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民法第158条 条文 - 第158条 - 時効の期間の満了前6箇月以内の間に未成年者又は成年被後見人に法定代理人がないときは、その未成年者若しくは成年被後見人が行為能力者となった時又は法定代理人が就職した時から6箇月を経過するまでの間は、その未成年者又は成年被後見人に対して、時効は、完成しない。 - 未成年者又は成年被後見人がその財産を管理する父、母又は後見人に対して権利を有するときは、その未成年者若しくは成年被後見人が行為能力者となった時又は後任の法定代理人が就職した時から6箇月を経過するまでの間は、その権利について、時効は、完成しない。 改正経緯 2017年改正により、見出しの「時効の停止」を「時効の完成猶予」に改正 解説 被保佐人・被補助人は自ら時効の完成を阻害させることができるので、1項の対象からはずれている。 参照条文 判例 - 損害賠償(最高裁判決 平成10年06月12日)民法第724条 - 不法行為を原因として心神喪失の常況にある被害者の損害賠償請求権と民法724条後段の除斥期間 - 不法行為の被害者が不法行為の時から20年を経過する前6箇月内において右不法行為を原因として心神喪失の常況にあるのに法定代理人を有しなかった場合において、その後当該被害者が禁治産宣告を受け、後見人に就職した者がその時から6箇月内に右不法行為による損害賠償請求権を行使したなど特段の事情があるときは、民法158条の法意に照らし、同法724条後段の効果は生じない。
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条文 (補助開始の審判) - 第15条 - 精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判をすることができる。ただし、第7条又は第11条本文に規定する原因がある者については、この限りでない。 - 本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない。 - 補助開始の審判は、第17条第1項の審判又は第876条の9第1項の審判とともにしなければならない。 解説 - 1項 - 民法第7条(後見開始の審判) - 民法第11条(保佐開始の審判) - 3項 - 民法第17条(補助人の同意を要する旨の審判等) - 第876条の9(補助人に代理権を付与する旨の審判) 参照条文 - 補助関連 - 民法第7条(後見開始の審判) - 民法第11条(保佐開始の審判) - 知的障害者福祉法第28条
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条文 - 第160条 - 相続財産に関しては、相続人が確定した時、管理人が選任された時又は破産手続開始の決定があった時から6箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。 改正経緯 2017年改正により、見出しの「時効の停止」を「時効の完成猶予」に改正 解説 相続財産に関する権利関係の時効の完成猶予につき規定している。 参照条文 判例 - 土地所有権確認、土地所有権移転登記手続請求(最高裁判決 昭和35年09月02日)民法第162条2項 - 相続財産の管理人選任前取得時効期間が満了した場合と民法第160条 - 民法第160条は、相続財産の管理人の選任前、相続財産たる土地を、所有の意思をもつて、平穏、公然、善意無過失で10年間占有した場合にも、その適用があるものと解すべきである。 - 損害賠償請求事件(最高裁判決 平成21年04月28日)民法第724条 - 被害者を殺害した加害者が被害者の相続人において被害者の死亡の事実を知り得ない状況を殊更に作出したため相続人がその事実を知ることができなかった場合における上記殺害に係る不法行為に基づく損害賠償請求権と民法724条後段の除斥期間 - 被害者を殺害した加害者が被害者の相続人において被害者の死亡の事実を知り得ない状況を殊更に作出し,そのために相続人はその事実を知ることができず,相続人が確定しないまま上記殺害の時から20年が経過した場合において,その後相続人が確定した時から6か月内に相続人が上記殺害に係る不法行為に基づく損害賠償請求権を行使したなど特段の事情があるときは,民法160条の法意に照らし,同法724条後段の効果は生じない。
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条文 (天災等による時効の完成猶予) - 第161条 - 時効の期間の満了の時に当たり、天災その他避けることのできない事変のため第147条第1項各号又は第148条第1項各号に掲げる事由に係る手続を行うことができないときは、その障害が消滅した時から3箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。 改正経緯 - 2017年改正により、見出しの「時効の停止」を「時効の完成猶予」に改正、訴訟等による時効障害の概念が明確化されたのに伴い、参照条項を指定。 - 完成猶予の期間を、2週間から3ヶ月に延長。 (旧規定) - 第161条 - 時効の期間の満了の時に当たり、天災その他避けることのできない事変のため時効を中断することができないときは、その障害が消滅した時から二週間を経過するまでの間は、時効は、完成しない。 解説 時効の完成猶予についての規定の一つである。
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条文 - 第162条 - 20年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。 - 10年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。 改正経緯 - 平成16年12月1日法律第147号による改正 - 民法現代語化に伴い、「確立された判例・通説」に基づき、第2項の「不動産」が「物」に改められ、動産も10年の取得時効にかかることが明文化された。 - (改正前の本条) - 二十年間所有ノ意思ヲ以テ平穏且公然ニ他人ノ物ヲ占有シタル者ハ其所有権ヲ取得ス - 十年間所有ノ意思ヲ以テ平穏且公然ニ他人ノ不動産ヲ占有シタル者カ其占有ノ始善意ニシテ且過失ナカリシトキハ其不動産ノ所有権ヲ取得ス 解説 本条は、長期取得時効(1項)及び短期取得時効(2項)の要件について定める。 第1項 第1項は長期取得時効の要件を定める。長期取得時効は時効取得者の主観的要件を問わない。 - 20年間の占有 - 占有は代理占有によるものでもよい。 - 占有者の承継人は、その選択に従い、自己の占有のみを主張し、又は自己の占有に前の占有者の占有を併せて主張することができる(第187条第1項)。この場合、占有者の善意・無過失は、その主張にかかる最初の占有者につきその占有開始の時点において判定することができる(最判昭和53年03月06日)。 - 所有の意思 - 所有の意思は民法第186条1項により推定される。売買・交換などの取引行為を原因として占有を開始した場合や、相続開始によってその物を相続したと信じて占有開始した場合(最判昭和47年9月8日民集26-7-1348)などは「所有の意思」があったとされる。一方、賃借人は「所有の意思」がないとされる(最判昭和13年7月7日民集17-1360)。 - 所有の意思が覆される例 - - 占有者がその性質上所有の意思のないものとされる権原に基づき占有を取得した事実が証明されるか、又は占有者が占有中、真の所有者であれば通常はとらない態度を示し、若しくは所有者であれば当然とるべき行動に出なかつたなど、外形的客観的にみて占有者が他人の所有権を排斥して占有する意思を有していなかつたものと解される事情が証明されるとき(最判昭和58年03月24日) - 所有の意思は民法第186条1項により推定される。売買・交換などの取引行為を原因として占有を開始した場合や、相続開始によってその物を相続したと信じて占有開始した場合(最判昭和47年9月8日民集26-7-1348)などは「所有の意思」があったとされる。一方、賃借人は「所有の意思」がないとされる(最判昭和13年7月7日民集17-1360)。 - 平穏・公然性 - 平穏・公然性も民法第186条1項により推定される。 - 他人の物 - 他人の物との要件は、通常の場合のことであるので、取得時効の対象物が自己の物であっても時効取得できる。 - 公共用物も、公共用物としての機能を喪失していた場合には時効取得できる(最判昭和44年05月22日、最判昭和51年12月24日民集30-11-1104)。 - 法律の適用により、占有する土地の交換分合が生じた場合であっても、自主占有が継続しているときは、取得時効の成否に関しては両土地の占有期間を通算することができる(最判昭和54年09月07日)。 第2項 第2項は短期取得時効の要件を定める。占有開始時に善意・無過失であったときは、10年での時効取得が認められる。 - 善意・無過失 - 占有開始時に善意・無過失である必要がある。善意は民法第186条1項により推定される。 - 無過失の立証責任は短期取得時効を主張する者にある(最判昭和43年12月19日、同旨:最判昭和46年11月11日)。 過失があるとされる例 - 相続人が、相続時に相続土地について登記簿に基づいた実地の調査を行わず、相続により自己の所有に属すると信じて占有をはじめた場合(最判昭和43年3月1日) - 賃借地の一部に属するものと信じて賃貸人以外の第三者所有の隣地を占有していた者が、国に物納された右賃借地の払下を受け、以後所有の意思をもつて右第三者の所有地を占有するに至つたという事案で、払下を受けるにあたつてその払下土地の境界を隣接地所有者や公図等について確認する等の調査をしないでそう信じた場合(最判昭和50年04月22日) - 公の許認可の不存在の認識 - 農地の譲受人が、当該譲渡について必要な農地調整法4条1項所定の知事の許可を受けていないことを知ってまたはその事実に関し無関心で、右農地を占有した場合(最判昭和59年05月25日) 効果 - 時効取得の物権変動としての法的性質は原始取得であるとされる。 - 不動産の時効取得の効果は、登記なくして第三者に対抗できない(177条)。 - 不動産を時効取得したとき、その不動産に抵当権がついていた場合、時効取得した者が、債務者又は抵当権設定者でなければ、抵当権は、時効取得によって消滅する(397条)。 参照条文 判例 - 土地明渡請求(最高裁判決 昭和33年08月28日) - 不動産所有権の時効取得と対抗要件。 - 時効により不動産の所有権を取得しても、その登記がないときは、時効完成後旧所有者から所有権を取得し登記を経た第三者に対し、その善意であると否とを問わず、所有権の取得を対抗できない。 - 土地所有権確認等請求(最高裁判決 昭和35年07月27日)民法第144条 - 取得時効の時効期間の起算点。 - 時効期間は、時効の基礎たる事実の開始された時を起算点として計算すべきもので、時効援用者において起算点を選択し、時効完成の時期を早めたり遅らせたりすることはできない。 - 土地所有権確認、土地所有権移転登記手続請求(最高裁判決 昭和35年09月02日)民法第160条 - 民法第162条第2項の無過失の事例 - 空襲により一家全滅した本家の再興のため、親族の協議により相続人に選ばれて本家の家業を継ぎ、相続財産に属する土地を占有している22歳の女子につき、原審認定のような事実関係(原判決理由参照)があるときは、同人がその土地の所有権を取得したものと信ずるにつき過失はないものと解すべきである。 - 所有権移転登記手続履行請求 (最高裁判決集 昭和36年07月20日) - 時効による不動産の所有権取得とその対抗要件。 - 不動産の取得時効が完成しても、その登記がなければ、その後に所有権取得登記を経由した第三者に対しては時効による権利の取得を対抗しえないが、第三者の右登記後に占有者がなお引続き時効取得に要する期間占有を継続した場合には、その第三者に対し、登記を経由しなくとも時効取得をもつて対抗しうるものと解すべきである。 - 所有権確認並びに境界確認請求(最高裁判決 昭和38年12月13日) - 他人所有地の立木についての取得時効の成否。 - 他人の所有する土地に権原によらずして自己所有の樹木を植え付けてその時から右立木のみにつき所有の意思をもつて平穏かつ公然に20年間占有した者は、時効により右立木の所有権を取得する。 - 立木伐採禁止請求(最高裁判決 昭和39年12月11日) - 他人所有地の立木についての取得時効の成否。 - 他人の所有地の立木のみについても、取得時効の要件を具備するかぎり、その所有権を取得し得るものと解するのを相当とする。 - 自然生の松立木をその植林にかかる松立木と同様自己の所有として平穏公然に管理(占有)育成してきた。 - 所有権移転登記抹消登記手続請求(最高裁判決 昭和41年04月15日) - 民法第162条第2項にいう平穏の占有の意義 - 民法第162条第2項にいう平穏の占有とは、占有者がその占有を取得し、または、保持するについて、暴行強迫などの違法強暴の行為を用いていない占有を指称するものであり、不動産所有者その他占有の不法を主張する者から、異議をうけ、不動産の返還、占有者名義の所有権移転登記の抹消手続方の請求があつても、これがため、その占有が平穏でなくなるものでない。 - 損害賠償請求(最高裁判決 昭和41年10月07日) - 不動産の所有権の取得時効の要件である自主占有をすることができる者の年齢 - 15歳位に達した者は、特段の事情のないかぎり、不動産について、所有権の取得時効の要件である自主占有をすることができる。 - 所有権確認請求(最高裁判決 昭和41年11月22日) 民法第177条 - 取得時効と登記 - 不動産の時効取得者は、取得時効の進行中に原権利者から当該不動産の譲渡を受けその旨の移転登記を経由した者に対しては、登記がなくても、時効による所有権の取得を主張することができる。 - 家屋収去土地明渡請求(最高裁判決 昭和42年03月31日) - 借地権の無断譲渡が背信行為にあたる場合は譲受人に賃料支払能力がないときにかぎられるか - 借地権の無断譲渡がされた場合、それが賃貸人に対する賃借人の背信行為となるのは、賃貸人が譲受人の賃料の支払能力、態度に不安を感じる場合にかぎられない。 - 家屋明渡請求(最高裁判決 昭和42年07月21日) - 所有権に基づいて不動産を占有する者と民法第162条の適用の有無 - 所有権に基づいて不動産を占有する者についても、民法第162条の適用がある。 - 原判決において、上告人Aが訴外Dから本件家屋の贈与を受けた事実を確定したうえ、所有権について取得時効が成立するためには、占有の目的物が他人の物であることを要するという見解のもとに、上告人Aが時効によつて本件家屋の所有権を取得した旨の上告人らの抗弁に対し、上告人Aは自己の物の占有者であり、取得時効の成立する余地はない旨説示して、右抗弁を排斥した判旨に対して。 - 建物収去、土地明渡請求(最高裁判決 昭和42年07月21日)民法第177条 - 不動産の取得時効完成前に原所有者から所有権を取得した者が時効完成後に移転登記を経由した場合と民法第177条 - 不動産の取得時効完成前に原所有者から所有権を取得し時効完成後に移転登記を経由した者に対し、時効取得者は、登記なくして所有権を対抗することができる。 - 土地境界確認等請求(最高裁判決 昭和43年03月01日) - 土地所有権の時効取得の要件として無過失でないとされた事例 - 相続人が、登記簿に基づいて実地に調査すれば、相続により取得した土地の範囲が甲地を含まないことを容易に知ることができたにもかかわらず、この調査をしなかつたために、甲地が相続した土地に含まれ、自己の所有に属すると信じて占有をはじめたときは、特段の事情のないかぎり、相続人は右占有のはじめにおいて無過失ではないと解するのが相当である。 - 家屋収去土地明渡請求(最高裁判決 昭和43年12月19日) - 民法第162条第2項の10年の取得時効と無過失の立証責任 - 民法第162条第2項の10年の取得時効を主張するものは、その不動産を自己の所有と信じたことにつき無過失であつたことの立証責任を負うものである。 - 所有権移転登記手続請求(最高裁判決 昭和43年12月24日)民法第397条 - 抵当不動産の占有と民法第162条第2項にいう善意・無過失 - 民法第162条第2項にいう占有者の善意・無過失とは、自己に所有権があるものと信じ、かつ、そのように信ずるにつき過失のないことをいい、占有者において、占有の目的不動産に抵当権が設定されていることを知り、または、不注意により知らなかつた場合でも、ここにいう善意・無過失の占有者ということを妨げない。 - 土地所有権確認等請求(最高裁判決 昭和44年05月22日) - 旧都市計画法(大正8年法律第36号)3条に基づき建設大臣が決定した都市計画において公園とされている市有地について民法162条による取得時効の成立が認められた事例 - 旧都市計画法(大正8年法律第36号)3条に基づき建設大臣が決定した都市計画において公園とされている市有地であつても、外見上公園の形態を具備しておらず、したがつて、現に公共用財産としての使命をはたしていないかぎり、民法162条に基づく取得時効の成立を妨げない。 - 所有権移転登記手続請求(最高裁判決 昭和44年12月18日) - 売買契約の当事者間における買主の所有権取得時効の援用 - 不動産を買い受け所有権に基づいてこれを占有する買主は、売主との関係においても、自己の占有を理由として右不動産につき時効による所有権の取得を主張することができる。 - 占有回収等請求(最高裁判決 昭和45年06月18日)民法第186条 - 占有における所有の意思の有無の判断基準 - 占有における所有の意思の有無は、占有取得の原因たる事実によつて外形的客観的に定められるべきものであるから、賃貸借が法律上効力を生じない場合にあつても、賃貸借により取得した占有は他主占有というべきである。 - 建物収去土地明渡、所有権確認等請求(最高裁判決 昭和45年10月29日) - 所有の意思をもつて占有するものと認められた事例 - 占有における所有の意思の有無は、占有取得の原因たる事実によつて客観的に定められるべきものであるから、所有権譲受を内容とする交換契約に基づき開始した占有は、所有の意思をもつてする占有である。 - 所有権移転登記手続請求(最高裁判決 昭和45年12月18日)土地区画整理法第99条 - 仮換地の占有と従前の土地の時効取得 - 仮換地の指定後に、従前の土地を所有する意思をもつて当該仮換地の占有を始めた者は、換地処分の公告の日までに民法162条所定の要件をみたしたときは、時効によつて右従前の土地の所有権を取得する。 - 仮換地の特定の一部分の占有が開始されたのち仮換地の分割による変更指定がなされ右占有部分が分筆後の従前の土地に対応する仮換地として指定された場合と右分筆後の従前の土地の時効取得 - 一筆の従前の土地甲地の特定の一部分である乙部分を所有する意思をもつて、乙部分に位置する甲地の仮換地の特定の一部分である丙部分の占有を開始し、のちに、乙部分が分筆され乙地となり、これに対応して仮換地も分割による変更指定がなされ、丙部分が乙地に対応する仮換地として指定された場合に、占有者が所有の意思をもつて、平穏公然に仮換地を占有した期間が、右の分割による変更指定の前後を通じ民法一六二条所定の期間に達し、右期間の満了が換地処分の公告前であるときは、占有者は時効によつて乙地の所有権を取得する。 - 仮換地の占有と従前の土地の時効取得 - 土地所有権確認等所有権取得登記抹消登記手続本訴並びに建物収去明渡反訴請求 土地所有権確認等所有権取得登記抹消登記手続本訴並びに建物収去明渡反訴請求(最高裁判決 昭和46年11月05日) - 不動産の二重売買と所有権の取得時効の起算点 - 不動産が二重に売買された場合において、買主甲がその引渡を受けたが、登記欠缺のため、その所有権の取得をもつて、のちに所有権取得登記を経由した買主乙に対抗することができないときは、甲の所有権の取得時効は、その占有を取得した時から起算すべきものである。 - 建物収去土地明渡本訴ならびに所有権確認等反訴請求(最高裁判決 昭和46年11月26日) 特別都市計画法第13条,特別都市計画法第14条,土地区画整理法第99条,民法第163条 - 換地予定地指定通知後の従前の土地の占有と従前の土地に対する所有権地上権または賃借権の取得時効の成否 - 特別都市計画法13条所定の換地予定地の指定通知が従前の土地の所有者に対してなされたのちにおいては、当該換地予定地を占有するのでなければ、従前の土地を占有したからといつて、その従前の土地の所有権地上権または賃借権を時効によつて取得することはできない。 - 土地所有権移転登記手続請求(最高裁判決 昭和47年09月08日)民法第185条,民法第186条1項,民法第187条1項 - 共同相続人の一人が相続財産につき単独所有者としての自主占有を取得したと認められた事例 - 共同相続人の一人が、単独に相続したものと信じて疑わず、相続開始とともに相続財産を現実に占有し、その管理、使用を専行してその収益を独占し、公租公課も自己の名でその負担において納付してきており、これについて他の相続人がなんら関心をもたず、異議も述べなかつた等原判示の事情のもとにおいては、前記相続人はその相続のときから相続財産につき単独所有者としての自主占有を取得したものというべきである。 - 土地並びに地上立木所有権確認請求(最高裁判決 昭和48年10月05日) - 境界確定等請求(最高裁判決 昭和50年04月22日) - 土地所有権の時効取得の要件としての無過失を認めるに足りないとされた事例 - 賃借地の一部に属するものと信じて賃貸人以外の第三者所有の隣地を占有していた者が、国に物納された右賃借地の払下を受け、以後所有の意思をもつて右第三者の所有地を占有するに至つたというだけでは、これを自己の所有と信ずるにつき過失がなかつたとすることはできない。 - 被上告人が前示のような経緯で国から本件係争の土地ほか一筆の土地の払下を受けその所有権を取得するとともに本件係争部分を右払下を受けた土地の一部であると信じたとしても、右払下を受けるにあたつてその払下土地の境界を隣接地所有者や公図等について確認する等の調査をしないでそう信じたとすれば過失がなかつたとはいえない。 - 土地所有権移転登記手続等請求(最高裁判決 昭和51年12月02日)民法第185条 - 所有者の無権代理人から農地を買い受けた小作人が新権原による自主占有を開始したものとされ右占有の始め過失がないとされた事例 - 甲所有の農地を小作し、長期にわたり右農地の管理人のように振舞つていた乙に小作料を支払つていた丙が、甲の代理人と称する乙から右農地を買い受け、右買受につき農地法所定の許可を得て所有権移転登記手続を経由し、その代金を支払つた等判示の事情のもとにおいては、丙は、乙に甲を代理する権限がなかつたとしても、遅くとも右登記の時には民法185条にいう新権原により所有の意思をもつて右農地の占有を始めたものであり、かつ、その占有の始めに所有権を取得したものと信じたことに過失がないということができる。 - 所有権確認請求、同附帯(最高裁判決 昭和51年12月24日)国有財産法第3条 - 公共用財産について取得時効が成立する場合 - 公共用財産が、長年の間事実上公の目的に供用されることなく放置され、公共用財産としての形態、機能を全く喪失し、その物のうえに他人の平穏かつ公然の占有が継続したが、そのため実際上公の目的が害されることもなく、もはやその物を公共用財産として維持すべき理由がなくなつた場合には、右公共用財産について、黙示的に公用が廃止されたものとして、取得時効の成立を妨げない。 - 土地所有権確認等(最高裁判決 昭和53年03月06日)民法第187条 - 占有の承継が主張された場合と民法162条2項にいう占有者の善意・無過失の判定時点 - 不動産の占有主体に変更があつて承継された二個以上の占有が併せて主張された場合には、民法162条2項にいう占有者の善意・無過失は、その主張にかかる最初の占有者につきその占有開始の時点において判定すれば足りる。 - 所有権移転登記手続等(最高裁判決 昭和54年09月07日)土地改良法第102条,土地改良法第106条 - 土地改良法に基づく農用地の交換分合と取得時効に関する占有期間の通算 - 土地改良法に基づく農用地の交換分合の前後を通じ、特定の所有者の失うべき土地と取得すべき土地とについて自主占有が継続しているときは、取得時効の成否に関しては両土地の占有期間を通算することができる。 - 土地所有権確認等(最高裁判決 昭和56年01月27日) - 他人の土地の売買に基づき買主が目的土地の占有を取得した場合と自主占有 - 土地の買主が売買契約に基づいて目的土地の占有を取得した場合には、右売買が他人の物の売買であるため土地の所有権を直ちに取得するものでないことを買主が知つているときであつても、買主において所有者から使用権限の設定を受けるなど特段の事情のない限り、買主の占有は所有の意思をもつてするものとすべきである。 - 土地所有権移転登記手続(最高裁判決 昭和58年03月24日)民法第186条1項,民訴法185条/民事訴訟法第247条民事訴訟法第248条 - 民法186条1項の所有の意思の推定が覆される場合 - 民法186条1項の所有の意思の推定は、占有者がその性質上所有の意思のないものとされる権原に基づき占有を取得した事実が証明されるか、又は占有者が占有中、真の所有者であれば通常はとらない態度を示し、若しくは所有者であれば当然とるべき行動に出なかつたなど、外形的客観的にみて占有者が他人の所有権を排斥して占有する意思を有していなかつたものと解される事情が証明されるときは、覆される。 - 所有権移転登記手続(最高裁判決 昭和59年05月25日)農地調整法(昭和24年法律215号による改正前のもの)4条1項,農地調整法(昭和24年法律215号による改正前のもの)4条3項,農地法第3条1項,4項 - 農地の取得時効につき無過失であつたとはいえないとされた事例 - 農地の譲受人が、当該譲渡について必要な農地調整法(昭和24年法律第215号による改正前のもの)4条1項所定の知事の許可を受けていないときは、特段の事情のない限り、右農地を占有するに当たつてこれを自己の所有と信じても、無過失であつたとはいえない。 - 土地所有権移転登記手続(最高裁判決 昭和60年03月28日)民法第127条2項,民法第186条 - 解除条件付売買契約に基づいて開始される占有と自主占有 - 売買契約に基づいて開始される占有は、残代金が約定期限までに支払われないときは当該売買契約は当然に解除されたものとする旨の解除条件が付されている場合であつても、自主占有であるというを妨げない。 - 解除条件付売買契約に基づいて開始される自主占有の条件成就による他主占有への変更の有無 - 売買契約に基づいて開始された自主占有は、当該売買契約が解除条件(残代金を約定期限までに支払わないときは契約は当然に解除されたものとする旨)の成就により失効しても、それだけでは、他主占有に変わるものではないと解すべきである。 - 解除条件付売買契約に基づいて開始される占有と自主占有 - 土地所有権移転登記、土地持分移転登記 (最高裁判例 平成7年12月15日) 民法第186条 - 登記簿上の所有名義人に対して所有権移転登記手続を求めないなどの土地占有者の態度が他主占有と解される事情として十分であるとはいえないとされた事例 - 土地の登記簿上の所有名義人甲の弟である乙が右土地を継続して占有した場合に、甲の家が本家、乙の家が分家という関係にあり、乙が経済的に苦しい生活をしていたため甲から援助を受けたこともあり、乙は家族と共に居住するための建物を建築、移築、増築して右土地を使用し、甲はこれに異議を述べたことがなかったなど判示の事実関係の下においては、乙が、甲に対して右土地の所有権移転登記手続を求めず、右土地に賦課される固定資産税を負担しなかったことをもって、外形的客観的にみて乙が他人の所有権を排斥して占有する意思を有していなかったものと解される事情として十分であるということはできない。 - 土地所有権移転登記手続(最高裁判決 平成8年11月12日)民法第185条,民法第186条1項,民法第187条1項,民法第896条 - 他主占有者の相続人が独自の占有に基づく取得時効の成立を主張する場合における所有の意思の立証責任 - 他主占有者の相続人が独自の占有に基づく取得時効の成立を主張する場合には、相続人において、その事実的支配が外形的客観的にみて独自の所有の意思に基づくものと解される事情を証明すべきである。 - 他主占有者の相続人について独自の占有に基づく取得時効の成立が認められた事例 - 甲が所有しその名義で登記されている土地建物について、甲の子である乙が甲から管理をゆだねられて占有していたところ、乙の死亡後、その相続人である乙の妻子丙らが、乙が生前に甲から右土地建物の贈与を受けてこれを自己が相続したものと信じて、その登記済証を所持し、固定資産税を納付しつつ、管理使用を専行し、賃借人から賃料を取り立てて生活費に費消しており、甲及びその相続人らは、丙らが右のような態様で右土地建物の事実的支配をしていることを認識しながら、異議を述べていないなど判示の事実関係があるときは、丙らが、右土地建物が甲の遺産として記載されている相続税の申告書類の写しを受け取りながら格別の対応をせず、乙の死亡から約15年経過した後に初めて右土地建物につき所有権移転登記手続を求めたという事実があるとしても、丙らの右土地建物についての事実的支配は、外形的客観的にみて独自の所有の意思に基づくものと解するのが相当であり、丙らについて取得時効が成立する。 - 他主占有者の相続人が独自の占有に基づく取得時効の成立を主張する場合における所有の意思の立証責任 - 条件付所有権移転仮登記抹消登記手続請求事件(最高裁判決 平成13年10月26日)農地法第5条 - 転用目的の農地の売買につき農地法5条所定の許可を得るための手続が執られていない場合における買主の自主占有の開始時期 - 農地を農地以外のものにするために買い受けた者は,農地法5条所定の許可を得るための手続が執られなかったとしても,特段の事情のない限り,代金を支払い農地の引渡しを受けた時に,所有の意思をもって農地の占有を始めたものと解するのが相当である。 - 抵当権設定登記抹消登記手続請求事件(最高裁判決 平成15年10月31日) - 取得時効の援用により不動産の所有権を取得してその旨の登記を有する者が当該取得時効の完成後に設定された抵当権に対抗するためその設定登記時を起算点とする再度の取得時効を援用することの可否 - 取得時効の援用により不動産の所有権を取得してその旨の登記を有する者は,当該取得時効の完成後に設定された抵当権に対抗するため,その設定登記時を起算点とする再度の取得時効の完成を主張し,援用をすることはできない。 - 土地所有権確認請求事件(最高裁判決 平成17年12月16日)公有水面埋立法(昭和48年法律第84号による改正前のもの)2条,公有水面埋立法(昭和48年法律第84号による改正前のもの)22条,公有水面埋立法(昭和48年法律第84号による改正前のもの)35条1項,民法第86条1項,国有財産法第3条 - 公有水面埋立法に基づく埋立免許を受けて埋立工事が完成した後竣功認可がされていない埋立地が土地として私法上所有権の客体になる場合 - 公有水面埋立法に基づく埋立免許を受けて埋立工事が完成した後竣功認可がされていない埋立地であっても,長年にわたり当該埋立地が事実上公の目的に使用されることもなく放置され,公共用財産としての形態,機能を完全に喪失し,その上に他人の平穏かつ公然の占有が継続したがそのため実際上公の目的が害されるようなこともなく,これを公共用財産として維持すべき理由がなくなり,同法に基づく原状回復義務の対象とならなくなった場合には,土地として私法上所有権の客体になる。 - 所有権確認請求本訴,所有権確認等請求反訴,土地所有権確認等請求事件(最高裁判決 平成18年01月17日)民法第177条 - 不動産の取得時効完成後に当該不動産の譲渡を受けて所有権移転登記を了した者が背信的悪意者に当たる場合 - 甲が時効取得した不動産について,その取得時効完成後に乙が当該不動産の譲渡を受けて所有権移転登記を了した場合において,乙が,当該不動産の譲渡を受けた時に,甲が多年にわたり当該不動産を占有している事実を認識しており,甲の登記の欠缺を主張することが信義に反するものと認められる事情が存在するときは,乙は背信的悪意者に当たる。 - 第三者異議事件(最高裁判決 平成24年3月16日)民法第177条, 民法第397条 - 不動産の取得時効の完成後,所有権移転登記がされることのないまま,第三者が原所有者から抵当権の設定を受けて抵当権設定登記を了した場合における,再度の取得時効の完成と上記抵当権の消長 - 不動産の取得時効の完成後,所有権移転登記がされることのないまま,第三者が原所有者から抵当権の設定を受けて抵当権設定登記を了した場合において,上記不動産の時効取得者である占有者が,その後引き続き時効取得に必要な期間占有を継続し,その期間の経過後に取得時効を授用したときは,上記占有者が上記抵当権の存在を容認していたなど抵当権の消滅を妨げる特段の事情がない限り,上記占有者が,上記不動産を時効取得する結果,上記抵当権は消滅する。 脚注 現在の民法162条第1項には御成敗式目の8条が利用されている。
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条文 - 第166条 - 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。 - 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。 - 権利を行使することができる時から10年間行使しないとき。 - 債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から20年間行使しないときは、時効によって消滅する。 - 前二項の規定は、始期付権利又は停止条件付権利の目的物を占有する第三者のために、その占有の開始の時から取得時効が進行することを妨げない。ただし、権利者は、その時効を更新するため、いつでも占有者の承認を求めることができる。 改正経緯 2017年改正前の条文及びその趣旨を取り込む旧第166条は以下のとおり。 (消滅時効の進行等) - 第166条 - 消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する。 - 前項の規定は、始期付権利又は停止条件付権利の目的物を占有する第三者のために、その占有の開始の時から取得時効が進行することを妨げない。ただし、権利者は、その時効を中断するため、いつでも占有者の承認を求めることができる。 - 第167条 解説 - 消滅時効について定める。 - 債権は、債権者が権利を行使できることを知った時(主観基準)から5年、権利を行使できる時から10年、行使をしないと消滅する。 - 2017年改正前は、権利を行使できる時から(改正前第166条)、10年間行使をしない時(改正前第167条)消滅すると定めていた。一方で商行為に関しては5年間、その他細かく短期消滅時効となる時効が定められていて、適用局面で、しばしば争われた。同改正において、これらを一律に扱い、なおかつ時代に趨勢に合わせ、債権の時効について債権者側の主観基準で5年と定めたものである。 - 消滅時効の対象は所有権を除く一切の財産権である。 - 所有権については、取得時効の反対効果として喪失することはあっても、そのものが消滅時効にかからないと解されている。また判例によれば所有権が消滅時効にかからない以上、所有権に基づく物権的請求権及び登記請求権も消滅時効にかからないとされる(最判昭和51年11月5日、平成7年06月09日)。 - その他、用益物権(地上権・永小作権・地役権 等)は「債権又は所有権以外の財産権」と概念され時効期間が20年と長く定められている。 - したがって、所有権及び用益物権以外の権利を広く債権と概念している。 参照条文 - 民法第146条(時効の利益の放棄) - 民法第291条(地役権の消滅時効) - (廃止削除)民法第639条(担保責任の存続期間の伸長) - 民法第724条(不法行為による損害賠償請求権の期間の制限) - 民法第832条(財産の管理について生じた親子間の債権の消滅時効) - 民法第875条 - 第832条の準用 - (廃止削除)商法第522条(商事消滅時効) - 健康保険法第193条(時効) - 会計法第30条 判例 - 家督相続回復請求(最高裁判決 昭和23年11月06日) - 家督相続回復請求権の消滅事項の起算点。 - 民法第996条(旧法)の家督相続回復請求権の20年の時効は、相続権侵害の事実の有無にかゝわらず、相続開始の時から進行する。 - 現在では、相続回復請求権一般の判例として機能。 - 物件引渡等請求(最高裁判決 昭和35年11月01日) - 契約解除に基く原状回復の履行不能による損害賠償請求権の消滅時効の起算点。 - 契約解除に基く原状回復義務の履行不能による損害賠償請求権の消滅時効は、契約解除の時から進行する。 - 建物収去土地明渡請求上告事件(最高裁判決 昭和39年2月27日) - 相続権を侵害された者の相続人が右侵害者に対して有する相続回復請求権の消滅時効の起算点。 - 甲の相続権を乙が侵害している場合、甲の相続人丙の乙に対する相続回復請求権の消滅時効の期間20年の起算点は、丙の相続開始の時ではなく、甲の相続開始の時と解すべきである。 - 普通財産売払代金請求(最高裁判決 昭和41年11月01日)会計法第30条 - 国の普通財産売払代金債権と会計法第30条 - 国の普通財産売払代金債権は、会計法第30条に規定する5年の消滅時効期間に服さない。 - 貸金請求(最高裁判決 昭和42年06月23日) - 金銭債権の消滅時効の不完全事由としての弁済期の猶予の立証責任 - 債務者が抗弁として金銭債権が消滅時効の完成によつて消滅した旨を主張し、右抗弁が理由のある場合には、裁判所は、債権者において再抗弁として当該債務の弁済期の猶予があつた旨を主張しないかぎり、右猶予によつて消滅時効が完成しないものと判断することはできない。 - 貸金請求(最高裁判決 昭和42年06月23日) - いわゆる過怠約款を付した割賦払債務の消滅時効の起算点 - 割賦金弁済契約において、割賦払の約定に違反したときは債務者は債権者の請求により償還期限にかかわらず直ちに残債務全額を弁済すべき旨の約定がされた場合には、一回の不履行があつても、各割賦金債務について約定弁済期の到来ごとに順次消滅時効が進行し、債権者が特に残債務全額の弁済を求める旨の意思表示をしたときにかぎり、その時から右全額について消滅時効が進行するものと解すべきである。 - 過怠約款を付した割賦払債務の消滅時効の起算点は、債権者が特に残債務全額の弁済を求める旨の意思表示をしたときである。 - 建物収去、土地明渡請求(最高裁判決 昭和42年07月20日)借地法第10条 - 借地法第10条による建物買取請求権の消滅時効期間 - 借地法第10条による建物買取請求権の消滅時効期間は10年と解すべきである。 - 求償金請求(最高裁判決 昭和42年10月06日)商法第522条,信用保証協会法第20条 - 信用保証協会が保証債務の履行によつて取得する求償権と消滅時効 - 信用保証協会が商人である債務者の委任に基づいて成立した保証債務を履行した場合において、信用保証協会が取得する求償権は、商法第522条に定める5年の消滅時効にかかる。 - 2017年改正により、商事消滅時効は廃止された。 - 供託金取戻請求の却下処分取消請求(最高裁判決 昭和45年07月15日)供託法第1条ノ3,供託法第8条2項,供託規則38条,民法第166条1項,民法第496条1項,行政事件訴訟法第3条2項,会計法第30条 - 弁済供託における供託金取戻請求が供託官により却下された場合と訴訟の形式 - 弁済供託における供託金取戻請求が供託官により却下された場合には、供託官を被告として却下処分の取消の訴を提起することができる。 - 弁済供託における供託金取戻請求権の消滅時効の起算点および期間 - 弁済供託における供託金取戻請求権の消滅時効は、供託の基礎となつた債務について紛争の解決などによつてその不存在が確定するなど、供託者が免責の効果を受ける必要が消滅した時から進行し、10年をもつて完成する。 - 弁済供託における供託金取戻請求が供託官により却下された場合と訴訟の形式 - 土地建物抵当権設定登記抹消登記手続請求(最高裁判決 昭和48年12月14日)民法第145条,民法第369条 - 抵当不動産の第三取得者と抵当権の被担保債権の消滅時効の援用 - 抵当不動産の譲渡を受けた第三者は、抵当権の被担保債権の消滅時効を援用することができる。 - 2017年改正で本判例法理は民法第145条に取り込まれている。 - 損害賠償請求(最高裁判決 昭和49年12月17日)民法第724条,商法第266条の3第1項(現会社法第429条) - 商法266条の3第1項前段所定の第三者の取締役に対する損害賠償請求権の消滅時効期間 - 商法266条の3第1項前段所定の第三者の取締役に対する損害賠償請求権の消滅時効期間は10年と解すべきである。 - 損害賠償請求(最高裁判決 昭和49年12月20日) - 準禁治産者が訴を提起するにつき保佐人の同意を得られない場合と消滅時効の進行 - 準禁治産者である権利者が保佐人の同意を得られないため訴を提起できない場合でも、その権利についての消滅時効の進行は妨げられない。 - 損害賠償請求(通称 自衛隊八戸車両整備工場損害賠償)(最高裁判決 昭和50年02月25日)民法第1条2項,国家公務員法第3章第6節第3款第3目,会計法第30条 - 国の国家公務員に対する安全配慮義務の有無 - 国は、国家公務員に対し、その公務遂行のための場所、施設若しくは器具等の設置管理又はその遂行する公務の管理にあたつて、国家公務員の生命及び健康等を危険から保護するよう配慮すべき義務を負つているものと解すべきである。 - 国の安全配慮義務違背を理由とする国家公務員の国に対する損害賠償請求権の消滅時効期間 - 国の安全配慮義務違背を理由とする国家公務員の国に対する損害賠償請求権の消滅時効期間は、10年と解すべきである。 - 国の国家公務員に対する安全配慮義務の有無 - 土地所有権確認等請求(最高裁判決 昭和50年04月11日)農地法第3条 - 農地の買主が売主に対して有する知事に対する所有権移転許可申請協力請求権と消滅時効 - 農地の買主が売主に対して有する知事に対する農地所有権移転許可申請協力請求権は、民法167条1項所定の債権にあたる。 - 土地所有権確認等請求(最高裁判決 昭和51年11月05日)民法第177条 - 所有権移転登記請求権と消滅時効 - 不動産の譲渡による所有権移転登記請求権は、右譲渡によつて生じた所有権移転の事実が存する限り独立して消滅時効にかからない。 - 不当利得金返還(最高裁判決 昭和55年01月24日)民法第703条,商法第522条,利息制限法第1条,利息制限法第4条 - 商行為である金銭消費貸借に関し利息制限法所定の制限を超えて支払われた利息・損害金についての不当利得返還請求権の消滅時効期間 - 商行為である金銭消費貸借に関し利息制限法所定の制限を超えて支払われた利息・損害金についての不当利得返還請求権の消滅時効期間は、10年と解すべきである。 - 商行為であるならば商事消滅時効の適用があるべきとして争われた案件であるが、2017年改正により、商事消滅時効は廃止されたため、現在は判例として機能していない。 - 約束手形金(最高裁判決 昭和55年05月30日)手形法第70条2項,手形法第77条1項8号 - 約束手形の所持人と裏書人との間において支払猶予の特約がされた場合と所持人の裏書人に対する手形上の請求権の消滅時効の起算点 - 約束手形の所持人と裏書人との間において裏書人の手形上の債務につき支払猶予の特約がされた場合には、所持人の裏書人に対する手形上の請求権の消滅時効は、右猶予期間が満了した時から進行する。 - 建物収去土地明渡等(最高裁判決 昭和56年06月16日)民法第541条 - 継続した地代不払を一括して一個の解除原因とする賃貸借契約の解除権の消滅時効の起算点 - 継続した地代不払を一括して一個の解除原因とする賃貸借契約の解除権の消滅時効は、最後の地代の支払期日が経過した時から進行する。 - 所有権移転登記手続(最高裁判決 昭和57年01月22日)民法第369条(譲渡担保) - 譲渡担保を設定した債務者の目的不動産に対するいわゆる受戻権と民法167条2項(改正前)の規定の適用の可否 - 譲渡担保を設定した債務者による債務の弁済と右弁済に伴う目的不動産の返還請求権とを合体し、一個の形成権たる受戻権として、これに民法167条2項(改正前)の規定を適用することはできない。 - 所有権移転請求権保全仮登記抹消登記手続等本訴、所有権移転請求権保全仮登記本登記手続反訴(最高裁判決 昭和61年03月17日)民法第145条1項,農地法第3条1項 - 農地の売買に基づく県知事に対する所有権移転許可申請協力請求権の消滅時効期間の経過後に右農地が非農地化した場合における所有権の移転及び非農地化後にされた時効援用の効力の有無 - 農地の売買に基づく県知事に対する所有権移転許可申請協力請求権の消滅時効期間が経過してもその後に右農地が非農地化した場合には、買主に所有権が移転し、非農地化後にされた時効の援用は効力を生じない。 - 保険金返還(最高裁判決 平成3年04月26日)民法第703条,商法第522条,商法第641条 - 商行為たる船体保険契約及び質権設定契約に基づき保険者から質権者に支払われた保険金に関する不当利得返還請求権の消滅時効期間 - 法定の免責事由があるにもかかわらず、商行為たる船体保険契約及び質権設定契約に基づき保険者から質権者に保険金が支払われた場合の不当利得返還請求権の消滅時効期間は、10年である。 - 共有持分移転登記手続(最高裁判決 平成7年06月09日)民法第884条,民法第1042条 - 遺留分減殺請求により取得した不動産の所有権又は共有持分権に基づく登記請求権と消滅時効 - 遺留分権利者が減殺請求により取得した不動産の所有権又は共有持分権に基づく登記請求権は、時効によって消滅することはない。 - ゴルフ会員権確認(最高裁判決 平成7年09月05日)民法第第3編第2章契約 - 預託金会員制ゴルフクラブの施設利用権の消滅時効と会員権の消長 - 預託金会員制ゴルフクラブの施設利用権の消滅時効は、会員が施設の利用をしない状態が継続したことのみによっては進行せず、ゴルフ場経営会社が、会員に対してその資格を否定して施設の利用を拒絶し、あるいは会員の利用を不可能な状態としたような時から進行し、右利用権が時効により消滅したときは、ゴルフ会員権は、包括的権利としては存続し得ない。 - 損害填補(最高裁判決 平成8年03月05日)自動車損害賠償保障法第3条,自動車損害賠償保障法(平成7年法第律第137号による改正前のもの)72条,自動車損害賠償保障法(平成7年法律第137号による改正前のもの)75条 - ある者が交通事故の加害自動車の保有者であるか否かをめぐって争いがある場合における自動車損害賠償保障法72条1項前段による請求権の消滅時効の起算点 - 自動車損害賠償保障法72条1項前段による請求権の消滅時効は、ある者が交通事故の加害自動車の保有者であるか否かをめぐって、右の者と当該交通事故の被害者との間で同法3条による損害賠償請求権の存否が争われている場合においては、右損害賠償請求権が存在しないことが確定した時から進行する。 - 求償債権請求事件(最高裁判決 平成11年11月09日)民法第145条,民法第446条,破産法第366条ノ12,破産法第366条ノ13 - 破産免責の効力の及ぶ債務の保証人とその債権の消滅時効の援用 - 主債務者である破産者が免責決定を受けた場合に、免責決定の効力の及ぶ債務の保証人は、その債権についての消滅時効を援用することができない。 - 供託金取戻却下決定取消請求事件(最高裁判決 平成13年11月27日)供託法8条2項,旧・民法第167条1項,旧。民法第169条,民法第496条1項 - 弁済供託における供託金取戻請求権の消滅時効の起算点 - 弁済供託における供託金取戻請求権の消滅時効は,過失なくして債権者を確知することができないことを原因とする弁済供託の場合を含め,供託者が免責の効果を受ける必要が消滅した時から進行する。 - 債権者不確知を原因とする弁済供託に係る供託金取戻請求の却下処分が違法とされた事例 - 過失なくして債権者を確知することができないことを原因として賃料債務についてされた弁済供託につき,同債務の各弁済期の翌日から民法169条(改正前)所定の5年の時効期間が経過した時から更に10年が経過する前にされた供託金取戻請求に対し,同取戻請求権の消滅時効が完成したとしてこれを却下した処分は,違法である。 - 弁済供託における供託金取戻請求権の消滅時効の起算点 - 損害賠償請求事件(最高裁判決 平成13年11月27日)民法第566条3項,民法第570条 - 瑕疵担保による損害賠償請求権と消滅時効 - 瑕疵担保による損害賠償請求権には消滅時効の規定の適用がある - 2017年改正後、契約不適合責任にも適用される。 - 求償金請求事件(最高裁判決 平成15年03月14日)民法第145条,民法第446条,破産法第4条,破産法第282条 - 破産終結決定がされて法人格が消滅した会社を主債務者とする保証人が主債務の消滅時効を援用することの可否 - 破産終結決定がされて法人格が消滅した会社を主債務者とする保証人は,主債務についての消滅時効が会社の法人格の消滅後に完成したことを主張してこれを援用することはできない。 - 補償金請求事件(最高裁判決 平成15年04月22日)特許法第35条 - 職務発明について特許を受ける権利等を使用者等に承継させた従業者等が勤務規則その他の定めによる対価の額が特許法35条3項及び4項の規定に従って定められる相当の対価の額に満たないときに不足額を請求することの可否 - 使用者等があらかじめ定める勤務規則その他の定めにより職務発明について特許を受ける権利又は特許権を使用者等に承継させた従業者等は,当該勤務規則その他の定めに使用者等が従業者等に対して支払うべき対価に関する条項がある場合においても,これによる対価の額が特許法35条3項及び4項の規定に従って定められる相当の対価の額に満たないときは,同条3項の規定に基づき,その不足する額に相当する対価の支払を求めることができる。 - 勤務規則その他の定めに対価の支払時期に関する条項がある場合における特許法35条3項の規定による相当の対価の支払を受ける権利の消滅時効の起算点 - 特許法35条3項の規定による相当の対価の支払を受ける権利の消滅時効は,使用者等があらかじめ定める勤務規則その他の定めに対価の支払時期に関する条項がある場合には,その支払時期から進行する。 - 職務発明について特許を受ける権利等を使用者等に承継させた従業者等が勤務規則その他の定めによる対価の額が特許法35条3項及び4項の規定に従って定められる相当の対価の額に満たないときに不足額を請求することの可否 - 保険金請求事件(最高裁判決 平成15年12月11日)商法第663条,商法第683条1項,民法第91条 - 生命保険契約において被保険者の死亡の日の翌日を死亡保険金請求権の消滅時効の起算点とする旨を定めている保険約款の解釈 - 生命保険契約に係る保険約款中の被保険者の死亡の日の翌日を死亡保険金請求権の消滅時効の起算点とする旨の定めは,当時の客観的状況等に照らし,上記死亡の時からの保険金請求権の行使が現実に期待することができないような特段の事情が存する場合には,その権利行使が現実に期待することができるようになった時以降において上記消滅時効が進行する趣旨と解すべきである。 - 生命保険契約に係る保険約款が被保険者の死亡の日の翌日を死亡保険金請求権の消滅時効の起算点とする旨を定めている場合であっても上記消滅時効は被保険者の遺体が発見されるまでの間は進行しないとされた事例 - 生命保険契約に係る保険約款が被保険者の死亡の日の翌日を死亡保険金請求権の消滅時効の起算点とする旨を定めている場合であっても,被保険者が自動車を運転して外出したまま帰宅せず,その行方,消息については何の手掛かりもなく,その生死も不明であったが,行方不明になってから3年以上経過してから,峠の展望台の下方約120mの雑木林の中で,自動車と共に白骨化した遺体となって発見されたなど判示の事実関係の下では,上記消滅時効は,被保険者の遺体が発見されるまでの間は進行しない。 - 預金払戻請求事件(最高裁判決 平成19年04月24日)民法第91条,民法第666条 - いわゆる自動継続特約付きの定期預金契約における預金払戻請求権の消滅時効の起算点 - いわゆる自動継続特約付きの定期預金契約における預金払戻請求権の消滅時効は,それ以降自動継続の取扱いがされることのなくなった満期日が到来した時から進行する。 - 損害賠償請求事件(最高裁判決 平成20年01月28日)商法522条,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)254条3項,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)254条ノ3,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)266条1項5号,会社法第423条第1項,会社法第430条 - 商法266条1項5号に基づく会社の取締役に対する損害賠償請求権の消滅時効期間 - 商法266条1項5号に基づく会社の取締役に対する損害賠償請求権の消滅時効期間は,民法167条1項により10年と解すべきである。 - 不当利得返還等請求事件(最高裁判決 平成21年01月22日)民法第703条,利息制限法第1条1項 - 継続的な金銭消費貸借取引に関する基本契約が,利息制限法所定の制限を超える利息の弁済により発生した過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含む場合における,上記取引により生じた過払金返還請求権の消滅時効の起算点 - 継続的な金銭消費貸借取引に関する基本契約が,借入金債務につき利息制限法1条1項所定の制限を超える利息の弁済により過払金が発生したときには,弁済当時他の借入金債務が存在しなければ上記過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含む場合は,上記取引により生じた過払金返還請求権の消滅時効は,特段の事情がない限り,上記取引が終了した時から進行する。 - 建物根抵当権設定仮登記抹消登記手続請求事件(最高裁判決 平成30年2月23日)民法第396条,破産法第253条1項本文 - 抵当権の被担保債権が免責許可の決定の効力を受ける場合における当該抵当権自体の消滅時効 - 抵当権の被担保債権が免責許可の決定の効力を受ける場合には,民法396条は適用されず,債務者及び抵当権設定者に対する関係においても,当該抵当権自体が,同法167条2項所定の20年の消滅時効にかかる。
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条文 (定期金債権の消滅時効) - 第168条 - 定期金の債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。 - 債権者が定期金の債権から生ずる金銭その他の物の給付を目的とする各債権を行使することができることを知った時から10年間行使しないとき。 - 前号に規定する各債権を行使することができる時から20年間行使しないとき。 - 定期金の債権者は、時効の更新の証拠を得るため、いつでも、その債務者に対して承認書の交付を求めることができる 改正経緯 2017年改正前の条項については以下のとおり。 - 第168条 - 定期金の債権は、第一回の弁済期から二十年間行使しないときは、消滅する。最後の弁済期から十年間行使しないときも、同様とする。 - 定期金の債権者は、時効の中断の証拠を得るため、いつでも、その債務者に対して承認書の交付を求めることができる。 解説 定期金の債権の消滅時効等についての規定。時効期間やその算定時、また、時効の更新についての証拠法上の配慮がなされている。 参照条文 - 民法第166条(消滅時効の進行等)
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条文 (判決で確定した権利の消滅時効) - 第169条 - 確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利については、10年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、10年とする。 - 前項の規定は、確定の時に弁済期の到来していない債権については、適用しない。 改正経緯 2017年改正前は、以下のとおり定期給付債権の短期時効について規定されていたが、時効制度整備に伴い廃止され、旧条項は削除。空き番となった所に第174条の2に定めた「判決で確定した権利の消滅時効」を移動した。 (定期給付債権の短期消滅時効|消滅時効) - 第169条 - 年又はこれより短い時期によって定めた金銭その他の物の給付を目的とする債権は、五年間行使しないときは、消滅する。 (判決で確定した権利の消滅時効) - 第174条の2 - 確定判決によって確定した権利については、 十年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、十年とする。裁判上の和解、調停その他確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利についても、同様とする。 - 前項の規定は、確定の時に弁済期の到来していない債権については、適用しない。 解説 確定判決によって確定されたなど、一定の法的な手続をへて存在が確認された権利については、短期消滅時効の規定の適用対象であったとしても、時効期間は10年とされる。ただし、第2項の場合(確認訴訟や形成訴訟の場合が想定される)は別である。 参照条文 判例 - 破産債権優先権確認請求(通称 江戸川製作所退職金請求)(最高裁判決 昭和44年09月02日)民法第306条,民法第308条,破産法第242条 - 破産手続において債権表に記載された債権の消滅時効期間 - 確定債権についての債権表の記載は確定判決と同一の効力を有するから、右債権表に記載された債権の消滅時効については、民法174条ノ2第1項により、その時効期間は10年であると解すべきである。
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条文 (被補助人及び補助人) - 第16条 - 補助開始の審判を受けた者は、被補助人とし、これに補助人を付する。 解説 被補助人と補助人についての規定。 登記 補助開始の審判がなされると、「後見登記等に関する法律」により被補助人について成年後見登記がなされる。補助登記事実について閲覧はきびしく制限されており、本人他一定の関係者のみが登記事項の証明書又は登記されていないことの証明書の発行を法務局に求めることができる。 参照条文 - 民法第8条 - 民法第12条 - 後見登記等に関する法律第4条 - 後見、保佐又は補助(以下「後見等」と総称する。)の登記は、嘱託又は申請により、磁気ディスク(これに準ずる方法により一定の事項を確実に記録することができる物を含む。第九条において同じ。)をもって調製する後見登記等ファイルに、次に掲げる事項を記録することによって行う。 - 一 後見等の種別、開始の審判をした裁判所、その審判の事件の表示及び確定の年月日 - 二 成年被後見人、被保佐人又は被補助人(以下「成年被後見人等」と総称する。)の氏名、出生の年月日、住所及び本籍(外国人にあっては、国籍) - 三 成年後見人、保佐人又は補助人(以下「成年後見人等」と総称する。)の氏名及び住所(法人にあっては、名称又は商号及び主たる事務所又は本店) - 四 成年後見監督人、保佐監督人又は補助監督人(以下「成年後見監督人等」と総称する。)が選任されたときは、その氏名及び住所(法人にあっては、名称又は商号及び主たる事務所又は本店) - 五 保佐人又は補助人の同意を得ることを要する行為が定められたときは、その行為 - 六 保佐人又は補助人に代理権が付与されたときは、その代理権の範囲 - 七 (略) - 八 後見等が終了したときは、その事由及び年月日 - 九 家事審判法(昭和二十二年法律第百五十二号)第15条の3第1項の規定による審判(同条第5項の裁判を含む。以下「保全処分」という。)に関する事項のうち政令で定めるもの - 十 登記番号 - 2 後見等の開始の審判前の保全処分(政令で定めるものに限る。)の登記は、嘱託又は申請により、後見登記等ファイルに、政令で定める事項を記録することによって行う。 - 後見、保佐又は補助(以下「後見等」と総称する。)の登記は、嘱託又は申請により、磁気ディスク(これに準ずる方法により一定の事項を確実に記録することができる物を含む。第九条において同じ。)をもって調製する後見登記等ファイルに、次に掲げる事項を記録することによって行う。
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条文 (物権の創設) - 第175条 - 物権は、この法律その他の法律に定めるもののほか、創設することができない。 解説 物権法定主義についての規定である。「その他の法律」に定める物権としては、鉱業権、採石権などがある。 その他、不動産賃借権など、債権に物権的な性格の性質が付与されることもある(債権の物権化)。 参照条文 判例 - 所有権確認土地引渡並びに登記抹消(最高裁判例 昭和52年12月12日)民法施行法第36条 - 明治4年8月大蔵省達第39号「荒蕪不毛地払下ニ付一般ニ入札セシム」に基づき海岸寄洲及び海面として払下を受けた地域について民法上の土地所有権が認められた事例 - 明治4年8月大蔵省達第39号「荒蕪不毛地払下ニ付一般ニ入札セシム」に基づき明治5年8月国から海岸寄洲及び海面を判示の事実関係のもとにおいて払下を受けた者は、右払下により海面下の地所につき排他的総括支配権を取得し、右排他的総括支配権は民法施行とともに民法上の土地所有権に移行したと解するのが相当である。
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条文 (物権の設定及び移転) 解説 物権変動についての規定である。 フランス流の意思主義をとることを定める。 参照条文 判例 - 水利権確認等請求(最高裁判決 昭和25年12月01日) - 河川使用権の範囲 - 居住地域から流木することによつて取得した慣習上の河川使用権は、その地域の上流に及ばない。 - 不動産所有権移転登記手続等請求 (最高裁判決 昭和33年06月20日) - 特定物の売買と所有権移転の時期 - 売主の所有に属する特定物を目的とする売買においては、特にその所有権の移転が将来なされるべき約旨に出たものでないかぎり、買主に対し直ちに所有権移転の効力を生ずるものと解するを相当とする - 建物収去土地明渡請求 (最高裁判決 昭和35年06月17日)民法第177条 - 敷地不法占有と家屋収去請求の相手方。 - 仮処分申請に基き、裁判所の嘱託により家屋所有権保存登記がなされている場合であつても、仮処分前に家屋を未登記のまま第三者に譲渡しその敷地を占拠していない右保存登記名義人に対し、敷地所有者から敷地不法占有を理由として家屋収去請求をすることは許されない。 - 損害賠償請求(最高裁判決 昭和35年06月24日) - 不特定物の売買における目的物所有権移転時期 - 不特定物の売買においては、特段の事情のないかぎり、目的物が特定した時に買主に所有権が移転するものと解すべきである。 - 第三者異議(最高裁判決 昭和40年11月19日) 民法第555条,民法第560条 - 特定物の売買後売主が物件の所有権を取得したときと買主への所有権移転の時期・方法。 - 売主が第三者所有の特定物を売り渡した後右物件の所有権を取得した場合には、買主への所有権移転の時期・方法について特段の約定がないかぎり、右物件の所有権は、なんらの意思表示がなくても、売主の所有権取得と同時に買主に移転する。
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条文 解説 売買契約が解除され、所有権が売主に復帰した場合、売主は引渡しを受けなければ、契約解除後に買主から動産を取得した第三者に対し所有権の取得を対抗できない。 - 引渡しの形態 引渡しを必要とする譲渡の範囲 引渡しでなければ対抗できない第三者の範囲 参照条文 判例 - 動産引渡請求 (最高裁判決 昭和29年08月31日)民法第662条 - 寄託動産の保管者と民法第178条 - 動産の寄託をうけ一時これを保管しているにすぎない者は民法第178条の第三者に該当しない。 - 動産引渡請求 (最高裁判決 昭和30年06月02日)民法第181条,民法第183条 - 動産の売渡担保契約と債務者の所有権取得の対抗力の有無 - 債務者が動産を売渡担保に供し引きつづきこれを占有する場合においては、債権者は、契約の成立と同時に、占有改定によりその物の占有権を取得し、その所有権取得をもつて第三者に対抗することができるものと解すべきである。 - 強制執行異議 (最高裁判決 昭和33年03月14日) - 民法第178条の第三者にあたらない一事例 - 甲所有の動産が乙の占有にある間に乙の債権者丙によつて仮差押がなされたとしても、丙は、甲から所有権を譲り受けた丁に対し、引渡の欠缺を主張する正当の利益を有しない。 - 沈船所有権確認請求 (最高裁判決 昭和35年09月01日) 商法第686条,商法第687条 - 沈没船所有権移転の対抗要件 - 海底35尋以上の海深にあつて引揚困難な沈没船の所有権移転を第三者に対抗するには、たとえ公称屯数20屯以上の場合でも、民法第178条にいう引渡があれば足りる。 - 沈没船の引渡があつたと認むべき事例 - 原判示のような事情のもとで、沈没船売買契約書、保険会社の損害品売渡証、関係漁場使用に関する漁業協同組合長名義の承諾書等関係書類授受があつたときは、当該沈没船につき民法第178条にいう引渡があつたものと認むるのが相当である。 - 沈没船所有権移転の対抗要件 - 第三者異議(最高裁判決 昭和62年11月10日)民法第85条、民法第181条、民法第183条、民法第333条、民法第369条 - 構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権の対抗要件と構成部分の変動した後の集合物に対する効力 - 構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権の設定者がその構成部分である動産の占有を取得したときは譲渡担保権者が占有改定の方法によつて占有権を取得する旨の合意があり、譲渡担保権設定者がその構成部分として現に存在する動産の占有を取得した場合には、譲渡担保権者は右譲渡担保権につき対抗要件を具備するに至り、右対抗要件具備の効力は、新たにその構成部分となつた動産を包含する集合物に及ぶ。 - 構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権と動産売買先取特権に基づいてされた動産競売の不許を求める第三者異議の訴え - 構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権者は、特段の事情のない限り、第三者異議の訴えによつて、動産売買先取特権者が右集合物の構成部分となつた動産についてした競売の不許を求めることができる。 - 構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権設定契約において目的物の範囲が特定されているとされた事例 - 構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権設定契約において、目的動産の種類及び量的範囲が普通棒鋼、異形棒鋼等一切の在庫商品と、その所在場所が譲渡担保権設定者の倉庫内及び同敷地・ヤード内と指定されているときは、目的物の範囲が特定されているものというべきである。 - 構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権の対抗要件と構成部分の変動した後の集合物に対する効力
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民法第179条 条文 (混同) - 第179条 - 同一物について所有権及び他の物権が同一人に帰属したときは、当該他の物権は、消滅する。ただし、その物又は当該他の物権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。 - 所有権以外の物権及びこれを目的とする他の権利が同一人に帰属したときは、当該他の権利は、消滅する。この場合においては、前項ただし書の規定を準用する。 - 前二項の規定は、占有権については、適用しない。 解説 - 本条は、たとえば、Aの所有地にBが地上権をもっていたとする。BがAからこの土地を譲り受けた場合、もはや、自分の土地に地上権をもっている必要はないので(所有権は全面支配権であり、この中に地上権の機能も含まれている)、所有権の取得と同時にBの地上権は消滅する。これを物権の混同による消滅という。 - また、3が規定するように、占有権は混同の規定が適用されない。占有という事実状態を保護することを目的とする権利だからである。 - 同じ物について成り立っている所有権とその他の物権が、同じ人のものになったときは、その物権は消滅する。しかし、その物が第三者の権利の目的となっているとき、またはその物権が第三者の権利の目的となっているときは、その物権は消滅しない。 - 所有権以外の物権とこの物権を目的とする他の権利とが同じ人のものになったときは、その権利は消滅する。この場合、1と同じように、その物権が第三者の権利の目的となっているときは、その権利は消滅しない。 - 1と2の規定は、占有権には適用されない。 参照条文 判例 - 建物収去土地明渡請求(最高裁判決 昭和46年10月14日)民法第520条、民法第601条、民法第605条、旧民訴法643条1項、3項、旧民訴法658条 - 競売期日の公告に記載されなかつた賃借権とその対抗力 - 建物保護に関する法律第1条による対抗要件を具備した土地の賃借権は、競売期日の公告に記載されなかつたとしても、その対抗力が消滅するものではない。 - 執行裁判所の取調に対して申出のなかつた賃借権とその効力 - 執行裁判所の取調に対して土地の賃借権者が賃借権の申出をしなかつたとしても、その賃借権の効力に影響を及ぼすものではない。 - 土地の所有権と賃借権とが混同しても賃借権が消滅しない場合 - 特定の土地につき所有権と賃借権とが同一人に帰属するに至つた場合であつても、その賃借権が対抗要件を具備したものであり、かつ、その対抗要件を具備したのちに右土地に抵当権が設定されていたときは、民法179条第1項但書の準用により、賃借権は消滅しないものと解すべきであり、このことは、賃借権の対抗要件が建物保護に関する法律第1条によるものであるときでも同様である。 - 競売期日の公告に記載されなかつた賃借権とその対抗力
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条文 (補助人の同意を要する旨の審判等) - 第17条 - 家庭裁判所は、第15条第1項本文に規定する者又は補助人若しくは補助監督人の請求により、被補助人が特定の法律行為をするにはその補助人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただし、その審判によりその同意を得なければならないものとすることができる行為は、第13条第1項に規定する行為の一部に限る。 - 本人以外の者の請求により前項の審判をするには、本人の同意がなければならない。 - 補助人の同意を得なければならない行為について、補助人が被補助人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被補助人の請求により、補助人の同意に代わる許可を与えることができる。 - 補助人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。 解説 補助人の同意権について定めた規定である。 補助とは、1999年(平成11年)の民法改正の際に新たに設けられた成年後見制度の一つである。 保佐と比して、障害の程度がより軽度な場合が予定されている類型であるが、保佐人の場合と同様、一定の要件の元、補助人にも同意権が認められる。
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条文 (占有権の取得) - 第180条 - 占有権は、自己のためにする意思をもって物を所持することによって取得する。 解説 占有権の発生原因についての一般的な規定である。条文上は、自己のためにする意思=占有意思と、物の所持=占有状態の発生が要件とされると解される(厳密には学説上争いがある)。 物の所持があっても、他人のためにする意思があると認定されれば占有権は発生しない(代理占有の問題)。 参照条文 参考文献 鈴木禄彌『物権法講義』(四訂版)(創文社、1994年)87頁 判例 - 占有回収請求 (最高裁判決 昭和30年07月19日)特別都市計画法14条 - 換地予定地の指定と占有権移転の有無 - 換地予定地に指定されただけでは、当然にはその土地の占有権の変動移転を生ずるものではない。 - 土地引渡並びに損害金請求(最高裁判決 昭和32年02月15日)民法第181条 - 会社の代表者として土地を所持する者の占有権の有無 - 株式会社の代表取締役が会社の代表者として土地を所持する場合には、右土地の直接占有者は会社自身であつて、代表者は、個人のためにもこれを所持するものと認めるべき特段の事情がないかぎり、個人として占有者たる地位にあるものとはいえない。 - 田地所有権確認等請求(最高裁判決 昭和44年10月30日)民法第896条 - 占有と相続 - 土地を占有していた被相続人が死亡し相続が開始した場合には、特別の事情のないかぎり、被相続人の土地に対する占有は相続人によつて相続される。 - 占有権に基づく妨害予防請求事件 (最高裁判決 平成18年02月21日)民法第199条 - 道路を一般交通の用に供するために管理している地方公共団体が当該道路を構成する敷地について占有権を有する場合 - 地方公共団体が,道路を一般交通の用に供するために管理しており,その管理の内容,態様によれば,社会通念上,当該道路が当該地方公共団体の事実的支配に属するものというべき客観的関係にあると認められる場合には,当該地方公共団体は,道路法上の道路管理権を有するか否かにかかわらず,当該道路を構成する敷地について占有権を有する。
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条文 (代理占有) - 第181条 - 占有権は、代理人によって取得することができる。 解説 - 代理占有(間接占有)に関する規定である。 - 代理占有における代理人の例としては、賃貸借契約における賃借人がある。 参照条文 判例 - 土地引渡並びに損害金請求(最高裁判決 昭和32年02月15日)民法第180条 - 会社の代表者として土地を所持する者の占有権の有無 - 株式会社の代表取締役が会社の代表者として土地を所持する場合には、右土地の直接占有者は会社自身であつて、代表者は、個人のためにもこれを所持するものと認めるべき特段の事情がないかぎり、個人として占有者たる地位にあるものとはいえない。 - 第三者異議(最高裁判決 昭和62年11月10日)民法第85条、民法第178条、民法第183条、民法第333条、民法第369条 - 構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権の対抗要件と構成部分の変動した後の集合物に対する効力 - 構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権の設定者がその構成部分である動産の占有を取得したときは譲渡担保権者が占有改定の方法によつて占有権を取得する旨の合意があり、譲渡担保権設定者がその構成部分として現に存在する動産の占有を取得した場合には、譲渡担保権者は右譲渡担保権につき対抗要件を具備するに至り、右対抗要件具備の効力は、新たにその構成部分となつた動産を包含する集合物に及ぶ。 - 構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権と動産売買先取特権に基づいてされた動産競売の不許を求める第三者異議の訴え - 構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権者は、特段の事情のない限り、第三者異議の訴えによつて、動産売買先取特権者が右集合物の構成部分となつた動産についてした競売の不許を求めることができる。 - 構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権設定契約において目的物の範囲が特定されているとされた事例 - 構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権設定契約において、目的動産の種類及び量的範囲が普通棒鋼、異形棒鋼等一切の在庫商品と、その所在場所が譲渡担保権設定者の倉庫内及び同敷地・ヤード内と指定されているときは、目的物の範囲が特定されているものというべきである。 - 構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権の対抗要件と構成部分の変動した後の集合物に対する効力
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条文 (占有改定) - 第183条 - 代理人が自己の占有物を以後本人のために占有する意思を表示したときは、本人は、これによって占有権を取得する。 解説 占有代理人が自分で占有する物を以後本人のために占有するという意思表示をしたときは、本人はこれによって占有権を取得する。 本条を占有改定という。条文はわかりにくい。 「代理人(物を売った後の売主が買主のために代理占有している状態)が自己(売主)の占有物(物を売るまでは自分の物)を以後本人(買主)のために占有する(保管する)意思を表示したときは、本人(買主)はこれによって占有権を取得する。」 要するに物の売主がそれを買主に引き渡さないで買主のために保管しているような状態のことである。 占有改定は、物権の非典型担保である譲渡担保に利用されている。 参照条文 - 民法第178条(動産に関する物権の譲渡の対抗要件) 判例 - 動産引渡請求 (最高裁判決 昭和30年06月02日) 民法第178条,民法第181条 - 動産の売渡担保契約と債務者の所有権取得の対抗力の有無 - 債務者が動産を売渡担保に供し引きつづきこれを占有する場合においては、債権者は、契約の成立と同時に、占有改定によりその物の占有権を取得し、その所有権取得をもつて第三者に対抗することができるものと解すべきである - 庭石庭樹所有権確認請求(最高裁判決 昭和32年12月27日)民法第192条 - 占有改定による占有の取得と民法第192条の不適用 - 占有改定により占有を取得したに止まるときは、民法第192条の適用はない。 - 強制執行異議 (最高裁判決 昭和34年08月28日) 民訴法566条 - 差押中の有体動産の占有改定の効力。 - 有体動産に対する占有権は、差押によつて失われるものではないからその動産の占有改定による引渡は、差押の存続する間、差押債権者に対抗できないにとどまるものと解すべきである。 - 動産所有権確認同引渡請求 (最高裁判決 昭和35年2月11日) 民法第192条 - 占有改定による占有の取得と民法第192条の適用の有無。 - 占有取得の方法が外観上の占有状態に変更を来たさない占有改定にとどまるときは、民法第192条の適用はない。 - 第三者異議(最高裁判決 昭和62年11月10日)民法第85条、民法第178条、民法第181条、民法第333条、民法第369条 - 構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権の対抗要件と構成部分の変動した後の集合物に対する効力 - 構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権の設定者がその構成部分である動産の占有を取得したときは譲渡担保権者が占有改定の方法によつて占有権を取得する旨の合意があり、譲渡担保権設定者がその構成部分として現に存在する動産の占有を取得した場合には、譲渡担保権者は右譲渡担保権につき対抗要件を具備するに至り、右対抗要件具備の効力は、新たにその構成部分となつた動産を包含する集合物に及ぶ。 - 構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権と動産売買先取特権に基づいてされた動産競売の不許を求める第三者異議の訴え - 構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権者は、特段の事情のない限り、第三者異議の訴えによつて、動産売買先取特権者が右集合物の構成部分となつた動産についてした競売の不許を求めることができる。 - 構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権設定契約において目的物の範囲が特定されているとされた事例 - 構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権設定契約において、目的動産の種類及び量的範囲が普通棒鋼、異形棒鋼等一切の在庫商品と、その所在場所が譲渡担保権設定者の倉庫内及び同敷地・ヤード内と指定されているときは、目的物の範囲が特定されているものというべきである。 - 構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権の対抗要件と構成部分の変動した後の集合物に対する効力
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条文 (指図による占有移転) - 第184条 - 代理人によって占有をする場合において、本人がその代理人に対して以後第三者のためにその物を占有することを命じ、その第三者がこれを承諾したときは、その第三者は、占有権を取得する。 解説 参照条文 判例 - 所有権確認請求 (最高裁判決 昭和34年08月28日)民訴法566条 - 仮処分の執行として執行吏の保管する有体動産に対しなされた指図による占有移転の効力。 - 有体動産に対する占有権は、仮処分の執行として執行吏がこれを保管することによつて失われるものではないから、その動産の指図による占有移転は、仮処分債権者に対抗できないにとどまりその他のものに対する関係においては有効である。 - 第三者異議(最高裁判決 昭和57年09月07日)民法第192条、商法第597条 - 荷渡指図書に基づき倉庫業者の寄託者台張上の寄託者名義が変更され寄託の目的物の譲受人が指図による占有移転を受けた場合と民法192条の適用 - 寄託者が倉庫業者に対して発行した荷渡指図書に基づき倉庫業者が寄託者台帳上の寄託者名義を変更して右寄託の目的物の譲受人が指図による占有移転を受けた場合には、即時取得の適用がある。
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条文 (占有の性質の変更) - 第185条 - 権原の性質上占有者に所有の意思がないものとされる場合には、その占有者が、自己に占有をさせた者に対して所有の意思があることを表示し、又は新たな権原により更に所有の意思をもって占有を始めるのでなければ、占有の性質は、変わらない。 解説 概要 占有の性質を変更し、他主占有を自主占有にする際の方法について定義した条文である。 占有はその所有の意思の有無から以下の二つの種類に分けられる。(注 占有の分類の仕方は他にも多数ある。) - 自主占有 所有の意思をもって行なう占有(例:売買の買主、窃盗犯の占有はこれに当たる。) - 他主占有 所有の意思のない占有(例:賃借人、受寄者などの占有はこれに当たる。) 本条文の意義 自主占有は多くの場合、他主占有よりも占有者に有利な法律効果をもたらす事が多く、以下に関する法律行為で法律要件となっている。特に時効取得においては、自主占有の開始時が時効の起算点となるため、裁判上でもよく争われる。 - さて、占有者(売買の買主、窃盗犯、賃借人、受寄者など)が上記の法律行為の適用を望む場合、自主占有である事が必要である。しかし「ある占有が自主占有なのか他主占有なのか」は占有の意思の有無を個別に判断するのでは無く、その占有を生じさせる原因となった行為の外形によって客観的に判断される事になる(最判昭和45年6月18日判例時報六五四-五一)。つまり、売買の買主の占有であれば、その外形によって自主占有と判定され、他人物売買であろうと錯誤であろうと自主占有と判定されるし、賃借人、受寄者のほか、質権者、地上権者の占有は、他に所有者がいる事が前提になっている事を理由として、実際には所有の意思を持ってその占有を開始したとしても、その外形によって他主占有と判断される。そのため、他主占有者(賃借人、受寄者など)が上記法律行為の効果を望む場合、他主占有として始まった占有が自主占有に性質変更できるかが問題となる。この条文は占有の性質変更を二つの方法で認めたものと解する事ができる。 占有の性質変更の方法 - 自己に占有をさせた者に対して所有の意思があることを表示する事。 - 新たな権原により更に所有の意思をもって占有を始める事。 上記1の方法で占有の性質を変更する場合の例としては、賃借人が賃貸人に対して以後自分の為に占有をする旨を告げる事などがあげられる。上記2の例としてはある土地の地上権者がその土地を買い取って、「売買の買主としての地位」ないし「権原」を新たに取得する事があげられる。 論点 この条文についての学説や判例は以下の二つについてなされたものが多い。 - 相続が条文中の「新たな権原」に入るか否か。 - 性質変更によって自主占有を開始し、時効取得に至った時の「所有の意思(自主占有である事)」の立証責任は誰にあるか。 参照条文 判例 - 占有回収等請求(最高裁判決 昭和45年6月18日) - 占有における所有の意思の有無の判断基準 - 占有における所有の意思の有無は、占有取得の原因たる事実によつて外形的客観的に定められるべきものであるから、賃貸借が法律上効力を生じない場合にあつても、賃貸借により取得した占有は他主占有というべきである。 - 所有権移転登記手続等本訴ならびに土地建物所有権確認反訴請求(最高裁判決 昭和46年11月30日)民法第896条 - 相続と民法185条にいう「新権原」 - 相続人が、被相続人の死亡により、相続財産の占有を承継したばかりでなく、新たに相続財産を事実上支配することによつて占有を開始し、その占有に所有の意思があるとみられる場合においては、被相続人の占有が所有の意思のないものであつたときでも、相続人は民法185条にいう「新権原」により所有の意思をもつて占有を始めたものというべきである。 - 土地所有権移転登記手続等請求(最高裁判決 昭和51年12月2日)民法第162条 - 所有者の無権代理人から農地を買い受けた小作人が新権原による自主占有を開始したものとされ右占有の始め過失がないとされた事例 - 甲所有の農地を小作し、長期にわたり右農地の管理人のように振舞つていた乙に小作料を支払つていた丙が、甲の代理人と称する乙から右農地を買い受け、右買受につき農地法所定の許可を得て所有権移転登記手続を経由し、その代金を支払つた等判示の事情のもとにおいては、丙は、乙に甲を代理する権限がなかつたとしても、遅くとも右登記の時には民法185条にいう新権原により所有の意思をもつて右農地の占有を始めたものであり、かつ、その占有の始めに所有権を取得したものと信じたことに過失がないということができる。 - 土地所有権確認等、同反訴請求(最高裁判決 昭和52年3月3日)民法第162条,農地調整法(昭和26年法律第89号による改正前のもの)4条 - 農地の賃借人が所有者から右農地を買い受けたが未だ農地調整法4条所定の知事の許可又は農地委員会の承認を得るための手続がとられていない場合と新権原による自主占有の開始 - 農地の賃借人が所有者から右農地を買い受けその代金を支払つたときは、農地調整法四条所定の都道府県知事の許可又は市町村農地委員会の承認を得るための手続がとられなかつたとしても、買主は、特段の事情のない限り、売買契約が締結されその代金が支払われた時に、民法185条にいう新権原により所有の意思をもつて右農地の占有を始めたものというべきである。 - 土地所有権移転登記手続(最高裁判決 平成8年11月12日)民法第162条,民法第186条1項,民法第187条1項,民法第896条 - 他主占有者の相続人が独自の占有に基づく取得時効の成立を主張する場合における所有の意思の立証責任 - 他主占有者の相続人が独自の占有に基づく取得時効の成立を主張する場合には、相続人において、その事実的支配が外形的客観的にみて独自の所有の意思に基づくものと解される事情を証明すべきである。 - 他主占有者の相続人について独自の占有に基づく取得時効の成立が認められた事例 - 甲が所有しその名義で登記されている土地建物について、甲の子である乙が甲から管理をゆだねられて占有していたところ、乙の死亡後、その相続人である乙の妻子丙らが、乙が生前に甲から右土地建物の贈与を受けてこれを自己が相続したものと信じて、その登記済証を所持し、固定資産税を納付しつつ、管理使用を専行し、賃借人から賃料を取り立てて生活費に費消しており、甲及びその相続人らは、丙らが右のような態様で右土地建物の事実的支配をしていることを認識しながら、異議を述べていないなど判示の事実関係があるときは、丙らが、右土地建物が甲の遺産として記載されている相続税の申告書類の写しを受け取りながら格別の対応をせず、乙の死亡から約15年経過した後に初めて右土地建物につき所有権移転登記手続を求めたという事実があるとしても、丙らの右土地建物についての事実的支配は、外形的客観的にみて独自の所有の意思に基づくものと解するのが相当であり、丙らについて取得時効が成立する。 - 他主占有者の相続人が独自の占有に基づく取得時効の成立を主張する場合における所有の意思の立証責任
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条文 - 第186条 - 占有者は、所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定する。 - 前後の両時点において占有をした証拠があるときは、占有は、その間継続したものと推定する。 解説 概要 占有や占有の態様を要件とする法律行為の成立を容易にするための規定であると言える。第186条1項は占有の状況に関する証明責任を、占有者から相手方に転換する事をその内容とする条文である。第186条2項はある二つの時点での占有を立証すると、その二時点間の占有継続の証明責任を相手方に転換する事をその内容とする条文である。 詳細 本来、ある法律行為の効果の適用を望む場合、その法律行為の適用によって利益を受けるものが証明責任を負うのが原則である(法律要件分類説(または規範説))。しかし、そのような原則を貫くと、証明責任を課された事実の立証が困難を極める場合には、民法が想定した法律行為が真に適用されるべき場合にも、適用されず意味をなさないものになる恐れがある。また、その結果その法律行為の適用によって救済を予定していたものを保護できないという矛盾が生まれる事になる。このような事が予見しえる場合、民法は推定規定を設けており、証明責任を予め相手方に転換する法技術を採用している。第186条1項及び2項もそのような推定規定の一種であり、占有を要件とする法律行為(即時取得や時効取得)が要求する占有の態様に関する要件を緩和し、それを以って、これらの法律要件の成立を容易にする役割を担っている。さて、時効取得や即時取得などの適用を望む場合、各固有の要件の他に、占有の態様に関する要件として以下のものを要する。 - 所有の意思をもった占有である事(自主占有) - 平穏 - 公然 - 善意 - 無過失 上記の要件のうち、1~4まではその立証に非常に手間がかかる為、第186条1項はこの証明責任を転換し時効取得や即時取得の適用を容易にするようにしたものである。更に、時効取得の場合、上記の占有の態様に関する要件とは別個に善意占有なら10年、悪意占有なら20年の占有継続を立証しないといけないが、この立証は容易ではない。すべての時点においての占有を立証するのは事実上不可能だからである。そのため、民法はここでも占有者の証明責任を緩和し、第186条2項によって占有者の証明をニ時点のみに抑え、時効取得の成立を容易にしている。 ここで、取得時効に関する民法第162条1項の条文上は、所有意思・平穏公然が時効取得という法律効果の発生要件に読めるが、実際には、186条1項により、所有意思のないこと・凶暴隠秘が時効取得の発生の障害要件であり、186条1項の要件は162条1項と合わせて解釈するための暫定真実(ざんていしんじつ)だといわれている。つまり、162条1項の法律効果を主張する者は、原則通りなら、主要事実として20年の経過、所有意思・平穏公然の立証責任を負うが、所有意思・平穏公然は占有の被推定事実なので、実際には(推定原因事実として)20年間の占有を立証すればよい。この所有意思・平穏公然が暫定真実である。 論点 判例や学説がこの条文で論点としている部分は以下のようなものがある。矢印の後は判例の立場、 - 186条1項の推定は、この条文によって無過失まで推定されるか。⇒推定されない。 - 186条1項の推定は、他主占有である場合、及び自主占有者がなし得ない行動を取った時にまで及ぶか。⇒及ばない。 - 186条1項の自主占有の推定推定は、相続を185条の新権原として自主占有を開始する場合にまで及ぶか。⇒及ばない。 - 186条1項の自主占有の推定は、解除条件付売買契約に基づく買主の占有において、解除条件が成立すると当然に及ばなくなるか。⇒当然に及ばないわけではない。 参照条文 判例 - 土地所有権移転登記手続 (最高裁判例 昭和58年3月24日)民法第162条,民訴法185条 - 民法186条1項の所有の意思の推定が覆される場合 - 民法186条1項の所有の意思の推定は、占有者がその性質上所有の意思のないものとされる権原に基づき占有を取得した事実が証明されるか、又は占有者が占有中、真の所有者であれば通常はとらない態度を示し、若しくは所有者であれば当然とるべき行動に出なかつたなど、外形的客観的にみて占有者が他人の所有権を排斥して占有する意思を有していなかつたものと解される事情が証明されるときは、覆される。 - 土地所有権移転登記手続 (最高裁判例 昭和60年3月28日)民法第127条2項,民法第162条 - 解除条件付売買契約に基づいて開始される占有と自主占有 - 売買契約に基づいて開始される占有は、残代金が約定期限までに支払われないときは当該売買契約は当然に解除されたものとする旨の解除条件が付されている場合であつても、自主占有であるというを妨げない。 - 解除条件付売買契約に基づいて開始される自主占有の条件成就による他主占有への変更の有無 - 売買契約に基づいて開始された自主占有は、当該売買契約が解除条件(残代金を約定期限までに支払わないときは契約は当然に解除されたものとする旨)の成就により失効しても、それだけでは、他主占有に変わるものではないと解すべきである。 - 解除条件付売買契約に基づいて開始される占有と自主占有 - 土地所有権移転登記、土地持分移転登記 (最高裁判例 平成7年12月15日) 民法第162条 - 登記簿上の所有名義人に対して所有権移転登記手続を求めないなどの土地占有者の態度が他主占有と解される事情として十分であるとはいえないとされた事例 - 土地の登記簿上の所有名義人甲の弟である乙が右土地を継続して占有した場合に、甲の家が本家、乙の家が分家という関係にあり、乙が経済的に苦しい生活をしていたため甲から援助を受けたこともあり、乙は家族と共に居住するための建物を建築、移築、増築して右土地を使用し、甲はこれに異議を述べたことがなかったなど判示の事実関係の下においては、乙が、甲に対して右土地の所有権移転登記手続を求めず、右土地に賦課される固定資産税を負担しなかったことをもって、外形的客観的にみて乙が他人の所有権を排斥して占有する意思を有していなかったものと解される事情として十分であるということはできない。
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条文 (占有の承継) - 第187条 - 占有者の承継人は、その選択に従い、自己の占有のみを主張し、又は自己の占有に前の占有者の占有を併せて主張することができる。 - 前の占有者の占有を併せて主張する場合には、その瑕疵をも承継する。 解説 条文の意義・概要 占有が承継できる事、及び占有承継時の占有開始時の算出方法に関するルールを定めた条文である。また、2項では、1項所定の場合に、本権者との利益調整の観点から、占有承継人は先占有者の占有期間も自己の占有期間に算入できる代わりに瑕疵をも承継するとした。この条文が意義を持つ場合は取得時効の様に、時効の起算点(占有開始時)や占有期間を争う場合である。 解釈 187条の「承継」 187条中の「承継」は民法学で言われる特定承継及び包括承継を指すとされる。判例は、占有承継が特定承継によるのか、包括承継によるのかによってどの時点で占有を承継したのかを分けている。売買等による特定承継で占有承継を主張する場合は、意思に基づく占有移転が必要としているが、相続などによる包括承継で占有承継を主張する場合は、占有移転を必要とせず、相続の開始時に承継があったものとする。こうする事により、相続財産を直接所持していない相続人も占有訴権の行使が可能になる。 187条の「瑕疵」 先占有者の占有が「他主、強暴、隠匿、悪意または善意有過失」の態様を持つ事を指す。占有は186条によって「所有の意思(自主占有)、平穏、公然、善意」は推定されるはずであるが、先占有者の占有が、その推定が及ばないような容態でなされたり、占有の開始時に過失があったりした場合は占有承継の際にこれらも占有承継人に承継される。 論点 - 187条の承継の中に相続等の包括承継は含まれるか⇒含まれる - 前主が数人あるときもその数人の占有期間をまとめて自己の占有期間に算入できるか⇒できる。 - 前主数人の占有期間をまとめて自己の占有期間に算入後、その数人のうち瑕疵無く占有しているもののみの占有期間のみの承継を改めて主張することができるか⇒できる。(信義則・禁反言にならない。) 参照条文 民法第186条(占有の態様等に関する推定) 判例 - 土地所有権確認等請求(最高裁判決 昭和37年05月18日) - 相続人は民法第187条第1項の承継人にあたるか - 民法第187条第1項は相続による承継にも適用がある。 - 土地所有権確認等(最高裁判決 昭和53年03月06日) 民法第162条2項 - 所有権移転登記手続(最高裁判決 平成1年12月22日) 民法第33条 - 権利能力なき社団等が法人格を取得した場合と民法187条1項 - 民法187条1項は、権利能力なき社団等の占有する不動産を法人格を取得した以後当該法人が引き継いで占有している場合にも適用がある。 - 土地所有権移転登記手続(最高裁判決 平成8年11月12日)民法第162条,民法第185条,民法第186条1項,民法第896条 - 他主占有者の相続人が独自の占有に基づく取得時効の成立を主張する場合における所有の意思の立証責任 - 他主占有者の相続人が独自の占有に基づく取得時効の成立を主張する場合には、相続人において、その事実的支配が外形的客観的にみて独自の所有の意思に基づくものと解される事情を証明すべきである。 - 他主占有者の相続人について独自の占有に基づく取得時効の成立が認められた事例 - 甲が所有しその名義で登記されている土地建物について、甲の子である乙が甲から管理をゆだねられて占有していたところ、乙の死亡後、その相続人である乙の妻子丙らが、乙が生前に甲から右土地建物の贈与を受けてこれを自己が相続したものと信じて、その登記済証を所持し、固定資産税を納付しつつ、管理使用を専行し、賃借人から賃料を取り立てて生活費に費消しており、甲及びその相続人らは、丙らが右のような態様で右土地建物の事実的支配をしていることを認識しながら、異議を述べていないなど判示の事実関係があるときは、丙らが、右土地建物が甲の遺産として記載されている相続税の申告書類の写しを受け取りながら格別の対応をせず、乙の死亡から約15年経過した後に初めて右土地建物につき所有権移転登記手続を求めたという事実があるとしても、丙らの右土地建物についての事実的支配は、外形的客観的にみて独自の所有の意思に基づくものと解するのが相当であり、丙らについて取得時効が成立する。 - 他主占有者の相続人が独自の占有に基づく取得時効の成立を主張する場合における所有の意思の立証責任
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条文 (占有物について行使する権利の適法の推定) - 第188条 - 占有者が占有物について行使する権利は、適法に有するものと推定する。 解説 - 占有権の本権推定効について定めた規定である。 - 占有者が占有物について行使する権利とは本権や、占有を要素とする債権などを指す。 (注)権利の取得については推定されないため、裁判において所有権を主張するためには立証することが必要となる。 参照条文 判例 - 建物収去土地明渡等請求(最高裁判決 昭和35年03月01日) - 他人の不動産を占有する正権原の立証責任。 - 他人の不動産を占有する正権原があるとの主張については、その主張をする者に立証責任があると解すべきである。 - 仮差押に対する第三者異議(最高裁判決 昭和39年01月24日)民法第192条 - 金銭の占有と所有。 - 金銭の直接占有者は、特段の事情のないかぎり、その占有を正当づける権利を有するか否かにかかわりなく、金銭の所有者とみるべきである。
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条文 - 第189条 - 善意の占有者は、占有物から生ずる果実を取得する。 - 善意の占有者が本権の訴えにおいて敗訴したときは、その訴えの提起の時から悪意の占有者とみなす。 解説 善意の占有者は、占有物から生ずる果実を取得することができる。本来、本権を有しない限り果実の取得権は発生しないが、自身に本権が帰属すると誤信した(=善意)の占有者はこの規定により保護されることになっている。盗人など、自身に本権が帰属しないと知っている(=悪意)の占有者はこの規定の保護の対象外となり、原則通り果実の返還義務(不当利得)を負う。 第2項は、民法第186条の推定規定の例外を定めたものである。 もし民法第703条が適用されれば、訴訟によって占有者に占有の権原がないことが明らかになった後でも、すでに費消した果実については「取得」が認められて返還する義務を負わず、まだ費消していない果実については返還しなければならない。この189条も不当利得の条文だから、この条文の「果実」とはすでに費消した果実に限ると解釈されている(縮小解釈)。 ただ、189条は703条と異なり、訴訟によって占有者に占有の権原がないことが明らかになった場合、提訴時にさかのぼって190条が適用されるため、占有開始時から提訴時までにすでに費消した果実は「取得」が認められて返還義務がないが、提訴時以降に費消した果実は金銭評価して利息をつけて返還しなければならない。 つまり権利者は善意の占有者に対して物の返還を求めると同時に、費消していない果実の返還+提訴時以降に費消した果実の金額と利息を請求することができる。 参考文献 - 加藤雅信『新民法体系物権2(第2版)』222頁、235頁 参照条文 判例 - 損害賠償請求 (最高裁判決 昭和32年01月31日)民法第709条,民訴法199条1項(現・民事訴訟法第114条),民訴法709条(→民事執行法) - 本権の訴における敗訴者は不法行為についても起訴の時から悪意の占有者とみなされるか - 係争物件を自己の所有と信じ占有していた者が、本権の訴において敗訴したからとて、右敗訴者は、当然には、不法行為の関係についてまで、起訴の時から悪意の占有者とみなされるものではない。 - 不当利得返還請求(最高裁判決 昭和38年12月24日)民法第703条 - 銀行業者が不当利得した金銭を利用して得た運用利益と民法第189条第1項の適用の有無 - 銀行業者が不当利得した金銭を利用して得た運用利益については、民法第189条第1項の類推適用により同人に右利益の収取権が認められる余地はない。 - 銀行業者が不当利得した金銭によつて得た法定利率による利息相当額以内の運用利益につき返還義務があるとされた事例 - 第一項の運用利益が商事法定利率による利息相当額(臨時金利調整法所定の一箇年契約の定期預金の利率の制限内)であり損失者が商人であるときは、社会観念上、受益者の行為の介入がなくても、損失者が不当利得された財産から当然取得したであろうと考えられる収益の範囲内にあるものと認められるから、受益者は、善意のときであつても、これが返還義務を免れない。 - 不当利得された財産に受益者の行為が加わることによつて得られた収益についての返還義務の範囲 - 不当利得された財産に受益者の行為が加わることによつて得られた収益については、社会観念上、受益者の行為の介入がなくても、損失者が右財産から当然取得したであろうと考えられる範囲において損失があるものと解すべきであり、その範囲の収益が現存するかぎり、民法第703条により返還されるべきである。 - 銀行業者が不当利得した金銭を利用して得た運用利益と民法第189条第1項の適用の有無
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条文 (悪意の占有者による果実の返還等) - 第190条 - 悪意の占有者は、果実を返還し、かつ、既に消費し、過失によって損傷し、又は収取を怠った果実の代価を償還する義務を負う。 - 前項の規定は、暴行若しくは強迫又は隠匿によって占有をしている者について準用する。 解説 「悪意の占有者」とは、果実を収取する権限のある占有の権原(本権)がないことにつき悪意な占有者のことをいう。 悪意の占有者には、善意の占有者に認められているような果実の収受権は許されず、返還・償還義務を負担することになる。 占有開始時に「暴行若しくは強迫」または「隠匿」があった場合は、悪意の占有者とみなされる。 もし民法第704条が適用されれば、占有者は物の代価に利息をつけて返還しなければならない。190条も不当利得の条文だから、占有者は物が滅失、毀損すればその分の額の利息も返還しなければならない。704条と異なり、費消を怠った果実と、費消した果実の代価をも返還しなければならない。 つまり権利者は、悪意の占有者に対して、物の返還請求(または代価と利子)と収取を怠った果実の返還、占有開始時から費消した果実分の代価を請求することができる。
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条文 (即時取得) - 第192条 - 取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。 解説 - 即時取得(善意取得)は動産物権変動の公示方法である引渡し(占有の移転)に公信力を持たせたもの。 - 不動産などに比べ、一般に少額であり大量に流通することが想定される動産において、静的安全を多少犠牲にしつつ動的安全を確保し商品流通秩序を保つ目的の制度である。 要件 対象となる動産 取引行為を契機とする 平穏・公然・善意・無過失 - 善意・無過失は、代理人によるときは、代理人について決せられる。 占有を始める(占有移転) - 「占有改定」で良いか。 - (判例)占有改定では不十分で「現実の引渡し」を要する(最判昭和32年12月27日、最判昭和35年2月11日)。 - (学説)占有改定で足りる説、又は、占有改定で足りるが現実の引き渡しがなされた場合対抗できない説などの批判あり。 効果 - 即時にその動産について行使する権利を取得する。 行使する権利 権利を取得する - 原始取得であると解されており、取得前に設定されていた権利等は一切承継しない。 参照条文 判例 - 動産引渡請求(最高裁判決 昭和26年11月27日) 民法第194条 - 民法第192条にいわゆる善意無過失の意義 - 民法第192条にいわゆる「善意ニシテ且過失ナキトキ」とは、動産の占有を始めた者において、取引の相手方がその動産につき無権利者でないと誤信し且つかく信ずるにつき過失のなかつたときのことをいい、その動産が統制品であるにかかわらず、割当証明書によらないで買い受けたという事実は、右の善意無過失を決するための要件とならない。 - 民法第194条の回復請求権と物の滅失。 - 民法第194条により被害者が盗品を回復することを得る場合において、その回復請求前その物が滅失したときは、右の回復請求権は消滅するのみならず、被害者は回復に代る賠償をも請求することはできない。 - 民法第192条にいわゆる善意無過失の意義 - 業務上横領、背任(最高裁判決 昭和29年11月05日)民法第703条,刑法第247条 - 貯蓄信用組合理事が組合名義で組合員以外の者から貯金を受入れた場合とその金銭所有権の帰属 - 貯蓄信用組合理事がその資格をもつて、組合の名において、組合に対する貯金として受入れたものである以上、たとえ、右貯金が組合員以外の者のした貯金であるが故に、組合に対する消費寄託としての法律上の効力を生じないものであるとしても、貯金の目的となつた金銭の所有権は組合に帰属する。 - (刑事事件における判旨) - 金銭は通常物としての個性を有せず、単なる価値そのものと考えるべきであり、価値は金銭の所在に随伴するものであるから、金銭の所有権は特段の事情のないかぎり金銭の占有の移転と共に移転するものと解すべきであつて、金銭の占有が移転した以上、たとえ、その占有移転の原由たる契約が法律上無効であつても、その金銭の所有権は占有と同時に相手方に移転するのであつて、こゝに不当利得返還債権関係を生ずるに過ぎない。 - (刑事事件における判旨) - 庭石庭樹所有権確認請求(最高裁判決 昭和32年12月27日) - 占有改定による占有の取得と民法第192条の不適用 - 占有改定により占有を取得したに止まるときは、民法第192条の適用はない。 - 動産所有権確認同引渡請求 (最高裁判決 昭和35年2月11日) 民法第183条 - 占有改定による占有の取得と民法第192条の適用の有無。 - 占有取得の方法が外観上の占有状態に変更を来たさない占有改定にとどまるときは、民法第192条の適用はない。 - 所有権確認等請求(最高裁判決 昭和36年09月15日)工場抵当法第5条,工場抵当法第14条 - 工場財団に属する動産と民法第192条。 - 工場財団に属する動産についても民法第192条の適用がある。 - 仮差押に対する第三者異議(最高裁判決 昭和39年01月24日)民法第188条 - 金銭の占有と所有。 - 金銭の直接占有者は、特段の事情のないかぎり、その占有を正当づける権利を有するか否かにかかわりなく、金銭の所有者とみるべきである。 - 船舶引渡請求(最高裁判決 昭和41年06月09日) - 民法第192条にいう「過失ナキ」ことの立証責任 - 民法第192条により動産の上に行使する権利を取得したことを主張する占有者は、同条にいう「過失ナキ」ことを立証する責任を負わない。 - 損害賠償請求(最高裁判決 昭和42年04月27日) - 民法第192条の適用に関連し占有の開始に過失があるとされた事例 - - 高知市附近では土木建設請負業者が土木建設機械をその販売業者から買い受けるについては、通常代金は割賦支払とし、代金完済のとき始めて所有権の移転を受けるいわゆる所有権留保の割賦販売の方法によることが多く、上告人は、古物商であるが土木建設機械をも扱つていたから、右のような消息に通じているものであるなどの事実に徴すれば、上告人が本件物件を買い受けるに当つては、売主がいかなる事情で新品である土木建設の用に供する本件物件を処分するのか、また、その所有権を有しているのかどうかについて、疑念をはさみ、売主についてその調査をすべきであり、少し調査をすると、訴外D建設有限会社が本件物件を処分しようとした経緯、本件物件に対する所有権の有無を容易に知りえたものであり、したがつて、このような措置をとらなかつた上告人には、本件物件の占有をはじめるについて過失があつたとする原判決の判断は、当審も正当として、これを是認することができる。 - 第三者異議(最高裁判決 昭和42年05月30日)民訴法577条 - 動産の競落と民法第192条の適用の有無 - 執行債務者の所有に属さない動産が強制競売に付された場合であつても、競落人は、民法第192条によつて右動産の所有権を取得することができる。 - 損害賠償請求(最高裁判決 昭和45年12月04日)道路運送車両法5条,道路運送車両法16条(昭和44年法律第68号による改正前のもの) - 登録を受けていない自動車と民法192条 - 道路運送車両法による登録を受けていない自動車については、民法192条の規定の適用がある。 - 機器引渡請求(最高裁判決 昭和47年11月21日)民法第101条 - 即時取得と法人の善意・無過失 - 法人における民法192条の善意・無過失は、その法人の代表者について決するが、代理人が取引行為をしたときは、その代理人について決すべきである。 - 第三者異議(最高裁判決 昭和57年09月07日)商法第597条 - 荷渡指図書に基づき倉庫業者の寄託者台張上の寄託者名義が変更され寄託の目的物の譲受人が指図による占有移転を受けた場合と民法192条の適用 - 寄託者が倉庫業者に対して発行した荷渡指図書に基づき倉庫業者が寄託者台帳上の寄託者名義を変更して右寄託の目的物の譲受人が指図による占有移転を受けた場合には、即時取得の適用がある。 - 損害賠償(最高裁判決 昭和62年04月24日)道路運送車両法第4条,道路運送車両法第5条1項 - 登録を受けている自動車と民法192条の適用の有無 - 道路運送車両法による登録を受けている自動車については、民法192条の適用はない。 - 道路運送車両法第5条1項 - 登録を受けた自動車の所有権の得喪は、登録を受けなければ、第三者に対抗することができない。 - 道路運送車両法第5条1項
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条文 (盗品又は遺失物の回復) - 第193条 - 前条の場合において、占有物が盗品又は遺失物であるときは、被害者又は遺失者は、盗難又は遺失の時から2年間、占有者に対してその物の回復を請求することができる。 解説 前条(第192条)に定める即時取得の例外を規定する。元々占有していた者から占有離脱した原因が、窃盗又は遺失による場合は、占有の事実により現在の占有者が当然に占有権を取得(第180条)するわけではなく、盗難又は遺失の時から2年間は、返還請求ができる。この間の所有権が元々占有していた者と現在の占有者のどちらにあるかについて争いがある(取得者帰属説(通説)、原所有者帰属説(判例、大審院判決10年7月8日民録27輯1373頁))。 さらに本条の補足として、次条(第194条)の規定がある。
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条文 (盗品又は遺失物の回復) - 第194条 - 占有者が、盗品又は遺失物を、競売若しくは公の市場において、又はその物と同種の物を販売する商人から、善意で買い受けたときは、被害者又は遺失者は、占有者が支払った代価を弁償しなければ、その物を回復することができない。 解説 193条の例外規定である。 参照条文 判例 - 動産引渡請求(最高裁判例 昭和26年11月27日) 民法第192条 - 民法第192条にいわゆる善意無過失の意義 - 民法第192条にいわゆる「善意ニシテ且過失ナキトキ」とは、動産の占有を始めた者において、取引の相手方がその動産につき無権利者でないと誤信し且つかく信ずるにつき過失のなかつたときのことをいい、その動産が統制品であるにかかわらず、割当証明書によらないで買い受けたという事実は、右の善意無過失を決するための要件とならない。 - 民法第194条の回復請求権と物の滅失。 - 民法第194条により被害者が盗品を回復することを得る場合において、その回復請求前その物が滅失したときは、右の回復請求権は消滅するのみならず、被害者は回復に代る賠償をも請求することはできない。 - 民法第192条にいわゆる善意無過失の意義 - 動産引渡請求本訴、代金返還請求反訴事件(最高裁判例 平成12年06月27日) - 民法194条に基づき盗品等の引渡しを拒むことができる占有者と右盗品等の使用収益権 - 盗品又は遺失物の占有者は、民法194条に基づき右盗品等の引渡しを拒むことができる場合には、代価の弁償の提供があるまで右盗品等の使用収益権を有する。 - 被害者等は、代価を弁償して盗品等を回復するか、盗品等の回復をあきらめるかを選択することができるのに対し、占有者は、被害者等が盗品等の回復をあきらめた場合には盗品等の所有者として占有取得後の使用利益を享受し得ると解されるのに、被害者等が代価の弁償を選択した場合には代価弁償以前の使用利益を喪失するというのでは、占有者の地位が不安定になること甚だしく、両者の保護の均衡を図った同条の趣旨に反する。 - 盗品又は遺失物の占有者は、民法194条に基づき右盗品等の引渡しを拒むことができる場合には、代価の弁償の提供があるまで右盗品等の使用収益権を有する。 - 盗品の占有者がその返還後にした民法194条に基づく代価弁償請求が肯定される場合 - 盗品の占有者が民法194条に基づき盗品の引渡しを拒むことができる場合において、被害者が代価を弁償して盗品を回復することを選択してその引渡しを受けたときには、占有者は、盗品の返還後、同条に基づき被害者に対して代価の弁償を請求することができる。 - 代価を受けずに被害者に返還した後に、代価の支払いを請求した事案。 - 盗品の占有者が民法194条に基づき盗品の引渡しを拒むことができる場合において、被害者が代価を弁償して盗品を回復することを選択してその引渡しを受けたときには、占有者は、盗品の返還後、同条に基づき被害者に対して代価の弁償を請求することができる。 - 民法194条に基づき盗品等の引渡しを拒むことができる占有者と右盗品等の使用収益権
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条文 (占有者による費用の償還請求) - 第196条 - 占有者が占有物を返還する場合には、その物の保存のために支出した金額その他の必要費を回復者から償還させることができる。ただし、占有者が果実を取得したときは、通常の必要費は、占有者の負担に帰する。 - 占有者が占有物の改良のために支出した金額その他の有益費については、その価格の増加が現存する場合に限り、回復者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる。ただし、悪意の占有者に対しては、裁判所は、回復者の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。 解説 占有物の返還の際の必要費・有益費についての規定。 - 回復者 - 物件的請求権を行使した者(民法第191条) - 1項 - 請求可能時期は占有物の返還時。 - 2項 - 有益費は、必要費と違い必ず支出される費用ではないので、返還請求は、常には認められない。 - ただし書きは、悪意の占有者が故意に多額の有益費を支出して償還請求し、回復者の無資力に乗じての留置権の行使を防ぐためである。 参照条文 判例 - 船舶引渡等請求(最高裁判決 昭和30年03月04日)民法第295条、民法第298条 - 民法第298条第2項但書にいわゆる留置物の保存に必要な使用 - 木造帆船の買主が、売買契約解除前支出した修繕費の償還請求権につき右船を留置する場合において、これを遠方に航行せしめて運送業務のため使用することは、たとえ解除前と同一の使用状態を継続するにすぎないとしても、留置物の保存に必要な使用をなすものとはいえない。 - 建物収去土地明渡等請求(最高裁判決 昭和48年07月17日) - 賃借人が賃借建物に附加した部分が滅失した場合と有益費償還請求権 - 賃借人が賃借建物に附加した増・新築部分が、賃貸人に返還される以前に、賃貸人、賃借人いずれの責にも帰すべきでない事由により滅失したときは、特段の事情のないかぎり、右部分に関する有益費償還請求権は消滅する。
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条文 (占有保持の訴え) 解説 - 損害の賠償は、その性質は不法行為責任であるので、相手方の故意又は過失が必要である。 参照条文 民法第201条(占有の訴えの提起期間) 判例 - 村道供用妨害排除請求(最高裁判決 昭和39年01月16日) 地方自治法(昭和38年6月8日法律99号による改正前のもの)10条、民法第709条、民法第710条 - 村民の村道使用関係の性質 - 村民各自は、村道に対し、他の村民の有する利益ないし自由を侵害しない程度において、自己の生活上必須の行動を自由に行いうべき使用の自由権を有する。 - 村民の村道使用権に対する侵害の継続と妨害排除請求権の成否 - 村民の右村道使用の自由権に対して継続的な妨害がなされた場合には、当該村民は、右妨害の排除を請求することができる。 - 村民の村道使用関係の性質 - 通行妨害排除(最高裁判決 平成9年12月18日) 民法第1条ノ2,民法第199条,建築基準法第42条1項5号 - いわゆる位置指定道路の通行妨害と妨害排除請求権 - 建築基準法42条1項5号の規定による位置の指定を受け現実に開設されている道路を通行することについて日常生活上不可欠の利益を有する者は、右道路の通行をその敷地の所有者によって妨害され、又は妨害されるおそれがあるときは、敷地所有者が右通行を受忍することによって通行者の通行利益を上回る著しい損害を被るなどの特段の事情のない限り、敷地所有者に対して右妨害行為の排除及び将来の妨害行為の禁止を求める権利(人格権的権利)を有する。 - 製作販売差止等請求事件(最高裁判決 平成16年02月13日)民法第199条,民法第206条,民法第709条,知的財産基本法第2条2項 - 競走馬の所有者が当該競走馬の名称を無断で利用したゲームソフトを製作,販売した業者に対しいわゆる物のパブリシティ権の侵害を理由として当該ゲームソフトの製作,販売等の差止請求又は不法行為に基づく損害賠償請求をすることの可否 - 競走馬の所有者は,当該競走馬の名称を無断で利用したゲームソフトを製作,販売した業者に対し,その名称等が有する顧客吸引力などの経済的価値を独占的に支配する財産的権利(いわゆる物のパブリシティ権)の侵害を理由として当該ゲームソフトの製作,販売等の差止請求又は不法行為に基づく損害賠償請求をすることはできない。
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条文 (占有保全の訴え) - 第199条 - 占有者がその占有を妨害されるおそれがあるときは、占有保全の訴えにより、その妨害の予防又は損害賠償の担保を請求することができる。 解説 - 占有訴権についての規定である。 - 物権的請求権における妨害予防請求権に相当する。 参照条文 判例 - 製作販売差止等請求事件(最高裁判例 平成16年02月13日)民法第198条,民法第206条,民法第709条,知的財産基本法第2条2項 - 競走馬の所有者が当該競走馬の名称を無断で利用したゲームソフトを製作,販売した業者に対しいわゆる物のパブリシティ権の侵害を理由として当該ゲームソフトの製作,販売等の差止請求又は不法行為に基づく損害賠償請求をすることの可否 - 競走馬の所有者は,当該競走馬の名称を無断で利用したゲームソフトを製作,販売した業者に対し,その名称等が有する顧客吸引力などの経済的価値を独占的に支配する財産的権利(いわゆる物のパブリシティ権)の侵害を理由として当該ゲームソフトの製作,販売等の差止請求又は不法行為に基づく損害賠償請求をすることはできない。
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民法第1条 条文 (基本原則) - 第1条 解説 - 第1項は、私権の内容について規定している。 - 第2項は、私権の行使及び義務の履行における信義誠実の原則(信義則)について規定している。 - 信義則からは、以下の4つの原理が導き出される。 - 禁反言の法則(エストッペルの原則) - 自己の行為に矛盾した態度をとることは許されない。 - 法令への反映 - 第398条 - 地上権等を抵当権の目的とした地上権者等は、その権利を放棄しても、抵当権者に対抗することができない(参考判例:最判昭和38年02月21日)。 - 第543条 - 債務の不履行が債権者の責めに帰すべき事由によるものであるときは、債権者は、契約の解除をすることができない。 - 判例 - 自己の行為に矛盾した態度をとることは許されない。 - クリーンハンズの原則 - 事情変更の原則(法則) - 契約時の社会的事情や契約の基礎のなった事情に、その後、著しい変化があり、契約の内容を維持し強制することが不当となった場合は、それに応じて変更されなければならない。 - 権利失効の原則 - 権利者が信義に反して権利を長い間行使しないでいると、権利の行使が阻止されるという原則。時効制度を典型とする。 - 禁反言の法則(エストッペルの原則) - 信義則からは、以下の4つの原理が導き出される。 - 第3項は、権利濫用の禁止について規定している。 英文 Article 1 Private rights must conform to the public welfare. - (2) The exercise of rights and performance of duties must be done in good faith. - (3) No abuse of rights is permitted. (出典: 法学/英文引用元) 参照条文 参照判例 判例 - 解職処分取消請求(最高裁判決 昭和34年06月26日) - 公務員の退職願の撤回が許される時期 - 公務員の退職願の撤回は、免職辞令の交付があるまでは、原則として自由であるが、辞令交付前においても、これを撤回することが信義に反すると認められるような特段の事情がある場合には、撤回は許されないものと解すべきである。 - 教育長と教育公務員の退職願およびその撤回の意思表示の受領権限 - 教育長は、教育委員会の補助機関として教育公務員の退職願およびその撤回の意思表示を受領する権限を有する。 - 公務員の退職願の撤回が有効とされた事例 - 公務員の退職願の撤回が免職辞令の交付前になされた場合において、右退職願の提出が提出者本人の都合に基き進んでなされたものではなく五五歳以上の者に勇退を求めるという任免権者の都合に基く勧告に応じてなされたものであり、撤回の動機も五五歳以上の者で残存者があることを聞き及んだことによるもので、あながちとがめ得ない性質のものであるという事情があり、しかも撤回の意思表示が右聞知後遅怠なく退職願の提出は後一週間足らずの間になされており、その時には、すでに任免権者の側で退職承認の内部的決定がなされていたとはいえ、本人が退職の提出前に右事情を知つていたとは認められないのみならず、任免権者の側で、本人の自由意思を尊重する建前から撤回の意思表示につき考慮し善処したとすれば、爾後の手続の進行による任免権者の側の不都合は十分避け得べき状況にあつたと認められるような事情がある場合には、退職願を撤回することが信義に反すると認むべき特段の事情があるものとは解されないから、右撤回は有効と認むべきである。 - 公務員の退職願の撤回が許される時期 - 家屋明渡請求(最高裁判決 昭和37年2月1日) - 賃貸借の合意解除と転借人の権利 - 賃貸人の承諾ある転貸借の場合には、転借人に不信な行為があるなどして、賃貸人と賃借人との間で賃貸借を合意解除することが信義誠実の原則に反しないような特段の事由のあるほか、右合意解除により転借人の権利は消滅しない。 - 建物退去土地明渡請求(最高裁判決 昭和38年02月21日)民法第545条,民法第601条 - 土地賃貸借の合意解除は地上建物の賃借人に対抗できるか。 - 土地賃貸人と賃借人との間において土地賃貸借契約を合意解除しても、土地賃貸人は、特別の事情がないかぎり、その効果を地上建物の賃借人に対抗できない。 - 上告人(土地賃貸人)と被上告人(地上建物の賃借人)との間には直接に契約上の法律関係がないにもせよ、建物所有を目的とする土地の賃貸借においては、土地賃貸人は、土地賃借人が、その借地上に建物を建築所有して自らこれに居住することばかりでなく、反対の特約がないかぎりは、他にこれを賃貸し、建物賃借人をしてその敷地を占有使用せしめることをも当然に予想し、かつ認容しているものとみるべきであるから、建物賃借人は、当該建物の使用に必要な範囲において、その敷地の使用收益をなす権利を有するとともに、この権利を土地賃貸人に対し主張し得るものというべく、右権利は土地賃借人がその有する借地権を抛棄することによつて勝手に消滅せしめ得ないものと解するのを相当とするところ、土地賃貸人とその賃借人との合意をもつて賃貸借契約を解除した本件のような場合には賃借人において自らその借地権を抛棄したことになるのであるから、これをもつて第三者たる被上告人に対抗し得ないものと解すべきであり、このことは民法第398条、民法第538条の法理からも推論することができるし、信義誠実の原則に照しても当然のことだからである。(昭和9年3月7日大審院判決、民集13巻278頁、昭和37年2月1日当裁判所第一小法廷判決、最高裁判所民事裁判集58巻441頁各参照)。 - 約束手形金請求(最高裁判決昭和43年12月25日)手形法第77条,手形法第17条 - 自己の債権の支払確保のため約束手形の裏書を受けた手形所持人が右原因債権の完済後に振出人に対してする手形金請求と権利の濫用 - 自己の債権の支払確保のため約束手形の裏書を受けた手形所持人は、その後右債権の完済を受けて裏書の原因関係が消滅したときは、特別の事情のないかぎり、以後右手形を保持すべき正当の権原を有しないことになり、手形上の権利を行使すべき実質的理由を失つたものであつて、右手形を返還しないで自己が所持するのを奇貨として、自己の形式的権利を利用し振出人に対し手形金を請求するのは、権利の濫用にあたり、振出人は、右所持人に対し手形金の支払を拒むことができる。 - 建物収去土地明渡請求(最高裁判決昭和44年05月30日)民法第541条 - 賃料延滞を理由とする無催告解除が信義に反し許されないとされた事例 - 土地賃貸人が、2ケ月分合計3000円の賃料の延滞を理由として、無催告解除の特約に基づき、賃借人に対し、右2ヶ月目の賃料の履行期を徒過した翌日に、賃貸借契約解除の意思表示を発信した場合において、賃借人が賃借以来これまで11年余の間賃料の支払を怠つたことがなく、右賃料延滞は、賃貸人の娘婿が賃借土地に隣接する賃貸人所有の土地上に建物の建築工事を始め、賃借土地から公道へ至る通行に支障を来たさせて賃借人の生活を妨害したことに端を発した当事者間の紛争に基因するものであり、賃貸人が、右妨害を止める配慮をせず、かえつて右紛争に関する和解のための第三者のあつせんが行なわれている間にこれを無視して右解除の意思表示をしたものである等の事情があるときは、右解除は、信義に反し、その効果を生じないものと解すべきである。 - 土地建物所有権移転登記抹消登記手続等請求(通称 岡山労働金庫貸付) (最高裁判決昭和44年07月04日) 民法第43条,民法第387条,労働金庫法第58条 - 労働金庫の会員外の者に対する貸付の効力 - 労働金庫の会員外の者に対する貸付は無効である。 - 員外貸付が無効とされる場合に債務者において右債務を担保するために設定された抵当権の実行による所有権の取得を否定することが許されないとされた事例 - 労働金庫の員外貸付が無効とされる場合においても、右貸付が判示のような事情のもとにされたものであつて、右債務を担保するために設定された抵当権が実行され、第三者がその抵当物件を競落したときは、債務者は、信義則上、右競落人に対し、競落による所有権の取得を否定することは許されない。 - 労働金庫の会員外の者に対する貸付の効力 - 損害賠償請求(通称 自衛隊八戸車両整備工場損害賠償)(最高裁判決昭和50年02月25日)民法第167条1項,国家公務員法第3章第6節第3款第3目,会計法第30条 - 国の国家公務員に対する安全配慮義務の有無 - 国は、国家公務員に対し、その公務遂行のための場所、施設若しくは器具等の設置管理又はその遂行する公務の管理にあたつて、国家公務員の生命及び健康等を危険から保護するよう配慮すべき義務を負つているものと解すべきである。 - 国の安全配慮義務違背を理由とする国家公務員の国に対する損害賠償請求権の消滅時効期間 - 国の安全配慮義務違背を理由とする国家公務員の国に対する損害賠償請求権の消滅時効期間は、一〇年と解すべきである。 - 国の国家公務員に対する安全配慮義務の有無 - 土地所有権移転登記手続請求(最高裁判決 昭和51年05月25日)民法第145条 - 消滅時効の援用が権利濫用にあたるとされた事例 - 家督相続をした長男が、家庭裁判所における調停により、母に対しその老後の生活保障と妹らの扶養及び婚姻費用等に充てる目的で農地を贈与して引渡を終わり、母が、二十数年これを耕作し、妹らの扶養及び婚姻等の諸費用を負担したなど判示の事実関係のもとにおいて、母から農地法3条の許可申請に協力を求められた右長男がその許可申請協力請求権につき消滅時効を援用することは、権利の濫用にあたる。 - 損害賠償(通称 自衛隊員遺族損害賠償) (最高裁判決昭和56年02月16日)民法第415条 - 国の国家公務員に対する安全配慮義務違反を理由とする損害賠償請求と右義務違反の事実に関する主張・立証責任 - 国の国家公務員に対する安全配慮義務違反を理由として国に対し損害賠償を請求する訴訟においては、原告が、右義務の内容を特定し、かつ、義務違反に該当する事実を主張・立証する責任を負う。 - 雇傭関係存続確認等(日産自動車女子定年制事件 最高裁判決昭和56年03月24日)憲法第14条1項,民法第1条ノ2,民法第90条,労働基準法第1章総則労働基準法第1条 - 定年年齢を男子60歳女子55歳と定めた就業規則中女子の定年年齢を男子より低く定めた部分が性別のみによる不合理な差別を定めたものとして民法90条の規定により無効とされた事例 - 会社がその就業規則中に定年年齢を男子60歳、女子55歳と定めた場合において、担当職務が相当広範囲にわたつていて女子従業員全体を会社に対する貢献度の上がらない従業員とみるべき根拠はなく、労働の質量が向上しないのに実質賃金が上昇するという不均衡は生じておらず、少なくとも60歳前後までは男女とも右会社の通常の職務であれば職務遂行能力に欠けるところはなく、一律に従業員として不適格とみて企業外へ排除するまでの理由はないなど、原判示の事情があつて、会社の企業経営上定年年齢において女子を差別しなければならない合理的理由が認められないときは、右就業規則中女子の定年年齢を男子より低く定めた部分は、性別のみによる不合理な差別を定めたものとして民法90条の規定により無効である。 - 売掛金(最高裁判決 昭和61年9月11日)民法第93条, 商法245条1項1号(営業譲渡 現・会社法第467条 事業譲渡) - 商法245条1項1号の営業譲渡契約が株主総会の特別決議を経ていないことにより無効である場合と譲受人がする右の無効の主張 - 商法245条1項1号の営業譲渡契約が譲渡会社の株主総会の特別決議を経ていないことにより無効である場合には、譲受人もまた右の無効を主張することができる。 - 商法245条1項1号の営業譲渡契約が株主総会の特別決議を経ていないことにより無効であるとの譲受人の主張が信義則に反し許されないとされた事例 - 商法245条1項1号の営業譲渡契約が譲渡会社の株主総会の特別決議を経ていないことにより無効である場合であつても、譲渡会社が営業譲渡契約に基づく債務をすべて履行済みであり、譲受人も営業譲渡契約が有効であることを前提に譲渡会社に対し自己の債務を承認して譲受代金の一部を履行し、譲り受けた製品、原材料等を販売又は消費し、しかも、譲受人は契約後約20年を経て初めて右の無効の主張をするに至つたもので、その間譲渡会社の株主や債権者等が営業譲渡契約の効力の有無を問題にしたことがなかつたなど判示の事情があるときは、譲受人が営業譲渡契約の無効を主張することは、信義則に反し、許されない。 - 商法245条1項1号の営業譲渡契約が株主総会の特別決議を経ていないことにより無効である場合と譲受人がする右の無効の主張 - 工事代金 (最高裁判決平成9年02月14日)民法第412条,民法第533条,民法第634条 - 請負契約の注文者が瑕疵の修補に代わる損害賠償債権をもって報酬全額の支払との同時履行を主張することの可否 - 請負契約の目的物に瑕疵がある場合には、注文者は、瑕疵の程度や各契約当事者の交渉態度等にかんがみ信義則に反すると認められるときを除き、請負人から瑕疵の修補に代わる損害の賠償を受けるまでは、報酬全額の支払を拒むことができ、これについて履行遅滞の責任も負わない。 - 建物明渡等請求事件 (最高裁判決 平成14年03月28日)民法第612条,借地借家法第34条 - 事業用ビルの賃貸借契約が賃借人の更新拒絶により終了しても賃貸人が信義則上その終了を再転借人に対抗することができないとされた事例 - ビルの賃貸,管理を業とする会社を賃借人とする事業用ビル1棟の賃貸借契約が賃借人の更新拒絶により終了した場合において,賃貸人が,賃借人にその知識,経験等を活用してビルを第三者に転貸し収益を上げさせることによって,自ら各室を個別に賃貸することに伴う煩わしさを免れるとともに,賃借人から安定的に賃料収入を得ることを目的として賃貸借契約を締結し,賃借人が第三者に転貸することを賃貸借契約締結の当初から承諾していたものであること,当該ビルの貸室の転借人及び再転借人が,上記のような目的の下に賃貸借契約が締結され転貸及び再転貸の承諾がされることを前提として,転貸借契約及び再転貸借契約を締結し,再転借人が現にその貸室を占有していることなど判示の事実関係があるときは,賃貸人は,信義則上,賃貸借契約の終了をもって再転借人に対抗することができない。 - 根抵当権抹消登記手続等請求事件(最高裁判決 平成18年06月12日)(1,2につき)民法第1条2項,民法第415条,民法第709条,建築基準法第52条 (1につき)民法第632条 - 建築会社の担当者が顧客に対し融資を受けて顧客所有地に容積率の制限の上限に近い建物を建築した後にその敷地の一部売却により返済資金を調達する計画を提案した際に上記計画には建築基準法にかかわる問題があることを説明しなかった点に説明義務違反があるとされた事例 - 建築会社の担当者が,顧客に対し,銀行から融資を受けて顧客所有地に容積率の制限の上限に近い建物を建築した後,敷地として建築確認を受けた土地の一部を売却することにより融資の返済資金を調達する計画を提案し,顧客が,上記計画に沿って銀行から融資を受けて建物を建築したが,その後,上記土地の一部を予定どおり売却することができず,上記融資の返済資金を調達することができなくなったところ,上記計画には,上記土地の一部の売却によりその余の敷地部分のみでは上記建物が容積率の制限を超える違法な建築物となり,また,上記土地の一部の買主がこれを敷地として建物を建築する際には,敷地を二重に使用することとなって建築確認を直ちには受けられない可能性があるという問題があったなど判示の事実関係の下においては,上記問題を認識しながらこれを顧客に説明しなかった上記担当者には,信義則上の説明義務違反がある。 - 建築会社の担当者と共に顧客に対し融資を受けて顧客所有地に容積率の制限の上限に近い建物を建築した後にその敷地の一部売却により返済資金を調達する計画を説明した銀行の担当者に上記計画には建築基準法にかかわる問題があることについての説明義務違反等がないとした原審の判断に違法があるとされた事例 - 銀行の担当者が,顧客に対し,融資を受けて顧客所有地に容積率の制限の上限に近い建物を建築した後,敷地として建築確認を受けた土地の一部を売却することにより融資の返済資金を調達する計画を提案した建築会社の担当者と共に,上記計画を説明し,顧客が,上記計画に沿って銀行から融資を受けて建物を建築したが,その後,上記土地の一部を予定どおり売却することができず,上記融資の返済資金を調達することができなくなったところ,上記計画には,上記土地の一部の買主がこれを敷地として建物を建築する際,敷地を二重に使用することとなって建築確認を直ちには受けられない可能性があることなどの問題があったなど判示の事実関係の下においては,顧客が,原告として,銀行の担当者は顧客に対して上記土地の一部の売却について取引先に働き掛けてでも確実に実現させる旨述べたなどの事情があったと主張しているにもかかわらず,上記事情の有無を審理することなく,上記担当者について,上記問題を含め上記土地の一部の売却可能性を調査し,これを顧客に説明すべき信義則上の義務がないとした原審の判断には,違法がある。 - 建築会社の担当者が顧客に対し融資を受けて顧客所有地に容積率の制限の上限に近い建物を建築した後にその敷地の一部売却により返済資金を調達する計画を提案した際に上記計画には建築基準法にかかわる問題があることを説明しなかった点に説明義務違反があるとされた事例 - 親子関係不存在確認請求事件 (最高裁判決 平成18年7月7日)民法772条,人事訴訟法2条2号 - 戸籍上の父母とその嫡出子として記載されている者との間の実親子関係について父母の子が不存在確認請求をすることが権利の濫用に当たらないとした原審の判断に違法があるとされた事例 - 戸籍上AB夫婦の嫡出子として記載されているYが同夫婦の実子ではない場合において,Yと同夫婦との間に約55年間にわたり実親子と同様の生活の実体があったこと,同夫婦の長女Xにおいて,Yが同夫婦の実子であることを否定し,実親子関係不存在確認を求める本件訴訟を提起したのは,同夫婦の遺産を承継した二女Cが死亡しその相続が問題となってからであること,判決をもって実親子関係の不存在が確定されるとYが軽視し得ない精神的苦痛及び経済的不利益を受ける可能性が高いこと,同夫婦はYとの間で嫡出子としての関係を維持したいと望んでいたことが推認されるのに,同夫婦は死亡しており,Yが養子縁組をして嫡出子としての身分を取得することは不可能であること,Xが実親子関係を否定するに至った動機が合理的なものとはいえないことなど判示の事情の下では,上記の事情を十分検討することなく,Xが同夫婦とYとの間の実親子関係不存在確認請求をすることが権利の濫用に当たらないとした原審の判断には,違法がある。 - 供託金還付請求権帰属確認請求本訴,同反訴事件(最高裁判決 平成21年03月27日) - 譲渡禁止の特約に反して債権を譲渡した債権者が同特約の存在を理由に譲渡の無効を主張することの可否 - 譲渡禁止の特約に反して債権を譲渡した債権者が同特約の存在を理由に譲渡の無効を主張することは,債務者にその無効を主張する意思があることが明らかであるなどの特段の事情がない限り,許されない。 - 譲渡禁止の特約に反して債権を譲渡した債権者は,同特約の存在を理由に譲渡の無効を主張する独自の利益を有しない。 - 自動車代金等請求事件(最高裁判決平成21年07月17日) 民法第533条 - 自動車の買主が,当該自動車が車台の接合等により複数の車台番号を有することが判明したとして,錯誤を理由に売買代金の返還を求めたのに対し,売主が移転登録手続との同時履行を主張することが信義則上許されないとされた事例 - Xが,Yから購入して転売した自動車につき,Yから転売先に直接移転登録がされた後,車台の接合等により複数の車台番号を有するものであったことが判明したとして,Yに対し錯誤による売買契約の無効を理由に売買代金の返還を求めた場合において,Yは本来新規登録のできない上記自動車について新規登録を受けた上でこれをオークションに出品し,XはYにより表示された新規登録に係る事項等を信じて上記自動車を買い受けたものであり,上記自動車についてのXからYへの移転登録手続には困難が伴うなどの判示の事情の下では,仮にYがXに対し上記自動車につきXからYへの移転登録請求権を有するとしても,Xからの売買代金返還請求に対し,Yが上記自動車についての移転登録手続との同時履行を主張することは,信義則上許されない。
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条文 (占有回収の訴え) - 第200条 - 占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還及び損害の賠償を請求することができる。 - 占有回収の訴えは、占有を侵奪した者の特定承継人に対して提起することができない。ただし、その承継人が侵奪の事実を知っていたときは、この限りでない。 解説 趣旨・概要・意義 占有訴権に関する規定の一つである。趣旨、意義は占有訴権の項を参照。物権的請求権における物権的返還請求権に相当するが、原則として特定承継人に対し用いることはできないなど、効果はやや弱い。 解釈 200条の「占有者」の意味 直接占有者と、賃貸人のような間接占有者が含まれる。 200条の「占有を奪われる(占有侵奪)」の意味 占有侵奪は「奪う」という字義通り、ある程度荒々しいやり方で、意思にもとづかず占有が侵される事を意味する。その為、以下のような場合には占有侵奪とは言えず、200条の適用はない。 - 占有物を詐取された場合。 - 賃貸借契約の終了などで直接占有者が占有の権原を失った場合。 注意すべきは、たとえ本権を有している者でも「侵奪」と呼べる方法で占有を取り戻した場合には200条の適用がある事である。 200条の「損害の賠償」の意味 200条で述べられている損害賠償は、200条を根拠にした特別の損害賠償請求権が生じるわけではなく、その性質は不法行為に基づく損害賠償請求権である。その為、損害賠償を求めるためには、民法の原則「過失責任主義」に基づき、占有を侵奪した不法行為に、故意または過失を必要とする事になる。これは民法第198条の占有保持の訴えでも同様である。しかし民法第199条の占有保全の訴えに認められた「損害賠償の担保」の場合は、占有を侵奪する不法行為はまだ起こっていないため、199条に基づく損害賠償の担保を求める時は故意、過失は要しない。 200条の「善意の特定承継人」の意味 占有侵奪をして占有を得た者が、売買などの特定承継により占有を移転した場合、先占有者は占有回収の訴えは行使できない。 「占有回収の訴え」と「物権的返還請求権」の異同 提訴期間の有無、及び善意の特定承継人に対する効力に違いがある。占有回収の訴えは侵害の時から1年間しか行使できない(民法第201条)が物権的返還請求権は提訴期間はなく時効消滅する事もない。また、占有回収の訴えは善意の特定承継人に対して起こす事はできないが物権的返還請求権は行使が可能な場合がある。 参照条文 判例 - 賃借権確認占有回収請求(最高裁判決 昭和34年01月08日) - 占有回収の訴の成否。 - 転借人を占有代理人として間接占有を有する債借人が占有を奪われたとするには、占有代理人の所持が意思に反して第三者によつて失わしめられた場合でなければならない。 - 株券引渡(最高裁判決 昭和56年03月19日) - 民法200条2項但書にいう「承継人カ侵奪ノ事実ヲ知リタルトキ」の意義 - 民法200条2項但書にいう「承継人カ侵奪ノ事実ヲ知リタルトキ」とは、承継人がなんらかの形で占有の侵奪があつたことについて認識を有していた場合をいい、占有の侵奪を単なる可能性のある事実として認識していただけでは足りない。 - 占有回収(最高裁判決 昭和57年3月30日) - 占有補助者による占有の侵奪を否定した判断に民法200条違背の違法があるとされた事例 - 甲会社がレストラン営業を開始するにつき従業員乙を支配人格とし、同丙をコック長として両名に一任し、外11名の従業員とともに営業に従事させ、営業遂行に必要な限りにおいて継続的にその店舗を専用させていた、との事実関係のもとにおいて、右乙、丙ら13名の従業員をもつて甲会社の占有補助者であるとしながら、乙、丙らが甲会社に対し退職届を提出することにより爾後みずから本件店舗を占有する旨を表明した場合につき、乙、丙らによる右店舗の占有侵奪を肯定するためには、甲会社が他の従業員により右店舗の営業を継続しようとするのを乙、丙らにおいて実力で防止する等占有秩序が力によつて破壊されたと目すべき事情を必要とする[→過誤の判断]との見解を前提にし、右事情の認められないことを理由として、乙、丙らによる占有侵奪を否定したのは、民法200条の解釈適用を誤つたものである。 - 建物収去土地明渡(最高裁判決 平成6年02月08日)民法第177条、民法第206条 - 甲所有地上の建物所有者乙がこれを丙に譲渡した後もなお登記名義を保有する場合における建物収去・土地明渡義務者 - 甲所有地上の建物を取得し、自らの意思に基づいてその旨の登記を経由した乙は、たとい右建物を丙に譲渡したとしても、引き続き右登記名義を保有する限り、甲に対し、建物所有権の喪失を主張して建物収去・土地明渡しの義務を免れることはできない。
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条文 (占有の訴えの提起期間) - 第201条 - 占有保持の訴えは、妨害の存する間又はその消滅した後1年以内に提起しなければならない。ただし、工事により占有物に損害を生じた場合において、その工事に着手した時から1年を経過し、又はその工事が完成したときは、これを提起することができない。 - 占有保全の訴えは、妨害の危険の存する間は、提起することができる。この場合において、工事により占有物に損害を生ずるおそれがあるときは、前項ただし書の規定を準用する。 - 占有回収の訴えは、占有を奪われた時から1年以内に提起しなければならない。 解説 占有保持の訴え(民法第198条)、占有保全の訴え(民法第199条)、占有回収の訴え(民法第200条)の提訴期間についての規定である。
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条文 (本権の訴えとの関係) - 第202条 - 占有の訴えは本権の訴えを妨げず、また、本権の訴えは占有の訴えを妨げない。 - 占有の訴えについては、本権に関する理由に基づいて裁判をすることができない。 解説 参照条文 - 占有の訴え(占有訴権) 判例 - 占有保持請求本訴ならびに建物収去土地明渡請求反訴同附帯控訴(最高裁判決 昭和40年03月04日) 民事訴訟法第239条 - 占有の訴に対して本権に基づく反訴を提起することの許否。 - 占有の訴に対しては、本権に基づく反訴を提起することができる。 - 民法202条3項は、占有の訴において本権に関する理由に基づいて裁判することを禁ずるものであり、従つて、占有の訴に対し防禦方法として本権の主張をなすことは許されないけれども、これに対し本権に基づく反訴を提起することは、右法条の禁ずるところではない。
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条文 (所有権の内容) - 第206条 - 所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。 解説 所有権の制限と、その権利内容について規定している。 参照条文 - 日本国憲法第29条(財産権) 判例 - 建物収去土地明渡(最高裁判例 昭和57年06月17日)民法第249条,民法第252条,民法第555条 - 一筆の土地の一部分の売買契約においてその対象である土地部分が具体的に特定していないとされた事例 - 一筆の土地の一部分の売買契約において、売却部分の面積が60坪となるよう右土地の南端から8メートル余の地点で東西に線を引くと楠の根がかかることになり、また、その西側部分については、後日、東西の市道からの進入路を拡幅するために必要な部分を買主において提供することが予定されていたので、売買契約書上では約60坪と表示し、分筆・移転登記の際の正確な測量に基づいて売り渡すべき土地の範囲を確定することにしたときは、売買の対象である土地部分が具体的に特定しているとはいえない。 - 多数持分権者との間の売買契約に基づいて共有地の一部分の引渡を受けた者に対する少数持分権者からの返還請求ができないとされた事例 - 多数持分権者が、共有地の一部分についての売買契約を締結し、具体的な土地の範囲を確定しないまま、おおよその部分を買主に引き渡してこれを占有使用させているときは、右占有使用の承認が共有者の協議を経ないものであつても、少数持分権者は、当然には買主に対して右土地部分の返還を請求することができない。 - 一筆の土地の一部分の売買契約においてその対象である土地部分が具体的に特定していないとされた事例 - 書籍所有権侵害禁止 (最高裁判例 昭和59年01月20日)著作権法第2条1項1号,著作権法第45条1項 - 美術の著作物の原作品につきその無体物の面を利用する行為と所有権侵害の成否 - 美術の著作物の原作品の所有者でない者が、有体物としての原作品に対する所有者の排他的支配権能をおかすことなく原作品の無体物としての著作物の面を利用しても、原作品の所有権を侵害するものとはいえない。 - 美術の著作物の原作品は、それ自体有体物であるが、同時に無体物である美術の著作物を体現しているものというべきところ、所有権は有体物をその客体とする権利であるから、美術の著作物の原作品に対する所有権は、その有体物の面に対する排他的支配権能であるにとどまり、無体物である美術の著作物自体を直接排他的に支配する権能ではないと解するのが相当である。 - 博物館や美術館において、著作権が現存しない著作物の原作品の観覧や写真撮影について料金を徴収し、あるいは写真撮影をするのに許可を要するとしているのは、原作品の有体物の面に対する所有権に縁由するものと解すべきであるから、右の料金の徴収等の事実は、所有権が無体物の面を支配する権能までも含むものとする根拠とはなりえない。料金の徴収等の事実は、一見所有権者が無体物である著作物の複製等を許諾する権利を専有することを示しているかのようにみえるとしても、それは、所有権者が無体物である著作物を体現している有体物としての原作品を所有していることから生じる反射的効果にすぎない - 美術の著作物の原作品は、それ自体有体物であるが、同時に無体物である美術の著作物を体現しているものというべきところ、所有権は有体物をその客体とする権利であるから、美術の著作物の原作品に対する所有権は、その有体物の面に対する排他的支配権能であるにとどまり、無体物である美術の著作物自体を直接排他的に支配する権能ではないと解するのが相当である。 - 建物収去土地明渡(最高裁判例 平成6年02月08日)民法第177条、民法第200条 - 甲所有地上の建物所有者乙がこれを丙に譲渡した後もなお登記名義を保有する場合における建物収去・土地明渡義務者 - 甲所有地上の建物を取得し、自らの意思に基づいてその旨の登記を経由した乙は、たとい右建物を丙に譲渡したとしても、引き続き右登記名義を保有する限り、甲に対し、建物所有権の喪失を主張して建物収去・土地明渡しの義務を免れることはできない。 - 製作販売差止等請求事件(最高裁判例 平成16年02月13日)民法第198条,民法第199条,民法第709条,知的財産基本法第2条2項 - 競走馬の所有者が当該競走馬の名称を無断で利用したゲームソフトを製作,販売した業者に対しいわゆる物のパブリシティ権の侵害を理由として当該ゲームソフトの製作,販売等の差止請求又は不法行為に基づく損害賠償請求をすることの可否 - 競走馬の所有者は,当該競走馬の名称を無断で利用したゲームソフトを製作,販売した業者に対し,その名称等が有する顧客吸引力などの経済的価値を独占的に支配する財産的権利(いわゆる物のパブリシティ権)の侵害を理由として当該ゲームソフトの製作,販売等の差止請求又は不法行為に基づく損害賠償請求をすることはできない。
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条文 (隣地の使用請求) - 第209条 - 土地の所有者は、次に掲げる目的のため必要な範囲内で、隣地を使用することができる。ただし、住家については、その居住者の承諾がなければ、立ち入ることはできない。 - 境界又はその付近における障壁、建物その他の工作物の築造、収去又は修繕 - 境界標の調査又は境界に関する測量 - 第233条第3項の規定による枝の切取り - 前項の場合には、使用の日時、場所及び方法は、隣地の所有者及び隣地を現に使用している者(以下この条において「隣地使用者」という。)のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。 - 第1項の規定により隣地を使用する者は、あらかじめ、その目的、日時、場所及び方法を隣地の所有者及び隣地使用者に通知しなければならない。ただし、あらかじめ通知することが困難なときは、使用を開始した後、遅滞なく、通知することをもって足りる。 - 第1項の場合において、隣地の所有者又は隣地使用者が損害を受けたときは、その償金を請求することができる。 改正経緯 2021年改正(令和3年法律第24号による改正)にて、以下の条文から改正。2023年(令和5年)4月1日より施行。 - 土地の所有者は、境界又はその付近において障壁又は建物を築造し又は修繕するため必要な範囲内で、隣地の使用を請求することができる。ただし、隣人の承諾がなければ、その住家に立ち入ることはできない。 - 隣地使用の目的を分化及び付加し、号として列挙した。 - 第2項に使用の態様、第3項に使用の形式(通知)を新設。 - 前項の場合において、隣人が損害を受けたときは、その償金を請求することができる。 - 趣旨を第4項に継承。 解説 参照条文 - 民法第233条(竹木の枝の切除及び根の切取り)
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条文 (制限行為能力者の相手方の催告権) - 第20条 - 制限行為能力者の相手方は、その制限行為能力者が行為能力者(行為能力の制限を受けない者をいう。以下同じ。)となった後、その者に対し、1箇月以上の期間を定めて、その期間内にその取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その者がその期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなす。 - 制限行為能力者の相手方が、制限行為能力者が行為能力者とならない間に、その法定代理人、保佐人又は補助人に対し、その権限内の行為について前項に規定する催告をした場合において、これらの者が同項の期間内に確答を発しないときも、同項後段と同様とする。 - 特別の方式を要する行為については、前二項の期間内にその方式を具備した旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。 - 制限行為能力者の相手方は、被保佐人又は第17条第1項の審判を受けた被補助人に対しては、第1項の期間内にその保佐人又は補助人の追認を得るべき旨の催告をすることができる。この場合において、その被保佐人又は被補助人がその期間内にその追認を得た旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。 改正経緯 2017年改正により、「制限行為能力者」の定義が前出する民法第13条にてなされたため、関係箇所を削除。 解説 制限行為能力者の相手方が有する催告権についての規定である。 催告の相手に応じて、確答等がない場合に発生する法的効果に違いが生じる。 - 民法第17条(補助人の同意を要する旨の審判等) - 特別の方式を要する行為 - 民法第864条(後見監督人の同意を要する行為) 参照条文 - 民法第114条(無権代理の相手方の催告権)
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条文 - 第210条 - 他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる。 - 池沼、河川、水路若しくは海を通らなければ公道に至ることができないとき、又は崖があって土地と公道とに著しい高低差があるときも、前項と同様とする。 解説 相隣関係も参照。 - 他の土地に囲まれる(第1項)、又は、囲まれない部分が崖地等(第2項)であって公道に通じない土地(「袋地」、第2項のものは「準袋地」という)の所有者は、その土地を囲んでいる他の土地(「 囲繞地」)を通行することができる、即ち、「囲繞地通行権」を有する。元々条文にあった「囲繞地」という言葉は、現代語化(平成16年法律第147号)に伴い、「(袋地等を)囲んでいる他の土地」置き換えられたものであるが、頻出の事例であり、慣習上確立した簡便な言い回しであるため、現在でも不動産実務や講学上よく用いられている。なお、袋地は不動産の実務では別の意味で使われることもある(袋地参照)。 - 「囲繞地通行権」は当事者の意思や権利関係は影響しない物権であり、袋地又は囲繞地の所有者が未登記であったとしても当然に認められる(最判昭和47年4月14日)。一方で、囲繞地通行権は、袋地の所有権者及びそれが民法第267条により準用される地上権者に認められる権利であって、所有権者から袋地を借りるなどして占有している者に当然に認められる権利ではない。判例では対抗力(但し、登記とは限らない)を備えていることが要件とされた(最判昭和36年3月24日民集15巻3号542頁)。 - 囲繞地は、単独の所有者に限らず、所有者が異なる複数の土地により構成されることが想定されうる。当事者間での調整が不調である場合、次条により決められる箇所において通行権が生じる。なお、囲繞地所有者のいずれかと通路設定の合意がなされた場合に囲繞地通行権を主張することは(要件は充足しているので袋地でないとまでは言えない)、権利濫用と解されるであろう。 - 袋地の所有者は公道に出るために他の土地を取得したときは囲繞地通行権は消滅する。 現代語化前の条文 有斐閣『六法全書』平成9年版、2-2091頁による。なお、この表題は、同六法編集者側で付したものである。 【袋地所有者の囲繞地通行権】 - 或土地カ他ノ土地ニ囲繞セラレテ公路ニ通セサルトキハ其ノ土地ノ所有者ハ公路ニ至ル為メ囲繞地ヲ通行スルコトヲ得 - 池沼、河渠若クハ海洋ニ由ルニ非サレハ他ニ通スルコト能ハス又ハ崖岸アリテ土地ト公路ト著シキ高低ヲ為シタルトキ亦同シ 参照条文 判例 - 通行権確認(最高裁判決 昭和37年03月15日)建築基準法第6条,建築基準法第43条,東京都建築安全条例第3条 - 既存通路が東京都建築安全条例第3条所定の幅員に欠ける場合と民法第210条の囲繞地通行権の成否 - 土地が路地状部分で公路に通じており、既存建物所有により右土地の利用をするのになんらの支障がない場合、その路地状部分が東京都建築安全条例第3条所定の幅員に欠けるとの理由で増築につき建築基準適合の確認がして貰えないというだけでは、民法第210条の囲繞地通行権は成立しない。 - 工作物撤去等請求(最高裁判決 昭和44年11月13日) - 公道に面する一筆の土地の所有者がその土地のうち公道に面しない部分を他に賃貸し残余地を自ら使用している場合と民法210条1項の適用 - 公道に面する一筆の土地の所有者が、その土地のうち公道に面しない部分を他に賃貸し、その残余地を自ら使用している場合には、所有者と賃借人との間において通行に関する別段の特約をしていなかつたときでも、所有者は賃借人に対し賃貸借契約に基づく賃貸義務の一内容として、右残余地を当該賃貸借契約の目的に応じて通行させる義務があり、したがつて、その賃借地につき民法210条1項は適用されない。 - 通行権確認請求(最高裁判決 昭和47年04月14日)民法第177条 - 袋地の未登記所有者と囲繞地通行権の主張 - 袋地の所有権を取得した者は、所有権取得登記を経由していなくても、囲繞地の所有者ないし利用権者に対して、囲繞地通行権を主張することができる。 - 第三者異議、通行権確認、土地明渡等(最高裁判決 平成2年11月20日)民法第213条 - 民法213条の囲繞地通行権の対象地の特定承継と当該通行権の帰すう - 民法213条の規定する囲繞地通行権は、通行の対象となる土地に特定承継が生じた場合にも消滅しない。 - 通行権確認等請求及び承継参加事件(最高裁判決 平成18年03月16日)民法第211条1項 - 自動車による通行を前提とする民法210条1項所定の通行権の成否及びその具体的内容を判断するために考慮すべき事情 - 自動車による通行を前提とする民法210条1項所定の通行権の成否及びその具体的内容は,公道に至るため他の土地について自動車による通行を認める必要性,周辺の土地の状況,上記通行権が認められることにより他の土地の所有者が被る不利益等の諸事情を総合考慮して判断すべきである。
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条文 - 第211条 - 前条の場合には、通行の場所及び方法は、同条の規定による通行権を有する者のために必要であり、かつ、他の土地のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。 - 前条の規定による通行権を有する者は、必要があるときは、通路を開設することができる 解説 第1項 - 囲繞地通行権の行使については、通行権が認められるからといって、どこをどのような形で通行しても良いと言うものではなく、必要最小限かつ他の土地(囲繞地)に損害が少ないものを選ぶことを定める。 - 立法当時と大きく事情の変わったことは、自動車の普及であり、例えば、幅員について、乗用車が通れる幅を確保させるべきかと言う問題である。これについては、居住環境(乗用車を必須とする交通環境であるか)、囲繞地外に駐車場を確保できる可能性、幅員確保のために囲繞地側で対処しなければならないこと(建物の移築等)などを総合的に考慮し、通行の場所等を選ぶ必要がある。 第2項 通行権を有するものは、通行の場所について、必要に応じ、自己の会計において、舗装を行うなどして通路を開設することができ、排水などについて囲繞地の所有者などに損害を生じさせないよう、適正な管理をする義務を負う。
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条文 (公道に至るための他の土地の通行権) - 第213条 - 分割によって公道に通じない土地が生じたときは、その土地の所有者は、公道に至るため、他の分割者の所有地のみを通行することができる。この場合においては、償金を支払うことを要しない。 - 前項の規定は、土地の所有者がその土地の一部を譲り渡した場合について準用する。 解説 通行権についての規定。 判例 - 板垣撤去並びに土地立入禁止請求(最高裁判決 昭和36年03月24日)民法第267条 - 民法第213条の規定は土地の賃借人に準用されるか。 - 民法第213条の規定は、農地を賃借してその引渡を受けた者と土地の所有者との間にこれを準用すべきである。 - 袋地通行権確認本訴等請求(最高裁判決 昭和37年10月30日)民法第210条 - 一筆の土地全部を同時に分筆譲渡した場合に生ずる袋地と民法第213条第2項の適用。 - 土地の所有者が一筆の土地全部を同時に分筆譲渡し、よつて袋地を生じた場合において、袋地の右譲渡人は、民法第213条第2項の趣旨に徴し、右分筆前一筆であつた残余の土地についてのみ囲繞地通行権を有するに過ぎないと解すべきである。 - 工作物撤去等請求(最高裁判決 昭和44年11月13日) 民法第210条1項 - 民法213条2項が適用される場合であるとして他の土地につき囲繞地通行権が認められないとされた事例 - 民法213条2項が適用される場合は、囲繞地通行権が認められない。 - 公道に面する一筆の土地の所有者がその土地のうち公道に面しない部分を他に賃貸し残余地を自ら使用している場合と民法210条1項の適用 - 公道に面する一筆の土地の所有者が、その土地のうち公道に面しない部分を他に賃貸し、その残余地を自ら使用している場合には、所有者と賃借人との間において通行に関する別段の特約をしていなかつたときでも、所有者は賃借人に対し賃貸借契約に基づく賃貸義務の一内容として、右残余地を当該賃貸借契約の目的に応じて通行させる義務があり、したがつて、その賃借地につき民法210条1項は適用されない。 - 民法213条2項が適用される場合であるとして他の土地につき囲繞地通行権が認められないとされた事例 - 第三者異議、通行権確認、土地明渡等(最高裁判決 平成2年11月20日)民法第210条 - 民法213条の囲繞地通行権の対象地の特定承継と当該通行権の帰すう - 民法213条の規定する囲繞地通行権は、通行の対象となる土地に特定承継が生じた場合にも消滅しない。
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条文 (継続的給付を受けるための設備の設置権等) - 第213条の2 - 土地の所有者は、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用しなければ電気、ガス又は水道水の供給その他これらに類する継続的給付(以下この項及び次条第1項において「継続的給付」という。)を受けることができないときは、継続的給付を受けるため必要な範囲内で、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用することができる。 - 前項の場合には、設備の設置又は使用の場所及び方法は、他の土地又は他人が所有する設備(次項において「他の土地等」 という。)のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。 - 第1項の規定により他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用する者は、あらかじめ、その目的、場所及び方法を他の土地等の所有者及び他の土地を現に使用している者に通知しなければならない。 - 第1項の規定による権利を有する者は、同項の規定により他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用するために当該他の土地又は当該他人が所有する設備がある土地を使用することができる。この場合においては、第209条第1項ただし書及び第2項から第4項までの規定を準用する。 - 第1項の規定により他の土地に設備を設置する者は、その土地の損害(前項において準用する第209条第4項に規定する損害を除く。)に対して償金を支払わなければならない。ただし、1年ごとにその償金を支払うことができる。 - 第1項の規定により他人が所有する設備を使用する者は、その設備の使用を開始するために生じた損害に対して償金を支払わなければならない。 - 第1項の規定により他人が所有する設備を使用する者は、その利益を受ける割合に応じて、その設置、改築、修繕及び維持に要する費用を負担しなければならない。 解説 2021年改正にて新設。 判例
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条文 (制限行為能力者の詐術) - 第21条 - 制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。 改正経緯 - 2004年改正により民法第20条に定められていた以下の条項が繰り下がり、第21に定められていた住所に関する条項は第22条に繰り下がった。 - 無能力者カ能力者タルコトヲ信セシムル為メ詐術ヲ用ヰタルトキハ其行為ヲ取消スコトヲ得ス 解説 - 趣旨 - 制限行為能力者の制度は、行為者が判断能力の不足などにより不利益な財産処分等を防止することが目的であるが、行為者本人の意思で相手方を騙して制限行為能力者であることを隠す程度の判断能力があれば、その判断能力の不足の程度は、保護に値するものではないとの価値判断によるものである。 - 明治民法以来の条項であり、古くは制限能力者保護の観点が強かったが、後には、取引保護の観点が強まり、適用要件が緩くなる傾向にあった。 - ただし、制限行為能力者(改正前「無能力者」)の詐術が論点となったのは、改正前準禁治産者の認定要件であった「浪費者」によるものが多く、浪費者の場合、日常生活の行為に異常は見られないため取引保護優先も妥当であったが、現行制度においては制限行為能力者の精神状態を重視するため要件の緩和傾向が一般化されるかは疑義がある。 - 要件 - 行為能力者であることを信じさせる目的が制限行為能力者にあったこと。 - 詐術を用いたこと。 - 戸籍謄本の偽造や他人にを使って偽証をさせた場合などの積極的詐術が立法時における典型であったが、上述のとおり、昭和初期以降緩和傾向にあって、単に自分が制限能力者ではないと告げた場合も詐術を用いたと認定される場合もある。制限能力者(無能力者)であることの黙秘については判例を参照。 - 相手方が詐術により、制限行為能力者が行為能力者であることを信じたこと。 - 詐術との因果関係を要する。詐術と無関係に単なる不注意で行為能力者と思い込んだ場合などは、これに当てはまらない。 - 効果 - 行為取り消しの阻害事項となる。 関連条文 関連判例 - 土地所有権移転登記抹消登記手続請求 (最高裁判決 昭和44年02月13日) - 無能力者であることを黙秘することと民法20条にいう「詐術」 - 無能力者であることを黙秘することは、無能力者の他の言動などと相まつて、相手方を誤信させ、または誤信を強めたものと認められるときには、民法20条(現・本条)にいう「詐術」にあたるが、黙秘することのみでは右詐術にあたらない。
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条文 (排水のための低地の通水) - 第220条 - 高地の所有者は、その高地が浸水した場合にこれを乾かすため、又は自家用若しくは農工業用の余水を排出するため、公の水流又は下水道に至るまで、低地に水を通過させることができる。この場合においては、低地のために損害が最も少ない場所及び方法を選ばなければならない。 解説 参照条文 判例 - 給排水施設使用許諾請求事件(最高裁判決 平成14年10月15日)民法第221条 - 宅地の所有者が他人の設置した給排水設備を当該宅地の給排水のため使用することの可否 - 宅地の所有者は,他の土地を経由しなければ,水道事業者の敷設した配水管から当該宅地に給水を受け,その下水を公流,下水道等まで排出することができない場合において,他人の設置した給排水設備を当該宅地の給排水のため使用することが他の方法に比べて合理的であるときは,その使用により当該給排水設備に予定される効用を著しく害するなどの特段の事情のない限り,当該給排水設備を使用することができる。
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条文 (通水用工作物の使用) - 第221条 - 土地の所有者は、その所有地の水を通過させるため、高地又は低地の所有者が設けた工作物を使用することができる。 - 前項の場合には、他人の工作物を使用する者は、その利益を受ける割合に応じて、工作物の設置及び保存の費用を分担しなければならない 解説 参照条文 判例 - 給排水施設使用許諾請求事件(最高裁判決 平成14年10月15日)民法第220条 - 宅地の所有者が他人の設置した給排水設備を当該宅地の給排水のため使用することの可否 - 宅地の所有者は,他の土地を経由しなければ,水道事業者の敷設した配水管から当該宅地に給水を受け,その下水を公流,下水道等まで排出することができない場合において,他人の設置した給排水設備を当該宅地の給排水のため使用することが他の方法に比べて合理的であるときは,その使用により当該給排水設備に予定される効用を著しく害するなどの特段の事情のない限り,当該給排水設備を使用することができる。
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条文 (竹木の枝の切除及び根の切取り) - 第233条 - 土地の所有者は、隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。 - 前項の場合において、竹木が数人の共有に属するときは、各共有者は、その枝を切り取ることができる。 - 第1項の場合において、次に掲げるときは、土地の所有者は、その枝を切り取ることができる。 - 竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、竹木の所有者が相当の期間内に切除しないとき。 - 竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。 - 急迫の事情があるとき。 - 隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる。 改正経緯 2021年改正により、以下のとおり改正された。 - 第1項の主体として、「土地の所有者は、」を付加。 - 第1項に関係する第2項及び第3項を新設。 - 上記条項の新設に伴い旧第2項の項番を繰り下げ。 解説 隣地の竹や樹木(竹木)が所有地にかかる場合の所有者等の権利。 - 竹木の枝などが、所有地にかかる場合、土地の所有者は、その竹木の所有者に、枝などを切って所有地にかからないように請求することができる。 - 切除の請求権者は所有者である。賃貸人等占有・利用しているものではない。利用者等は、所有者を通じて切除の請求をすることとなる。 - 切除の請求の相手方は、隣地の所有者ではなく、竹木の所有者である。 - 竹木の所有が共有にかかる場合、共有者の一人が持分等にかかわらず切除の請求に応じることができる。 - 土地の所有者は、切除の請求ができるのであって、自ら切除すること(自力救済)はできない。ただし、以下の場合、自ら切除ができる。 - 竹木の所有者に切除を催告しても、相当期間内にこれに応じないとき。 - 竹木の所有者が不明であるとき。 - 緊急の危険等があるとき。 - 竹木の根が所有地に伸びてきた場合、枝などと異なり、土地の所有者のみならず、利用者も、その根を自ら切り取ることができる。隣地から伸びてきた筍は採取して良いという、許される自力救済の例として有名である。
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条文 (境界線付近の建築の制限) - 第234条 - 建物を築造するには、境界線から50センチメートル以上の距離を保たなければならない。 - 前項の規定に違反して建築をしようとする者があるときは、隣地の所有者は、その建築を中止させ、又は変更させることができる。ただし、建築に着手した時から1年を経過し、又はその建物が完成した後は、損害賠償の請求のみをすることができる。 解説 参照条文 - 建築基準法第54条(第一種低層住居専用地域又は第二種低層住居専用地域内における外壁の後退距離) - 建築基準法第65条(隣地境界線に接する外壁) - 防火地域又は準防火地域内にある建築物で、外壁が耐火構造のものについては、その外壁を隣地境界線に接して設けることができる。 判例 - 建物収去等請求事件(最高裁判決 平成1年09月19日)建築基準法第65条 - 建築基準法65条所定の建築物の建築と民法234条1項の適用の有無 - 建築基準法65条所定の建築物の建築には、民法234条1項は適用されない。
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条文 (居所) - 第23条 - 住所が知れない場合には、居所を住所とみなす。 - 日本に住所を有しない者は、その者が日本人又は外国人のいずれであるかを問わず、日本における居所をその者の住所とみなす。ただし、準拠法に定める法律に従いその者の住所地法によるべき場合は、この限りでない。 解説 居所と住所との関係を定めた規定。 - 「住所が知れない場合」とは、 - 「居所」とは、居住の事実がある場所をいう。但し、法律的な効果を求めるものであるので、単に起居している事実ではなく、送達等の宛先となることを要する。なお、居所も知れない場合は、民法第98条に定める公示通達により意思表示を行うことが可能である。
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条文 (遺失物の拾得) 改正経緯 2006年(平成18年)に遺失物法が全面改正されたに伴い、留置期間が6ヶ月から3ヶ月に改正された。 解説 - 遺失物法第35条により以下の物件については、本条に関わらず所有権を取得することができない。 - 法令の規定によりその所持が禁止されている物(遺失物法第35条第1号) - 個人の一身に専属する権利に係る物(遺失物法第35条第2号〜第5号) 参照条文 - 民法第193条 - 民法第194条 - 遺失物法 - 遺失物法第3条(費用の負担) - 準遺失物については、民法第240条の規定を準用する。この場合において、同条中「これを拾得した」とあるのは、「同法【遺失物法】第2条第2項に規定する拾得をした」と読み替えるものとする。 - 「準遺失物」- 誤って占有した他人の物、他人の置き去った物及び逸走した家畜(遺失物法第3条第1項) - 準遺失物については、民法第240条の規定を準用する。この場合において、同条中「これを拾得した」とあるのは、「同法【遺失物法】第2条第2項に規定する拾得をした」と読み替えるものとする。 - 遺失物法第27条(費用の負担) - 遺失物法第30条(拾得者等の費用償還義務の免除) - 遺失物法第32条(遺失者の権利放棄による拾得者の所有権取得等) - 遺失物法第33条(施設占有者の権利取得等) - 遺失物法第34条(費用請求権等の喪失) - 遺失物法第35条(所有権を取得することができない物件) - 遺失物法第36条(拾得者等の所有権の喪失) - 遺失物法第37条(都道府県への所有権の帰属等) - 遺失物法第3条(費用の負担)
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条文 (埋蔵物の発見) - 第241条 - 埋蔵物は、遺失物法の定めるところに従い公告をした後6箇月以内にその所有者が判明しないときは、これを発見した者がその所有権を取得する。ただし、他人の所有する物の中から発見された埋蔵物については、これを発見した者及びその他人が等しい割合でその所有権を取得する。 解説 埋蔵物に関する所有権の帰趨を定めた規定である。 参照条文 - 民法第239条(無主物の帰属) - 民法第240条(遺失物の拾得) - 遺失物法 判例 - 報酬金請求(最高裁判決 昭和37年06月01日) - 民法第241条にいう埋蔵物の意義 - 民法第241条の埋蔵物とは、土地その他の中に外部からは容易に目撃できないような状態に置かれ、しかも現在何人の所有であるか判りにくい物をいう。
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条文 - 第242条 - 不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。ただし、権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない。 解説 不動産の附合物の権利の帰属についての規定である。 関連条文 参照 判例 - 所有権移転登記手続等請求(最高裁判決 昭和31年06月19日) - 播かれた種から生育した苗の所有権の帰属 - 播かれた種から生育した苗の所有権は、播種が土地使用の権原のない者によつてなされた場合は、土地所有者に属する。 - 家屋明渡請求(最高裁判決 昭和34年02月05日) - 改造途中の工作物を賃借人が建物として完成させた場合の附合の成否 - 二階建アパートの階下の一画の区分所有権者が、これを賃貸の目的で改造するために取りこわし、柱および基礎工事等を残すだけの工作物とした上で、右工作物を、賃借人の負担で改造する約束で賃貸し、賃借人において約旨に従い建物として完成させた場合には、賃借人の工事により附加された物の附合により、右建物は工作物所有者の所有に帰したものと解すべきである。 - 山林所有権確認等請求(最高裁判決 昭和35年03月01日 )民法第177条 - 地盤所有権の取得につき未登記のままその地盤上に植栽された立木の所有権と対抗要件。 - 地盤所有権の取得につき未登記のままその地盤上に植栽した立木の所有権を、第三者に対抗するには、公示方法を必要とする。 - 所有権確認請求(最高裁判決 昭和38年10月29日) 建物の区分所有等に関する法律第1条 - 建物の賃借部分の改築により借家人のため区分所有権が成立したとされた事例。 - 二階建木造建物の階下の一部を賃借した者が、判示事情のものに賃貸人の承諾をえて賃借部分をとりこわしその跡に自己の負担で店舗を作つた場合には、右店舗の一部に原家屋の二階が重なつており、既存の二本の通し柱および天井の梁を利用していても、他に特段の事情のないかぎり右店舗部分は従前の賃借人の区分所有権に帰すものと解すべきである。 - 家屋明渡請求(最高裁判決 昭和43年06月13日) - 建物の附合を否定した判断に違法があるとされた事例 - 建物新築部分の従前の建物への附合の成否については、当該新築部分の構造、利用方法を考察し、右部分が従前の建物に接して築造され、構造上建物としての独立性を欠き、従前の建物と一体となつて利用され取引されるべき状態にあるときは、右部分は従前の建物に附合したものと解すべきであつて、新築部分が従前の建物とその基礎、柱、屋根などの部分において構造的に接合していないことから、ただちに附合の成立を否定することは許されない。 - 建物収去土地明渡請求(最高裁判決 昭和44年07月25日) 建物の区分所有等に関する法律第1条 - 建物の賃借人が承諾を得て二階部分を増築した場合に区分所有権が成立しないとされた事例 - 建物の賃借人が建物の賃貸人兼所有者の承諾を得て賃借建物である平家の上に二階部分を増築した場合において、右二階部分から外部への出入りが賃借建物内の部屋の中にある梯子段を使用するよりほかないときは、右二階部分につき独立の登記がされていても、右二階部分は、区分所有権の対象たる部分にはあたらない。 - 土砂返還(最高裁判決 昭和57年06月17日)民法第86条2項,民法第206条,民法第247条1項,公有水面埋立法(昭和48年法律第84号による改正前のもの)16条,公有水面埋立法(昭和48年法律第84号による改正前のもの)24条,公有水面埋立法(昭和48年法律第84号による改正前のもの)35条,公有水面埋立法(昭和48年法律第84号による改正前のもの)36条 - 損害賠償請求事件(最高裁判決 昭和63年01月18日)民法第86条,民法第294条 - 共有の性質を有しない入会地上の天然の樹木の所有権が土地の所有者に属するとされた事例 - 付近住民の採草放牧や薪炭材採取等に利用されていた入会地が、入会住民全員の同意のもとに、入会権を存続させ入会住民の保育した天然の樹木を売却する際にはその保育に対する報償として売却代金の一部を入会住民に交付することを条件として村に贈与され、右条件の趣旨に沿つて村が制定した条例に従つて、入会住民が造林組合を結成して組合名義で村に対し入会地の天然の樹木の伐採申請をし、これを受けた村が右樹木を売却してその代金の一部を組合に交付してきたなど判示の事実関係のもとにおいては、右入会地上に生育する天然の樹木は、共有の性質を有しない右入会地の所有者である村の所有に属する。
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条文 - 第243条 - 所有者を異にする数個の動産が、付合により、損傷しなければ分離することができなくなったときは、その合成物の所有権は、主たる動産の所有者に帰属する。分離するのに過分の費用を要するときも、同様とする。 解説 参照条文 - 民法第248条(付合、混和又は加工に伴う償金の請求) 判例 - 家屋明渡 (最高裁判決 昭和54年01月25日)民法第246条2項 - 建築途中の未だ独立の不動産に至らない建前に第三者が材料を供して工事を施し独立の不動産である建物に仕上げた場合と建物所有権の帰属 - 建築途中の未だ独立の不動産に至らない建前に第三者が材料を供して工事を施し独立の不動産である建物に仕上げた場合における建物所有権の帰属は、民法246条2項の規定に基づいて決定すべきである。
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条文 (加工) - 第246条 - 他人の動産に工作を加えた者(以下この条において「加工者」という。)があるときは、その加工物の所有権は、材料の所有者に帰属する。ただし、工作によって生じた価格が材料の価格を著しく超えるときは、加工者がその加工物の所有権を取得する。 - 前項に規定する場合において、加工者が材料の一部を供したときは、その価格に工作によって生じた価格を加えたものが他人の材料の価格を超えるときに限り、加工者がその加工物の所有権を取得する。 解説 加工についての規定である。 参照条文 判例 - 家屋明渡 (最高裁判決 昭和54年01月25日) 民法第243条 - 建築途中の未だ独立の不動産に至らない建前に第三者が材料を供して工事を施し独立の不動産である建物に仕上げた場合と建物所有権の帰属 - 建築途中の未だ独立の不動産に至らない建前に第三者が材料を供して工事を施し独立の不動産である建物に仕上げた場合における建物所有権の帰属は、民法246条2項の規定に基づいて決定すべきである。
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条文 - 第247条 - 第242条から前条までの規定により物の所有権が消滅したときは、その物について存する他の権利も、消滅する。 - 前項に規定する場合において、物の所有者が、合成物、混和物又は加工物(以下この項において「合成物等」という。)の単独所有者となったときは、その物について存する他の権利は以後その合成物等について存し、物の所有者が合成物等の共有者となったときは、その物について存する他の権利は以後その持分について存する。 解説 物の添付の効果が生じた場合の、それらの物及び合成物等の所有権等の帰趨について規定する。 参照条文 判例 - 建物明渡(最高裁判決 平成6年01月25日)民法第244条,民法第369条 - 互いに主従の関係にない甲乙2棟の建物がその間の隔壁を除去する等の工事により1棟の丙建物となった場合と甲建物又は乙建物を目的として設定されていた抵当権の消長 - 互いに主従の関係にない甲乙2棟の建物がその間の隔壁を除去する等の工事により1棟の丙建物となった場合、甲建物又は乙建物を目的として設定されていた抵当権は、丙建物のうち甲建物又は乙建物の価格の割合に応じた持分を目的とするものとして存続する。
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民法第249条 条文 (共有物の使用) - 第249条 - 各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。 - 共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負う。 - 共有者は、善良な管理者の注意をもって、共有物の使用をしなければならない。 改正経緯 2021年改正により、第2項及び第3項を新設。 解説 共有物の権利者の利用権についての規定。 参照条文 判例 - 建物収去、土地明渡請求(最高裁判決 昭和29年12月23日)民法第388条 - 土地共有者の一人だけについて民法第388条本文の事由が生じた場合と法定地上権の成否 - 土地共有者の一人だけについて民法第388条本文の事由が生じたとしても、これがため他の共有者の意思如何に拘らずそのものの持分までが無視されるべきいわれはなく、当該共有土地については、なんら地上権は発生しない。 - 所有権確認並びに所有権保存登記抹消手続請求(最高裁判決 昭和33年07月22日)民法第668条,民法第252条,民法第177条 - 組合財産共有の性質。 - 組合財産についても、民法第667条以下において特別の規定のなされていない限り、民法第249条以下の共有の規定が適用される。 - 組合員の一人のなす登記抹消請求の許否。 - 組合員の一人は、単独で、組合財産である不動産につき登記簿上の所有名義者たる者に対して登記の抹消を求めることができる。 - 組合財産共有の性質。 - 登記抹消登記手続請求(最高裁判決 昭和38年02月22日)民法第177条、民法第898条 - 共同相続と登記 - 甲乙両名が共同相続した不動産につき乙が勝手に単独所有権取得の登記をし、さらに第三取得者丙が乙から移転登記をうけた場合、甲は丙に対し自己の持分を登記なくして対抗できる。 - 共有持分に基づく登記抹消請求の許否 - 右の場合、甲が乙丙に対し請求できるのは、甲の持分についてのみの一部抹消(更正)登記手続であつて、各登記の全部抹消を求めることは許されない。 - 当事者が所有権取得登記の全部抹消を求めている場合に更正登記を命ずる判決をすることの可否 - 右の場合、甲が乙丙に対し右登記の全部抹消登記手続を求めたのに対し、裁判所が乙丙に対し前記一部抹消(更正)登記手続を命ずる判決をしても、民訴法第186条に反しない。 - 共同相続と登記 - 境界確認損害賠償請求(最高裁判決 昭和40年05月20日 )民事訴訟法第62条 - 共有持分権の及ぶ土地の範囲の確認を求める訴と必要的共同訴訟。 - 土地の共有者は、その土地の一部が自己の所有に属すると主張する第三者に対し、各自単独で、係争地が自己の共有持分権に属することの確認を訴求することができる。 - 土地所有権確認等請求および反訴請求(最高裁判決 昭和41年05月19日) - 共有物の持分の価格が過半数をこえる者が共有物を単独で占有する他の共有者に対して共有物の明渡請求をすることができるか - 共有物の持分の価格が過半数をこえる者は、共有物を単独で占有する他の共有者に対し、当然には、その占有する共有物の明渡を請求することができない。 - 貸金請求(最高裁判決 昭和44年11月04日) 民法第388条,民法第555条,土地区画整理法第99条,土地区画整理法第85条,土地区画整理法第98条 - 仮換地上の建物の競落と法定地上権 - 従前の土地の所有者の所有する仮換地上の建物が抵当権の実行により競落されたときは、従前の土地について法定地上権が成立し、競落人は、右法定地上権に基づいて仮換地の使用収益が許されるものと解するのが相当である。 - 仮換地の一部分につき売買契約を締結した場合と仮換地の使用収益権 - 土地の売買契約が仮換地につきその一部分を特定して締結され従前の土地そのものにつき買受部分を特定してされたものでないときは、特段の事情のないかぎり、仮換地全体の地積に対する当該特定部分の地積の比率に応じた従前の土地の共有持分について売買契約が締結され、買主と売主とは従前の土地の共有者となるとともに、仮換地上に準共有関係として従前の土地の持分の割合に応じた使用収益権を取得するものと解するのが相当である。 - 従前の土地の共有者の一人の所有する仮換地上建物が競落された場合に法定地上権の成立が認められた事例 - 前項の場合において、売主と買主との協議により、仮換地上の買受部分を買主の所有とする旨の合意が成立していたときは、買主が買受土地上に建築所有する建物につき設定された抵当権の実行により、右建物の競落人のため従前の土地について法定地上権が成立し、競落人は右法定地上権に基づいて仮換地上の建物敷地を占有しうべき権原を取得するものと解するのが相当である。 - 仮換地上の建物の競落により法定地上権が成立した場合において土地区画整理事業施行者から使用収益部分の指定を受けない間における競落人の建物所有による敷地の占有と不法占有の成否 - 仮換地上の建物が競落されたことにより従前の土地に法定地上権が成立したときは、右法定地上権について土地区画整理事業施行者から仮換地上に使用収益すべき部分の指定を受けない間においても、競落人の建物所有による敷地の占有は、抵当権設定者たる仮換地使用収益権者との関係では不法占有とならない。 - 仮換地上の建物の競落と法定地上権 - 建物収去土地明渡等請求等(最高裁判決 昭和51年09月07日 )民法第709条 - 共有物に対する不法行為と共有者の損害賠償請求権の範囲 - 共有者は、共有物に対する不法行為によつて被つた損害について、自己の共有持分の割合に応じてのみ、その賠償を請求することができる。 - 建物収去土地明渡(最高裁判決 昭和57年06月17日)民法第206条,民法第252条,民法第555条 - 一筆の土地の一部分の売買契約においてその対象である土地部分が具体的に特定していないとされた事例 - 一筆の土地の一部分の売買契約において、売却部分の面積が60坪となるよう右土地の南端から8メートル余の地点で東西に線を引くと楠の根がかかることになり、また、その西側部分については、後日、東西の市道からの進入路を拡幅するために必要な部分を買主において提供することが予定されていたので、売買契約書上では約60坪と表示し、分筆・移転登記の際の正確な測量に基づいて売り渡すべき土地の範囲を確定することにしたときは、売買の対象である土地部分が具体的に特定しているとはいえない。 - 多数持分権者との間の売買契約に基づいて共有地の一部分の引渡を受けた者に対する少数持分権者からの返還請求ができないとされた事例 - 多数持分権者が、共有地の一部分についての売買契約を締結し、具体的な土地の範囲を確定しないまま、おおよその部分を買主に引き渡してこれを占有使用させているときは、右占有使用の承認が共有者の協議を経ないものであつても、少数持分権者は、当然には買主に対して右土地部分の返還を請求することができない。 - 一筆の土地の一部分の売買契約においてその対象である土地部分が具体的に特定していないとされた事例 - 診療所明渡請求事件(最高裁判決 昭和63年05月20日)民法第252条 - 共有者の一部の者から共有物の占有使用を承認された第三者に対するその余の共有者からの明渡請求の可否 - 共有者の一部の者から共有物を占有使用することを承認された第三者に対して、その余の共有者は、当然には、共有物の明渡しを請求することができない。 - 土地建物共有物分割等(最高裁判決 平成8年12月17日)民法第593条,民法第703条,民法第898条,民事訴訟法第185条 - 遺産である建物の相続開始後の使用について被相続人と相続人との間に使用貸借契約の成立が推認される場合 - 共同相続人の一人が相続開始前から被相続人の許諾を得て遺産である建物において被相続人と同居してきたときは、特段の事情のない限り、被相続人と右の相続人との間において、右建物について、相続開始時を始期とし、遺産分割時を終期とする使用貸借契約が成立していたものと推認される。 - なお、2018年改正によって、相続人たる配偶者については「配偶者居住権」の制度が法定された。 - 建物根抵当権設定登記等抹消登記(最高裁判決 平成9年06月05日)民法第379条 - 共有持分権に基づく妨害排除、遺言無効確認等(最高裁判決 平成10年03月24日 )民法第251条 - 共有者の一人による共有物の変更と他の共有者からの原状回復請求の可否 - 共有者の一人が他の共有者の同意を得ることなく共有物に変更を加えた場合には、他の共有者は、特段の事情がない限り、変更により生じた結果を除去して共有物を原状に復させることを求めることができる。 - 持分全部移転登記抹消登記手続等請求事件(最高裁判決 平成15年07月11日)民法第252条 - 不動産の共有者の1人が不実の持分移転登記を了している者に対し同登記の抹消登記手続請求をすることの可否 - 不動産の共有者の1人は,共有不動産について実体上の権利を有しないのに持分移転登記を了している者に対し,その持分移転登記の抹消登記手続を請求することができる。 - 土地所有権移転登記抹消登記手続請求事件 (最高裁判決 平成17年12月15日)民法第898条,不動産登記法第66条,不動産登記法第68条 - 甲名義の不動産につき乙,Yが順次相続したことを原因として直接Yに対して所有権移転登記がされている場合において甲の共同相続人であるXが上記登記の全部抹消を求めることの可否 - 名義の不動産につき,甲から乙,乙からYが順次相続したことを原因として直接Yに対して所有権移転登記がされている場合に,甲の相続につき共同相続人Xが存在するときは,Yが上記不動産につき共有持分権を有しているとしても,Xは,Yに対し,上記不動産の共有持分権に基づき,上記登記の全部抹消を求めることができる。
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条文 (共有物の変更) - 第251条 - 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。 - 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、当該他の共有者以外の他の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる。 改正経緯 2021年改正により、第1項において、「変更」に関して括弧書き注釈を加筆し、第2項(他の共有者に連絡が取れない場合の措置)を新設した。 解説 共有物の管理方法についての規定の一つである。 - 変更 - 物理的な変更と法律的処分の売却等を含む。 参照条文 - 民法第249条(共有物の使用) - 民法第252条(共有物の管理) - 建物の区分所有等に関する法律第17条(共用部分の変更) 判例 - 所有権移転登記手続等請求(最高裁判決 昭和43年04月04日 )民法第560条 - 共有者の一人が共有物を自己の単独所有に属するものとして売却した場合の法律関係 - 共有者の一人が、権限なく、共有物を自己の単独所有に属するものとして他に売り渡した場合でも、売買契約は有効に成立し、自己の持分をこえる部分については、他人の権利の売買としての法律関係を生ずるとともに、自己の持分の範囲内においては、約旨に従つた履行義務を負う。 - 共有持分権に基づく妨害排除、遺言無効確認等(最高裁判決 平成10年03月24日 )民法第249条 - 共有者の一人による共有物の変更と他の共有者からの原状回復請求の可否 - 共有者の一人が他の共有者の同意を得ることなく共有物に変更を加えた場合には、他の共有者は、特段の事情がない限り、変更により生じた結果を除去して共有物を原状に復させることを求めることができる。
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条文 (共有物の管理) - 第252条 - 共有物の管理に関する事項(次条第1項に規定する共有物の管理者の選任及び解任を含み、共有物に前条第1項に規定する変更を加えるものを除く。次項において同じ。) は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。共有物を使用する共有者があるときも、同様とする。 - 裁判所は、次の各号に掲げるときは、当該各号に規定する他の共有者以外の共有者の請求により、当該他の共有者以外の共有者の持分の価格に従い、その過半数で共有物の管理に関する事項を決することができる旨の裁判をすることができる。 - 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。 - 共有者が他の共有者に対し相当の期間を定めて共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにすべき旨を催告した場合において、当該他の共有者がその期間内に賛否を明らかにしないとき。 - 前二項の規定による決定が、共有者間の決定に基づいて共有物を使用する共有者に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。 - 共有者は、前三項の規定により、共有物に、次の各号に掲げる賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利(以下この項において「賃借権等」という。)であって、当該各号に定める期間を超えないものを設定することができる。 - 樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃借権等 10年 - 前号に掲げる賃借権等以外の土地の賃借権等 5年 - 建物の賃借権等 3年 - 動産の賃借権等 6箇月 - 各共有者は、前各項の規定にかかわらず、保存行為をすることができる。 改正経緯 2021年改正により、以下の条項に替え、詳細な条項を制定。 解説 共有物の管理行為についての規定である。「保存行為」については例外がある。 参照条文 判例 - 家屋明渡請求 (最高裁判決 昭和29年03月12日) - 共同相続人の一人が相続財産たる家屋の使用借主である場合と他の共同相続人のなす使用貸借の解除 - 共同相続人の一人が相続財産たる家屋の使用借主である場合、他の共同相続人においてなす右使用貸借の解除は、民法第252条本文の管理行為にあたる。 - 所有権確認並びに所有権保存登記抹消手続請求(最高裁判決 昭和33年07月22日)民法第668条,民法第249条,民法第177条 - 組合財産共有の性質。 - 組合財産についても、民法第667条以下において特別の規定のなされていない限り、民法第249条以下の共有の規定が適用される。 - 組合員の一人のなす登記抹消請求の許否。 - 組合員の一人は、単独で、組合財産である不動産につき登記簿上の所有名義者たる者に対して登記の抹消を求めることができる。 - 組合財産共有の性質。 - 建物収去、土地明渡請求(最高裁判決 昭和39年02月25日)民法第544条1項 - 共有物を目的とする貸借契約の解除と民法第544第1項の適用の有無。 - 共有物を目的とする貸借契約の解除は、共有者によつてされる場合は、民法第252条本文にいう「共有物の管理に関する事項」に該当すると解すべきであり、右解除については、民法第544条第1項の規定は適用されない。 - 持分全部移転登記抹消登記手続等請求事件(最高裁判決 平成15年07月11日)民法第249条 - 不動産の共有者の1人が不実の持分移転登記を了している者に対し同登記の抹消登記手続請求をすることの可否 - 不動産の共有者の1人は,共有不動産について実体上の権利を有しないのに持分移転登記を了している者に対し,その持分移転登記の抹消登記手続を請求することができる。
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条文 (共有物の管理者) - 第251条の2 - 共有物の管理者は、共有物の管理に関する行為をすることができる。ただし、共有者の全員の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。 - 共有物の管理者が共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有物の管理者の請求により、当該共有者以外の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる。 - 共有物の管理者は、共有者が共有物の管理に関する事項を決した場合には、これに従ってその職務を行わなければならない 。 - 前項の規定に違反して行った共有物の管理者の行為は、共有者に対してその効力を生じない。ただし、共有者は、これをもって善意の第三者に対抗することができない。 解説 2021年改正により新設。
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条文 - 第254条 - 共有者の一人が共有物について他の共有者に対して有する債権は、その特定承継人に対しても行使することができる。 解説 参照条文 判例 - 建物収去土地明渡請求(最高裁判決 昭和34年11月26日) - 民法第254条の適用が認められた事例。 - 土地の共有持分の一部を譲り受けた者が、他の共有者と、共有者間の内部において、その土地の一部を分割し、その部分を右譲受人の単独所有として独占的に使用しうること及び後に分筆登記が可能となつたときは直ちにその登記をなすことを約した場合は、その後同土地につき共有持分を譲り受けた者に対して右契約上の債権を行うことができる
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民法第255条 条文 (持分の放棄及び共有者の死亡) - 第255条 - 共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。 解説 持分の放棄がおこなわれたとき、その放棄の対象となった持分の帰属を定めた規定である。「所有権の弾力性」として説明されることがある。死亡して相続人が不在の場合にも適用される、という規定方式にもなっているが、特別縁故者が存在する場合の処理方法については争いがある。 以下の建物の区分所有等に関する法律第24条のような例外規定も存在する。 参照条文 - 民法第951条(相続財産法人の成立) - 民法第958条の3(特別縁故者に対する相続財産の分与) - 建物の区分所有等に関する法律第24条(民法第255条の適用除外) 判例 - 土地建物所有権確認等請求(最高裁判決 昭和44年03月27日)民法第177条、不動産登記法第1条 - 共有持分権の放棄と登記方法 - 共有登記のなされている不動産につき、共有者の一人が持分権を放棄した場合には、他の共有者は、放棄にかかる持分権の移転登記手続を求めるべきであつて、放棄者の持分権取得登記の抹消登記手続を求めることは許されない。 - 不動産登記申請却下決定取消(最高裁判決 平成元年11月24日)民法第958条の3(現・民法第958条の2) - 共有者の一人が相続人なくして死亡したときとその持分の帰すう - 共有者の一人が死亡し、相続人の不存在が確定し、相続債権者や受遺者に対する清算手続が終了したときは、その持分は、民法第958条の3に基づく特別縁故者に対する財産分与の対象となり、右財産分与がされないときに、同法第255条により他の共有者に帰属する。 参考文献 - 加藤雅信『新民法大系 物権法Ⅱ(第2版)』(有斐閣、2005年)
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民法第256条 条文 (共有物の分割請求) - 第256条 - 各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。ただし、5年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることを妨げない。 - 前項ただし書の契約は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から5年を超えることができない 解説 共有物分割についての規定である。 共有者間に共有物の管理、変更等をめぐって、意見の対立、紛争が生じやすく、いったんこのような意見の対立、紛争が生じたときは、共有物の管理、変更等に障害を来し、物の経済的価値が十分に実現されなくなるという事態となるので、本条は、かかる弊害を除去し、共有者に目的物を自由に支配させ、その経済的価値を十分に発揮させるため、各共有者はいつでも共有物の分割を請求することができるものとしている。 また、2項により共有者の締結する共有物の不分割契約について期間の制限を設け、不分割契約は当該期間の制限を超えたら効力を有しないとして、共有者の共有物の分割請求権が保障されている。 立法の趣旨・目的 森林法共有林事件 昭和62年04月22日最高裁判所大法廷判決民集 第41巻3号408頁 - 共有とは、複数の者が目的物を共同して所有することをいい、共有者は各自、それ自体所有権の性質をもつ持分権を有しているにとどまり、共有関係にあるというだけでは、それ以上に相互に特定の目的の下に結合されているとはいえない。 - 共有の場合にあつては、持分権が共有の性質上互いに制約し合う関係に立つため、単独所有の場合に比し、物の利用又は改善等において十分配慮されない状態におかれることがあり、また、共有者間に共有物の管理、変更等をめぐつて、意見の対立、紛争が生じやすく、いつたんかかる意見の対立、紛争が生じたときは、共有物の管理、変更等に障害を来し、物の経済的価値が十分に実現されなくなるという事態となるので、同条は、かかる弊害を除去し、共有者に目的物を自由に支配させ、その経済的効用を十分に発揮させるため、各共有者はいつでも共有物の分割を請求することができるものとし、しかも共有者の締結する共有物の不分割契約について期間の制限を設け、不分割契約は右制限を超えては効力を有しないとして、共有者に共有物の分割請求権を保障している。 - 共有物分割請求権は、各共有者に近代市民社会における原則的所有形態である単独所有への移行を可能ならしめ、上記公益的目的をも果たすものとして発展した権利であり、共有の本質的属性として、持分権の処分の自由とともに、民法において認められるに至つたものである。 参照条文 - 民法第258条(裁判による共有物の分割) - 不動産登記法第59条(権利に関する登記の登記事項) 判例 - 共有物分割請求(最高裁判決 昭和30年05月31日)民法第898条,民法第258条,民法第906条,民法第907条,旧民法第1002条,家事審判法第9条乙類10号,家事審判規則第104条,家事審判規則第107条 - 登記申請却下処分取消請求 (最高裁判決 昭和42年08月25日)不動産登記法39条ノ2 - 共有物分割の結果不動産の一部について単独所有権を取得した場合の登記方法 - 共有物分割の結果不動産の一部について単独所有権を取得した場合には、分筆登記を経由したうえで、権利の一部移転の登記手続をすべきである。 - 森林法共有林事件(最高裁判決 昭和62年04月22日)憲法29条、民法第258条、森林法第186条(削除) - 森林法第186条(当時、現在は本判決を受け削除) - 森林の共有者は、民法(明治29年法律第89号)第256条第1項(共有物の分割請求)の規定にかかわらず、その共有に係る森林の分割を請求することができない。ただし、各共有者の持分の価額に従いその過半数をもって分割の請求をすることを妨げない。 - 森林法186条本文と憲法29条2項 - 森林法186条本文は、憲法29条2項に違反する。 - 森林法第186条(当時、現在は本判決を受け削除)
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条文 (裁判による共有物の分割) - 第258条 - 共有物の分割について共有者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、その分割を裁判所に請求することができる。 - 裁判所は、次に掲げる方法により、共有物の分割を命ずることができる。 - 共有物の現物を分割する方法 - 共有者に債務を負担させて、他の共有者の持分の全部又は一部を取得させる方法 - 前項に規定する方法により共有物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができる。 - 裁判所は、共有物の分割の裁判において、当事者に対して、 金銭の支払、物の引渡し、登記義務の履行その他の給付を命ずることができる。 改正経緯 2021年改正により、以下の通り改正。 - 第1項 - 下線部を追加。 - (改正前)共有物の分割について共有者間に協議が調わないときは、その分割を裁判所に請求することができる。 - (改正後)共有物の分割について共有者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、その分割を裁判所に請求することができる。 - 下線部を追加。 - 第2項を新設。 - 旧・第2項の文言を改正の上、項番を第3項に繰り下げ。 - (改正前)前項の場合において、共有物の現物を分割することができないとき - (改正後)前項に規定する方法により共有物の現物を分割することができないとき - 第4項を新設。 解説 裁判による共有物の分割の方法及び手続についての規定。 参照条文 - 民法第256条(共有物の分割請求) 判例 - 共有物分割請求(最高裁判決 昭和30年05月31日)民法第898条,民法第256条,民法第906条,民法第907条,旧民法第1002条,家事審判法第9条乙類10号,家事審判規則第104条,家事審判規則第107条 - 共有物分割ならびに所有権確認等反訴請求(最高裁判決 昭和45年11月06日) - 民法258条によつてなされる数個の共有物の現物分割が共有者においてそれぞれ各個の物の単独所有権を取得する方法によることが許されるとされた事例 - 数個の共有建物が一筆の土地上にあり外形上一団の建物とみられる場合に、民法258条により右建物につき現物分割をするには、右建物を一括して分割の対象とし、共有者がそれぞれ各個の建物の単独所有権を取得する方法によることも許される。 - 共有物分割請求(最高裁判決 昭和46年06月18日) 民法第177条 - 民法258条1項にいう「共有者ノ協議調ハサルトキ」の意義 - 民法258条1項にいう「共有者ノ協議調ハサルトキ」とは、共有者の一部に共有物分割の協議に応ずる意思がないため共有者全員において協議をすることができない場合を含むものであつて、現実に協議をしたうえで不調に終わつた場合に限られるものではない。 - 共有物分割訴訟と持分譲受の登記 - 不動産の共有物分割訴訟においては、共有者間に持分の譲渡があつても、その登記が存しないため、譲受人が持分の取得をもつて他の共有者に対抗することができないときは、共有者全員に対する関係において、右持分がなお譲渡人に帰属するものとして共有物分割を命ずべきである。 - 民法258条2項にいう「現物ヲ以テ分割ヲ為スコト能ハサルトキ」の意義 - 法258条2項にいう「現物ヲ以テ分割ヲ為スコト能ハサルトキ」とは、現物分割が物理的に不可能な場合のみを指称するのではなく、社会通念土適正な現物分割が著るしく困難な場合をも包含するものと解すべきである。 - 民法258条1項にいう「共有者ノ協議調ハサルトキ」の意義 - 共有物分割請求 (最高裁判決 昭和50年11月07日)民法第907条 - 共同相続人の一部から遺産を構成する特定不動産の共有持分権を譲り受けた第三者が共有関係解消のためにとるべき裁判手続 - 共同相続人の一部から遺産を構成する特定不動産の共有持分権を譲り受けた第三者が当該共有関係の解消のためにとるべき裁判手続は、遺産分割審判ではなく、共有物分割訴訟である。 - 共有物分割(最高裁判決 昭和57年03月09日)民訴法第186条(現・民事訴訟法第268条) - 共有物分割の訴えにおいて分割の方法を具体的に指定することの要否 - 共有物分割の訴えにおいては、当事者は、共有物の分割を求める旨を申し立てれば足り、分割の方法を具体的に指定することを要しない。 - 共有物を現物で分割することが不可能であるか又は現物で分割することによつて著しく価格を損するおそれがあるときと裁判の内容 - 共有物を現物で分割することが不可能であるか又は現物で分割することによつて著しく価格を損するおそれがあるときには、裁判所は、共有物を競売に付しその売得金を共有者の持分の割合に応じて分割することを命ずることができる。 - 共有物分割の訴えにおいて分割の方法を具体的に指定することの要否 - 森林法共有林事件(最高裁判決 昭和62年04月22日)憲法29条、民法第256条、森林法186条 - 森林法186条本文と憲法29条2項 - 森林法186条本文は、憲法29条2項に違反する。 - 民法258条による共有物の現物分割と価格賠償の方法による調整 - 民法258条により共有物の現物分割をする場合には、その一態様として、持分の価格を超える現物を取得する共有者に当該超過分の対価を支払わせて過不足を調整することも許される。 - 数か所に分かれて存在する多数の共有不動産についての民法258条による現物分割といわゆる一括分割 - 数か所に分かれて存在する多数の共有不動産について、民法258条により現物分割をする場合には、これらを一括して分割の対象とし、分割後のそれぞれの不動産を各共有者の単独所有とすることも許される。 - 民法258条による多数共有者間の現物分割といわゆる一部分割 - 多数の者が共有する物を民法258条により現物分割する場合には、分割請求者の持分の限度で現物を分割し、その余は他の者の共有として残す方法によることも許される。 - 森林法186条本文と憲法29条2項 - 共有物分割(最高裁判決 平成4年01月24日) - 分割請求者が多数である場合における民法258条による現物分割といわゆる一部分割 - 民法258条により共有物の現物分割をする場合において、分割請求者が多数であるときは、分割請求の相手方の持分の限度で現物を分割し、その余は分割請求者の共有として残す方法によることも許される。 - 持分権確認並びに共有物分割(最高裁判決 平成8年10月31日) - いわゆる全面的価格賠償の方法により共有物を分割することの許される特段の事情の存否について審理判断することなく競売による分割をすべきものとした原審の判断に違法があるとされた事例 - 共有不動産の分割をする場合において、右不動産が、病院、その附属施設及びこれらの敷地として一体的に病院の運営に供されており、これらを切り離して現物分割をすれば病院運営が困難になることも予想され、また、共有者の一人である甲が競売による分割を希望しているのに対し、他の共有者である乙及び丙は、右不動産を競売に付することなく、自らがこれを取得するいわゆる全面的価格賠償の方法による分割を希望しているところ、右不動産を乙及び丙に取得きせるのが相当でないということはできない上、乙及び丙の支払能力のいかんによっては、右不動産の適正な評価額に従って甲にその持分の価格を取得させることとしても共有者間の実質的公平を害しないにもかかわらず、全面的価格賠償の方法により右不動産を分割することの許される特段の事情の存否について審理判断することなく、直ちに競売による分割をすべきものとした原審の判断には、違法がある。
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条文 (裁判による共有物の分割) - 第258条の2 - 共有物の全部又はその持分が相続財産に属する場合において、共同相続人間で当該共有物の全部又はその持分について遺産の分割をすべきときは、当該共有物又はその持分について前条の規定による分割をすることができない。 - 共有物の持分が相続財産に属する場合において、相続開始の時から10年を経過したときは、前項の規定にかかわらず、相続財産に属する共有物の持分について前条の規定による分割をすることができる。ただし、当該共有物の持分について遺産の分割の請求があった場合において、相続人が当該共有物の持分について同条の規定による分割をすることに異議の申出をしたときは、この限りでない。 - 相続人が前項ただし書の申出をする場合には、当該申出は、当該相続人が前条第1項の規定による請求を受けた裁判所から当該請求があった旨の通知を受けた日から2箇月以内に当該裁判所にしなければならない。 解説 遺産の分割は、共有物の分割請求に優先し、相続が完了するまでは、原則として共有物分割ができない旨規定。
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条文 (不在者の財産の管理) - 第25条 - 従来の住所又は居所を去った者(以下「不在者」という。)がその財産の管理人(以下この節において単に「管理人」という。)を置かなかったときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずることができる。本人の不在中に管理人の権限が消滅したときも、同様とする。 - 前項の規定による命令後、本人が管理人を置いたときは、家庭裁判所は、その管理人、利害関係人又は検察官の請求により、その命令を取り消さなければならない。 解説 不在者の財産管理人についての規定である。請求により処分を命ずるのであって、家庭裁判所の職権で処分や管理人の選任を行うことはできない。
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条文 (所在等不明共有者の持分の取得) - 第262条の2 - 不動産が数人の共有に属する場合において、共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、その共有者に、当該他の共有者(以下この条において「所在等不明共有者」という。)の持分を取得させる旨の裁判をすることができる。この場合において、請求をした共有者が二人以上あるときは、請求をした各共有者に、所在等不明共有者の持分を、請求をした各共有者の持分の割合で按分してそれぞれ取得させる。 - 前項の請求があった持分に係る不動産について第258条第1項の規定による請求又は遺産の分割の請求があり、かつ 、所在等不明共有者以外の共有者が前項の請求を受けた裁判所に同項の裁判をすることについて異議がある旨の届出をしたときは、裁判所は、同項の裁判をすることができない。 - 所在等不明共有者の持分が相続財産に属する場合(共同相続人間で遺産の分割をすべき場合に限る。)において、相続開始の時から10年を経過していないときは、裁判所は、第1項の裁判をすることができない。 - 第1項の規定により共有者が所在等不明共有者の持分を取得したときは、所在等不明共有者は、当該共有者に対し、当該共有者が取得した持分の時価相当額の支払を請求することができる。 - 前各項の規定は、不動産の使用又は収益をする権利(所有権を除く。)が数人の共有に属する場合について準用する。 解説 2021年改正により新設。
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条文 (所在等不明共有者の持分の譲渡) - 第262条の3 - 不動産が数人の共有に属する場合において、共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、その共有者に、当該他の共有者(以下この条において「所在等不明共有者」という。)以外の共有者の全員が特定の者に対してその有する持分の全部を譲渡することを停止条件として所在等不明共有者の持分を当該特定の者に譲渡する権限を付与する旨の裁判をすることができる。 - 所在等不明共有者の持分が相続財産に属する場合(共同相続人間で遺産の分割をすべき場合に限る。)において、相続開始の時から10年を経過していないときは、裁判所は、前項の裁判をすることができない。 - 第1項の裁判により付与された権限に基づき共有者が所在等不明共有者の持分を第三者に譲渡したときは、所在等不明共有者は、当該譲渡をした共有者に対し、不動産の時価相当額を所在等不明共有者の持分に応じて按分して得た額の支払を請求することができる。 - 前三項の規定は、不動産の使用又は収益をする権利(所有権を除く。)が数人の共有に属する場合について準用する。 解説 2021年改正により新設。
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条文 - 第263条 - 共有の性質を有する入会権については、各地方の慣習に従うほか、この節の規定を適用する 解説 - 共有の性質を有する入会権、即ち、入会団体が入会地を所有する場合における入会権について定める。なお、共有の性質を有しない入会権については、地役権に従う(民法第294条(共有の性質を有しない入会権)を参照)。 - ただし、実際は、共有及び地役権の規定が適用又は準用される局面は稀であり(例えば、共有は第256条により分割請求ができることが原則であり、契約を更新することで、それを抑止できるのであるが、入会林野の分割請求は無制限には認められない)、入会権者及びその利害関係者の間で長年に渡り積み重ねられた取り決め、規約、暗黙の合意等の慣習に委ねられている。 参照条文 判例 - 所有権移転登記手続請求(最高裁判決 昭和41年11月25日)民法第263条,民訴法62条 - 入会権確認の訴は固有必要的共同訴訟か - 入会権確認の訴は、入会権が共有の性質を有するかどうかを問わず、入会権者全員で提起することを要する固有必要的共同訴訟である。 - 山林等所有権確認等請求(最高裁判例 昭和42年03月17日) - 地役の性質を有する入会権が解体消滅したと認められた事例(入会権消滅の事例) - 明治21年町村制の施行後、区の所有であつて当該区の部落民の入り会つていた入会地について、その後65年間に、部落の統制が次第に当該区会の統制に移行し、区が従前の入会地の一部を処分し、全入会地を管理して使用収益方法を定め、部落民も異議なくこの方法に従つて当該土地の使用収益をするにいたり、また従前部落の入会権行使の統制機関であつた「春寄合」は区会に対する意見具申の機関になつた等慣行の変化があつた場合には、部落民が右土地につき有していた地役の性質を有する入会権は、漸次解体して消滅したと認めるのが相当である。 - 所有権移転登記等抹消登記手続等請求 昭和43年11月15日)民法第94条2項 - 入会権確認等請求(最高裁判決 昭和48年03月13日)民法第294条,民訴法第208条 - 入会権確認訴訟における入会権者の死亡と訴訟承継人 - 入会権確認訴訟において、入会権者が死亡した場合には、入会慣行に従つて死亡者に代わり入会権を取得した者が、その訴訟手続を承継する。 - 明治初年の官民有区分処分による官有地編入と入会権の帰すう - 従前入会権の対象となつていた土地が、明治初年の官民有区分処分によつて官有地に編入されたとしても、その入会権は、右処分によつて当然には消滅しなかつたものと解すべきである。 - 土地並びに地上立木所有権確認請求(最高裁判決 昭和48年10月05日)民法第162条 - 入会権確認等(最高裁判決 昭和57年01月22日) - 山林原野の管理利用について部落による共同体的統制が認められないとして右山林原野に対する住民の入会権が否定された事例 - 山林原野が代議制をとつた村議会等の多数決による議決に基づいて村有財産として管理処分され、あるいは村当局の監督下において村民に利用されて来たなど、右山林原野の管理利用について部落による共同体的統制の存在を認めるに由ない判示の事実関係のもとにおいては、これに対する共有の性質を有する入会権及び共有の性質を有しない入会権は、ともに認められない。 - 地上権存在確認、地上権設定登記手続、土地引渡(最高裁判決 昭和57年07月01日)民訴法第45条,民訴法第62条 - 入会部落の構成員が有する使用収益権の確認又はこれに基づく妨害排除の請求と右構成員の当事者適格 - 入会部落の構成員が有する使用収益権の確認又はこれに基づく妨害排除の請求については、右構成員各自に当事者適格がある。 - 入会部落の構成員が有する使用収益権に基づく地上権設定仮登記抹消登記手続請求の可否 - 入会部落の構成員は、自己の有する使用収益権を根拠としては入会地について経由された地上権設定仮登記の抹消登記手続を請求することができない。 - 共有持分確認、損害賠償(最高裁判決 昭和58年02月08日)民訴法62条 - 入会権の確認を求める訴えが原告側について通常訴訟と認められる場合 - 入会団体に個別的に加入を認められたと主張する者が入会権者に対し入会権を有することの確認を請求する場合には、右主張者が各自単独で訴えを提起することができる。 - 損害賠償請求事(最高裁判例 昭和63年01月18日) 民法第86条,民法第242条 - 共有の性質を有しない入会地上の天然の樹木の所有権が土地の所有者に属するとされた事例 - 付近住民の採草放牧や薪炭材採取等に利用されていた入会地が、入会住民全員の同意のもとに、入会権を存続させ入会住民の保育した天然の樹木を売却する際にはその保育に対する報償として売却代金の一部を入会住民に交付することを条件として村に贈与され、右条件の趣旨に沿つて村が制定した条例に従つて、入会住民が造林組合を結成して組合名義で村に対し入会地の天然の樹木の伐採申請をし、これを受けた村が右樹木を売却してその代金の一部を組合に交付してきたなど判示の事実関係のもとにおいては、右入会地上に生育する天然の樹木は、共有の性質を有しない右入会地の所有者である村の所有に属する。 - 所有権確認等(最高裁判決 平成6年05月31日)民法第33条,民訴法第45条,民訴法第46条,民訴法第58条 - 総有権確認請求訴訟において入会団体が原告適格を有する場合 - 入会権者である村落住民が入会団体を形成し、それが権利能力のない社団に当たる場合には、右入会団体は、構成員全員の総有に属する不動産についての総有権確認請求訴訟の原告適格を有する。 - 権利能力のない社団である入会団体の代表者が総有権確認請求訴訟を原告の代表者として追行する場合における特別の授権の要否 - 権利能力のない社団である入会団体の代表者が構成員全員の総有に属する不動産について総有権確認請求訴訟を原告の代表者として追行するには、右入会団体の規約等において右不動産を処分するのに必要とされる総会の議決等の手続による授権を要する。 - 権利能力のない社団である入会団体の代表者でない構成員が総有不動産についての登記手続請求訴訟の原告適格を有する場合 - 権利能力のない社団である入会団体において、規約等に定められた手続により、構成員全員の総有に属する不動産について代表者でない構成員甲を登記名義人とすることとされた場合には、甲は、右不動産についての登記手続請求訴訟の原告適格を有する。 - 地位確認等請求事件(最高裁判決 平成18年03月17日)民法第2条,民法第92条,民法第294条,憲法第14条1項 - 入会部落の慣習に基づく入会集団の会則のうち入会権者の資格要件を一家の代表者としての世帯主に限定する部分が公序良俗に反しないとされた事例 - A入会部落の慣習に基づく入会集団の会則のうち入会権者の資格要件を一家の代表者としての世帯主に限定する部分は,現在においても,公序良俗に反するものということはできない。 - 入会部落の慣習に基づく入会集団の会則のうち入会権者の資格を原則として男子孫に限定し同入会部落の部落民以外の男性と婚姻した女子孫は離婚して旧姓に復しない限り入会権者の資格を認めないとする部分が民法第90条の規定により無効とされた事例 - A入会部落の慣習に基づく入会集団の会則のうち,入会権者の資格を原則として男子孫に限定し,同入会部落の部落民以外の男性と婚姻した女子孫は離婚して旧姓に復しない限り入会権者の資格を認めないとする部分は,遅くとも平成4年以降においては,性別のみによる不合理な差別として民法第90条の規定により無効である。 - 入会権確認請求事件(最高裁判決 平成20年07月17日) 民訴法40条,民訴法第1編第3章 当事者 - 入会集団の一部の構成員が訴えの提起に同調しない構成員を被告に加えて構成員全員が訴訟当事者となる形式で第三者に対する入会権確認の訴えを提起することの許否 - 特定の土地が入会地であるのか第三者の所有地であるのかについて争いがあり,入会集団の一部の構成員が,当該第三者を被告として当該土地が入会地であることの確認を求めようとする場合において,訴えの提起に同調しない構成員がいるために構成員全員で訴えを提起することができないときは,上記一部の構成員は,訴えの提起に同調しない構成員も被告に加え,構成員全員が訴訟当事者となる形式で,構成員全員が当該土地について入会権を有することの確認を求める訴えを提起することが許され,当事者適格を否定されることはない。 英文(出典等) (Rights of Common with Nature of Co-ownership) - Article 263 Rights of common that have the nature of co-ownership shall be governed by local custom and shall otherwise be subject to the application of the provisions of this Section.
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条文 (準共有) 改正経緯 2021年改正により、同改正において新設された民法第262条の2及び民法第262条の3は、所有権以外の財産権には準用されない旨、括弧書きを追加した。 解説 - 地上権・永小作権・地役権・抵当権・知的財産権など、所有権以外の財産権についても民法上の共有の規定が準用されるとする規定。 - 賃借権など一部の債権についても準用される。 - その他の一般債権 - 広く準用しうると解されるが、債権が多数の当事者に帰属する状態は「多数当事者の債権」に異ならないため、債権の準共有に対しては多数当事者の債権の規定が適用され、そこに不足がある場合、共有の規定が準用される(「特別の定め」の例)。 - その他「特別の定め」の例 参照条文 - 建物の区分所有等に関する法律第24条(民法第255条の適用除外) - 不動産登記法第59条(権利に関する登記の登記事項)
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条文 (管理不全土地管理人の権限) - 第264条の10 - 管理不全土地管理人は、管理不全土地管理命令の対象とされた土地及び管理不全土地管理命令の効力が及ぶ動産並びにその管理、処分その他の事由により管理不全土地管理人が得た財産(以下「管理不全土地等」という。)の管理及び処分をする権限を有する。 - 管理不全土地管理人が次に掲げる行為の範囲を超える行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。ただし、この許可がないことをもって善意でかつ過失がない第三者に対抗することはできない。 - 保存行為 - 管理不全土地等の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為 - 管理不全土地管理命令の対象とされた土地の処分についての前項の許可をするには、その所有者の同意がなければならない 。 解説 2021年改正において新設。
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条文 (管理不全建物管理命令) - 第264条の14 - 裁判所は、所有者による建物の管理が不適当であることによって他人の権利又は法律上保護される利益が侵害され、又は侵害されるおそれがある場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、当該建物を対象として、管理不全建物管理人(第3項に規定する管理不全建物管理人をいう。第4項において同じ。)による管理を命ずる処分(以下この条において「管理不全建物管理命令」という 。)をすることができる。 - 管理不全建物管理命令は、当該管理不全建物管理命令の対象とされた建物にある動産(当該管理不全建物管理命令の対象とされた建物の所有者又はその共有持分を有する者が所有するものに限る。)及び当該建物を所有するための建物の敷地に関する権利(賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利(所有権を除く。)であって、当該管理不全建物管理命令の対象とされた建物の所有者又はその共有持分を有する者が有するものに限る。)に及ぶ。 - 裁判所は、管理不全建物管理命令をする場合には、当該管理不全建物管理命令において、管理不全建物管理人を選任しなければならない。 - 第264条の10から前条までの規定は、管理不全建物管理命令及び管理不全建物管理人について準用する。 解説 2021年改正において新設。 管理不全の建物について、第264条の9から第264条の13までに定める管理不全土地管理命令及び管理不全土地管理人の規定を当てはめるもの。
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条文 (所有者不明土地管理命令) - 第264条の2 - 裁判所は、所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない土地(土地が数人の共有に属する場合にあっては、共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない土地の共有持分)について、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、その請求に係る土地又は共有持分を対象として、所有者不明土地管理人(第4項に規定する所有者不明土地管理人をいう。以下同じ。)による管理を命ずる処分(以下「所有者不明土地管理命令」という 。)をすることができる。 - 所有者不明土地管理命令の効力は、当該所有者不明土地管理命令の対象とされた土地(共有持分を対象として所有者不明土地管理命令が発せられた場合にあっては、共有物である土地) にある動産(当該所有者不明土地管理命令の対象とされた土地の所有者又は共有持分を有する者が所有するものに限る。)に及ぶ。 - 所有者不明土地管理命令は、所有者不明土地管理命令が発せられた後に当該所有者不明土地管理命令が取り消された場合において、当該所有者不明土地管理命令の対象とされた土地又は共有持分及び当該所有者不明土地管理命令の効力が及ぶ動産の管理、処分その他の事由により所有者不明土地管理人が得た財産について、必要があると認めるときも、することができる。 - 裁判所は、所有者不明土地管理命令をする場合には、当該所有者不明土地管理命令において、所有者不明土地管理人を選任しなければならない。 解説 2021年改正(令和3年法律第24号による改正)において新設。2023年(令和5年)4月1日より施行。
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条文 (所有者不明土地管理人の権限) - 第264条の3 - 前条第4項の規定により所有者不明土地管理人が選任された場合には、所有者不明土地管理命令の対象とされた土地又は共有持分及び所有者不明土地管理命令の効力が及ぶ動産並びにその管理、処分その他の事由により所有者不明土地管理人が得た財産(以下「所有者不明土地等」という。) の管理及び処分をする権利は、所有者不明土地管理人に専属する。 - 所有者不明土地管理人が次に掲げる行為の範囲を超える行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。ただし、この許可がないことをもって善意の第三者に対抗することはできない。 - 保存行為 - 所有者不明土地等の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為 解説 2021年改正において新設。
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条文 (所有者不明建物管理命令) - 第264条の8 - 裁判所は、所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない建物(建物が数人の共有に属する場合にあっては、共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない建物の共有持分)について、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、その請求に係る建物又は共有持分を対象として、所有者不明建物管理人(第4項に規定する所有者不明建物管理人をいう。以下この条において同じ。)による管理を命ずる処分(以下この条において「所有者不明建物管理命令」という。)をすることができる。 - 所有者不明建物管理命令の効力は、当該所有者不明建物管理命令の対象とされた建物(共有持分を対象として所有者不明建物管理命令が発せられた場合にあっては、共有物である建物)にある動産(当該所有者不明建物管理命令の対象とされた建物の所有者又は共有持分を有する者が所有するものに限る。)及び当該建物を所有し、又は当該建物の共有持分を有するための建物の敷地に関する権利(賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利(所有権を除く。)であって、当該所有者不明建物管理命令の対象とされた建物の所有者又は共有持分を有する者が有するものに限る。)に及ぶ。 - 所有者不明建物管理命令は、所有者不明建物管理命令が発せられた後に当該所有者不明建物管理命令が取り消された場合において、当該所有者不明建物管理命令の対象とされた建物又は共有持分並びに当該所有者不明建物管理命令の効力が及ぶ動産及び建物の敷地に関する権利の管理、処分その他の事由により所有者不明建物管理人が得た財産について、必要があると認めるときも、することができる。 - 裁判所は、所有者不明建物管理命令をする場合には、当該所有者不明建物管理命令において、所有者不明建物管理人を選任しなければならない。 - 第264条の3から前条までの規定は、所有者不明建物管理命令及び所有者不明建物管理人について準用する。 解説 2021年改正において新設。 所有者不明の建物について、第264条の2から第264条の7までに定める所有者不明土地管理命令及び所有者不明土地管理人の規定を当てはめるもの。
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条文 (管理不全土地管理命令) - 第264条の9 - 裁判所は、所有者による土地の管理が不適当であることによって他人の権利又は法律上保護される利益が侵害され、又は侵害されるおそれがある場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、当該土地を対象として、管理不全土地管理人(第3項に規定する管理不全土地管理人をいう。以下同じ。)による管理を命ずる処分(以下「管理不全土地管理命令」という。)をすることができる。 - 管理不全土地管理命令の効力は、当該管理不全土地管理命令の対象とされた土地にある動産(当該管理不全土地管理命令の対象とされた土地の所有者又はその共有持分を有する者が所有するものに限る。)に及ぶ。 - 裁判所は、管理不全土地管理命令をする場合には、当該管理不全土地管理命令において、管理不全土地管理人を選任しなければならない。 解説 2021年改正において新設。
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条文 (地上権の内容) - 第265条 - 地上権者は、他人の土地において工作物又は竹木を所有するため、その土地を使用する権利を有する。 解説 参照条文 判例 - 建物収去土地明渡請求 (最高裁判決 昭和47年07月18日) 民法第177条,民法第593条 - 生前相続による不動産所有権の取得と同一不動産の遺贈を受けた遺産相続人に対する対抗 - 旧民法(明治三一年法律第九号)施行当時において生前相続により不動産所有権を承継した家督相続人は、その登記を経なければ所有権取得をもつて第三者に対抗することができず、被相続人から同一不動産の遺贈を受けた者は、同時に被相続人の遺産相続人である場合でも、右第三者にあたる。 - 夫婦間の土地利用関係が地上権の設定とは認められないとされた事例 - 夫がその所有の土地を無償で使用することを妻に対して許諾し、妻がその地上に建築した建物に、夫婦で同居しているなど判示の事情がある場合でも、他に特段の事情がないときは、右土地の利用関係をもつて、建物所有を目的とする地上権が設定されたものと認めることはできない。 - 生前相続による不動産所有権の取得と同一不動産の遺贈を受けた遺産相続人に対する対抗
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条文 (地代) - 第266条 - 第274条から第276条まで【第274条、第275条、第276条】の規定は、地上権者が土地の所有者に定期の地代を支払わなければならない場合について準用する。 - 地代については、前項に規定するもののほか、その性質に反しない限り、賃貸借に関する規定を準用する。 解説 地代につき、永小作権、賃貸借契約の規定が準用される旨を規定する。 参照条文 - 民法第274条(小作料の減免) - 民法第275条(永小作権の放棄) - 民法第276条(永小作権の消滅請求) - 第3編 債権, 第2章 契約, 第7節 賃貸借 判例 - 建物収去土地明渡 (最高裁判決 昭和56年03月20日) 民訴法190条2項,民訴法207条,民法第276条 - 土地所有者が地代の受領を拒絶し又はこれを受領しない意思が明確であるため地上権者において提供をするまでもなく債務不履行の責を免れる事情にある場合と民法266条1項、276条に基づく地上権消滅請求 - 土地所有者が地代の受領を拒絶し又は地上権の存在を否定する等弁済を受領しない意思が明確であるため地上権者が言語上の提供をするまでもなく地代債務の不履行の責を免れるという事情がある場合には、土地所有者は、みずから受領拒絶の態度を改め、以後地代を提供されればこれを確実に受領すべき旨を明らかにしたのち相当期間を経過したか、又は相当期間を定めて催告をしたにもかかわらず地上権者が右期間を徒過した等、自己の受領遅滞又はこれに準ずる事態を解消させる措置を講じたのちでなければ、民法266条1項、276条に基づく地上権消滅請求の意思表示をすることができない。
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民法第269条の2 条文 (地下又は空間を目的とする地上権) - 第269条の2 - 地下又は空間は、工作物を所有するため、上下の範囲を定めて地上権の目的とすることができる。この場合においては、設定行為で、地上権の行使のためにその土地の使用に制限を加えることができる。 - 前項の地上権は、第三者がその土地の使用又は収益をする権利を有する場合においても、その権利又はこれを目的とする権利を有するすべての者の承諾があるときは、設定することができる。この場合において、土地の使用又は収益をする権利を有する者は、その地上権の行使を妨げることができない。 解説 区分地上権についての規定である。 参照条文 - 不動産登記法第78条(地上権の登記の登記事項) - 採石法第4条(内容及び性質) - 農地法第3条(農地又は採草放牧地の権利移動の制限)
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条文 (管理人の職務) - 第27条 - 前二条の規定により家庭裁判所が選任した管理人は、その管理すべき財産の目録を作成しなければならない。この場合において、その費用は、不在者の財産の中から支弁する。 - 不在者の生死が明らかでない場合において、利害関係人又は検察官の請求があるときは、家庭裁判所は、不在者が置いた管理人にも、前項の目録の作成を命ずることができる。 - 前二項に定めるもののほか、家庭裁判所は、管理人に対し、不在者の財産の保存に必要と認める処分を命ずることができる 解説 民法上の不在者の財産管理に関する規定である。 参照条文 - 家事審判法第9条甲類3号 - 民法第25条(不在者の財産の管理) - 民法第830条(第三者が無償で子に与えた財産の管理)- 本条の準用 - 民法第895条(推定相続人の廃除に関する審判確定前の遺産の管理)- 本条の準用
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条文 (地役権の付従性) - 第281条 - 地役権は、要役地(地役権者の土地であって、他人の土地から便益を受けるものをいう。以下同じ。)の所有権に従たるものとして、その所有権とともに移転し、又は要役地について存する他の権利の目的となるものとする。ただし、設定行為に別段の定めがあるときは、この限りでない。 - 地役権は、要役地から分離して譲り渡し、又は他の権利の目的とすることができない。 解説 - 要役地 - 地役権者の土地であって、他人の土地から便益を受けるもの - 承役地 - 地役権者以外の者の土地であって、要役地の便益に供されるもの(民法第285条) 参照条文 - 不動産登記法第80条(地役権の登記の登記事項等)
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条文 - 第283条 - 地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができる。 解説 地役権は、所有権及び他の用益物件と異なり、時効取得の要件である行使がなされているか否かが判然としているとは限らないため、継続的に行使され、外形上認識できる場合のみ、取得時効の対象とした。 「外形上認識できるもの」(表現地役権)としては、通行権や側溝などに対する排水権が挙げられ、「認識できないもの」(不表現地役権)としては、地下埋設水路に対する排水権などが挙げられる。 参照条文 判例 - 仮処分異議 (最高裁判例 昭和30年12月26日) - 通行地役権の時効取得の「継続」の要件 - 通行地役権の時効取得に関する「継続」の要件としては、承役地たるべき他人所有の土地の上に通路の開設を要し、その開設は要役地所有者によつてなされることを要するものと解すべきである。 - 通行地役権確認等 (最高裁判例 平成6年12月16日) - 要役地の所有者によって通路が開設されたとして通行地役権の時効取得が認められた事例 - 公道に接する土地を所有する甲が、乙に対して右公道の拡幅のためにその所有地の一部を提供するよう働きかける一方、自らも所有地の一部を提供する等の負担をし、甲のこれらの行為の結果として、右公道全体が拡幅され、乙の右所有地も拡幅部分の一部として通行の用に供されるようになったなど判示の事実関係の下においては、乙の右所有地については、要役地の所有者である甲によって通路が開設されたものとして、通行地役権の時効取得が認められる。
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条文 - 第284条 - 土地の共有者の一人が時効によって地役権を取得したときは、他の共有者も、これを取得する。 - 共有者に対する時効の更新は、地役権を行使する各共有者に対してしなければ、その効力を生じない。 - 地役権を行使する共有者が数人ある場合には、その一人について時効の完成猶予の事由があっても、時効は、各共有者のために進行する。 改正経緯 2017年改正における時効概念の整理により以下のとおり、用語を改正。 - (改正前)「時効の中断」→(改正後)「時効の更新」 - (改正前)「時効の停止の原因」→(改正後)「時効の完成猶予の事由」 解説 地役権の時効取得(第283条)において、取得者が共有者の一人である場合、時効の効果は共有者全員に及び、逆に時効更新・完成猶予については共有者全員を相手方としなければその効果が発生しないことを規定する。 ABの共有地甲について、Aが隣接地乙に関する地役権を時効取得したとき、この地役権は土地甲に対しての利益であるのでBに生じないのは物権の性質上適当でなく、時効成立阻害要件は共有者に等しく発生するものであるとの定めである。
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条文 (用水地役権) - 第285条 - 用水地役権の承役地(地役権者以外の者の土地であって、要役地の便益に供されるものをいう。以下同じ。)において、水が要役地及び承役地の需要に比して不足するときは、その各土地の需要に応じて、まずこれを生活用に供し、その残余を他の用途に供するものとする。ただし、設定行為に別段の定めがあるときは、この限りでない。 - 同一の承役地について数個の用水地役権を設定したときは、後の地役権者は、前の地役権者の水の使用を妨げてはならない。 解説 - 要役地 - 地役権者の土地であって、他人の土地から便益を受けるもの(民法第281条) - 承役地 - 地役権者以外の者の土地であって、要役地の便益に供されるもの 参照条文 - 不動産登記法第80条(地役権の登記の登記事項等)
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条文 (管理人の権限) - 第28条 - 管理人は、第103条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる。不在者の生死が明らかでない場合において、その管理人が不在者が定めた権限を超える行為を必要とするときも、同様とする。 解説 冒頭の「管理人」とは、不在者の財産管理人のことである(民法第25条1項を参照)。 「第103条に規定する権限」とは、権限の定めの無い代理人の代理権限、つまり保存行為と利用改良行為のことである(詳細は民法第103条)。これを越える行為をするには家庭裁判所の許可を得なければならない。つまり、不在者の財産管理人の権限は家庭裁判所の監督の下、きわめて抑制されたものであることがわかる。 後段は、不在者の生死が明らかでない場合における、その財産管理人の権限を定めた規定である。 参照条文 - 家事審判法第9条甲類3号 - 民法第25条(不在者の財産の管理) - 民法第26条(管理人の改任) - 民法第830条(第三者が無償で子に与えた財産の管理)- 本条の準用 - 民法第895条(推定相続人の廃除に関する審判確定前の遺産の管理)- 本条の準用
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条文 (留置権の内容) - 第295条 - 他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない。 - 前項の規定は、占有が不法行為によって始まった場合には、適用しない。 解説 - 留置権(いわゆる民事留置権)の成立要件について定めた規定である。 - 「他人の物の占有者」とは、留置権者が目的物を占有することである。留置権者が目的物を占有することで、債権者が債務者に対して履行を促す狙いがある。不動産も目的物にすることができ、このとき占有の継続さえすればよいから留置権を登記する必要は無い(そもそも不動産登記法に留置権の登記制度がない)。 - 「その物に関して生じた債権を有する」とは、債権が目的物をきっかけにして発生したことを指し、目的物と債権との間に牽連性があるということである。なお商法では牽連性が一部緩和されている。 - 「その債権が弁済期にないときは、この限りでない」とは、債権回収のために担保物権を行使するのであるから、留置権の行使も債権が弁済期にあることが要求される。 - 「不法行為」の解釈については諸説あるが、他人の物の占有が不法行為によって始まった場合は、留置権の成立を認められない。 - 商法における留置権のような明文の規定はないが、特約で留置権発生の可能性を排除することができる(通説)。 - 留置権者は「他人の物の占有」と、目的物と被担保債権との牽連性とを主張立証すればよい。 - 債務者が留置権を否定して目的物を取り戻すには、債権が弁済期にないこと、窃盗など不法行為によって占有が始まったこと、または占有者と債務者間でその物について留置権を主張しない特約を結んでいたことを立証すればよい。これに失敗したときは、留置権者の義務違反、留置権の消滅を主張して目的物を取り戻すことになる。 参照条文 - 民法第709条(不法行為による損害賠償) - 商事留置権 - 民事執行法第195条(留置権による競売及び民法 、商法 その他の法律の規定による換価のための競売) - 倒産法制 - 破産法第66条(留置権の取扱い) - 破産手続開始の時において破産財団に属する財産につき存する商法又は会社法の規定による留置権は、破産財団に対しては特別の先取特権とみなす。 - 略 - 第1項に規定するものを除き、破産手続開始の時において破産財団に属する財産につき存する留置権は、破産財団に対してはその効力を失う。 - 会社更生法第29条(更生手続開始前における商事留置権の消滅請求) - 開始前会社の財産につき商法又は会社法の規定による留置権がある場合において、当該財産が開始前会社の事業の継続に欠くことのできないものであるときは、開始前会社(保全管理人が選任されている場合にあっては、保全管理人)は、更生手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、留置権者に対して、当該留置権の消滅を請求することができる。 - 民事再生法 - 民法と異なる取り扱いは規定されていない。 - 破産法第66条(留置権の取扱い) 判例 - 家屋明渡請求(最高裁判決 昭和29年01月14日)借家法第5条(現・借地借家法第33条) - 借家法第5条による造作買取代金債権は建物に関して生じた債権か - 借家法第5条による造作買取代金債権は、造作に関して生じた債権であつて、建物に関して生じた債権ではなので、建物を留置できない。 - 家屋明渡等請求(最高裁判決 昭和29年07月22日)借家法第5条(現・借地借家法第33条),民法第533条 - 造作買取請求権行使の場合における造作代金支払義務と家屋明渡義務との関係――留置権または同時履行抗弁権の成否 - 借家法第5条により造作の買収を請求した家屋の賃借人は、その代金の不払を理由として右家屋を留置し、または右代金の提供がないことを理由として同時履行の抗弁により右家屋の明渡を拒むことはできない。 - 船舶引渡等請求(最高裁判決 昭和30年03月04日) 民法第196条,民法第298条 - 民法第298条第2項但書にいわゆる留置物の保存に必要な使用 - 木造帆船の買主が、売買契約解除前支出した修繕費の償還請求権につき右船を留置する場合において、これを遠方に航行せしめて運送業務のため使用することは、たとえ解除前と同一の使用状態を継続するにすぎないとしても、留置物の保存に必要な使用をなすものとはいえない。 - 家屋明渡請求(最高裁判決 昭和33年01月17日)民法第298条,民法第299条 - 留置物の使用が物の保存に必要な範囲を超えた場合の必要費、有益費の支出とその償還請求権に基く留置権発生の有無 - 留置権者が留置物について必要費、有益費を支出しその償還請求権を有するときは、物の保存に必要な範囲を超えた使用に基く場合であつたとしても、その償還請求権につき留置権の発生を妨げない。 - 家屋明渡請求(最高裁判決 昭和33年03月13日)借家法第5条(現・借地借家法第33条) - 債務不履行その他背信行為による賃貸借の解除と借家法第5条の適用の有無 - 借家法第5条は、賃貸借が賃借人の債務不履行ないしその背信行為のため解除された場合には、その適用がないものと解すべきである。 - 物の引渡を求める訴訟において留置権の抗弁を認容する場合と判決主文 - 物の引渡を求める訴訟において、被告の留置権の抗弁を認容する場合には、原告の請求を全面的に棄却することなく、その物に関して生じた債権の弁済と引換に物の引渡を命ずべきものと解するを相当とする。 - 家屋明渡等請求(最高裁判決 昭和34年09月03日) - 売渡担保に供した不動産の返還義務不履行による損害賠償債権をもつてその不動産を留置し得るか。 - 不動産を売渡担保に供した者は、担保権者が約に反して担保不動産を他に譲渡したことにより担保権者に対して取得した担保物返還義務不履行による損害賠償債権をもつて、右譲受人からの転々譲渡により右不動産の所有権を取得した者の明渡請求に対し、留置権を主張することは許されない。 - 家屋明渡等請求(最高裁判決 昭和41年03月03日) - 建物の売買契約解除後の不法占有と民法第295条第2項 - 建物の売買契約によりその引渡を受けた買主が、右売買契約の合意解除後売主所有の右建物を権原のないことを知りながら不法に占有中、右建物につき必要費、有益費を支出したとしても、買主は、民法第295条第2項の類推適用により、当該費用の償還請求権に基づく右建物の留置権を主張できない - 家屋明渡請求(最高裁判決 昭和43年11月21日) - 不動産の二重売買の場合の履行不能を理由とする損害賠償債権をもつてする留置権の主張の許否 - 不動産の二重売買において、第二の買主のため所有権移転登記がされた場合、第一の買主は、第二の買主の右不動産の所有権に基づく明渡請求に対し、売買契約不履行に基づく損害賠償債権をもつて、留置権を主張することは許されない。 - 家屋明渡等請求(最高裁判決 昭和44年11月06日)民法第608条 - 借地上の家屋に関する費用償還請求権とその敷地の留置権 - 借地上の家屋に関する費用償還請求権は、その家屋の敷地自体に関して生じた債権でもなければ、その敷地の所有者に対して取得した債権でもないから、右請求権を有する者であつても、その家屋の敷地を留置する権利は有しない。 - 家屋明渡等請求(最高裁判決 昭和46年07月16日) - 建物賃貸借契約解除後の不法占有と民法295条2項の類推適用 - 建物の賃借人が、債務不履行により賃貸借契約を解除されたのち、権原のないことを知りながら右建物を不法に占有する間に有益費を支出しても、その者は、民法295条2項の類推適用により、右費用の償還請求権に基づいて右建物に留置権を行使することはできない。 - 建物明渡請求(最高裁判決 昭和47年11月16日)民訴法186条 - 甲所有の物を買受けた乙が売買代金を支払わないままこれを丙に譲渡した場合における丙の甲に対する物の引渡請求と甲の留置権の抗弁 - 甲所有の物を買受けた乙が、売買代金を支払わないままこれを丙に譲渡した場合には、甲は、丙からの物の引渡請求に対して、未払代金債権を被担保債権とする留置権の抗弁権を主張することができる。 - 物の引渡請求に対する留置権の抗弁を認容する場合においてその被担保債権の支払義務者が第三者であるときの判決主文 - 物の引渡請求に対する留置権の抗弁を認容する場合において、その物に関して生じた債務の支払義務を負う者が、原告ではなく第三者であるときは、被告に対し、その第三者から右債務の支払を受けるのと引換えに物の引渡をすることを命ずるべきである。 - 甲所有の物を買受けた乙が売買代金を支払わないままこれを丙に譲渡した場合における丙の甲に対する物の引渡請求と甲の留置権の抗弁 - 所有権移転登記抹消等請求(最高裁判決 昭和51年06月17日) - 農地買収・売渡処分が買収計画取消判決の確定により失効した場合と被売渡人から右土地を買い受けた者の有益費償還請求権に基づく土地留置権の行使 - 農地買収・売渡処分が買収計画取消判決の確定により当初にさかのぼつて効力を失つた場合において、被売渡人から右土地を買い受けた者が土地につき有益費を支出していても、その支出をした当時、買主が被買収者から買収・売渡処分の無効を理由として所有権に基づく土地返還請求訴訟を提起されており、買主において買収・売渡処分が効力を失うかもしれないことを疑わなかつたことにつき過失があるときには、買主は、右有益費償還請求権に基づく土地の留置権を行使することができない。 - 建物収去土地明渡等本訴、不当利益返還反訴(最高裁判決 昭和58年03月31日)民法第482条,仮登記担保契約に関する法律第3条1項 - 清算金の支払のないまま仮登記担保権者から目的不動産の所有権を取得した第三者の債務者に対する右不動産の明渡請求と債務者の留置権の抗弁 - 清算金の支払のないまま仮登記担保権者から第三者が目的不動産の所有権を取得した場合には、債務者は、右第三者からの右不動産の明渡請求に対し、仮登記担保権者に対する清算金支払請求権を被担保債権とする留置権の抗弁権を主張することができる。 - 建物所有権移転登記抹消登記手続、建物明渡(最高裁判決 平成9年04月11日)民法第369条(譲渡担保) - 譲渡担保権の実行として譲渡された不動産を取得した者の譲渡担保権設定者に対する明渡請求と譲渡担保権設定者の留置権の主張の可否 - 譲渡担保権設定者は、譲渡担保権の実行として譲渡された不動産を取得した者からの明渡請求に対し、譲渡担保権者に対する清算金支払請求権を被担保債権とする留置権を主張することができる。
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条文 (留置権者による留置物の保管等) - 第298条 - 留置権者は、善良な管理者の注意をもって、留置物を占有しなければならない。 - 留置権者は、債務者の承諾を得なければ、留置物を使用し、賃貸し、又は担保に供することができない。ただし、その物の保存に必要な使用をすることは、この限りでない。 - 留置権者が前二項の規定に違反したときは、債務者は、留置権の消滅を請求することができる。 解説 留置権者の留置物の管理義務についての規定である。 債務者は、留置権不発生の主張が認められなかった場合、留置権者が善管注意義務違反をしたこと(1項)、あるいは無断使用、賃貸、担保権設定を立証すれば留置権消滅、目的物返還請求が認められる(3項)。しかし後者の主張について留置権者が無断使用について保存のために必要だったことを立証すれば消滅請求は必ずしも認められない。 以上の主張が認められなかった場合、債務者は被担保債権の時効消滅(民法第300条)を主張することになる。 参照条文 判例 - 船舶引渡等請求(最高裁判決 昭和30年03月04日)民法第196条、民法第295条 - 民法第298条第2項但書にいわゆる留置物の保存に必要な使用 - 木造帆船の買主が、売買契約解除前支出した修繕費の償還請求権につき右船を留置する場合において、これを遠方に航行せしめて運送業務のため使用することは、たとえ解除前と同一の使用状態を継続するにすぎないとしても、留置物の保存に必要な使用をなすものとはいえない。 - 家屋明渡請求(最高裁例 昭和33年01月17日)民法第295条,民法第299条 - 留置物の使用が物の保存に必要な範囲を超えた場合の必要費、有益費の支出とその償還請求権に基く留置権発生の有無 - 留置権者が留置物について必要費、有益費を支出しその償還請求権を有するときは、物の保存に必要な範囲を超えた使用に基く場合であつたとしても、その償還請求権につき留置権の発生を妨げない。 - 所有権確認請求(最高裁判決 昭和38年05月31日) - 民法第298条第3項の法意。 - 留置権者が民法第298条第1項および第2項の規定に違反したときは、当該留置場の所有者は、当該違反行為が終了したかどうか、またこれによつて損害を受けたかどうかを問わず、当該留置権の消滅を請求することができるものと解するのが相当である。 - 留置権実行による競売目的物に対する異議(最高裁判決 昭和40年07月15日)民法第173条 - 留置物の第三取得者は民法第298第3項により留置権の消滅を請求できるか。 - 留置物の第三取得者も、民法第298第3項により留置権の消滅を請求できる。 - 建物明渡等(最高裁判決 平成9年07月03日)民法第177条 - 留置権者が留置物の使用等の承諾を受けた後に留置物の所有権を取得した者による留置物の使用等を理由とする留置権の消滅請求の可否 - 留置物の所有権が譲渡等により第三者に移転した場合において、対抗要件を具備するよりも前に留置権者が留置物の使用又は賃貸についての承諾を受けていたときは、新所有者は、留置権者に対し、右使用等を理由に留置権の消滅請求をすることはできない。
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民法第299条 条文 (留置権者による費用の償還請求) - 第299条 - 留置権者は、留置物について必要費を支出したときは、所有者にその償還をさせることができる。 - 留置権者は、留置物について有益費を支出したときは、これによる価格の増加が現存する場合に限り、所有者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる。ただし、裁判所は、所有者の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。 解説 参照条文 - 民法第350条(留置権及び先取特権の規定の準用) 判例 - 家屋明渡請求(最高裁判決 昭和33年01月17日)民法第295条,民法第298条 - 留置物の使用が物の保存に必要な範囲を超えた場合の必要費、有益費の支出とその償還請求権に基く留置権発生の有無 - 留置権者が留置物について必要費、有益費を支出しその償還請求権を有するときは、物の保存に必要な範囲を超えた使用に基く場合であつたとしても、その償還請求権につき留置権の発生を妨げない。
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条文 (解釈の基準) 解説 この規定は、民法の解釈基準について定めた規定である。 英文(出典等) Article 2 This Code must be construed in accordance with honoring the dignity of individuals and the essential equality of both sexes. 参照条文 参照判例 判例 - 地位確認等請求事件(最高裁判決 平成18年03月17日)民法第90条,民法第92条,民法第263条,民法第294条,日本国憲法第14条1 - 入会部落の慣習に基づく入会集団の会則のうち入会権者の資格要件を一家の代表者としての世帯主に限定する部分が公序良俗に反しないとされた事例 - A入会部落の慣習に基づく入会集団の会則のうち入会権者の資格要件を一家の代表者としての世帯主に限定する部分は,現在においても,公序良俗に反するものということはできない。 - 入会部落の慣習に基づく入会集団の会則のうち入会権者の資格を原則として男子孫に限定し同入会部落の部落民以外の男性と婚姻した女子孫は離婚して旧姓に復しない限り入会権者の資格を認めないとする部分が民法第90条の規定により無効とされた事例 - A入会部落の慣習に基づく入会集団の会則のうち,入会権者の資格を原則として男子孫に限定し,同入会部落の部落民以外の男性と婚姻した女子孫は離婚して旧姓に復しない限り入会権者の資格を認めないとする部分は,遅くとも平成4年以降においては,性別のみによる不合理な差別として民法第90条の規定により無効である。
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条文 (一般の先取特権) - 第306条 - 次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の総財産について先取特権を有する。 - 共益の費用 - 雇用関係 - 葬式の費用 - 日用品の供給 解説 - 債務者の一般財産(総財産)を目的とする先取特権である一般先取特権の発生原因を定めた規定である。特定の財産を目的としないため物上代位(第304条)の適用の余地がない。 参照条文 - 第355条(一般の先取特権の効力) - 建物の区分所有等に関する法律第7条(先取特権) 判例 - 破産債権優先権確認請求(通称 江戸川製作所退職金請求)(最高裁判決 昭和44年09月02日)民法第174条の2,民法第308条,破産法第242条 - 退職金債権と一般の先取特権 - 給料の後払いとしての性格を有する退職金債権については、その最後の六か月間の給料相当額について一般の先取特権があると解すべきである。 - 6か月間の部分は民法第308条における2003年(平成15年)改正前の制約であるので、期間に関するものは現在は無視して良い。雇用期間にわたって発生した退職金全額が先取特権の対象となる。 - 破産債権確定請求(最高裁判例 昭和46年10月21日) 民法第310条 - 法人と民法310条にいう債務者 - 法人は、民法310条にいう債務者に含まれない。 - 配当異議(通称 下山組賃金請求)(最高裁判例 昭和47年09月07日)民法第308条 - 民法306条2号、308条にいう「雇人」の意義 - 民法306条2号、308条にいう「雇人」とは、雇傭契約によつて労務を供給する者を指すものと解すべきである。
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条文 (雇用関係の先取特権) - 第308条 - 雇用関係の先取特権は、給料その他債務者と使用人との間の雇用関係に基づいて生じた債権について存在する。 改正経緯 2003年(平成15年)改正以前は、以下の条文であったが、現行の趣旨に改正された。 - 雇人給料ノ先取特権ハ債務者ノ雇人カ受クヘキ最後ノ六个月間ノ給料ニ付キ存在ス 解説 参照条文 判例 - 破産債権優先権確認請求(通称 江戸川製作所退職金請求)(最高裁判例 昭和44年09月02日)民法第174条の2,民法第306条,破産法第242条 - 退職金債権と一般の先取特権 - 給料の後払いとしての性格を有する退職金債権については、その最後の6か月間の給料相当額について一般の先取特権があると解すべきである。 - 6か月間の部分は2003年(平成15年)改正前の制約であるので、期間に関するものは現在は無視して良い。雇用期間にわたって発生した退職金全額が先取特権の対象となる。 - 配当異議(通称 下山組賃金請求)(最高裁判例 昭和47年09月07日)民法第306条2号 - 民法306条2号、308条にいう「雇人」の意義 - 民法306条2号、308条にいう「雇人」とは、雇傭契約によつて労務を供給する者を指すものと解すべきである。
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条文 (失踪宣告) - 第30条 - 不在者の生死が7年間明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失踪の宣告をすることができる。 - 戦地に臨んだ者、沈没した船舶の中に在った者その他死亡の原因となるべき危難に遭遇した者の生死が、それぞれ、戦争が止んだ後、船舶が沈没した後又はその他の危難が去った後1年間明らかでないときも、前項と同様とする。 解説 民法上の不在者のうち、失踪者の従来の住所等の地における法律関係の取り扱いに関する規定である。 利害関係人の請求があったときに、普通失踪(第1項)では7年間、特別失踪(第2項)では1年間の失踪期間を定め、それぞれ生死不明の期間が継続した場合に家庭裁判所が失踪の宣告をし、その者を死亡したものとみなすことにしている。 失踪宣告は非争訟的非訟事件であり、裁判所の職権要素が強い司法手続きであるが、利害関係人の請求がなければ、家庭裁判所は職権等で審判を開始することができず、審判中に請求が取り下げられると失踪の宣告をすることはできない。 利害関係人とは、法律上、特別の利害関係をもつ者をいい、配偶者や推定相続人、受遺者、親権者、不在者の財産管理人、終身定期金の債務者がこれにあたる。単なる債権者は、履行に関する訴えができるに止まり、これに当たらない。また、法制上、政府等も原則として、利害関係人とはならない[1]。国民年金法や厚生年金保険法においては、第2項の要件を具備すれば、請求を要せず死亡を推定する旨を定めている。 参照条文 - 民法第32条(失踪の宣告の取消し) - 家事審判法第9条甲類3号 - 国民年金法第18条の2(死亡の推定) - 厚生年金保険法第59条の2(死亡の推定) 脚注 - ^ 第二次世界大戦の未帰還者の失踪宣告について「未帰還者に関する特別措置法」を立法し、厚生大臣(現.厚生労働大臣)が請求をなしえることを定めた。
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条文 (即時取得の規定の準用) 解説 即時取得についての規定が一部の先取特権にも準用されることを定めた規定である。 - 第192条(即時取得) - 第193条(盗品又は遺失物の回復) - 第194条(同上) - 第195条(動物の占有による権利の取得) - 第312条(不動産賃貸の先取特権) - 第313条(不動産賃貸の先取特権の目的物の範囲) - 第314条(同上) - 第315条(不動産賃貸の先取特権の被担保債権の範囲) - 第316条(同上) - 第317条(旅館宿泊の先取特権) - 第318条(運輸の先取特権) 参照条文 - 民法第311条(1号から3号) - 建物の区分所有等に関する法律第7条(先取特権)
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条文 (失踪の宣告の効力) - 第31条 - 前条第1項の規定により失踪の宣告を受けた者は同項の期間が満了した時に、同条第2項の規定により失踪の宣告を受けた者はその危難が去った時に、死亡したものとみなす。 解説 民法第30条の失踪宣告の効力の発生時期について規定している。 普通失踪(民法第30条1項)の場合は生死不明の状態が始まってから7年後に、特別失踪(民法第30条2項)の場合は危難の去った時に死亡したものとみなされる。宣告のあった日に死亡とみなされるのではないことに注意が必要である。 宣告によって、その者は死亡したものとみなされ、当該期日にさかのぼって死亡の効果(相続、配偶者との婚姻関係の終了等)が発生する。
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民法第320条 条文 (動産保存の先取特権) - 第320条 - 動産の保存の先取特権は、動産の保存のために要した費用又は動産に関する権利の保存、承認若しくは実行のために要した費用に関し、その動産について存在する。 解説 - 動産の保存のために要した費用 - (例) - 機械・器具の修繕費 - 預かった家畜の飼育費用 - 動産に関する権利の保存、承認若しくは実行のために要した費用 - (例) - 第三者が、ある動産を時効取得しようとするのに際して、時効を完成させない以下の行為により生じた費用。 - 中断させる行為[保存] - 第三者に承認させる[承認] - 第三者に返却させる[実行] - 第三者が、ある動産を時効取得しようとするのに際して、時効を完成させない以下の行為により生じた費用。 参照条文 - 民法第326条(不動産保存の先取特権) - 農業動産信用法第5条
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条文 - 第321条 - 動産の売買の先取特権は、動産の代価及びその利息に関し、その動産について存在する。 解説 - 動産を売って、代金が完済される前に引き渡した場合、代金及び利息(遅延損害金)について先取特権が存在する。 参照条文 - 民法第328条(不動産売買の先取特権) - 農業動産信用法第6条 - 農業動産信用法第9条 判例 - 債権差押命令及び転付命令に対する執行抗告棄却決定に対する許可抗告(最高裁決定 平成10年12月18日)民法第304条,旧・民法第322条(現本条),民法第632条 - 請負工事に用いられた動産の売主が請負代金債権に対して動産売買の先取特権に基づく物上代位権を行使することの可否 - 請負工事に用いられた動産の売主は、原則として、請負人が注文者に対して有する請負代金債権に対して動産売買の先取特権に基づく物上代位権を行使することができないが、請負代金全体に占める当該動産の価額の割合や請負契約における請負人の債務の内容等に照らして請負代金債権の全部又は一部を右動産の転売による代金債権と同視するに足りる特段の事情がある場合には、右部分の請負代金債権に対して右物上代位権を行使することができる。 - 請負工事に用いられた動産の売主が請負代金債権の一部に対して動産売買の先取特権に基づく物上代位権を行使することができるとされた事例 - 甲から機械の設置工事を請け負った乙が右機械を代金1575万円で丙から買い受け、丙が乙の指示に基づいて右機械を甲に引き渡し、甲が乙に支払うべき2080万円の請負代金のうち1740万円は右機械の代金に相当するなど判示の事実関係の下においては、乙の甲に対する1740万円の請負代金債権につき右機械の転売による代金債権と同視するに足りる特段の事情があるということができ、丙は、動産売買の先取特権に基づく物上代位権を行使することができる。 - 請負工事に用いられた動産の売主が請負代金債権に対して動産売買の先取特権に基づく物上代位権を行使することの可否
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条文 - 第326条 - 不動産の保存の先取特権は、不動産の保存のために要した費用又は不動産に関する権利の保存、承認若しくは実行のために要した費用に関し、その不動産について存在する。 解説 - 不動産の保存のために要した費用 - (例) - 共有部分の保存行為(民法第252条) - 不動産に関する権利の保存、承認若しくは実行のために要した費用 - (例) - 第三者が、ある不動産を時効取得しようとするのに際して、時効を完成させない以下の行為により生じた費用。 - 第三者の占有を排除して中断させる行為[保存] - 第三者に承認させる[承認] - 第三者に返却させる[実行] - 第三者が、ある不動産を時効取得しようとするのに際して、時効を完成させない以下の行為により生じた費用。
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条文 - 第327条 - 不動産の工事の先取特権は、工事の設計、施工又は監理をする者が債務者の不動産に関してした工事の費用に関し、その不動産について存在する。 - 前項の先取特権は、工事によって生じた不動産の価格の増加が現存する場合に限り、その増価額についてのみ存在する。 解説 参照条文 判例 - 配当異議事件(最高裁判例 平成14年01月22日)民法第338条2項 - 不動産工事の先取特権の対象となるべき不動産の増価額が不動産競売手続における評価人の評価又は最低売却価額の決定に反映されていないことが同先取特権によって優先弁済を受けるべき実体的権利に与える影響の有無 - 不動産工事の先取特権の対象となるべき不動産の増価額が不動産競売手続における評価人の評価又は最低売却価額の決定に反映されていないことは,同先取特権の被担保債権が優先弁済を受けるべき実体的権利に影響を与えない。
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民法第329条 条文 (一般の先取特権の順位) - 第329条 - 一般の先取特権が互いに競合する場合には、その優先権の順位は、第306条各号に掲げる順序に従う。 - 一般の先取特権と特別の先取特権とが競合する場合には、特別の先取特権は、一般の先取特権に優先する。ただし、共益の費用の先取特権は、その利益を受けたすべての債権者に対して優先する効力を有する。 解説 一般の先取特権が他の一般の先取特権、あるいは特別の先取特権と競合する場合の優先順位について規定している。 (一般の先取特権の順位) 一般の先取特権が他の一般の先取特権、あるいは特別の先取特権と競合する場合の優先順位について規定している。
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条文 (失踪の宣告の取消し) - 第32条 - 失踪者が生存すること又は前条に規定する時と異なる時に死亡したことの証明があったときは、家庭裁判所は、本人又は利害関係人の請求により、失踪の宣告を取り消さなければならない。この場合において、その取消しは、失踪の宣告後その取消し前に善意でした行為の効力に影響を及ぼさない。 - 失踪の宣告によって財産を得た者は、その取消しによって権利を失う。ただし、現に利益を受けている限度においてのみ、その財産を返還する義務を負う。 解説 失踪宣告の取消しの要件とその効力、そしてその後の権利関係の清算方法について規定している。 失踪宣告を受けた者が生存していたり、又は死亡とみなされた時期と異なる時期に死亡したことが判明しても、失踪宣告が取り消されない限り失踪宣告の効果は失われない。これらの証明があると、本人もしくは利害関係人の請求により、家庭裁判所は失踪の宣告を取り消さなければならない。 失踪宣告が取り消されると、宣告は初めからなかったことになる。よって宣告によって発生した法律関係は元に戻ることになるが、失踪宣告後、取り消し前に善意でした行為の効力に影響はない。ここで言う善意は、行為の当事者双方が善意であることを要求する。 失踪宣告を原因として直接に財産を得た者(相続人、受遺者等)は現存利益の返還義務を負う。この返還義務は善意の者であっても負う。悪意の場合は不当利得の悪意の受益者(民法第704条)となり、受けた利益に利息を付して返還する義務を負う、と解するのが通説である。
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民法第32条の2 条文 (同時死亡の推定) - 第32条の2 - 数人の者が死亡した場合において、そのうちの一人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、これらの者は、同時に死亡したものと推定する。 解説 同時死亡の推定を定める。 要件 - 数人のものが同時期に死亡すること。 - 死亡時刻の先後が分からないこと。 具体的事例 - 航空機事故や、津波、雪山遭難などの災害において、複数の死亡者(但し、死亡によって、互いに何らかの法律関係の変動が生ずる者)が出たときで、各個人の死亡時刻が確定できない場合をいう。同時であれば、同一の事故等であることは要件とならない。例えば、甲が、雪山遭難等で生死が不明なときに、乙が死亡、後に甲の死亡が確認されたが、乙死亡との先後が不明な場合である。 効果 - 同時に死亡したものと推定する。 - 推定であるため、この結果により不利益を受けるものは、証拠を示すことにより覆しうる。 適用局面 - 本条項が、実際に適用につき問題となるのは、親族等の同時死亡の例である。即ち、被相続人と想定相続人が、ほぼ同時に死亡した場合、相続は発生しないため(死者の間に相続は生じない)、その先後関係で、後続する相続に大きな影響を与えることとなる。 適用例 - 財産の大方は夫名義になっている(ここでは、寄与分については考慮しない)、子供のいない夫婦が、事故でともに亡くなったとする。 - 死亡の先後が分からない場合 - 本条項の適用があり、その結果、死亡した妻への相続は発生せず、夫の財産は、夫の親などの夫の親族のみに相続され、妻の親など親族への相続は発生しない。 - 妻の死亡が、夫より後であることが証明された場合 - 夫の財産は1/3が夫の親族に相続され、残りを妻が相続し、妻の死亡により妻の親族が全て相続する。
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条文 (動産の先取特権の順位) - 第330条 - 同一の動産について特別の先取特権が互いに競合する場合には、その優先権の順位は、次に掲げる順序に従う。この場合において、第二号に掲げる動産の保存の先取特権について数人の保存者があるときは、後の保存者が前の保存者に優先する。 - 不動産の賃貸、旅館の宿泊及び運輸の先取特権 - 動産の保存の先取特権 - 動産の売買、種苗又は肥料の供給、農業の労務及び工業の労務の先取特権 - 前項の場合において、第一順位の先取特権者は、その債権取得の時において第二順位又は第三順位の先取特権者があることを知っていたときは、これらの者に対して優先権を行使することができない。第一順位の先取特権者のために物を保存した者に対しても、同様とする。 - 果実に関しては、第一の順位は農業の労務に従事する者に、第二の順位は種苗又は肥料の供給者に、第三の順位は土地の賃貸人に属する。 解説 動産の先取特権の優先順位について規定している。 参照条文 - 民法第329条(一般の先取特権の順位) - 民法第331条(不動産の先取特権の順位) - 民法第332条(同一順位の先取特権) - 農業動産信用法第11条
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民法第333条 条文 (先取特権と第三取得者) 解説 先取特権の行使と第三取得者について規定している。 - 『第三取得者』は、所有権の譲受人であり、質権者・賃借人は含まれない。 - 『引き渡し』には、占有改定も含まれる。 参照条文 - 民法第352条(動産質の対抗要件) 判例 - 第三者異議(最高裁決定 昭和62年11月10日)民法第85条、民法第178条、民法第181条、民法第183条、民法第369条 - 構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権と動産売買先取特権に基づいてされた動産競売の不許を求める第三者異議の訴え - 構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権者は、特段の事情のない限り、第三者異議の訴えによつて、動産売買先取特権者が右集合物の構成部分となつた動産についてした競売の不許を求めることができる。