クラブ及び学校農業クラブなどの活動を活用して,学習の効果 を上げるよう留意すること。この場合,ホームプロジェクトについては,その各教 科・科目の授業時数の10 分の2 以内をこれに充てることができること。 ホームプロジェクト及び学校農業クラブの活動を利用して,学習効果が上がるように 留意する。農業教育においては,従来からプロジェクト学習が効果的な学習法として定 着しており, 「農業と環境」をはじめ,多くの科目でプロジェクト学習を明確に位置付 けるなど重視している。また,学校農業クラブ活動については, 「農業と環境」 , 「課題 研究」 , 「総合実習」に位置付けている。生徒の自発的な学習活動を進めるためにもプロ ジェクト学習及び学校農業クラブ活動を促進するように配慮することが必要である。 ホームプロジェクトについては,その教科・科目の授業時数の10 分の2 以内をこれ に充てることができる。この規定は,教科・科目の授業時数のうちホームプロジェクト として生徒に家庭等において実習させてもよい許容の範囲を示すもので,例えば,4 単 位の「総合実習」においては,28 時間(140 × 2 /10 =28)までホームプロジェクト に充てることができることを示している。 (3 )定時制及び通信制の課程における実務等による職業に関する各教科・科目の履 修の一部代替 (ウ)定時制及び通信制の課程において,職業に関する各教科・科目を履修する生徒が, 現にその各教科・科目と密接な関係を有する職業(家事を含む。 )に従事している 場合で,その職業における実務等が,その各教科・科目の一部を履修した場合と同 様の成果があると認められるときは,その実務等をもってその各教科・科目の履修 の一部に替えることができること。 この規定は,定時制及び通信制の課程において,職に就き現にその各教科・科目と密 4 総則に関連 する事項
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272 第3章 各科目にわた る指導計画の 作成と内容の 取扱い 接な関係を有する生徒の実務等の体験を評価し,職業に関する科目の履修の一部に代替 できることを定めたものである。 生徒の校外における実務等を職業に関する各教科・科目の履修の一部として評価する ためには,次のような要件が満たされる必要がある。 ① 職業に関する科目が教育課程に位置付けられていること ② 職業に関する科目を履修する生徒が,現にその各教科・科目と密接な関係を有する 職業に従事していること ③ 生徒の職業等における実務等が,その各教科・科目の一部を履修したと同様の成果 があると認められること 農業科に属する科目においても,上記の要件が満たされる場合には,生徒の職業にお ける実務経験を科目の履修の一部に替えることができる。 代替の方法としては,生徒一人一人の職場における実務等の体験に応ずるよう,職業 に関する科目を網羅した教育課程を編成した上で,校外における実務等をそれらの各教 科・科目の増加単位として評価すること,あるいは学校における履修の一部を免除する ことなどが考えられるが,全ての生徒の職業に対応した職業に関する科目を網羅するこ とは実際上困難な場合が多い。したがって,各学校において学校や生徒の実態に応じて 教育課程の編成等が工夫されなければならないが,一般的には,生徒の職業に対応した 共通的な職業に関する科目をできるだけ設けて,実務等の評価を行う方法が考えられる。 生徒の職場における実務等と密接な関係を有する職業に関する科目を履修している場 合や,特定の企業等から比較的多数の生徒が通学し,職場における職種が一, 二に限定 され,実務等の経験が共通である場合などについては,生徒の職場における実務等を履 修の一部に替えることが比較的容易である。 なお,実務の内容,執務の状況等の把握については,生徒からのレポート,その各教 科・科目の担任による職場訪問,雇用主からの報告等によることになると考えられる。
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水産編 高等学校学習指導要領 (平成30 年告示) 解説 平成30 年7 月
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ま え が き  文部科学省では,平成30 年3 月30 日に学校教育法施行規則の一部改正と高等学校学習 指導要領の改訂を行った。新高等学校学習指導要領等は平成34 年度から年次進行で実施 することとし,平成31 年度から一部を移行措置として先行して実施することとしている。  今回の改訂は,平成28 年12 月の中央教育審議会答申を踏まえ, ① 教育基本法,学校教育法などを踏まえ,これまでの我が国の学校教育の実践や蓄積 を生かし,生徒が未来社会を切り拓 ひら くための資質・能力を一層確実に育成することを 目指す。その際,求められる資質・能力とは何かを社会と共有し,連携する「社会に 開かれた教育課程」を重視すること。 ② 知識及び技能の習得と思考力,判断力,表現力等の育成とのバランスを重視する平 成21 年改訂の学習指導要領の枠組みや教育内容を維持した上で,知識の理解の質を 更に高め,確かな学力を育成すること。 ③ 道徳教育の充実や体験活動の重視,体育・健康に関する指導の充実により,豊かな 心や健やかな体を育成すること。 を基本的なねらいとして行った。  本書は,大綱的な基準である学習指導要領の記述の意味や解釈などの詳細について説明 するために,文部科学省が作成するものであり,高等学校学習指導要領第3 章第4 節「水 産」について,その改善の趣旨や内容を解説している。  各学校においては,本書を御活用いただき,学習指導要領等についての理解を深め,創 意工夫を生かした特色ある教育課程を編成・実施されるようお願いしたい。  むすびに,本書「高等学校学習指導要領解説水産編」の作成に御協力くださった各位に 対し,心から感謝の意を表する次第である。   平成30 年7 月                     文部科学省初等中等教育局長                                髙 橋 道 和  
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  目次  第1章 総説 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 1   第1節 改訂の経緯及び基本方針 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 1 1 改訂の経緯 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 1 2 改訂の基本方針 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 2   第2節 水産科改訂の趣旨及び要点 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 6 1 水産科改訂の趣旨 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 6 2 水産科改訂の要点 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 10   第3節 水産科の目標 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 13   第4節 水産科の内容構成 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 15 1 科目構成 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 15 2 分野構成 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 16  第2章 水産科の各科目 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 17   第1節 水産海洋基礎 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 17 第1 目標 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 17 第2 内容とその取扱い ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 18 1 内容の構成及び取扱い ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 18 2 内容 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 19   第2節 課題研究 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 24 第1 目標 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 24 第2 内容とその取扱い ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 25 1 内容の構成及び取扱い ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 25 2 内容 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 26   第3節 総合実習 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 29 第1 目標 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 29 第2 内容とその取扱い ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 30 1 内容の構成及び取扱い ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 30 2 内容 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 31   第4節 海洋情報技術 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 38 第1 目標 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 38 第2 内容とその取扱い ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 39 1 内容の構成及び取扱い ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 39 2 内容 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 39   第5節 水産海洋科学 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 44 第1 目標 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 44 第2 内容とその取扱い ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 45 1 内容の構成及び取扱い ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 45 2 内容 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 45   第6節 漁業 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 51 第1 目標 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 51 第2 内容とその取扱い ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 52 1 内容の構成及び取扱い ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 52 2 内容 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 52   第7節 航海・計器 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 58 第1 目標 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 58
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第2 内容とその取扱い ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 59 1 内容の構成及び取扱い ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 59 2 内容 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 59   第8節 船舶運用 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 65 第1 目標 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 65 第2 内容とその取扱い ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 66  1 内容の構成及び取扱い ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 66  2 内容 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 66   第9節 船用機関 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 74 第1 目標 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 74 第2 内容とその取扱い ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 75 1 内容の構成及び取扱い ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 75 2 内容 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 75   第1 0節 機械設計工作 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 83 第1 目標 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 83 第2 内容とその取扱い ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 84 1 内容の構成及び取扱い ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 84 2 内容 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 84   第1 1節 電気理論 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 89 第1 目標 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 89 第2 内容とその取扱いʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 90 1 内容の構成及び取扱い ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 90 2 内容 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 90   第1 2節 移動体通信工学 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 96 第1 目標 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 96 第2 内容とその取扱い ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 97 1 内容の構成及び取扱い ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 97 2 内容 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ 97   第1 3節 海洋通信技術 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ104 第1 目標 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ104 第2 内容とその取扱いʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ105 1 内容の構成及び取扱い ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ105 2 内容 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ105   第1 4節 資源増殖 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ110 第1 目標 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ110 第2 内容とその取扱い ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ111 1 内容の構成及び取扱い ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ111 2 内容 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ111   第1 5節 海洋生物 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ118 第1 目標 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ118 第2 内容とその取扱い ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ119 1 内容の構成及び取扱い ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ119 2 内容 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ119   第1 6節 海洋環境 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ125 第1 目標 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ125 第2 内容とその取扱い ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ126 1 内容の構成及び取扱い ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ126 2 内容 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ126
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  第1 7節 小型船舶 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ132 第1 目標 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ132 第2 内容とその取扱い ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ133 1 内容の構成及び取扱い ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ133 2 内容 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ133   第1 8節 食品製造 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ139 第1 目標 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ139 第2 内容とその取扱い ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ140 1 内容の構成及び取扱い ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ140 2 内容 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ140   第1 9節 食品管理 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ146 第1 目標 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ146 第2 内容とその取扱い ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ147 1 内容の構成及び取扱い ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ147 2 内容 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ147   第20節 水産流通 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ153 第1 目標 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ153 第2 内容とその取扱い ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ154 1 内容の構成及び取扱い ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ154 2 内容 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ154   第21節 ダイビング ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ160 第1 目標 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ160 第2 内容とその取扱い ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ161 1 内容の構成及び取扱い ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ161 2 内容 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ161   第22節 マリンスポーツ ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ167 第1 目標 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ167 第2 内容とその取扱い ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ168 1 内容の構成及び取扱い ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ168 2 内容 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ168   第3章 各科目にわたる指導計画の作成と内容の取扱い ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ173   第1節 指導計画の作成に当たっての配慮事項 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ173 1 主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善 ʜʜʜʜʜʜʜʜ173 2 原則履修科目 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ174 3 実験・実習に配当する授業時数の確保 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ175 4 地域や産業界等との連携・交流 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ176 5 障害のある生徒などへの指導 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ176   第2節 内容の取扱いに当たっての配慮事項 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ178 1 言語活動の充実 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ178 2 コンピュータや情報通信ネットワークなどの活用 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜ178   第3節 実験・実習の実施に当たっての配慮事項 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ179   第4節 乗船実習の実施に当たっての配慮事項 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ180   第5節 総則に関連する事項 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ181 1 道徳教育との関連 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ181 2 専門教科・科目の標準単位数 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ181 3 学校設定科目 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ182 4 専門学科における各教科・科目の履修 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ182 5 職業教育を主とする専門学科における配慮事項 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ185
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6 職業に関する各教科・科目についての配慮事項 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ186  付録  付録1 学校教育法施行規則(抄)  ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ191  付録2 高等学校学習指導要領 第1章 総則 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ196  付録3 高等学校学習指導要領 第3章 第4節 水産 ʜʜʜʜʜʜʜʜʜʜ214  付録4 小・中学校における「道徳の内容」の学年段階・学校段階の一覧表 ʜ248
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1 1 改訂の経緯 及び基本方 針 1 改訂の経緯  今の子供たちやこれから誕生する子供たちが,成人して社会で活躍する頃には,我が国 は厳しい挑戦の時代を迎えていると予想される。生産年齢人口の減少,グローバル化の進 展や絶え間ない技術革新等により,社会構造や雇用環境は大きく,また急速に変化してお り,予測が困難な時代となっている。また,急激な少子高齢化が進む中で成熟社会を迎え た我が国にあっては,一人一人が持続可能な社会の担い手として,その多様性を原動力と し,質的な豊かさを伴った個人と社会の成長につながる新たな価値を生み出していくこと が期待される。  こうした変化の一つとして,進化した人工知能(AI)が様々な判断を行ったり,身近 な物の働きがインターネット経由で最適化されるIoT が広がったりするなど,Society5.0 とも呼ばれる新たな時代の到来が, 社会や生活を大きく変えていくとの予測もなされている。 また,情報化やグローバル化が進展する社会においては,多様な事象が複雑さを増し,変 化の先行きを見通すことが一層難しくなってきている。そうした予測困難な時代を迎える 中で,選挙権年齢が引き下げられ,更に平成34 (2022) 年度からは成年年齢が18 歳へと引 き下げられることに伴い,高校生にとって政治や社会は一層身近なものとなるとともに, 自ら考え,積極的に国家や社会の形成に参画する環境が整いつつある。  このような時代にあって,学校教育には,子供たちが様々な変化に積極的に向き合い, 他者と協働して課題を解決していくことや,様々な情報を見極め,知識の概念的な理解を 実現し,情報を再構成するなどして新たな価値につなげていくこと,複雑な状況変化の中 で目的を再構築することができるようにすることが求められている。  このことは,本来我が国の学校教育が大切にしてきたことであるものの,教師の世代交 代が進むと同時に,学校内における教師の世代間のバランスが変化し,教育に関わる様々 な経験や知見をどのように継承していくかが課題となり,子供たちを取り巻く環境の変化 により学校が抱える課題も複雑化・困難化する中で,これまでどおり学校の工夫だけにそ の実現を委ねることは困難になってきている。  こうした状況の下で,平成26 年11 月には,文部科学大臣から,新しい時代にふさわし い学習指導要領等の在り方について中央教育審議会に諮問を行った。中央教育審議会にお いては,2 年1 か月にわたる審議の末,平成28 年12 月21 日に「幼稚園,小学校,中学校, 高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申) 」 (以下「平成28 年12 月の中央教育審議会答申」という。 )を示した。  平成28 年12 月の中央教育審議会答申においては,“ よりよい学校教育を通じてよりよ 第1節 改訂の経緯及び基本方針 総説 第1章
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2 第1章 総 説 い社会を創る” という目標を学校と社会が共有し,連携・協働しながら,新しい時代に求 められる資質・能力を子供たちに育む「社会に開かれた教育課程」の実現を目指し,学習 指導要領等が,学校,家庭,地域の関係者が幅広く共有し活用できる「学びの地図」とし ての役割を果たすことができるよう,次の6 点にわたってその枠組みを改善するとともに, 各学校において教育課程を軸に学校教育の改善・充実の好循環を生み出す「カリキュラ ム・マネジメント」の実現を目指すことなどが求められた。 ①  「何ができるようになるか」 (育成を目指す資質・能力) ②  「何を学ぶか」 (教科等を学ぶ意義と,教科等間・学校段階間のつながりを踏まえた教 育課程の編成) ③  「どのように学ぶか」 (各教科等の指導計画の作成と実施,学習・指導の改善・充実) ④  「子供一人一人の発達をどのように支援するか」 (子供の発達を踏まえた指導) ⑤  「何が身に付いたか」 (学習評価の充実) ⑥  「実施するために何が必要か」 (学習指導要領等の理念を実現するために必要な方策)  これを踏まえ,文部科学省においては,平成29 年3 月31 日に幼稚園教育要領,小学校 学習指導要領及び中学校学習指導要領を,また,同年4 月28 日に特別支援学校幼稚部教 育要領及び小学部・中学部学習指導要領を公示した。  高等学校については,平成30 年3 月30 日に,高等学校学習指導要領を公示するととも に,学校教育法施行規則の関係規定について改正を行ったところであり,今後,平成34 (2022) 年4 月1 日以降に高等学校の第1 学年に入学した生徒(単位制による課程にあって は,同日以降入学した生徒(学校教育法施行規則第91 条の規定により入学した生徒で同 日前に入学した生徒に係る教育課程により履修するものを除く。 ) )から年次進行により段 階的に適用することとしている。また,それに先立って,新学習指導要領に円滑に移行す るための措置(移行措置)を実施することとしている。 2 改訂の基本方針  今回の改訂は平成28 年12 月の中央教育審議会答申を踏まえ,次の基本方針に基づき行 った。 (1)今回の改訂の基本的な考え方 ① 教育基本法,学校教育法などを踏まえ,これまでの我が国の学校教育の実践や蓄積 を生かし,生徒が未来社会を切り拓 ひら くための資質・能力を一層確実に育成することを 目指す。その際,求められる資質・能力とは何かを社会と共有し,連携する「社会に 開かれた教育課程」を重視すること。 ② 知識及び技能の習得と思考力,判断力,表現力等の育成とのバランスを重視する平 成21 年改訂の学習指導要領の枠組みや教育内容を維持した上で,知識の理解の質を 更に高め,確かな学力を育成すること。 ③ 道徳教育の充実や体験活動の重視,体育・健康に関する指導の充実により,豊かな 心や健やかな体を育成すること。
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3 1 改訂の経緯 及び基本方 針 (2)育成を目指す資質・能力の明確化  平成28 年12 月の中央教育審議会答申においては,予測困難な社会の変化に主体的に 関わり,感性を豊かに働かせながら,どのような未来を創っていくのか,どのように社 会や人生をよりよいものにしていくのかという目的を自ら考え,自らの可能性を発揮し, よりよい社会と幸福な人生の創り手となる力を身に付けられるようにすることが重要で あること,こうした力は全く新しい力ということではなく学校教育が長年その育成を目 指してきた「生きる力」であることを改めて捉え直し,学校教育がしっかりとその強み を発揮できるようにしていくことが必要とされた。また,汎用的な能力の育成を重視す る世界的な潮流を踏まえつつ,知識及び技能と思考力,判断力,表現力等とをバランス よく育成してきた我が国の学校教育の蓄積を生かしていくことが重要とされた。  このため「生きる力」をより具体化し,教育課程全体を通して育成を目指す資質・能 力を,ア「何を理解しているか,何ができるか(生きて働く「知識・技能」の習得) 」 , イ「理解していること・できることをどう使うか(未知の状況にも対応できる「思考 力・判断力・表現力等」の育成) 」 ,ウ「どのように社会・世界と関わり,よりよい人生 を送るか(学びを人生や社会に生かそうとする「学びに向かう力・人間性等」の涵 かん 養) 」 の三つの柱に整理するとともに,各教科等の目標や内容についても,この三つの柱に基 づく再整理を図るよう提言がなされた。  今回の改訂では,知・徳・体にわたる「生きる力」を生徒に育むために「何のために 学ぶのか」という各教科等を学ぶ意義を共有しながら,授業の創意工夫や教科書等の教 材の改善を引き出していくことができるようにするため,全ての教科等の目標や内容を 「知識及び技能」 , 「思考力,判断力,表現力等」 , 「学びに向かう力,人間性等」の三つ の柱で再整理した。 (3) 「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善の推進  子供たちが,学習内容を人生や社会の在り方と結び付けて深く理解し,これからの時 代に求められる資質・能力を身に付け,生涯にわたって能動的に学び続けることができ るようにするためには,これまでの学校教育の蓄積も生かしながら,学習の質を一層高 める授業改善の取組を活性化していくことが必要である。  特に,高等学校教育については,大学入学者選抜や資格の在り方等の外部要因によっ て,その教育の在り方が規定されてしまい,目指すべき教育改革が進めにくいと指摘さ れてきたところであるが,今回の改訂は,高大接続改革という,高等学校教育を含む初 等中等教育改革と,大学教育の改革,そして両者をつなぐ大学入学者選抜改革という一 体的な改革や,更に,キャリア教育の視点で学校と社会の接続を目指す中で実施される ものである。改めて,高等学校学習指導要領の定めるところに従い,各高等学校におい て生徒が卒業までに身に付けるべきものとされる資質・能力を育成していくために,ど のようにしてこれまでの授業の在り方を改善していくべきかを,各学校や教師が考える 必要がある。
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4 第1章 総 説  また,選挙権年齢及び成年年齢が18 歳に引き下げられ,生徒にとって政治や社会が 一層身近なものとなる中,高等学校においては,生徒一人一人に社会で求められる資 質・能力を育み,生涯にわたって探究を深める未来の創り手として送り出していくこと が,これまで以上に重要となっている。 「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた 授業改善(アクティブ・ラーニングの視点に立った授業改善)とは,我が国の優れた教 育実践に見られる普遍的な視点を学習指導要領に明確な形で規定したものである。  今回の改訂では,主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を進める際の指 導上の配慮事項を総則に記載するとともに,各教科等の「第3 款 各科目にわたる指導 計画の作成と内容の取扱い」等において,単元や題材など内容や時間のまとまりを見通 して,その中で育む資質・能力の育成に向けて,主体的・対話的で深い学びの実現に向 けた授業改善を進めることを示した。  その際,以下の点に留意して取り組むことが重要である。 ① 授業の方法や技術の改善のみを意図するものではなく,生徒に目指す資質・能力を 育むために「主体的な学び」 , 「対話的な学び」 , 「深い学び」の視点で,授業改善を進 めるものであること。 ② 各教科等において通常行われている学習活動(言語活動,観察・実験,問題解決的 な学習など)の質を向上させることを主眼とするものであること。 ③ 1 回1 回の授業で全ての学びが実現されるものではなく,単元や題材など内容や時 間のまとまりの中で,学習を見通し振り返る場面をどこに設定するか,グループなど で対話する場面をどこに設定するか,生徒が考える場面と教師が教える場面とをどの ように組み立てるかを考え,実現を図っていくものであること。 ④ 深い学びの鍵として「見方・考え方」を働かせることが重要になること。各教科等 の「見方・考え方」は, 「どのような視点で物事を捉え,どのような考え方で思考し ていくのか」というその教科等ならではの物事を捉える視点や考え方である。各教科 等を学ぶ本質的な意義の中核をなすものであり,教科等の学習と社会をつなぐもので あることから,生徒が学習や人生において「見方・考え方」を自在に働かせることが できるようにすることにこそ,教師の専門性が発揮されることが求められること。 ⑤ 基礎的・基本的な知識及び技能の習得に課題がある場合には,それを身に付けさせ るために,生徒の学びを深めたり主体性を引き出したりといった工夫を重ねながら, 確実な習得を図ることを重視すること。 (4)各学校におけるカリキュラム・マネジメントの推進  各学校においては,教科等の目標や内容を見通し,特に学習の基盤となる資質・能力 (言語能力,情報活用能力(情報モラルを含む。以下同じ。 ) ,問題発見・解決能力等) や現代的な諸課題に対応して求められる資質・能力の育成のために教科等横断的な学習 を充実することや,主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を単元や題材な ど内容や時間のまとまりを見通して行うことが求められる。これらの取組の実現のため には,学校全体として,生徒や学校,地域の実態を適切に把握し,教育内容や時間の配
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5 1 改訂の経緯 及び基本方 針 分,必要な人的・物的体制の確保,教育課程の実施状況に基づく改善などを通して,教 育活動の質を向上させ,学習の効果の最大化を図るカリキュラム・マネジメントに努め ることが求められる。  このため,総則において, 「生徒や学校,地域の実態を適切に把握し,教育の目的や 目標の実現に必要な教育の内容等を教科等横断的な視点で組み立てていくこと,教育課 程の実施状況を評価してその改善を図っていくこと,教育課程の実施に必要な人的又は 物的な体制を確保するとともにその改善を図っていくことなどを通して,教育課程に基 づき組織的かつ計画的に各学校の教育活動の質の向上を図っていくこと(以下「カリキ ュラム・マネジメント」という。 )に努める」ことについて新たに示した。 (5)教育内容の主な改善事項  このほか,言語能力の確実な育成,理数教育の充実,伝統や文化に関する教育の充実, 道徳教育の充実,外国語教育の充実,職業教育の充実などについて,総則や各教科・科 目等(各教科・科目,総合的な探究の時間及び特別活動をいう。以下同じ。 )において, その特質に応じて内容やその取扱いの充実を図った。
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6 第1章 総 説 1 水産科改訂の趣旨  平成28 年12 月21 日の中央教育審議会答申では,学習指導要領改訂の基本的な方向性, 各教科等における改訂の具体的方向性などが示されている。このたびの高等学校水産科の 改訂は,これらを踏まえて行ったものである。  中央教育審議会の答申の中で,職業に関する各教科・科目の改善については,次のよう に示された。  Ⅰ 職業に関する各教科・科目    (1)現行学習指導要領の成果と課題を踏まえた産業教育の目標の在り方 ①現行学習指導要領の成果と課題 ○ 農業,工業,商業,水産,家庭,看護,情報,福祉から成る職業に関する 各教科(以下「職業に関する各教科」という。 )においては,各教科の指導 を通して,関連する職業に従事する上で必要な資質・能力を育み,社会や産 業を支える人材を輩出してきたが,科学技術の進展,グローバル化,産業構 造の変化等に伴い,必要とされる専門的な知識・技術も変化するとともに高 度化しているため,これらへの対応が課題となっている。 ○ また,職業に関する各教科においては,専門的な知識・技術の定着を図る とともに,多様な課題に対応できる課題解決能力を育成することが重要であ り,地域や産業界との連携の下,産業現場等における長期間の実習等の実践 的な学習活動をより一層充実させていくことが求められている。あわせて, 職業学科に学んだ生徒の進路が多様であることから,大学等との接続につい ても重要な課題となっている。 ②課題を踏まえた産業教育の目標の在り方 ○ このような中,産業教育全体の目標の考え方については,産業界で必要と される資質・能力を見据えて,三つの柱に沿って次のように整理することが できる。   職業に関する各教科の「見方・考え方」を働かせた実践的・体験的な学習 活動を通して,社会を支え産業の発展を担う職業人として必要な資質・能力 を次のとおり育成することを目指す。  ・ 各職業分野について(社会的意義や役割を含め)体系的・系統的に理解 させるとともに,関連する技術を習得させる。  ・ 各職業分野に関する課題(持続可能な社会の構築,グローバル化・少子 高齢化への対応等)を発見し,職業人としての倫理観をもって合理的かつ 創造的に解決する力を育成する。  ・ 職業人として必要な豊かな人間性を育み,よりよい社会の構築を目指し 第2節 水産科改訂の趣旨及び要点
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7 2 水産科改訂 の趣旨及び 要点 て自ら学び,産業の振興や社会貢献に主体的かつ協働的に取り組む態度を 育成する。 ○ これらを構成する要素のうち,例えば, 「倫理観」や「合理的」等は,従 来,学習指導要領において明示してきた重要な要素である。一方で, 「職業 人として必要な豊かな人間性を育み,よりよい社会の構築を目指して自ら学 ぶ」 , 「社会貢献」 , 「協働的に取り組む」は,社会や産業における新たな課題 の解決に向けて多くの人と協力して挑戦し粘り強く学び続けることや,広い 視野でよりよい社会の構築に取り組むことが重要であることから明示した。 ③産業教育における「見方・考え方」 ○ また,産業教育の特質に応じた「見方・考え方」については,教科ならで はの物事を捉える視点や考え方であり,三つの柱で整理していく資質・能力 を育むため,各教科に関連する職業を踏まえて検討を行った。   その結果,社会や産業に関する事象を,職業に関する各教科の本質に根ざ した視点で捉え,人々の健康の保持増進や快適な生活の実現,社会の発展に 寄与する生産物や製品,サービスの創造や質の向上等と関連付けることなど に整理することができる。 ○ 各教科の目標や「見方・考え方」については,前述の産業教育全体の目標 の考え方や「見方・考え方」を踏まえ,各産業の特質に応じて整理すること が必要である。    (2)具体的な改善事項 ①教育課程の示し方の改善  ⅰ)資質・能力を育成する学びの過程についての考え方 ○ 前述の三つの柱に沿った資質・能力を育成するためには,産業教育にお いて従前から実施されている具体的な課題を踏まえた課題解決的な学習の 充実が求められる。 ○ このような学習については,解決すべき職業に関する課題を把握する 「課題の発見」 ,関係する情報を収集して予想し仮説を立てる「課題解決の 方向性の検討」 , 「計画の立案」 ,計画に基づき解決策を実践する「計画の 実施」 ,結果を基に計画を検証する「振り返り」 ,といった過程に整理する ことができる。この過程においては,例えば, 「課題の発見」では,学び に向かう力や人間性として,よりよい社会の構築に向け課題を発見しよう とする態度が, 「計画の実施」では,思考力・判断力・表現力として,専 門的な知識・技術を活用する力が育まれることが想定される。 ○ ここで整理した過程はあくまでも例示であり,各過程を行き来して学習 活動が行われるものであることに留意する必要があるが,これらの過程に おいて,先述した三つの柱に基づき整理した資質・能力の育成を図ること ができる。
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8 第1章 総 説  ⅱ)科目構成の構造 ○ 今回の改訂においては,産業教育で育成する資質・能力を踏まえ,各教 科で指導すべき共通の内容を整理し,これを各教科共通の基礎的・基本的 な内容として各教科の原則履修科目などの基礎的科目において扱うことが 求められる。 ○ また,産業教育に関する各教科の科目構成については,基礎的科目にお いて各教科に関する基礎的・基本的な内容を理解させ,それを基盤として 専門的な学習につなげ, 「課題研究」等で更に専門的な知識・技術の深化, 総合化を図るという現行の考え方を継続し,改訂を進めることが必要であ る。 ②教育内容の改善・充実 ○ 今回の改訂においては,前述のような資質・能力の育成を前提に,社会や 産業の変化の状況等や学校における指導の実情を踏まえて,持続可能な社会 の構築,情報化の一層の進展,グローバル化などへの対応についての視点か ら改善を図ることが求められる。また,こうした社会や産業の変化の状況等 に対応する観点からも,経営等に関する指導についてはより重要となってお り,例えば,農林水産業などの各産業においては,経営感覚に優れた次世代 の人材の育成に向けた指導の充実などが求められる。 ③学習・指導の改善充実や教育環境の充実等  ⅰ) 「主体的・対話的で深い学び」の実現 ○ 産業教育においては,企業等と連携した商品開発,地域での販売実習, 高度熟練技能者による指導など,地域や産業界等と連携した実験・実習な どの実践的,体験的な学習活動を重視してきた。 ( 「主体的な学び」の視点) ・ 企業等での高度な技術等に触れる体験は,キャリア形成を見据えて生 徒の学ぶ意欲を高める「主体的な学び」につながるものである。 ( 「対話的な学び」の視点) ・ 産業界関係者等との対話,生徒同士の協議等は,自らの考えを広げ深 める「対話的な学び」につながるものである。 ( 「深い学び」の視点) ・ また,社会や産業の具体的な課題に取り組むに当たっては,各教科等 の特質に応じた「見方・考え方」を働かせ,よりよい製品の製造やサー ビスの創造等を目指すといった「深い学び」につなげていくことが重要 である。 「深い学び」を実現する上では,課題の解決を図る学習や臨床 の場で実践を行う「課題研究」等の果たす役割が大きい。 ○ これらの学びを実現するためには,地域や産業界等との連携が重要であ り,産業教育においては,今後とも地域や産業界等と連携した実験・実習 などの実践的,体験的な学習活動を充実し,アクティブ・ラーニングの三
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9 2 水産科改訂 の趣旨及び 要点 つの視点から,これらの学習活動を再確認しながら,不断の授業改善に取 り組むことが求められる。  ⅱ)教育環境の充実    (産業界等との連携) ○ 地域や産業界等と連携した実験・実習などの実践的,体験的な学習活 動は,アクティブ・ラーニングの三つの視点を踏まえた学びを実現する 上でも重要なものであることから,地域や産業界等との連携がより一層 求められる。このような連携を促進するためには,各地域の産業教育振 興会等と協力して,定期的に学校と産業界等が情報交換を行うとともに, 教育委員会,地方公共団体の関係部局,経済団体等が協力し,インター ンシップの受入れや外部講師の派遣の調整を行うなどといった取組も期 待される。   また, (2)①ⅱ)で述べた職業に関する各教科で指導すべき共通の 内容については,より充実した指導を行うため,例えば,関係の団体に 働き掛け,校長会等の協力を得ながら副教材を作成することなど,各学 校の取組を支援することが期待される。    (中学校や大学等との接続) ○ 研修を通じて中学校の教員が職業の多様性や専門高校について理解を 深めることや,産業教育フェア等の取組によって,中学生の主体的な進 路選択に資するよう,専門高校での学習に対する理解・関心を高めるこ とも求められる。 ○ 現在実施されている大学入学者選抜は,共通教科を中心としているこ とが多いため,アドミッション・ポリシー等に応じ,専門高校での学び を積極的に評価できる入学者選抜の実施の拡大が望まれる。また,農業 大学校や職業能力開発大学校などの省庁系大学校等との連携・協力の促 進等も求められる。    (教員研修等の充実) ○ 教員の資質・能力を向上させるための研修の機会等の充実,大学が教 育委員会等と連携した教員養成課程の充実,実務経験が豊富な社会人の 活用が求められる。    (実験・実習の環境整備) ○ 計画的な施設・設備の改善・充実・更新,生産や販売実習等の学習活 動を円滑に実施するための地方公共団体における関係する財務規則等の 整理などの環境整備が求められる。  また,水産科に関しては,次のように示された。  Ⅰ 職業に関する各教科・科目    (2) 具体的な改善事項 ②教育内容の改善・充実